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五郎八卦棍
The Eight Diagram Pole Fighter
少林寺秘棍房


さて、結果的に傅聲(アレクサンダー・フーシェン)の公開遺作となってしまった作品である。
ただ誤解が生じやすいのだが、本作を途中降板したのは撮影事故によるもので、その後の復帰を待って作品を完成させたいところだったがスケジュールが合わずに月日が経ち(途中には監督作の「大侠蘇乞兒」や「御猫三戲錦毛鼠」等もある)、交通事故で他界してしまったために、その後彼無しで完成させたから遺作なのである。決して、撮影途中で亡くなったからではない。

そしてまずはsigeoさんから頂いた投稿を掲載。
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Res:sigeo
題名:追加・・ 投稿日 : 2005年8月4日<木>14時54分 お次は五朗八卦棍の解説です。 暇に任せて、いろいろ調べたり 師父の話を思い出したりした話を書いてみます。・・・ (DVDのカンドーも冷めぬ内に)
要約すると、中国で水滸伝の悪漢壱百八傑が暴れまわってた、北宋の時代(日本では平安末期) 時の将軍、”楊継業”と言う武術家がいて、武芸十八搬すべてに通じていたそうです。その中でも五男の”楊五朗”は棍術そして槍術に長け、戦争において四方八方敵に取り囲まれても、八卦の運行に則り円を描き、棍を振り回すと、群がる敵があっという間に打ち倒されたため 楊五朗の使う技法を ”楊家五朗八卦棍六十四種技法”と称され有名になりました。(まず伝説でしようね)
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そして本作の流れといたしましては・・・

■流れ


叛徒である楊一家は、朝廷内の悪者同士(王龍威、朱鐵和、克明ら)に疎まれる存在。そこで、彼ら楊一家を根絶やしにする策が練られる。そのことを楊一家の婆様である李麗麗(リリー・リー)は見抜いていた。

戦いに赴いた楊一家、父・楊継業が率いる珠玉の息子7兄弟部隊、
楊一郎 汪禹(ワン・ユー)
楊二郎 劉家榮(リュー・チャーヨン)
楊三郎 麥コ羅
楊四郎 小候
楊五郎 劉家輝(リュー・チャーフィ)
楊六郎 傅聲(アレクサンダー・フーシェン)
楊七郎 張展鵬
が出撃するが、王龍威らが用いる人海戦術と先がクネクネ曲がって絡みつく妙な棒を武器に対抗し、強かった7兄弟は1人1人脱落。

いきなり7兄弟vs多勢に無勢な大バトルが展開する豪快なオープニングである。

その結果、楊五郎と楊六郎以外は全て死に絶え、楊五郎は行方不明に。

傅聲扮する楊六郎は命からがら屋敷に逃げ帰るが、目の前で起きた惨劇に耐えられず発狂状態。
李麗麗や妹の惠英紅(ベティ・ウェイ)、楊菁菁らの前で寸劇のように父親と兄弟の死を演じてみせる。
このシーンは肉親を殺された絶望と怒りを彼1人の演技で表現する見事な場面で、傅聲の熱演が非常に素晴らしい。この後も彼は何度か登場するが、降板してしまったためいつの間にか妹役の惠英紅にその役割が回ってくることになる。惠英紅迷の俺でもここは流石に
「彼の気合の入った芝居をもっと見たかった」
と痛切に思った。

ちょい出演
その頃、行方不明になった劉家輝扮する楊五郎は通りかがりの狩人(?)である劉家良(リュー・チャーリャン)に助けてもらって追ってから逃げることに成功する。

こっちも絶望に打ちひしがれる楊五郎。
追ってから身を隠すために出家することを決意。


今回は珍しく高僧の役である高飛(コー・フェイ)。
彼のところに出家するが・・・まぁ入れてもらえないわな。
強制出家!!
なので自分で頭ポチ作って強引に出家してしまうの図。

寺特製の木馬!
これで棒術の修行だ!

一方、
楊五郎が出家していると聞きつけた楊家では朝廷の網の目をかいくぐって惠英紅を派遣。

彼女の素晴らしいアクションはバッチリ見れます。

同士である客棧の元コと手を結びますが、楊五郎は見つからず、逆にその客棧で朝廷の追ってに捕まってしまいます。

大決戦!!
妹の奪還と仇討ちに最後の戦いに臨んだ楊五郎!
またも人海戦術、さらに王龍威らは強いしでと苦戦を強いられますが・・・!!

終劇




今実は手持ちの色々と録画したビデオやら何やらを整理している最中で、その間に
「あったあった!」
って感じで昔の映像(香港映画に限らず)を楽しんでいるところなのだが、
「画面汚ねぇ」
って感じで、最近のきれいなDVD画像に見慣れてしまうとだな、
"人間の欲は本当に尽きないものですね"
欲の塊ですよ、ほんとに。
というわけで、昔の映像が汚く感じてしまうのだ。

それでだな、
本作はオープニングにも滅茶苦茶気合が入っており、熱演の傅聲が降板したのは非常に残念なものの、その後のファイトも実にスリリング!・・・しかし、
"vs朝廷の図式に飽きてしまった"
そういう自分がいたことも確か。
今さら対朝廷の図式を扱ったことが強く凡庸に感じてしまったんだな。
そんなこと言ったら他の映画だって何だって対朝廷モノばかりじゃないか!って頭ではわかってるけど心では凡庸に感じてしまってるんだから仕方が無い。その辺でお話の新鮮味に欠けているなという気がする。他に相手にする敵はいなかったものか。でも、話をダイナミックにするとなれば国を相手にするしかないのか。

とはいっても、
お墨付きのアクションはいつもの通りいつもの如く素晴らしい。
特にラストの工夫を凝らした大バトルは凄まじい。

■CAST&STAFF
監督 劉家良(リュー・チャーリャン)
出演 劉家輝(リュー・チャーフィ)
惠英紅(ベティ・ウェイ)
傅聲(アレクサンダー・フーシェン)
李麗麗(リリー・リー)
高飛(コー・フェイ)
汪禹(ワン・ユー)
劉家榮(リュー・チャーヨン)
麥コ羅
小候
張展鵬
王龍威
朱鐵和
克明
楊菁菁
劉家良(リュー・チャーリャン)
元コ
武術指導 劉家良(リュー・チャーリャン)
小候
京柱
脚本 劉家良(リュー・チャーリャン)
倪匡(イ・クオン)
音楽 成錦榮
蘇板厚
製作 邵逸夫(ランラン・ショウ)
方逸華(モナ・フォン)
制作年度 1982


洪熙官
Executioners From Shaolin
少林虎鶴拳


功夫を見せるための映画ではなく、
功夫がそこにあるから見せる映画であるのが素晴らしい。

・・・先に結論言っちゃってどうする。
とにかく初期の劉家良(リュー・チャーリャン)作品はスケールがデカい。

ワンス・アポン・ア・タイム英雄少林拳(陸阿采與黄飛鴻)」・・・この邦題はかなりどうか?と思うが、発売されないよりはずっとマシなのと、じゃもっとマシな&売れるタイトル付けてみろって言われたら難しいことなのでしょうがない・・・それに「少林寺三十六房」、そして本作。
雰囲気作りというのは実に難しいことだと思う。この3作品に言えることは
・同じとこ使ってる
・その場所はショーブラの他映画でもお馴染み
・んだけどやたらスケールがデカく感じる
ってことで、同じロケ場所やオープンセットを使えば同じにスケールになるのかと言ったら勿論そんなことは全然無く、ルーツに乗っ取った忠実な演出を心がけてこそ(これこそセンスの問題だが)やっと醸し出せるシロモノなのだ。
そしてやっぱり本作も

少林寺列伝」「嵐を呼ぶドラゴン」とかを観てから鑑賞する方がより面白い。勿論、「少林寺三十六房」も。


流れ

少林寺がお馴染みの焼き討ち。

弟子達はチリジリになり、最後の砦であった李海生(リー・ハイサン)師匠も羅烈(ロー・リエ)扮する白眉道士と決闘で敗れる。実にかっちょいいオープニングだ。ちなみに劉家良作品的に言えば、本作でこの少林寺から逃げ出す主人公が三徳和尚にスカウトされてやって来た洪熙官であるならば、李海生はあのときの戒律院院長だったかもって感じかぶるのが面白い。

その「少林寺三十六房」で呉杭生が扮してた童千斤は今回が劉家輝(リュー・チャーフィ)が、

仲間を逃がすために朝廷の江島、張午郎(チェン・ウーロン)、馮克安(フォン・ハックオン)らと戦い、壮絶な死を遂げます。
陳觀泰(チェン・カンタイ)扮する主人公の洪熙官、鄭康業らは何とか逃げおおせる。
このシーンでチラッと孟海(マン・ホイ)、黄哈(ウォン・ハー)を確認。

逃げ出した洪熙官らは身を隠すため、船で移動する劇団を結成。各地を海原を越えて旅する。
行き着いた町で出会ったのは、こちらも鶴拳を披露して生計を立てる

沈勞、李麗麗(リリー・リー)の親子。

「商売仇が来たわ!」
ということで、さっそくケンカを売る李麗麗。気が早いことで。
運命の出会い
軽くいなすつもりだった洪熙官だったが、李麗麗の鶴拳は強くそうもいかない感じだがそれよりも一目惚れしてたりなんかして、お互いに。これこそあれですな、運命のキューピッドですな、あれって片方に一方的に矢が刺さってるだけじゃなダメなんだよな、向こうにも刺さってないと。だからつまり赤い糸か。


あっと言う間に恋に落ちてスピード結婚なのでした。
この辺の展開、冒頭のシリアスさから一息着いてます。
さぁ結婚!
結婚といえば披露宴!
大人になって初めて痛感したが、貧乏人にとって祝い金を差し上げるってのはなかなか痛いねぇ・・・・じゃなくて!

結婚といえば初夜!
いきなりじゃー!
いきなり下半身そのものズバリから攻めようとする洪熙官。もうせっかちなんだから。
しかしここから地獄の新婚初夜が待ち受けていようとは!
「股を開けたらあなたの勝ち」
と挑発した新婦の李麗麗、鶴拳で鍛えられた両足はいかに洪熙官が達人であろうとも簡単には開けません。
「ぬぬー!開けぬー!これではエッチできぬー!」
なんと初日は結局、股を開くことが出来ず、甲板で不貞寝する新郎なのでありました(いや契りなさいよ)。

「つーか、仇討ち忘れてた!!」
そうそう、仇討ちは朝廷が下した船劇団総当りで思い出された(嘘嘘)。
劇団を解散し、山奥に引っ込んだ夫婦は子供を産むと、白眉道士を倒す修行を積む。
出番意外と少ない
1度目はコテンパンにやられる洪熙官。

舎弟の鄭康業を犠牲にして何とか逃げ延びる。
今回、鄭康業が非常に良い。実はなかなか芸歴も長い彼だが「ドラゴンロード」以降ぐらいから全然見ないな。

その鄭康業が白眉道士の弱点のヒントを教えてくれる。

それを参考に再度猛特訓!!
我が子も大きくなり、父と組手をするほどに。
そして我妻、李麗麗は
「あなたの虎拳だけじゃ勝てません」
というわけで、旦那の力だけでは勝てないことを悟っていたが、止めて引き下がる人じゃない。

それを聞いた息子の汪禹(ワン・ユー)が止めようとするが、親父はそれを聞かずに最後の戦いに出向く・・・

終劇




ああなんちゅうか、言葉で説明するのは難しいなぁ。
話だけで言えば親子2代に渡る仇討ち劇なんだけど、その物語は
「それが簡単なので、そう作りました」
なんて安っぽいものとは全然違うんだよなぁ。

一番わかりやすいのはヒロインの李麗麗で、冒頭は可憐な女の子で登場し、結婚してやがてしっとりした美人妻へ、そして子供も大きくなって貫禄あるお母様へと彼女1人取っても物語の中で成長を見せており、その度に演技は微妙に変わる。小娘からお母様まで演じた李麗麗の代表作の1つとも言えるし、その演技はとても良いものだ。
という前例のように、物語は大きくうねり、事の不自然さを感じさせない。壮絶な李海生と劉家輝の死に様から始まったこの仇討ち物語はフィルムの中で時を重ねるうちに変動し、もはや仇討ちそのものが大した意味を成さなくなっている(朝廷は白眉道士と別物)ことに洪熙官は気づきながらも無意味な戦いに己のプライドを懸けて闘うしかない歳を重ねた切なさが滲み出ている。

その中で行われる功夫シーンはまさに必然として行われるもので、例えば以前のジャッキー映画が
「これこれこういうアクションをするために展開を考えた」
といったアクション優先の物語であったのに対し、既に劉家良の初期作品では
「これこれこういう物語ではこういうアクションが必要」
とまず最初に物語ありきでアクションが構成されていたことがよくわかる。
ジャッキーがいつどの段階で
「物語優先で画作りを考えるようになった」
と言ったか忘れてしまったが、たぶん相当最近のことで、遥か約30年前からそういった映画作りをしていた劉家良にしてみれば恐らく鼻でせせら笑うようなことであろう。本作はそれだけの価値ある映画である。
その功夫シーンの出来栄えについては劉家良なんだから言うことない出来栄えだわね。

日本発売された暁には、功夫迷の皆様に是非ご覧になってほしい傑作である。
劉家良作品の個人的なベスト3を挙げるとですね、


1.「少林寺三十六房」(やっぱそうなんだけど)
2.「少林虎鶴拳」
3.「レディクンフー激闘拳
ってところかな。

■CAST&STAFF
監督・武術指導 劉家良(リュー・チャーリャン)
出演 陳觀泰(チェン・カンタイ)
李麗麗(リリー・リー)
羅烈(ロー・リエ)
汪禹(ワン・ユー)
鄭康業
劉家輝(リュー・チャーフィ)
江島
田青
沈勞
李海生(リー・ハイサン)
張午郎(チェン・ウーロン)
唐偉成(ウィルソン・タン)
馮克安(フォン・ハックオン)
林正英(ラム・チェンイン)
黄哈(ウォン・ハー)
孟海(マン・ホイ)
脚本 倪匡(イ・クオン)
音楽 陳勳奇(フランキー・チェン)
クレジットは陳永U
製作 邵仁枚(ランミー・ショウ)
制作年度 1976


Ong Bak
Ong Bak Muay Thai Warrior
マッハ!!!!!!!


てっきりレビューを書いたものと思ってました。
いやこれについては何度か書いたはずなんですが、違うサイトかなんかだっけな?とにかく捜してもレビューに無いもんな。

改めていきましょか。
・・・とはいっても、あれですな。タイムリーじゃないですな。
タイムリーじゃないということはあれですな、
・ストーリー単純
・リアルアクション!
・すげー!!
ですなぁ。
とまぁ今さらなことは箇条書きで終わっておくとして、自分の感想を言ってみようかしら。

流れ

タイの田舎。
日照りが続く村ではさらに密輸組織によって守り神である仏像の首が強奪される。
ムエタイの奥義を授かっていた村の若者・トニー・ジャーは仏像の首を取り戻すために町に出る。

同郷のペットターイ・ウォンカムラオを頼ったトニーであったが、こいつがどうしようもないおっさんチンピラで、強いトニーを利用してストリートファイトで儲けることしか考えてない。
すったもんだで結局ストリートファイトに参加するトニーだが・・・

終劇




あのね、「メダリオン」よりよっぽど面白いっす。
今までのタイ映画のこと考えたら、段違いに良く出来てるし、映画が盛り上がってくるというのはその国自体が発展していることの証明でもあるんだよね。日本然り、香港然り。ということはこれから本作のようなムエタイアクション映画がバシバシ出てきて楽しませてくれるってわけだから、タイの映画産業を応援したいところ。でも・・・

でも、
作品のこの稚拙さはどうだろう・・・・でもなくて!
俺個人としては本作に残る稚拙さなんかどうでもいいの、繁華街にトニーがアクションするために物が置いてあるとか、単に密輸組織のボスなのに
「私こそが神だ」
とかわけわかんないこと言ってる人もいたけど、別にいいのよそんなこた今は。
これからゆっくりタイアクションを熟成させていけば良いんだから。それよりもね

それよりもね気になることは2つ、
「おーっ!すげーっ!うわーっ!いやーっ!」
と口に出さざるを得なかった素晴らしいアクションの今後がまずは大いに気になるところですねー
膝、膝、膝、膝、膝、膝、膝、膝、膝、膝、膝、!!
肘、肘、肘、肘、肘、肘、肘、肘、肘、肘、肘、!!
跳、跳、跳、跳、跳、跳、跳、跳、跳、跳、跳、!!
幾らなんでもこれだけずっとこの先押していくわけにはいかないでしょう。
これからどのようにしてバリエーションを増やしていくのかいけるのか、毎回毎回ジャッキー映画のリスペクトだけでもダメっすよ。これから少しずつオリジナリティの割合を増やしていかなきゃ。そうじゃないといつまで経っても

「プロジェクトA」は超えられないすよ。超えられるとしたら、それはやはりタイのアクション映画がもっと他の良いとこ吸収しつつも、タイ独自のムエタイで彩ってオリジナリティ溢れる映画を作れることが出来るのかってところですね。実に難しい話だわ。
いやあの、他にタイにトニーのようなポテンシャル高い人物が数多くいるのかいないのか知りませんが、いなかったらそりゃ根本からきついんですよ。だってね、

だってね、
トニー・ジャーはさらにアクションに磨きをかけるためにも、そして彼をもっと輝かせるためにもね、
香港映画界に飛び込んだ方が良いと思うの
それが一番早いよ。
少なくとも黒社会の色に染められないよう祈りつつ、ジャッキーかサモハンか劉家良か袁ファミリーかその辺に飛び込んで欲しいね。見たいじゃないすか、
トニーvsジャッキー
トニーvsドニー
トニーvsジェット・リー
ウォンカムラオvsビートたけし?
簡単なことじゃないけど、さらに世界を認めさせる一流アクションスターになる可能性はなきにしもあらずだと思う。問題は、

問題は
彼がアクターとしてどこまでやれるのか
彼個人の問題は間違いないくここにある。
本作の彼はセリフも少ないし、喜怒哀楽を表現する演技も実に少ない、泣きのシーンは彼ではなくぷ、ぷ、プマワーリー・ヨートガモンちゃんがやってるもの。
本作だけでは彼の演技面の評価は如何ともしがたい。
ここがどこまで出来るのかですよ。
んでそのトニーが香港にいっちゃって、タイに彼に代わる人間がいなければタイアクションは一気にきついよね。

繁華街をトニーが逃げながら戦うシーン、
「プロジェクトA」の自転車シーンのBGMを口ずさみながら見るとごっつ面白いっすよ!知ってる方は是非に!
これさぁ、全部ジャッキーの

「ポリス・ストーリー」とかのサントラに差し替えてみたらもっと面白いだろうなぁ・・・
NG集も勿論ね!

後もう1つ、タイ映画に欠かせない面白さがあるよ。
下のキャストスタッフ表の名前を声に出して言ってみよう。
絶対楽しくなってきます。

■CAST&STAFF
原案・監督 プラッチャヤー・ピンゲーオ
出演 トニー・ジャー
ペットターイ・ウォンカムラオ
プマワーリー・ヨートガモン
スチャオ・ポンウィライ
チェータウット・ワチャラクン
ルンラウィー・バリジンダークン
ワンナキット・シリプット
武術指導 パンナー・リットグライ
脚本 スパチャイ・シティアンポーンパン
製作 プラッチャヤー・ピンゲーオ
スカンヤー・ウォンサターバット
製作総指揮 ソムサック・デーチャラタナプラスート
制作年度 2003


新獨臂刀
The New One Armed Swordsman
新・片腕必殺剣


張徹(チャン・ツェー)監督に「あずみ3」を撮ってもらえ!
・・・ってそりゃ無理か、女嫌いだし、他界されてらっしゃるし。
じゃあ、劉家良(リュー・チャーリャン)師父に!
おお!これは良いではないか!お稚児趣味の先生と上戸彩なら師父もめちゃくちゃ頑張って教えるでしょう。
って、日本のタレントは片手間にしか映画やれないからそんな時間は無い?全くだ。

さて、とうとう始まったショーブラ日本発売第二弾。
いやぁ私の場合、かなりの作品が重複してしまいますがやっぱり買わねばならんなぁ、その先鋒として発売されたのが片腕シリーズ。
本作の存在はそうだなぁ・・・かれこれ20年前ぐらいから知ってたということになりますか。たぶん最初に知った書籍としては「激突!ドラゴン武術」(倉田保昭著)かな。狄龍(ティ・ロン)の当時の写真が載っていて、私は「男たちの挽歌」が登場する前からこの狄龍という男に巡り合える事を楽しみにしていたのです。

ええ、その20年前に知った情報ですからもう幾度となく私の頭の中では駆け巡ったことなのですが、一応本作の誕生までをもう一度改めて書いておきますか。
簡単に言うと、

ショーブラのジミーさん「片腕必殺剣」大ヒット!
続編もヒット!

ジミーさんゴールデンハーベストへ。

そこでの「新座頭市/破れ!唐人剣」で「片腕必殺剣」のヒーローが復活!

ふざけんな!勝手に復活すんな!
「片腕必殺剣」シリーズはショーブラのもんじゃ!
ってことで、
新人スターの姜大衛(デビッド・チャン)、狄龍(ティ・ロン)を使って本作「新・片腕必殺剣」が作られる。

というわけですね。
さてさて。


流れ

その凄まじき強さから、一躍江湖に名を轟かせることになった二刀流の若者・姜大衛(デビッド・チャン)。
これを大侠の谷峰(クー・フェン)は苦々しく思っていた。

というわけで、いきなり冒頭シーンが既に罠。
姜大衛は襲われて死体の山となった護送隊を発見、出くわした敵を斬り捨てる。
と、そこに護送隊長の鄭雷が。
「お前が殺ったのか!?こらぁ」
「そんなわけないだろ!」
と疑いをかけられる姜大衛。鄭雷は既に谷峰の部下に姜大衛が悪い奴のように吹き込まれているのであった。
と、そこへ御大・谷峰登場。

許冠文(マイケル・ホイ)作品

「ホンコン・フライド・ムービー」での谷峰さんの活躍を未見の人は是非楽しみにしてほしいところ。本作のような武侠な活躍とのギャップが面白いですよ。

護送隊を襲った真犯人は谷峰の部下達。
全てが自分の仕掛けた巧妙な罠でありながら紳士的な態度を崩さない谷峰。実際の演技も上手いのでいかにも姜大衛の方が"やんちゃすぎた若者"に見えてしまうところが凄いわ。
「私が負けたら腕を落として江湖を去ろう」
そういう谷峰、言われてしまっては姜大衛も引き下がれない。姜大衛は無実にも関わらずだ。

谷峰vs姜大衛!

しかし、谷峰は二刀流を封じる三節根の技を十八番としており、最初からのこの勝負、姜大衛の負け試合だったのである。
敗北する姜大衛。
江湖では面子こそが全て。
自ら腕を斬り落とした姜大衛、静かに江湖を去っていくのであった。

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姜大衛は沈勞のおじちゃんが営む大衆食堂の給仕。
片腕なので侠客から馬鹿にされてはいたが、片腕でも仕事はバリバリこなして沈勞からの信用を得ていたし、鍛冶屋の娘である李菁(リー・チン)から慕われてもいた。
結構、幸せじゃん(そでもないのか)。

その李菁が悪い侠客ばかり集まっている虎威山荘の連中に絡まれているのを姜大衛が助けようとするが、武芸の腕は披露できなくて困ったりなんかして。
これに助け舟を出したのは彗星の如く現れたこちらも二刀流の達人・狄龍(ティ・ロン)であった。
狄龍は姜大衛が並々ならぬ武芸者であることを見抜き、彼に興味を持つ。
さらわれそうになった李菁を狄龍が助けたことで、姜大衛と狄龍は固い友情を交わす。李菁を交えて三角関係に陥ったりしないところがまた張徹的。

この悪い組織・虎威山荘を指揮しているのは陳星(チン・セイ)であったが、その上にいたのはやはりあの谷峰であった。
「またどこかの二刀流がしゃしゃり出てきたか!」
狄龍の活躍をやはり苦々しく思う谷峰。
狄龍へ虎威山荘への招待状を出す。

罠ではないのかといぶかしむ姜大衛。
おまけに二刀流を破る術があることを知っていた姜大衛は狄龍にそのことを伝えようとしたが狄龍は谷峰のことを悪だとは気づいてないためにロクに聞き入れずにそのまま虎威山荘へ。

濡れ衣。
谷峰は凄腕の武芸者の上に実に老獪な策士である。
招待した他の武芸者の前で狄龍は虎威山荘の無為な若者を襲った暴れ者とされてしまうのであった。本当は誘拐しようとした悪い奴を斬ったというに。
そのまま始まる谷峰vs狄龍・・・やはり姜大衛の助言は聞いておくべきだった。
その三節根にやられてしまう狄龍、後は陳星率いる虎威山荘の連中にやられて功夫映画史上最も衝撃的とも言える死に様をさらす。

狄龍の帰りが遅いことに心配する姜大衛。
ここの大衆食堂に来た虎威山荘の連中が実に馬鹿。
あろうことか谷峰の大芝居であったことを酒の肴に暴露。
朋友・狄龍も殺されてしまったことも聴いた姜大衛は怒り爆発!
護衛用にと李菁がくれた剣を手にすると復讐一路!!


劇終



劇終じゃなくてこれからなんだがこの映画、
痛快!!
この一言に尽きる。
ここからのクライマックス、姜大衛が怒りまくった心の炎に一点の迷いも無く、
武侠片名シーンとして長く語られるべきである長橋での100人斬りから谷峰とのハイパーバトルまで一気に魅せきり、カタルシスというものを十分に堪能させてくれる。合間に余計なドラマが挟まっていないところがミソで、
「ふざけんな!こらぁ!!」
の怒りのまま敵を殺しまくり、核心へ迫る。
眠れる獅子が起きるというのはこういうことだろう。

それにしても本作への自分の第一印象は
「やたら殺陣のキレが良いなぁ」
ってところで、下手な殺陣師だとチャンチャンバラバラの予定調和になりがちなソードバトルが本作では全く飽きさせないものになっており、まずその点が本作が成功したところの要因として大きいんだろうなと思う。この映画の殺陣はキレキレだ。とても良い。

ストーリー的には

「上海ドラゴン英雄拳」にも通ずるとことがあると思う。血気盛んな若者が英雄になるが、老獪な悪者によって死を辿る・・・うむ。

さらに面白いのは大挙して現れる豪華ザコ軍団の顔ぶれだ。
冒頭から袁祥仁(ユアン・チョンヤン)、任世官(ニン・シークァン)、唐炎燦(トン・インチャン)、袁信義(ユアン・シュンイー)、姜大衛に斬られて目立ってる劉家榮(リュー・チャーヨン)や徐蝦、岑潛波、100人斬りで斬られる1人で目立ってる馮克安(フォン・ハックオン)←どこ行っても彼が登場しますね、ほんとに。
鄭康業が彼らに比べて割かし大きな役を貰えている立場なのが今観ると興味深い。

ともかく傑作!
である。
狄龍の死に様だけは
「そこまでせんでもよかろうに」
というぐらいに滅茶苦茶強烈だが、これも香港パワーの勢いか。
痛快時代劇という言葉はこの映画の為にあるといっても過言でない作品だ。
もし私は小学生の時から今までずっと香港映画好きを続けていなかったら観なかったかもしんないので、その辺は好きで本当によかったと思うのであった。

■CAST&STAFF
監督 張徹(チャン・ツェー)
出演 姜大衛(デビッド・チャン)
狄龍(ティ・ロン)
谷峰(クー・フェン)
李菁(リー・チン)
陳星(チン・セイ)
沈勞
王清河
鄭雷
盧慧
王鍾
鄭康業
岑潛波
黄培基
唐炎燦(トン・インチャン)
袁信義(ユアン・シュンイー)
王光裕
任世官(ニン・シークァン)
徐蝦
黄哈(ウォン・ハー)
袁祥仁(ユアン・チョンヤン)
李超
王青(ワン・チン)
黄梅
馮克安(フォン・ハックオン)
劉剛
劉家榮(リュー・チャーヨン)
武術指導 劉家良(リュー・チャーリャン)
唐佳
脚本 倪匡(イ・クオン)
音楽 陳勳奇(フランキー・チェン)
クレジットは陳永U
製作 邵逸夫(ランラン・ショウ)
制作年度 1971


識英雄重英雄/頭子逃獄
Two On The Road/Fearless Dragons
必殺のダブルドラゴン


これは前から狙ってた作品。
もう何というかとにかく
"功夫映画依存症"
に最適な一本である。ウリがはっきり。
功夫映画たって、中国人だからって、そないに簡単にハイレベルな功夫シーンが作れるわけじゃない。少なくとも監督の演出力と武術指導の力と役者のポテンシャル、この3つが必要である。
やはり際立っていたのは劉家班、成家班、洪家班、そして袁家班の4大ファミリーであったと思うが、こうして色々な作品を見てみると今では失われてしまった功夫映画のイロハが当時は色んなところにあった、色んなとこで頑張っていたのだと認識することが出来る。

流れ(推測入る)

王龍威(ワン・ロンウェイ)のところから現金を護送。
恐らく公金なのではないかと思われ。
これをそれとなく見ていた高飛(コー・フェイ)は車夫の梁家仁(リャン・カーリャン)の車に乗っかって後をつける。

護送中の守備隊を襲った山族たち。
その争いの隙に乗じて積荷を奪ったのは高飛&梁家仁だった。
2人は軽く対決を披露したが積荷を確かめてみると中は空っぽ。急いで2人は野原に散る。
積荷が無くなったと聞いて落胆する王龍威。

高飛は指名手配に。
梁家仁は宋錦成を使って高飛をおびき出すことに成功。まんまと罠にはめて捕まえたが、警察を呼んでくる間に逃げられてしまう。

後はすったもんだで闘っては協力を繰り返していたが遂には捕まってしまう2人。
当然脱獄敢行。

番人として(?)「007」のジョーズ(リチャード・キール)みたいな攻撃をする巨人、「ミスター・ブー」に出てた巨人と対決、これに何とか勝って牢を抜け出す。

未だ積荷の見つからない王龍威側であったが、これには裏があった。
最初から王龍威は金など運んでいなかったのだ。
護送を託した守備隊に積荷紛失の汚名を着せて、自分の蔵にお金をこっそり溜め込もうというわけだ(たぶん)。
これに気づいて襲い掛かる守備隊たちであったが、逆に王龍威の強力な功夫技に返り討ちにあってしまう。

一方で脱獄して王龍威のところに向う高飛&梁家仁。
真相に気づいてラストバトルの

高飛&梁家仁 vs 王龍威!

息詰まる死闘の末に王龍威を打ち倒し、現金を遂に手にした高飛&梁家仁。
お金は貧しい者たちみんなで分けて2人は町の英雄となるのでした。

終劇




お話は単純なコメディ功夫で、特にその展開がそんなに面白いわけでもなかったのだが、とにかくそのハイレベルの功夫シーンが全てをカバー。まぁ、功夫が好きじゃない人には全く薦められないが、功夫好きなら迷わずバトルを拝見しておけっという気分である。

特にはやはりそのラストバトルの凄さで、

強力な腕前で迫る高飛&梁家仁のコンビに一歩も怯まず1人で闘う王龍威がまたまた凄い(文字で表すのは非常に難しいのだが)。
梁家仁は必殺の"龍拳"を繰り出すのだが、

これぞまさに龍拳!という感じで、まぁジャッキー

「龍拳」(あれは五獣拳の龍とはまた違うといった話ですが)よりもずっとシンプルに龍を表現した戦闘スタイルが実にかっちょいい。虎とか鶴とか蛇は他の映画でもよく見るけれど、龍ってのはなかなか見ないもんね。

ともかく、ウリはその功夫シーン一点!
という映画なので好きな人はピンポイントです。

武術指導は「魔界天書」でも素晴らしい殺陣の構築と自ら凄いアクションシーンを演じた宋錦成と
左は陳少龍?(「必殺鉄指拳」より)
必殺鉄指拳」でジャッキーのそっくりさんを演ったといわれる陳少龍が担当。

■CAST&STAFF
監督 李超
出演 梁家仁(リャン・カーリャン)
高飛(コー・フェイ)
王龍威(ワン・ロンウェイ)
江島
梁家〔ネ豊〕
蕭錦
宋錦成
陳流
劉瑞意
武術指導 宋錦成
陳少龍
製作 呉協建
制作年度 1980


武林志
Pride's Deadly Fury
武林志/必殺カンフー八方拳


ビデオ整理で出てきた映画。
で見直してみたら当時より面白く感じたのでここに記載。

本作は流れだけを文字で書いちゃうと
「何だいつもの展開じゃん」
と典型的な功夫映画を連想するだろう。
しかし、本作には功夫映画のもう1つの可能性・・・
可能性という言葉はおかしいのかな、
"本来功夫映画のあるべき姿、望ましい姿"
が映されている作品だと思う。
それはあの劉家良(リュー・チャーリャン)が

少林虎鶴拳」「ワンス・アポン・ア・タイム英雄少林拳」「少林寺三十六房
で正統派功夫映画ここにあり!
を示したものの、
その後ジャッキーの登場で全てが茶化されてしまい(コメディ功夫ブーム)、
劉家良作品を引き継ぐような系譜がその後、良い線で全く見当たらなくなってしまったが、
本作はその系譜をまるで引き継ごうかというような作品である。

流れ

1916年。
行く先々で武芸を披露してお金を貰う暮らしをしていた旅芸人李俊峰一家。
今日も天津で武芸を披露し、食いつないでいたのだが邪魔者登場。
町でNo.1と評判の神州武術館の内弟子がケンカを売ってきたのだ。
「商売させてもらえないのなら出て行きます。」
と因縁に対して素直に引き下がろうとする一家の主・李俊峰。
しかし、勝負しないと引けない状態となり対決。
軽くいなす李俊峰であったが、ここに神州武術館館長登場。
さらに、勝負しないと引けない状態となり対決。
今度も勝とうと思えば勝てる相手であったが、
館長の面子を潰さぬよう自ら敗北する李俊峰。
その場から立ち去る李俊峰一家であったが、
館長はその時に李俊峰がわざと負けたことを悟ってしまう。

その後、政府の圧力により悪徳商社の護衛をさせられそうになった神州武術館。
その嫌な仕事を断われないため、李俊峰に回してしまう。
そんな汚い仕事をやりたくない李俊峰は自ら腕を折り、仕事を断わる。

天津に来たことから不幸ばかり続く李俊峰一家。
李俊峰はマッチ売りの少女のようにマッチではなくタバコを売ることで生計を。
うう・・・(涙
この様相に見かねたのは事の成り行きを見守っていた謎の老人。
この老人こそは八卦掌の達人で、李俊峰の師匠とも繋がりがあることがわかる。
老人を囲んで久々に楽しい食事を共にする李俊峰一家。
何度も武術を捨てようと思ったが、その旅に1900年北辰事変の辛い出来事を思い出しては
「祖国のためにも武術を捨ててはならぬ!」
と奮起してきた李俊峰一家。
さらにその武術に磨きをかけるために老人は老師となり、明日から修行の道へ。

老師と二人三脚で行う修行はとてもリアリティを感じられるもので、興味深い。
既に相当な達人の李俊峰であったが、さらに上を狙うためには相当な修練が必要か。
数年の時が流れる。

街では悪徳商社がロシアの強烈なファイターを引き連れる。
彼らは公民館で試合をやって儲けるのが目的だ。
「ロシア人なんかにやられてたまるか!」
怒った神州武術館館長は試合に参加。
ここで見事勝利を収めるのだが、汚い相手のやり口によって帰路を襲われ重傷に。
館長を見舞いに来た李俊峰。
李俊峰に酷い仕打ちをしたにも関わらず、自ら敗北を装って面子を守り、
この期に及んでも見舞いに来てくれた李俊峰に感動した館長。
ここでやっと厚い友情が交わされる。
「私がいない間、あなたに道場を頼みたい!」

道場では館長が殴られたとあって復讐ムード、今にも殴りこまん勢いであったが
これを李俊峰がシャット!
「私の命は館長の命!従わぬ者は破門だ!」
以前、李俊峰に因縁つけた内弟子は復讐できないことで涙ぐんだが
「仇は必ず取る」
八卦掌マスターになった李俊峰の言葉でこちらも一致団結。

遂には李俊峰vs最強ロシアファイター!
壮絶な戦いの裏側で興行主はめちゃくちゃ汚いことを考えていた。
李俊峰が闘っている間に李俊峰一家にも危険が迫る!
果たして・・・!!

終劇




もの凄く地味な映画である。
だから悪いということではない。
むしろそれこそが本作の味であり、魅力だ。

元来、功夫映画というものは超要約するが
"功夫を通して徳を教える"
といったものであったはずである。
それは決して相手を殺さない關徳興(クワン・ダッヒン)演じる黄飛鴻がそうであったように、
劉家良作品がそうであったように。
功夫を使って復讐する映画ではなく、功夫を通して徳を説く映画、
元来、功夫映画というものはそういうものであろう。

守るべき残すべきものであった功夫映画のあるべき姿が本作に注がれている。
そこには貧しい暮らしに耐え忍んで一家団結して生きる武芸一家と、
列国からの脅威に晒され息苦しい空の下で生きる人々、
その中で「中国人だってやれるんだ!」と奮起する世間。
封建社会の中で功夫を通して「人とは?生きるとは?」を押しつげがましくではなく
さりげなく地味に描く映画、本作は今となっては実に貴重である。

今日ではハリウッドアクションにワイヤーが導入され、
さぞかし香港映画も鼻が高いところがあるかもしれない(不況だが)。
今日も明日もハリウッドや香港で人が飛び交う超絶アクションが展開する映画が作られていく。
でも、本当にそれが残すべきものだったというのだろうか?
職人達が残した遺産は派手なワイヤーアクションだけだったというのか?
見た目の派手さだけをハリウッドに取り上げられ、今香港に残るものは?

答えてくれる作品は出てこないだろう。

■CAST&STAFF
監督 張革勲
出演 李俊峰
李コ玉
張雲渓
郭良
張春艶
萬存壮
朗斯
柴建潮
王利平
呉建珍
曹増銀
封順
脚本 張華勲
謝洪
音楽 王立平(ワン・リーピン)
制作年度 1983


少林英雄/侠骨英雄傳
The Shaolin Heroes/A Story of Chivalry



大当たり。
今年下半期個人的大ブレイク作品。

功夫映画というものに元々そういったものを求めていないのもあるが、興奮したり感動したりは今まで幾らでも経験してきたが、涙が出そうになった・・・というのは本作初めてじゃないのか?
幾ら私が映画の泣き虫だと言っても、そうそう功夫映画で泣かせられるもんじゃない。恐らく泣いたことなんか無いだろう。
それが本作ではクライマックスに於いて、グワーッとこみ上げてくるものがあった。感涙のクライマックス!

またストーリーも功夫映画で他に類を見ないもので、そのオリジナリティは高い。

流れ

また少林寺焼き討ち。
かくも良く燃やされる寺である。

この焼き討ちを指揮していた朝廷の遣いは狄龍(ティ・ロン)。
かつては少林寺の"大師兄"と言われていた男である。
「裏切り者!」
と少林子弟たちは立ち向かったが、その名の通り大師兄なので歯が立たない。
高僧の薛漢(シュエ・ハン)は自害に追い込まれ、子弟たち、王鐘(ワン・チュン)、蔡弘、王若平、午馬(ウー・マ)らも朝廷の茅敬順、王青(ワン・チン)に殺されるところだったが、これを狄龍が制止し捕虜に。

この焼き討ちから逃れた子弟の李修賢(ダニー・リー)は自分の尊敬する大師兄が叛徒であったことにショックを抑えきれない。
反政府のアジトに身を寄せ、同じく子弟の譚道良(レオン・タン)、陳碧鳳と怒りと悲しみの炎を燃やすがここにその大師兄・狄龍が強襲。
譚道良は李修賢らを逃がすと狄龍との一騎打ち!
さすがは譚道良といった感じで狄龍とも互角の勝負になるのだが遺影の前で戦っていたこと、狭い場所では狄龍18番の詠春拳の方が有利ということで敗北し、譚道良も捕虜にされてしまう。

目障りな少林派を一掃という事で大いに祝う朝廷。
妹の施思(シー・ズー)も自慢げだ。
だが実行した狄龍には誰にも言い知れぬ真実があった。

捕まった捕虜に始まる狄龍指揮の拷問。
いっそのこと殺してくれというような厳しい苦しい拷問の毎日。
皇帝・陳恵敏(チャーリー・チャン)の前で殴られ蹴られのさらし者にされるエブリディ。
耐えられなくなり
「もう朝廷の犬になります」
と懇願してきた午馬(ウー・マ)を狄龍は謀殺。
これを覗き見してしまった施思は彼に疑いを持つ。
疑いを持っていたのは、その度にその行動を制止させられていた茅敬順も同じであった。物語は続く。

エンドレスな拷問。
しかし、おかしなことに拷問によって段々とその功夫の腕を上げていく少林子弟たち。
「これは拷問ではなく修行ではないのか?」
狄龍の真相は何処に?

一方、復讐を企んでいた陳碧鳳が遂に実行に移す。
皇帝の大宴会に忍び込んで踊り子に成りすまし、狄龍を暗殺しようという腹だ。
これにいち早く気づいた狄龍本人は、陳碧鳳に近づくと何とか暗殺を阻止させてこの場から逃そうとする。
この時、皇帝に気づかれないようダンスをしながらしかも殺されないように陳碧鳳を何とか帰そうとするシーンはとても秀逸だ。
だが陳碧鳳の暗殺が茅敬順にばれ、流石は女子に対しても容赦なし、腕も足も折られて息も絶え絶えになる陳碧鳳を見て狄龍は
「もはや救えぬ」
と自ら処断する。

茅敬順が持った疑いは遂には皇帝の下へ。
皇帝・陳恵敏は
「私に忠誠心を見せろ」
ということで、捕虜の譚道良を引きずり出すと、これを狄龍に殺すよう指示する。
絶望的な状況の中、戦う2人。
拷問の成果もあってか譚道良の攻撃にたじろぐ狄龍。
遂にはトドメを刺せなかった狄龍。
皇帝の命を実行に移すしかなくなり、
「斬!」
衛兵たちに串刺しにされ、事切れる譚道良。
突然に降る大雨、狄龍の涙はその雨と共に。

皇帝もバカではない。
遂には狄龍が少林叛徒ではなく、むしろ朝廷叛徒(そういう表現は無いかもしれんが)であることを見抜く。
「仲間を殺してまでお前は私を殺したいのか!?」
「人民のためだ!」
そういって始まる最後のラストバトル。
一方で牢獄では少林子弟たちが大反乱。犠牲を出しながらも自分達を苦しめてきた茅敬順や王青を地獄に落とす。そう、狄龍に教えられたその技によって。

続くラストバトル。
ここで狄龍が少林寺を強く印象付ける少林佛掌の技で立ち向かう演出が素晴らしい。
さすがは皇帝、素手でも獲物を手にしても屈強な武人であったが遂には狄龍の前に倒れる。
皇帝を倒し、国に人民に平和をもたらした狄龍。
賭け付けた弟弟子・李修賢と笑顔の抱擁をするはずであったが、
「犬め!!」
哀れ狄龍、李修賢に一刺しされ、ここに沈む。

「あの皇帝が死んだ!」
町では民達が大喜び。
反乱を起こして皇帝を倒し、あのにっくき少林叛徒・狄龍を地獄に追いやった李修賢は国を民を救った大英雄として奉り立て挙げられる。
にわかに真相を知る生き残った捕虜の蔡弘と王鐘は複雑な表情で大喜びする人民の後を着いて行くのであった。

英雄の歴史は永遠の闇に。

終劇




物語の途中からならよくあるケースだが、始まっていきなり主役が悪役で最後の最後までそれを通す映画はそう多くない。

何処の誰にも祝福されるどころか憎まれて死んでいく哀しすぎる主役像が印象的。
主演に狄龍を据えたことは本当にグッドマッチで、苦悩しながらも心を殺して悪を演じる姿が実に切ない。
前述の通り、そのラストバトルを終えた後のラストシーンはここまでの抑えられていた狄龍の感情が結局は開花されずに死んでいくことで、観てる側としては狄龍の代わりに一気にここまでの鬱憤を開放するような気分、そして救いの無い狄龍に涙する気持ちが込み上げてくる。これこそが感情移入だ。
そのための1時間半であり、そのための映画。
観客の気持ちを抑えさせて抑えさせて最後に一気に爆発させてくれる映画、それが本作である。

同時に功夫映画のオードブルである功夫シーンは一流の殺陣師と一流の功夫スターたちということで流石に美しく、
狄龍の油の乗った詠春拳と少林佛掌の技も流石に素晴らしいのでこちらでも十分に堪能させてくれる。

これまであんまり個人的に評価の高くなかった午馬監督ではあるが、「聾唖劍」と本作の拝見によってその評価を変えざるを得なくなってしまったな。

台湾製作の映画なので復刻DVDの可能性は非常に低いのだが切に希望したい所存。功夫迷には是非とも観てもらいたい傑作である。

■CAST&STAFF
監督 午馬(ウー・マ)
出演 狄龍(ティ・ロン)
施思(シー・ズー)
譚道良(レオン・タン)
陳恵敏(チャーリー・チャン)
王鐘(ワン・チュン)
李修賢(ダニー・リー)
午馬(ウー・マ)
蔡弘
王若平
茅敬順
王青(ワン・チン)
李浩
陳碧鳳
初本科
薛漢(シュエ・ハン)
武術指導 戴徹(ロバート・タイ)
脚本 倪匡
?蜀美
音楽 黄茂山(ウォン・ムーサン)
製作 高飛(コー・フェイ) 他
製作総指揮 除天来
謝文程
制作年度 1980

 
 
 
 
 
少林虎鶴拳
マッハ!!!!!!!
新・片腕必殺剣
必殺のダブルドラゴン
武林志
少林英雄
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