■CAST&STAFF |
監督 |
袁和平(ユアン・ウーピン) |
出演 |
李連杰(ジェット・リー) |
楊紫瓊(ミシェール・ヨー) |
錢小豪(チン・シュウホウ) |
袁潔瑩(フェニー・ユン) |
于海(ユエ・ハイ) |
袁祥仁(ユアン・チョンヤン) |
孫建魅(チャン・チェンフー) |
劉洵 |
周金江 |
武術指導 |
袁和平(ユアン・ウーピン) |
袁祥仁(ユアン・チョンヤン) |
谷軒昭 |
脚本 |
葉廣儉 |
製作 |
李連杰(ジェット・リー)
クレジット名は李陽中 |
制作年度 |
1993 |
給〔父巴〕〔父巴〕的信
My Father is a Hero
D&D/完全黙秘
■
誰もがみーんな思ってるだろうけど、邦題の意味がわからんなぁ、D&Dはともかく完全黙秘って何のことなんだろう潜入捜査官やから完全黙秘ってことぐらいしか思いつかんけどもうちょっと気の利いたタイトルつけられないものかね。
というわけで、李連杰(ジェット・リー)&元奎(コリー・ユアン)コンビで贈る現代アクションもの。
潜入捜査官ものということで画面がハードボイルドに少し暗いのが残念。別に明るくたって良いと思うんだけどな。
■簡単に流れ
潜入捜査官の李連杰は今は中国の悪組織に潜入中。
潜入中でも任務の合間を縫って
謝苗くんはさすがだね
息子の謝苗(シー・ミャオ)が出場する武術大会にちゃんと参観に来るところが出来たパパ。しかもまだ任務中で戦いながら観てたりして。
さらに親子で協力して悪い奴やっつけたりして。
しかし色々ごたごたあって、組織にばれてしまい我が息子を人質に取られる。
これを香港の刑事・梅艷芳(アニタ・ムイ)と協力して奪還に成功する。
終劇
■
とまぁお話はそんなに事細かく説明するほどでも無かったなというのが正直なところ、「新・少林寺伝説」とかぶるところもあるのだが、無理にツッコミ入れて回るような粗もそんなに目立たなかったし。
ともかくアクションは素晴らしい。
さすがに「レジェンド・オブ・フラッシュ・ファイター」シリーズでコンビを組んできただけあって、功夫シーンは抜群。これなら李連杰が元奎(コリー・ユアン)を一緒にハリウッドに連れて行くのも納得である。
梅艷芳姉貴も頑張るねぇ
ここなんかは梅艷芳と謝苗くんが協力して戦うところで李連杰がいなくとも非常に面白い功夫シーンである。ちっこい謝苗くんがアダルトな女性の魅力たっぷりの梅艷芳姉貴に対して、
「大丈夫か?」
なんて聞くところなんか可愛らしくてとても良い。
相変わらずの無敵っぷり
またクライマックスに至っては、功夫シーンがたっぷりと用意してあり、功夫迷にしてみれば満足出来る内容だと思う。
特に個人的大きなポイントはやっぱり、
李連杰vs于榮光(ユー・ロングァン)
どちらも大陸出身(香港ではなく中国)でありながら、なかなか対決しなかった(のかな?)顔合わせ!
やっぱ私は于榮光といったら大陸ロケの「少林寺 激怒の大地」「天山回廊」ですからね。
個人的には是非観てみたかった対決がここに実現したわけです。
で、これが期待にそぐわない出来栄えで于榮光のコートを目くらましに利用した戦法で李連杰を苦しめるところなんかとても格好良いです。
ハイキック三兄弟!
さらに李連杰vs于榮光ら三人 ということで、かなり不利になるのですが、こっちにも頼もしい仲間の
謝苗ヨーヨー拳!!
謝苗くんがいますからね。
それにしてもこれ観て改めて思ったけど、やっぱラストの対決は功夫を熟知しているもの同士が良いよなぁ・・・
「シャンハイナイト」も無理してでも甄子丹(ドニー・イェン)との戦いがラストでたっぷりの方が良かっただろうな・・・
それにしてもしつこいけど邦題が・・・??
|
■CAST&STAFF |
監督 |
元奎(コリー・ユアン) |
出演 |
李連杰(ジェット・リー) |
梅艷芳(アニタ・ムイ) |
謝苗(シー・ミャオ) |
柯受良(ブラッキー・ユー) |
于榮光(ユー・ロングァン) |
劉松仁(ダミアン・ラウ) |
倪星(コリン・チョウ) |
符ト晶 |
盧惠光(ロー・ワイコン) |
余南南 |
元奎(コリー・ユアン) |
方平 |
秦貴寶 |
張永祥 |
動作指導 |
元奎(コリー・ユアン) |
元コ |
脚本 |
邵麗瓊(サンディ・ショー) |
鍾偉雄 |
製作 |
王晶(バリー・ウォン) |
制作年度 |
1995 |
Kung Pow! Enter the Fist
クン・パオ!燃えよ鉄拳
■
とにかくこの映画の一番凄いことは完全な監督のマスターベーションなのに、ハリウッドから全国公開されているというとこだ。
個人的にはバカな行動もある一定の限度を超してしまえばもう偉いと思うところがある。だってそれでメシ食ってるんだもん。メシ食ってるんだもんだもんだもん。
それがどれだけ偉いことかってのは大人になればなるほどわかるねだもん。
ちょい文章が壊れ気味なのはまぁ疲れ気味もあるけど、この映画観たら何となく真面目に書くのもバカバカしいぜこりゃってのもあるんだけどああバカバカしい実にバカバカしいそんな映画を作りきってしまったんだなぁという感じです。
「親指タイタニック」とか「パッチ・アダムス」とかその辺作って何かと話題だった、ような気もするスティーヴ・オーデカークが王羽(ジミー・ウォング)が監督・主演した「ドラゴン修行房」('77)の版権を買い取り、そのフィルムを元に現在の最新技術(?)を駆使して、アホアホ映画に改造してしまった映画がこれである。
主演も彼、ヒロインも彼、師匠も彼、敵も彼、子分も彼、劉家榮(リュー・チャー・ヨン)も彼、郭振鋒(フィリップ・コク)も彼。どういうことかと言うと声の吹替えを全部、スティーヴ・オーデカーク自身がやっているのだ(日本語吹き替え版は西村雅彦さん)。なぜ演るーっ!?
なので、なおさらスティーヴ・オーデカーク1人が楽しみに楽しみきっているように映画に感じるのだが、まぁ実際そうだこれ。
■流れ?
流れと言っても、話の骨は「ドラゴン修行房」である。
舌先に天性のファイターの証”ベロンチョ”を持って生まれた"選ばれし者(スティーヴ・オーデカーク)"は、秘密結社"最悪委員会"の刺客・イテテ師通称ベティ(演じるは龍飛(ロン・フェイ))に両親を殺され、孤児になってネズミに育てられる。
青年となった"選ばれし者"は陳慧樓(チェン・ウェイ・ロー)が営むに道場にお世話になりながら、イテテ師を倒す術を模索続けるのだが、まだ彼の天性の強さは覚醒していないのであった・・・?
終劇
■
なんだこれ。
元あった映画に無理やり勝手なストーリーぶち込んでいるんだから元からメチャクチャだし、それをさらに冗談の演出でメチャクチャにしていくからストーリーなんか元から語る由も無いだろう。
で、面白かったかどうかで言えば個人的はまぁまぁ。
先に文句を言うとするならば、
"功夫映画好きで功夫映画やるって言うなら、功夫シーンはもっと頑張って(本人が演じるところも)作って欲しかった"
アクションシーンを演じているのはそりゃスティーヴ・オーデカークではなくて、それの元である王羽先生なのでそこは如何ともしがたいが自分がアクションするパートもあるのでその部分でだけでいいから安易にコメディに走らないで真摯なアクションシーンを見せて欲しかったものだ。それだけでも単なるマスターベーションに終わらない大きなエンターテイメント要素となるのに。
反対にこの映画の一番価値あるところはもちろん、
"ドラゴン修行房がクッキリ綺麗な映像で観れる!"
というところにある。実際のフィルムの大部分を使用しているので、 これはもう「ドラゴン修行房」も観たと同じと言っても過言じゃないだろう。逆に「ドラゴン修行房」観たこと無い人は観たくなったんじゃないかな。
面白いことにもう龍飛(ロン・フェイ)なんかは30年弱前のフィルムの彼なのに、今もハリウッドで活躍してるかのような大きい扱いになってるし、劉家榮(リュー・チャー・ヨン)はオカマ声の弱虫野郎にキャラクター変えられてしまってるし(ファンは怒るぞ)、陳慧樓(チェン・ウェイ・ロー)も変態師匠になっちゃってるとこ。
なかでも個人的に一番の発見は、
ウイウイウイィの謝玲玲
画像は残念ながら昔のもの。パソコンのDVD-ROMドライブは壊れ気味なのでキャプチャーできず、無念。
改めて謝玲玲(ツェー・リンリン)さん可愛いことに気づいたことだ。
画面鮮明になったからね。可愛いこと可愛いこと。
もみあげのクリンクリンしてること。
その上、やたらブラ見せるわ、下着姿になるわ、服着るわ、下着姿になるわ、服着るわ、ブタ鼻で「ふごーっ」って言うわ、さらには
全部吹替えでウソのセリフ喋ってるから、字余りになったところが全部、ウイウイウイウイィィ!って奇声発してるぞ。
それどころか実際喋ってないとこまでウイウイィじゃ。
こんなのむかーしのしかも香港の作品だから訴えが来なかったものの、「ハリー・ポッター」とかでやっちゃったら大変なことになるじゃろ。本当は下着姿になんか全くなってないのに(だいたいああいうカジュアルな下着をつけてません)何か得した気分になったからいいけど(いいのかよ)。
んでもう1つ、作品そのものとは違うところで評価しておかなければならないとこがあって、それはDVDソフトの仕様。
たっぷり特典が入ってるのよね。ふざけたのが。でもこんだけ入って丁寧に作ってあるのは好感持てます。
また、日本語吹き替え版の西村雅彦バージョンも面白いですよ(こっちのが面白いかも)。
|
■CAST&STAFF |
監督・脚本 |
スティーヴ・オーデカーク |
出演 |
スティーヴ・オーデカーク |
レオ・リー |
ジェニファー・タン |
ジョン・B・キム |
龍飛(ロン・フェイ) |
謝玲玲(ツェー・リンリン) |
陳慧樓(チェン・ウェイ・ロー) |
劉家榮(リュー・チャー・ヨン) |
馬驥 |
薛漢(シュエ・ハン) |
郭振鋒(フィリップ・コク) |
荊國忠 |
武術指導 |
劉家榮(リュー・チャー・ヨン) 他 |
音楽 |
ロバート・フォーク |
製作 |
スティーヴ・オーデカーク |
ポール・マーシャル |
制作年度 |
2002 |
人嚇鬼
霊幻百鬼
霊幻百鬼
※題名クリックAmazonで確認できます。
■
日本では元祖キョンシー・ホラー第三弾としてリリースされた作品で、「人嚇人」の続編的意味合いがあるのかはわからないが、タイトルもパワーアップしたように「人嚇鬼」となっている。
監督は銭月笙(チェン・ユーサン)。
彼の監督作品というのはこれが初めてだったので結構その辺で興味はあった。午馬監督だとなんとなく想像つくしね。ボーホー・フィルム制作。
■流れ
一級品の表現力を持ちながらもドサ廻りだった劇団が、 ある村で主役級の客演を呼んで上演準備をする。
その客演と劇団の俳優である董〔王韋〕(トン・ワイ)は馬が合わず、ケンカの毎日。お化けに扮したりして脅かしたりと団長の林正英(ラム・チェンイン)が怒ってもトラブルばかり。
そんな時、劇団小屋の下にいた幽霊・銭月笙(チェン・ユーサン)がそんな彼らを見つけて幽霊騒ぎを起こしたりしてさらに騒動を巻き起こす。
しかし、この幽霊が本当に待ち望んでいたのは成仏。
劇団員は幽霊のお骨を掘り起こして墓を建て埋めてやる事で成仏させてあげた。
ところが!
掘り起こしたお骨は実は違う悪幽霊で掘り起こしたので復活! (成仏するんじゃないの?と思うが)
宴会の席で劇団員の一人を悪幽霊が殺してしまう。
激怒した董〔王韋〕は墓を掘り起こしてお骨を粉々にするが、かえって悪幽霊の怒りを買ってしまい、ラストの劇団vs悪幽霊へ。
卓越された京劇アクションと悪幽霊の強靭さ、
果たしてどちらが勝つのか!?
劇終
■
悪くないけどしっくりこない。そんな感じ。
今ひとつ盛り上がりに欠ける気がしますね。
それは一重に物語を成すプロットが足りない気もするし、 足りないならその分アクションシーンで補えば良いのだが そのアクションも物足りない腹五分で終わっているという感じで今ひとつ。
結局個人的には冒頭の京劇ワイヤーアクション、この部分が一番面白かった。
この辺はさすがに洪家班周りの連中とあって素晴らしいアクション、それだけに劇中ではアクション重視でもなく物語りも弱くって感じで物足りなかったな。
酷い駄作、ではないだけに惜しい。
|
■CAST&STAFF |
監督 |
銭月笙(チェン・ユーサン) |
出演 |
林正英(ラム・チェンイン) |
董〔王韋〕(トン・ワイ) |
羅浩楷(ロー・ホーカイ) |
陳龍 |
銭月笙(チェン・ユーサン) |
劉秋生 |
劉雅麗 |
張景坡 |
呉勉勤 |
泰山 |
武術指導 |
洪家班 |
脚本 |
歐炳南 |
音楽 |
陳勳奇(フランキー・チェン) |
策劃 |
午馬(ウー・マ) |
製作 |
洪金寶(サモ・ハン・キンポー) |
製作総指揮 |
鄒文懷(レイモンド・チョウ) |
制作年度 |
1983 |
新龍門客棧
Dragon Inn
香港英雄列伝/ドラゴン・イン
■
1967年に胡金銓(キン・フー)監督が放った「龍門客棧/残酷ドラゴン血斗竜門の宿」のリメイク。
元になった方はリンク先を見てもらうとして本作はワイヤーアクションも華麗になった1992年に今こそは!という感じでリメイクされており、徐克(ツイ・ハーク)が制作した時期タイミングはバッチリだったと思う。
基本的には元に忠実に成っており、
盟主・于謙は悪辣な甄子丹(ドニー・イェン)宦官率いる東廠一派に無実の罪を被せられ死刑。 于の子供達を流刑にして後の反分子をおびき出し、"龍門の宿"で待ち伏せて殺戮の機会に息を潜める・・・
というところはさして変わらない。
元では流刑にしたけどやっぱり皆殺しにしたいと宦官が龍門に出向いて行ったのに対し、こちらは最初から他の反分子をおびき出すために流刑にしたところがより現実的で興味深い。確かに最初から全ての禍根を断っておけば良かったのにってことだし。
配役も大凡とても良いと思う。
元と照らし合わせると、
孤高の剣士に石雋(シー・チュン)は梁家輝(レオン・カーフェイ)、
それに恋しているのは上官霊鳳(シャン・カン・リン・フォン)でこれが林青霞(ブリジット・リン)、
白鷹(パイ・イン)宦官は甄子丹(ドニー・イェン)宦官に(これがピッタリ)、
宦官の腹心・韓英傑(ハン・イェンチェ)は劉洵(ラウ・シャン) が演じている(これも良い感じ)。
葭漢(シュエ・ハン)のおっちゃんは任世官(ニン・シークァン)や袁祥仁(ユアン・チョンヤン)の良い味おっさんコンビといったところか。
元で石雋が映画初主演、アクションも当然初めての役者素人が最強剣士を演じていたのに対し、こちらも武術は得意ではないだろう梁家輝が同じことをやっているのも何だかその辺の含蓄があるのかなって気がする(ないかな)。
話的に一番違いがあるのは勿論、
"龍門の宿主が反分子の一人である"
↓
"龍門の宿主が盗賊である"
に変わっているところで頭役が張曼玉(マギー・チャン)は色香で男を騙しては殺して、金品奪って人肉饅頭にしてしまうというとんでもない奴。
彼女が善と悪の真ん中に立って右往左往するので、以前よりも話が深くなっているところはある。
アクション的にはというと、やはり程小東(チン・シュウトン)らしい振付けで必要以上に過激、ワイヤーアクションが好きな人には観るべきものがたくさん残っていると思う。
ただうーんなんだろうなぁ・・・
こうなんというか肉と肉がぶつかるような気迫溢れる戦いというよりも舞踏に見えてしまうっていうのかな、そういうところをどうも感じてしまう。私には甄子丹(ドニー・イェン)がすんげー強いようには見えなかったな(別にオチが原因ではなくて)。
うーん初めてこのシチュエーションの映画を観る人にとってはそこそこ良いかなぁと思う。ただもうちょっと敵か味方かというような緊迫感ある駆け引きが出来なかったものかなって感じもするなぁ、どっちが悪で善かもう風貌でわかっちゃう感じだし、例えば劉洵(ラウ・シャン)一行が宿に現れたときにもっと紳士然として東廠一派かどうか全然わからないというような展開だったらもっと面白かったんじゃないか。それだけのこと出来る役者さんだったんだし。
個人的見所は林青霞と張曼玉の脱がし合いバトルってそりゃそうか。 クライマックスで甄子丹が大槻ケンヂになるのは笑える。
|
■CAST&STAFF |
監督 |
李惠民(レイモンド・リー) |
出演 |
梁家輝(レオン・カーフェイ) |
林青霞(ブリジット・リン) |
張曼玉(マギー・チャン) |
甄子丹(ドニー・イェン) |
劉洵(ラウ・シャン) |
呉啓華(ン・カイワー) |
徐錦江(チョイ・カムコン) |
任世官(ニン・シークァン) |
袁祥仁(ユアン・チョンヤン) |
武術指導 |
程小東(チン・シュウトン) |
脚本 |
徐克(ツイ・ハーク) 他 |
製作 |
徐克(ツイ・ハーク) |
制作年度 |
1992 |
奇門天書
Kung-fu From Beyond the Graye
魔界天書
■
いやぁこれ功夫迷としては見逃せない一本だったことを拝見して初めて知りました。
作品の雰囲気としては一連のキョンシーブーム以前のサモハン作品「鬼打鬼」('80)と非常に良く似ていて、その辺のものを踏襲しつつ作られたのだろうが、個人的にはその「鬼打鬼」よりこっちの方が面白い。「鬼打鬼」も功夫シーンは素晴らしいものがあるが、本作は言うならば、
"俺のような功夫迷が望むホラークンフー映画"
なんだな。
・・・・先に結論言っちゃいましたが、流れいきましょう。
■流れ
今日も功夫の修行に励む荘泉利(ビリー・チョン)。
修行中に突然亡き父の亡霊が現れ、
"俺は羅烈(ロー・リエ)に惨殺された。何処何処に行って復讐してくれ!"
と言い残して消える。
荘泉利はその声だけを頼りに旅へ。
その頃、道士の宋錦成は兄道士と争っていた。
町で悪さの限りを尽くす羅烈一味に加担していた宋錦成は兄に咎められていたのだ。
兄の術の前に1度は敗北するものの、隙を見て宋錦成が不意打ちし、この兄を殺す。
「鬼打鬼」では弟道士の鐘發(チュン・ファット)が悪い兄道士の陳龍と戦うのに対し、反対にしているのが何だか可愛らしい製作者達の工夫だ。
羅烈が牛耳る町では性交中の若い男女が次々と殺され、心臓を抜き取られるという猟奇殺人事件が連続していた。
辿り着いた荘泉利の前にもその事件は起きる。
勿論は犯人は羅烈一味。
彼らは奪った心臓で作り上げた血を使って、羅烈の肉体を最強に改造しようとしていた(心臓が悪いらしい?)。手引きしていたのは先の道士・宋錦成である。
羅烈一味の屋敷を突き止めた荘泉利はいきなり殴りこんで大乱闘。めちゃくちゃ大胆な奴である。
すったもんだの末に謎の男・徐忠信が手助けして逃げ出す。
・・・と思ったら荘泉利、今度は夜襲をかける。たった一人なのに大勢相手に全く怯まない奴だ。
だが、今度は宋錦成の黒魔術にやられてピンチ!
やばいとばかりにまた逃げ出す。
荘泉利は父の遺品である"天書"が黒魔術に対抗できるのではないかと考案。さっそく実験。
近場にいた幽霊達がそれで呼び出されて雇われることになる。
またも今度は宋錦成と対決。
雇われた幽霊達もなかなか強力だったが、致命傷を与えるには決定力に欠ける。そんなこんなしているうちに宋錦成が召喚したのはもの凄いキャラクターだった!
「アイム カミーン!!」
何と現れたのはドラキュラ!!
ここに幽霊達vsドラキュラの何とも奇妙な戦いが始まる。
というか、ドラキュラって霊だっけ?
荘泉利が持ち出したニンニクによって、ドラキュラを倒すことには成功するが夜明け。幽霊達は帰ってしまう。
またも多勢に無勢に。ここでまたまた徐忠信が黒ずくめで現れ彼を助けてくれるのだが、この黒ずくめであることを宋錦成が利用して自分も黒ずくめに変装。まんまと荘泉利から"天書"を盗んでしまう。
徐忠信は領主の密偵で羅烈一味の犯罪証拠を探っていたのである。今後は協力することに。
猟奇殺人の実行犯であった夫妻は、今日も羅烈の指示で性交中のアベックを狙う。しかし今度はこれが罠だった。徐忠信らが待ち受けてこれを返り討ち。失敗した夫妻は羅烈に上手く騙されて良い雰囲気の部屋に案内されて、
「たまにはエッチでもしますか」
みたいな気分に。ウフフウフフと楽しんでいる間に羅烈に心臓を奪われる。というか、あんたらバカじゃないの?って言いたくなるが。絶対罠やろ!って普通わかるやろ。
しかしこの奪った心臓を儀式に使ったのが羅烈の間違いだった。邪悪な心だったために儀式が上手くいかなかったのだ。おかげで不死身の肉体になるはずがオッパイ部分は不死身にならないって感じ。
荘泉利、徐忠信らはまず妖術を使いやがって至極うっとうしい宋錦成を先に倒すことに。荘泉利はヒロインの名前のわからない女優さんと楽しげにラブホテルに入館。・・・まぁこれもバレバレの罠のような気もするがあっさり引っかかる宋錦成。
ここに
宋錦成vs荘泉利、徐忠信、後1人名前不明
のバトルが始まる。
とにかくこの映画のアクションの流れとして
"最後はきっちり功夫アクションでしめ"
というのがあって、妖術合戦を繰り広げた後は必ず功夫対決に持ち込まれるところが、実に私のような功夫迷の魂をくすぐらせる。
ここに見せるバトルは宋錦成の功夫バトルをたくさん見たわけでもないのだが、恐らく屈指のベストバウトだろう。素晴らしい迫力ある功夫シーンだ。
宋錦成を倒すと今度は憤怒に燃えていた町民たくさん連れて羅烈の屋敷に乗り込む荘泉利たち。屋敷が町民の手によって燃やされると羅烈は逃げ出した。
何時の間にか夜だったのが昼になっているのだが、これは
"功夫シーンをハッキリクッキリ見せるため"
という粋な計らいだと思われ。
荘泉利vs羅烈!!
ほぼ不死身の肉体を手に入れていた羅烈には攻撃が効かない・・・
羅烈 「ぐわぁああああ!!!(激痛)」
・・・・弱点に包帯してたので、すぐバレたりなんかして。
死闘の末に生き埋めにされる羅烈!
地中では羅烈に殺された数々の怨霊たちが彼への復讐を待ち詫びているのだった・・・・
終劇
■
一言で言ってホラーとしては怖くない。
サモハンホラーの方が怖いと思う。
ただこれのビデオパッケージに
"ホラームーディな演出が秀逸"
と書かれているように、確かに全編に渡るテイストが一貫しており、本作独特の雰囲気が醸し出されているのも確か。この辺はこちらも独特の雰囲気であるダーク功夫映画の「五毒拳」と通ずるものがある。カルト的功夫映画だろう。
大体においてホラークンフーに流れ込むとどうしてもそのクンフー+ホラーの部分で上手くバランスを取るのが難しく、さらに現代劇にしてしまった「霊幻道士2/キョンシーの息子たち」なんか顕著だが、アクションに於いてどうしても迫力に欠けてしまったり、ちゃちくなってしまったり消化不良になってしまいがちである。
しかし、本作は「キョンシーものは好きじゃないけど功夫映画は好き。」って人にも十分オススメ出来る作品だ。とにかく功夫シーンはたっぷり。徐忠信、宋錦成が付けた殺陣も確かなもので、迫力あるバトルを十二分に堪能できると言えるだろう。いやむしろ功夫映画が好きな人にオススメの映画と言えるかな。タイトルからは想像もつかないよね。さらに"性交中の男女が"とあるようにお色気シーンもやたらあるんだよね。まぁいらんったらいらんけどそれもサービスの1つってことで。
どっかで見つけたら功夫迷には掘り出し物の一品です。
|
■CAST&STAFF |
監督 |
李サ |
出演 |
荘泉利(ビリー・チョン) |
羅烈(ロー・リエ) |
宋錦成 |
許佩雲 |
徐忠信 |
黎劔洪 |
房勉 |
古軍 |
馬恩生 |
張忠貴 |
歐陽莎菲 |
劉珊 |
武術指導 |
徐忠信 |
宋錦成 |
脚本 |
魯風 |
音楽 |
成偉業 |
蘇振厚 |
製作 |
色明 |
制作年度 |
1983 |
水滸傳
The Water Margin
水滸伝
■
「水滸伝」と聞けば日本人なら誰でも
「ああ水滸伝」
となるだろう。しかし、
「で、水滸伝ってどんな話?」
って聞かれたらはっきり答えられる人って非常に少ないのではないだろうか。
「三国志」はすっかり映画やドラマ、TVゲームに溶け込んでいて、知ってる人も多数いれば、知らない人にわからせるのも難しくない。しかし「水滸伝」は物語を隅から隅まで読んでいないとわからないだろう。何がわからないってその面白さが。
本作は後に梁山泊の副首領となる慮俊義が、いかにして英雄達の仲間になったかを語るエピソード、とはパッケージ裏の説明そのままだが、張徹(チャン・ツェー)演出によってこの映画はどのようなものだったか。
■流れ
今日も戦に勝って祝杯を挙げる梁山泊の一派。
ズラッと挙げるだけでも
谷峯(クー・フェン)
狄龍(ティ・ロン)
樊梅生(フォン・メイサン)
井E
岳華
陳觀泰(チェン・カンタイ)
午馬(ウー・マ)
何莉莉(リリー・ホー)
王鍾
秦沛(ポール・チュン)
李修賢(ダニー・リー)
その他もっと一杯とここだけでも何だか嬉しくなってしまうオープニングシーンである。
最も一人一人の出番はごくわずかなのだが。陳觀泰はここしか出てなかった気がする。
しかし、その梁山泊は国から盗賊と睨まれ、軍人の黒沢年男(史文恭)も梁山泊を倒そうと躍起になっていた。
その黒沢年男に梁山泊一派の〔人冬〕林が倒される。
「あいつを倒して俺の仇を討ってくれ!」
義に熱い梁山泊一派は早速仇討ちのための策を練る。
結果、町の有力者であり武術の達人でもある丹波哲郎(慮俊義)に協力を得ようと動き出すのだが、梁山泊の連中を賊だと信じて疑わない丹波さんは彼らを幽閉。この一連を垣間見ていた下男の田青。実は田青は丹波さんの妻である凌玲と不倫関係。梁山泊一派が丹波家にいることをお上に密告し、丹波家を乗っ取ろうと考える。
ハッキリ言ってかなりの迷惑なのだが、密告の結果、丹波さんは「賊を匿った」ということで捕らえられる。
その賊・梁山泊一派は丹波さんの養子である姜大衛(デビッド・チャン)の活躍で逃げ出した。
「自分達のせいで丹波さんが捕まった」
今度は丹波さん奪還に向けて梁山泊一派が動き出す。
正直、こっからは丹波さんが脱出したりまた捕まったりの繰り返し。もうそればっかり。
遂にはお上も黒沢年男に軍隊を出し、梁山泊一派の撲滅戦争を促し、梁山泊一派もこれに乗ずる。
遂には、
何度も交わすやり取りの中で既に自分も梁山泊の一味に成らざるを得なくなった丹波さんと弟弟子であったく黒沢年男との一騎打ち!
そして狄龍(ティ・ロン)、樊梅生(フォン・メイサン)、岳華、何莉莉(リリー・ホー)など豪華な面々と黒沢軍団との戦いが始まった!
終劇
■
正直、お話的には最初から最後まで
「丹波さん脱出大作戦」
だけに終始しており、それ以外は何の展開も見せないので単調な気がすることは確か。
この部分だけ見せておいて「水滸伝」と言われてもよく知らない人にとっては「なんじゃそりゃ」だけで終わられてもしょうがないところはある。
ハッキリ言ってここは1つ見方を変えるしかないだろう。
これは見たとおりセットにもお金をたっぷりかけて、ショーブラオールスターに加えて、駆け出し時代の李修賢(ダニー・リー)や唐炎燦(トン・インチャン)、予想だにしなかった南宮勳(ナン・ゴンクン)の登場など、そのキャストの豪華さをまずは堪能したいところ。スタッフにおいても武術指導は劉兄弟に唐佳、助監督に呉字森(ジョン・ウー)と著名な人物が参画している。
後はやっぱりラストバトル、
どうしても丹波さんvs黒沢さんの戦いに関しては
「やらされている感」
が強いものの、こうして見ていると2人の手抜きしない頑張りようが見て取れて嬉しいところもある。
また今ではバラエティで大活躍する黒沢さんの印象しか皆さん無いと思うんだけど、そういった方にはこの大活躍は興味深いものなんじゃないかしら。丹波さんも。
豪華でオールスターでそれだけで面白いと言えば面白かったんだけど、後なんか一味足りないかなという気もするような作品かなぁ。
後DVD特典のインタビューが面白かったりして。
そのインタビューで丹波さんは言及しなかったが、本作以外にも「快刀・浪子・肉林」という香港映画に出演しているみたいなんですよね。by 「香港電影百科」(芳賀書店)
もしかしてこれは香港映画じゃなくて日本映画の輸入物なのかなぁ?
以下はせんきち様より頂いた書き込みです。
情報有難うございました。
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「快刀・浪子・肉林」について
せんきち 投稿日:2005年1月27日<木>00時54分
はじめまして。せんきちと申します。
いつも興味深く拝読いたしております。
さて、『水滸傳』レビューの中に丹波さんがもう1本「快刀・浪子・肉林」という香港映画に出演なさっているとのことでしたが、これは「忘八武士道」の中国語タイトル「肉林・浪子・快刀」のことと思われます。
参考サイト
http://www.dianying.com/b5/topics/chart/B.shtml
石井輝男監督のこんな映画まで、香港で上映されていたんですね。
びっくりいたしました。
---------
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■CAST&STAFF |
監督 |
張徹(チャン・ツェー) |
午馬(ウー・マ) |
鮑學禮 |
出演 |
丹波哲郎 |
黒沢年男 |
姜大衛(デビッド・チャン) |
谷峯(クー・フェン) |
狄龍(ティ・ロン) |
樊梅生(フォン・メイサン) |
井E |
岳華 |
陳觀泰(チェン・カンタイ) |
午馬(ウー・マ) |
何莉莉(リリー・ホー) |
王鍾 |
秦沛(ポール・チュン) |
李修賢(ダニー・リー) |
王青(ワン・チン) |
唐炎燦(トン・インチャン) |
陳全 |
金峯 |
ケ雷 |
劉丹 |
呉池欽 |
田青 |
羅威 |
〔人冬〕林 |
王光裕 |
黄培基 |
凌玲 |
南宮勳(ナン・ゴンクン) |
劉剛 |
王清河 |
胡威 |
楊澤森 |
李文泰(リー・マンチン) |
沈蕾 |
武術指導 |
唐佳(タン・チァ) |
劉家良(リュー・チャーリャン) |
劉家榮(リュー・チャーヨン) |
陳全 |
脚本 |
張徹(チャン・ツェー) |
倪匡(イ・クオン) |
助監督 |
呉字森(ジョン・ウー) |
何誌強 |
音楽 |
陳勳奇(フランキー・チェン)
クレジットは陳永U |
製作 |
邵逸夫(ランラン・ショウ) |
制作年度 |
1972 |
茅山彊屍拳
The Shadow Boxing
霊幻少林拳
■
キョンシー映画の元祖的存在である作品がこれ。
やはり中国武術に広く精通している劉家良(リュー・カーリャン)ならではといった題材で、一見純粋な武術映画ではないだけに彼にしてみれば珍しい映画のように思えるが、
茅山を題材にしているところを見るとやっぱり彼らしいなぁと立ち返る。
■流れ
さてさて。
名のある神拳使いの道士・劉家榮(リュー・チャーヨン)は名があったが飲んだくれの博打好き。
今日も仕事をほっぽらかして博打に興じていた。
弟子の汪禹(ワン・ユー)が劉家榮を連れ戻して、客死した死体をキョンシー化させて、里まで運ぶぞこの野郎。
「私も行くわ!」
男装に扮してこっそりついてきたのは町娘の黄杏秀(セシリア・ウォン)。お見合い相手と結婚するのが嫌で逃げてきたのだった。
かくして始まるキョンシー護送の旅。
イマイチ術の効かない不可思議なキョンシー、劉家輝(リュー・チャーフィ)を引き連れて騒動が始まる。
指名手配犯を追って検問を敷いていた唐偉成(ウィルソン・タン)らはそのキョンシーで追っ払ったものの、その先の着いた村で劉家榮はまた博打。
大勝に勝ったものの、ボスの徐少強(ツイ・シャオチャン)を怒らせてしまい足を負傷。
「というわけで、後は2人で頼む」
汪禹と黄杏秀はその後の仕事を押し付けられてしまうのであった。
すったもんだあって、
指名手配犯は劉家輝であることがわかり、しかもこれが濡れ衣。さらに劉家輝は検問を突破するためキョンシーに化けていた生きてる人間であることが判明。
劉家輝に濡れ衣を着せた李海生(リー・ハイサン)一味と汚職警官を劉家輝の鷹爪拳と汪禹の茅山彊屍拳で倒すのであった。
終劇
■
なんか・・・解説が簡単に終わってしまったな。
黄杏秀と汪禹でほのかなラブロマンスでもあるのかと思いきや、結局は全く無いところが実に功夫映画らしい・・・らしいが、ちょっとは出して欲しかったところ。
ここでの汪禹が使う茅山彊屍拳は、とにかく誰かにお札を読み上げてもらって(「キョンシー回転」とか「キョンシー跳躍」とか)、それを聞くとしばらくの間技が使えるといったもので、
「それなら誰でも達人になれる」
と劉家輝がインタビューで語っていたように、まぁそりゃそうだというところで現実味は無い。劉家輝が劇中で鷹爪拳を使うのは、二人とも不可思議な拳法にしてしまうと説得力に欠けるからバランスを取って・・・ということもあったのではなかろうか。
他余談をすると尹發(ワン・ファ)が大活躍!
最初の町の賭博場、検問所、次の賭博場、ラストバトル近く・・・ととにかく出まくっている彼が凄い(なにが)。幾らなんでも観客も気づくだろう。その辺、別に気づかれても良いやってところなのか。それと小候も李海生の取り巻きで出演している。
劉家良作品と思ってみれば、も一つ面白味が足りないところもあるのだが、イベント的にはキョンシーのフリをしている劉家輝が、小便が我慢できなくてこっそりしてたり、お腹が減って鶏肉向かって爆走したりとそこそこに面白い。またアクション的にはキョンシーものなため全編に渡ってではないけれどもバトルシーンはばっちりとあり勿論見ごたえ十分。特に劉家輝が鷹爪拳を使い出してからは流石に魅せてくれる。
|
■CAST&STAFF |
監督 |
劉家良(リュー・カーリャン) |
出演 |
汪禹(ワン・ユー) |
劉家輝(リュー・チャーフィ) |
黄杏秀(セシリア・ウォン) |
劉家榮(リュー・チャーヨン) |
唐偉成(ウィルソン・タン) |
李海生(リー・ハイサン) |
徐少強(ツイ・シャオチャン) |
王清河 |
歐陽莎菲 |
沈勞 |
小候 |
陳龍 |
岑潛波 |
尹發(ワン・ファ) |
武術指導 |
劉家良(リュー・カーリャン) |
唐偉成(ウィルソン・タン) |
脚本 |
倪匡(イ・クオン) |
音楽 |
陳勳奇(フランキー・チェン)
クレジットは陳永U |
製作 |
邵逸夫(ランラン・ショウ) |
制作年度 |
1979 |
流星・胡蝶・剣
Killer Clans
■
これが武侠片だ!
そういうにふさわしい作品の登場である。
本来、いや武侠片の定義・・・いや定義ではなく理想というものを個人的に、個人的にですよ申し上げるとすれば
"裏切りと謀略の血生臭い剣戦争"
だと思う。
敵か味方か?わからないまま剣を振るい、敵を倒して物語の核心に進む。
お嬢様大暴れの李安(アン・リー)の物語や、同じカップルがくっついたり離れたりする張藝謀(チャン・イーモウ)の物語もそんなに武侠片とは思わない。思わないというか江湖の世界を描いているとは思えない。どちらもそこを脱却した後の話のような気がする。
江湖とそれ以外。
この映画を見るとその違いがよくわかる。
■流れ
名のある殺し屋・宗華は今日も江湖で一仕事。
アジトに帰るとボスの陳萍から新たな指令が。
それは江湖No.1の大物、谷峰(クー・フェン)の暗殺であった。
谷峰家に素知らぬ顔して忍び込んだ宗華。
催し物でもあったのか、たくさんの侠客が訪れている。
谷峰の息子である李修賢(ダニー・リー)、王鍾に岳華に羅烈(ロー・リエ)、徐少強(ツイ・シャオチャン)もいるぞってことでなかなか興味深い。どうしたもんか。
仕事にかかろうとする宗華よりも前にコトは動き出す。
谷峰の部下を斬り殺した侠客たちを一掃するため谷峰は
李修賢と王鍾を使いに出す。しかしこれが返り討ち。
続いて実力抜群の羅烈を再召喚したが、谷峰家に辿り着くまでに敵の罠に引っ掛かって殺される。
"谷峰家で何が起きているのか!?"
自分が手を下したり、剣を振るったり出来なくて活躍の場が無い宗華。何となくその辺をお散歩。すると、何だかよくわからないがチャーミングな井莉を発見、さっそく口説きにかかる宗華。あんた、そんなことしとる場合か。
今度は谷峰一番の側近である岳華に敵が襲い掛かる。
すんでのところでこれを助けたのは谷峰本人とうまいこと良いタイミングで登場した宗華だった(谷峰に近づく絶好のチャンスやからね)。
谷峰の屋敷でこっそりと暗殺の依頼人の会う宗華。
依頼人は江湖NO.2の実力者である楊志卿であった。
なんか・・・ショーブラってほんと谷峰さんと楊志卿の爺ちゃんばっかりやな。この人ら出まくってるわ。
楊志卿に暗殺のタイミングと場所と時間を教えてもらう宗華。
次の早朝、谷峰の寝室に忍び込む宗華。
しかし楊志卿の言うとおりぐっすりすやすやzzz・・・ということはなく、早起きで元気な谷峰さん。
「おお、君は宗華くんか。おはよう!」
「ウチの娘ともよろしくやっとるそうじゃないか、わはは」
・・・・てな感じで暗殺がバレなくてほんと良かった宗華。
事態はここから思わぬ展開を見せる。
宗華と同じ組織に属している同じく殺し屋の凌雲が谷峰に飛び掛ってきたのである!
同じ依頼に2人も殺し屋をよこすとはボスの陳萍も宗華のメンツを考えてやれよ、エッチばっかしてないで(この人、エッチばっかしてます)。
だが凌雲は計画も何も立てないでいきなり飛び込んで来たので、谷峰に部下を呼ばれたあっという間に多勢に無勢、そして谷峰もそりゃあ強いからね。返り討ちに合う凌雲。彼は命を懸けてまで何を伝えようとしていたのか。
暗殺失敗、ということで宗華もこのまま仕事を続けて良いのかどうなのかようわからん感じ。
依頼人の楊志卿も露見を恐れて自害。
まぁその・・・依頼人が死んじゃったということで宗華がこれ以上仕事をする必要も無いわな。
自分の信頼していたNO.2の楊志卿に裏切られた谷峰。
一連の事件の犯人は彼だったのか・・・
江湖の裏切り騙しあいに疲れ果て、側近の生き残り岳華に全てを託して身を引く決意をする。
ヤス 「哀しい結末ですが、事件は解決しました。どうか、"そうさ やめろ"を命令してください。ボス?」
小学生の頃、話題になったなぁ
"モンスター サプライズ ユー"
山川の屋敷にある地下迷路に書いてある落書き、
「モンスターがあなたを驚かすってことやねん」
って誰が自慢げに訳してみせてたよなぁ(当時小学生)・・
と、無関係の「ポートピア連続殺人事件」の話はまぁいいとして。
ピュピュッ!
いきなり毒針を受ける谷峰!
岳華が襲ってきたのだった!
一連の事件の真犯人は楊志卿ではなく、コイツだったのだ!
近くに部下もいなくて、絶体絶命の谷峰!
しかし座ってたベッドの下に秘密の地下通路がありそこから逃げ出した!!
いやあのね、ちょこちょことこういった映画の元である武侠小説ってものも読んでみたけどね、個人的には申し訳ないがあんまり好きになれなかったかな。だってさ、この谷峰さんの逃げ方はベッドの下に地下通路が隠してあってってまぁそりゃあ具合が良いわねってところなんだけど、これはまだ良いほうで、何というか小説読んでると要は
"飛んで逃げた飛んで逃げた"
"尋常ならぬ方法で脱出した"
とかさ、そりゃ最初から人間が空を飛びまくってる物語なら納得できるけど、いきなり「空飛んで逃げました」じゃこっちの気持も醒めるのよ。で、
"じゃどんなピンチでも飛んで逃げればええやん"
ってなっちゃうから、ビジュアルで見せることが出来る映画はまだしも小説の方は読む気が失せちゃったな。
そんなこと言ってる間に逃げ出した谷峰は井戸の中の秘密の部屋に潜って毒針の毒を浄化する修行を開始。
谷峰が馬車に乗っていると思っちゃってる岳華一味は馬車を追い、崖から海に馬車が落ちたのでこれにて谷峰一巻の終わりと思ったりなんかして。
かくして谷峰を倒してNo.1になった岳華。
「いやーこれはめでたい!」
と思っていたが、そこに思わぬ客人が。
谷峰が宗華を率いて乱入してきたのだ!
今、侠客達が威信をかけて最後の戦いに臨む!
終劇
■
思えばジャッキーが出演した武侠片の「キラー・ドラゴン・流星拳」「成龍拳」「燃えよ飛龍神拳・怒りのプロジェクトカンフー」を思い返してみても、その物語は裏切りばかり、本作と同じ古龍(クー・ロン)原作なのだから当たり前なのだが、個人的にこの裏切りの連続である血生臭い闘争こそが武侠片でありきだと思う。
そこに来て本作は私自身理想の武侠片と言えよう。
殺し屋だった宗華が、そう事件を起こすはずだった主人公がいつの間にか事件に巻き込まれ、自分の本流を作れないまま呑み込まれる。その中で彼は裏切り、欲望、煩悩の汚い部分を嫌と言うほど見せ付けられることで、遂にはそんな江湖に見切りをつけ、カタギになっていく。本作の実に興味深い部分はそこにある。はっきり言ってあまり善悪の区別が無いのだ。
宗華は元々ボスの命令のまま暗殺を繰り返す殺し屋で、谷峰もまた殺し屋組織のボス、2人はこの裏切りの世界に疲れ果て身を引いていく。岳華は裏切り者だったが、宗華のボスであった陳萍にしてみれば仕事を遂行しなかった宗華こそが裏切り者だろう。
まさに敵か味方か?が最後まで続く物語、そのスリリングさは際立っていて非常に傑作である。なんか上手く表現できんかったけど、ごめん。
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■CAST&STAFF |
監督 |
楚原 |
出演 |
宗華 |
井莉 |
陳萍 |
谷峰(クー・フェン) |
岳華 |
羅烈(ロー・リエ) |
楊志卿 |
凌雲 |
徐少強(ツイ・シャオチャン) |
李修賢(ダニー・リー) |
樊梅生(フォン・メイサン) |
王鍾 |
井E |
顧冠忠 |
王清河 |
徐蝦 |
王侠 |
黄培基 |
・森 |
袁祥仁(ユアン・チョンヤン) |
馮克安(フォン・ハックオン) |
鄭康業 |
任世官(ニン・シークァン) |
杜偉和 |
袁信義(ユアン・シュンイー) |
王撼塵 |
元奎(ユン・ケイ) |
夏萍 |
田青 |
沈勞 |
山怪 |
李壽祺 |
李超 |
錢月笙(チェン・ユーサン) |
林偉圖 |
米蘭 |
華倫 |
江洋 |
元彪(ユン・ピョウ) |
艾飛 |
黄梅 |
陳國權 |
周潤堅 |
徐發 |
武術指導 |
唐佳(タン・チァ) |
袁祥仁(ユアン・チョンヤン) |
脚本 |
倪匡(イ・クオン) |
原作 |
古龍(クー・ロン) |
音楽 |
陳勳奇(フランキー・チェン)
クレジットは陳永U |
製作 |
邵仁枚(ランミー・ショウ) |
制作年度 |
1976 |
十二金牌
The Twelve Gold Medallions
■
毎度よくこのHPに登場する参考文献「香港電影百科」(芳賀書店)によりますとですな、1970年の年間配収No.1はジミーさんの「龍虎闘(吼えろ!ドラゴン
起て!ジャガー)」で、NO.2がいきなりこの本作になるわけです。No.4.5.6は張徹(チャン・ツェー)作品の「十三太保(英雄十三傑)」「小殺星」「報仇」だったりして、この辺の並み居る傑作を押しのけてNo.2なわけです。
大ヒットの要因はどこにあったのか?
今回、流れに関しては詳しくはよくわからない部分もあったので詳しくは省きます。わかんないんだもん。最近、自分のアホさ加減に落ち込み気味。
大凡の流れを言うと、
■大凡の流れ
金牌を持った十二人の刺客(というか悪い奴)、これを倒すために岳華が大奮闘。しかし、自分の師匠が金牌持ちの1人とわかり師匠と別離。
師匠の娘・秦萍とはアツアツだったのですが、それもここで終わり。
フラレた怒りに燃える秦萍は家を脱出して、
「自分こそが十二金牌全てを打ち砕いてやる!」
と行動を開始。
師匠が敵であること、元恋人・秦萍が和解をしてくれないことや、それに絡む門派の裏切り葛藤の中で戦い続ける岳華。遂には決戦の時を迎えるが・・・・
終劇
■
ロクに話も理解していない俺でさえも、そのしったんばったんな展開はなかなか面白く、話も武侠片たるものでスリルがあって楽しい。それにつけて、この作品の主たる魅力はその独特のアクションにある。
冒頭、金牌を持った剣客が馬に乗って疾走。
これが門をくぐった瞬間に剣客は消え、馬だけになる。
門の上で待ち伏せていた岳華が縄を首にかけて引き揚げたからであるが、もうこの最初から単純に斬り捨てていくわけではない工夫が感じられる。
その後も、常に戦いはシチュエーションを変え続け、工夫は尽きることなく、さすがにこの時代の技術なので今ではコミカルに見えたりするところもあるがその工夫を凝らしたアクションはさすが、単純に先に挙げた「報仇」などよりずっと見ごたえがある(アクション部分は)。
武術指導は徐二牛と洪金寶(サモ・ハン・キンポー)。
サモハンが昔の名前の朱元龍とはいえ、ショーブラの映画でこんなデカデカとクレジットされていたとは驚き、さらに「侠女」('71)に出ている時のあの幼きサモハンの顔を思い出すとなおさら「この若さでよくやったな」と思う。
一方の徐二牛はこの1年後にあまりに面白かったので我がHPに特集ページを組んでしまった「聾唖劍」('71)の武術指導を手掛けており、その最後までチャンチャンバラバラチャンバラバラが続くだけではなく、シチュエーションによってスリルを演出し、戦う武器や戦法で色んな工夫を凝らすところは同じである。個人的な思いにすぎないがこの当時の武侠片の武術指導者としては唐佳、劉家良(リュー・チャーリャン)を凌ぐ存在だと思う。
本編の魅力をアクションという角度からしかハッキリ語れないのは非常に残念なところであるが、英語もバッチリの人が観れば自ずとその評価も高まるのではなかろうか(この辺の武侠片好き限定の話ですが)。
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■CAST&STAFF |
監督・脚本 |
程剛 |
出演 |
岳華 |
秦萍 |
黄宗迅 |
焦〔女交〕 |
王侠 |
井E |
李昆(リー・クン) |
楊志卿 |
谷峰(クー・フェン) |
顧冠忠 |
蘆葦 |
樊梅生(フォン・メイサン) |
洪流 |
王光裕 |
高鳴 |
陳文 |
沈勞 |
馬影 |
唐天希 |
陳國 |
武術指導 |
徐二牛 |
洪金寶(サモ・ハン・キンポー)
クレジット名は朱元龍 |
脚本 |
鮑學禮 他 |
原作 |
倪匡(イ・クオン) |
陳衣 |
音楽 |
王福齢(ワン・フーリン) |
助監督 |
高寶樹(カオ・パオシュ) |
製作 |
邵逸夫(ランラン・ショウ) |
制作年度 |
1970 |
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