■CAST&STAFF |
監督 |
王晶(バリー・ウォン) |
出演 |
狄龍(ティ・ロン) |
陳惠敏(チャーリー・チャン) |
羅烈(ロー・リエ) |
汪禹(ワン・ユー) |
王龍威(ワン・ロンウェイ) |
陳百祥(ナット・チャン) |
余安安 |
高飛(コー・フェイ) |
李海生(リー・ハイサン) |
元華(ユン・ワー) |
艾飛 |
林偉h |
黎金城 |
矮冬瓜 |
武術指導 |
唐佳(タン・チァ) |
黄培基 |
元彬 |
音楽 |
成錦榮 |
蘇板厚 |
製作 |
方逸華(モナ・フォン) |
製作総指揮 |
邵逸夫(ランラン・ショウ) |
制作年度 |
1982 |
洪拳與詠春
Shaolin Martial Arts
洪家拳対詠春拳
■
非常にハツモノ揃いの傑作である。
初めて丹念に修行シーンを描いた作品でもあり、まわりくどい修行の描写も新鮮で、劉家輝(リュー・チャーフィ)、王龍威(ワン・ロンウェイ)の初デビュー作でもあり、初々しい梁家仁(リャン・カーリャン)の姿も見られて、袁小田(ユアン・シャオティエン)爺ちゃんの初あばら屋先生(?)であるかもしれないこの作品は全功夫迷必見の作品であった。
■流れ
漢民族道場の林氏武館と満民族というか満州人の八旗武館は犬猿の仲。
二つの道場は祭礼の式において、林氏武館の劉家榮(リュー・チャーヨン)が演舞を見せたところ(段々大きい役を貰える様になってきました)、これに対抗して八旗武館の黄哈(ウォン・ハー)が演舞をする。
「けっ、その程度か」
と相手に言われた黄哈は腹立って突然劉家榮を攻撃。劉家榮は悶死し、二つの道場入り乱れての乱闘に。
官憲の手が入って事件はうやむやになったが、以前から漢民族の一掃を企んでいた朝廷はこれを機に漢民族武術家の皆殺しを企む。
朝廷から派遣された馮克安(フォン・ハックオン)は、助っ人として気功の達人である王龍威と鐵布衫を会得している梁家仁を招聘。
2人を連れて林氏武館に向かう。
王龍威には王將(ワン・チェン)が挑戦したが、惨敗。
しかし、この当時としてはかなり美味しい役柄である。大きい役貰えた方ですね。
梁家仁には葉天行が挑戦したが、全く歯が立たず惨敗。
このままでは皆殺しにされてしまう!
というわけで逃げた林氏武館の門弟たち。
復讐の機会を狙う傅聲(アレクサンダー・フー・シェン)、戚冠軍(チー・クワンチュン)、劉家輝、唐炎燦(トン・インチャン)。
大師匠である盧迪に相談して劉家輝、唐炎燦の2人は鷹爪拳の達人・姜南(チャン・ナン)に弟子入りして鷹爪拳を会得することにする。
早速、劉家輝は下半身を攻撃する実践的な格好いい訓練を始めるのだが、唐炎燦には
「わしは魚が好きじゃ。魚捕って手掴みで。食べるから。」
と単なる食事係を言い渡す姜南。
うーむ流石に数々の小汚い小悪党を演じてきた姜南だけあって言うことが汚らしい。
毎日川に入って魚を手で掴もうとする唐炎燦。
「・・・つまんない」
厳しい修行も実にしんどいが、そんなにしんどくはないがただひたすら地味な作業を繰り返すというのも辛いものだ。せめて時給が欲しいところ。
しかし魚掴みは鷹爪拳取得への第一歩であり、
魚を腹一杯に食べた姜南は次の修行を指示。
「薪割って薪。手で。お風呂入るから。」
と単なる風呂焚き係を言い渡す。
うーむ流石に数々の小汚い・・・もういいか。綺麗にしたかったか。
劉家輝の実践的な修行と唐炎燦のなんじゃこりゃ修行で、鷹爪拳を会得した2人は八旗武館に乗り込み、王龍威・梁家仁に挑戦!
2人とも強敵相手に奮闘するのだが敗戦。鷹爪拳ではダメでした・・・
ちなみに本作で対決した劉家輝vs梁家仁、ここから17年後の作品
「ラスト・ヒーロー・イン・チャイナ 烈火風雲」で再び対戦することになるのだが、ここでも敗戦するのは劉家輝である。しかも17年後は自分が悪役、梁家仁は正義の人・・・これは無念だ。
「鷹爪拳だめっす」
弟子に言われた盧迪は
「んじゃ詠春拳と虎鶴雙形拳で」
ってことで、今度は傅聲、戚冠軍にそれぞれ入門してくるよう言い渡す。
主役でありながらここまで黙々と修行ばっかりして盧迪の娘、袁曼姿・陳依齡の2人とイチャイチャしてるだけだった2人がやっと動き出す。
2人が去った後の盧迪を満州人が強襲し、死を悟った盧迪は2人の娘を主役2人につける。
詠春拳の師匠は馮毅(フォン・イー)である。
馮毅といえば
「ドラゴン怒りの鉄拳」での日本人役が当然ポピュラーか。橋本力さん談話によると明治大学卒業で日本語ペラペラ、他は「嵐を呼ぶドラゴン」とかに出演・・・と思ったら、
「詠春拳をマスターしたかったらワンインチパンチだ!」
ということで詠春拳というよりもワンインチパンチをひたすら戚冠軍に練習させる馮毅。流石は李小龍(ブルース・リー)と戦った男である。これまたひたすら手を微妙に打つだけという地味なルーチンワークをさせられる戚冠軍。せめて時給が欲しいところだ。
虎鶴雙形拳の師匠は出ました!袁小田!
「帰れ!」
って、入門拒否!
仕方なく門前で不貞寝していた傅聲。
どういう訳で入門してきたのかわからない袁小田は町で聞き込みしてくると今度は入門を快諾して修行開始!こっちはまたわかりやすい実戦形式の修行である。まぁ2人とも地味な修行なら画的にもつまらないしね。
各々修行を続ける2人。
厳しい修行の救いは間の女子とのイチャイチャで、傅聲は袁曼姿、戚冠軍は陳依齢とイチャイチャしやがってこの野郎。
ちなみに陳依齢は陳美齢(アグネス・チャン)のお姉さんで、日本で歌手デビューも果たした人であるが妹のようには売れなかった。
さぁいよいよ決戦だ!
終劇
■
ラスト、女子2人とラブラブで去っていくシーンは大凡張徹(チャン・ツェー)監督とは思えない演出で、同性愛を指摘された監督が示した言い訳と勝手に邪推したくなる。
とはいっても素晴らしい。
今になっては出演陣の豪華さだけでも見事、主役から準主役、悪役からゲスト出演、師匠の爺さんたち全てがオールスターな役者で監督・張徹、脚本・倪匡(イ・クオン)、武術指導に劉家良(リュー・チャーリャン)とこの取り合わせはこの当時でなければ絶対に有り得ない。
後に定型化する功夫映画の美味しいエッセンスは既に本作で十二分に盛り込まれており、
洪家拳の大家・劉家良が嬉々として撮影に臨んだのが目に浮かぶような作品で、もう1人の武術指導である唐佳(タン・チァ)は今回出番が無かったのではないかと思うような劉家良得意の洪家拳がバシバシと登場して功夫シーンは満足だし、前半は劉家輝、唐炎燦で後半は傅聲、戚冠軍というWW主役のような構成も2つの映画を観るような贅沢感が味わえお腹一杯。何故このような傑作が当時の興行収入ベストテンに入ってないのか不思議だ。
「金瓶梅」に負けるような作品ではないのだけれど。
とにかく功夫迷必見!
|
■CAST&STAFF |
監督 |
張徹(チャン・ツェー) |
出演 |
傅聲(アレクサンダー・フー・シェン) |
戚冠軍(チー・クワンチュン) |
陳依齡 |
袁曼姿 |
王龍威(ワン・ロンウェイ) |
梁家仁(リャン・カーリャン) |
劉家輝(リュー・チャーフィ) |
唐炎燦(トン・インチャン) |
袁小田(ユアン・シャオティエン) |
馮毅(フォン・イー) |
盧迪 |
姜南(チャン・ナン) |
江島 |
馮克安(フォン・ハックオン) |
劉家榮(リュー・チャーヨン) |
葉天行 |
王將(ワン・チェン) |
黄哈(ウォン・ハー) |
李允中 |
陸劍明 |
ケコ祥 |
林輝煌 |
陳狄克 |
徐蝦 |
盧慧 |
黄梅 |
黄樹棠 |
陳國權 |
尹發(ワン・ファ) |
武術指導 |
唐佳(タン・チァ) |
劉家良(リュー・チャーリャン) |
脚本 |
張徹(チャン・ツェー) |
倪匡(イ・クオン) |
製作 |
方逸華(モナ・フォン) |
製作総指揮 |
邵逸夫(ランラン・ショウ) |
制作年度 |
1974 |
賊賍
The Loot
■
ジャッキーが失踪したから2つの傑作が出来た。
「クレージー・モンキー笑拳」を監督した後、曾志偉(エリック・ツァン)が次に監督した正式なデビュー作が「〔足易〕舘」で、
次の作品が本作である。
先に結論から言って
「さすがは曾志偉!」
といった出来栄えになっており、また彼のスーパーヒット作にしてその後の香港映画の流れを大きく変えた「悪漢探偵」はこの作品のたった1、2年後に撮られることになるのも驚きだ。
その「悪漢探偵」を彷彿とさせる演出もこの作品にあり、素晴らしい功夫シーンは勿論、興味深いシーンの多い作品なのである。
■流れ
謎の刺客・蜘蛛から殺しの予告状が届く。
予告状を貰ったのは権永文、高飛(コー・フェイ)、李麗麗(リリー・リー)らで、彼らは数年前の事件の関係者たち。
早速、最初の被害者が出るに至り、権永文は飄々としているが腕は立つ姜大衛(デビッド・チャン)を雇って護衛させる。
とはいっても姜大衛、事の究明が楽しくって護衛の仕事とは裏腹に裏で調査を続ける。
これに何故か首を突っ込んでいたのは凄腕の徐小強(ツイ・シャオチャン)。
事件とは無関係なはずなのに様々なところに顔を出す。
実は2人は仲良しコンビで今回もお宝の匂いを嗅ぎ付けて2人で捜査をしていたというわけだ。
そんな折に事件に関わっていた人物が蜘蛛に拉致され、拷問を受ける。
これを助けた仲良しコンビ。
実が蜘蛛の真の目的は過去の事件の際に紛失した宝の地図で、これを要人を殺しながら探していたのだ。
さて、宝はあるのか、地図はあるのか?
そして謎の蜘蛛の正体は?
終劇
■
武術指導の水怪が前作「〔足易〕舘」そして「スリーピング・モンキー・睡拳」で殺陣をつけているのは知っているが後の面子は知らない。要は武術指導はメジャーどころではないのだが、ところがどっこいで「〔足易〕舘」と同じく功夫シーンは抜群の一言で、個人的には「〔足易〕舘」より素晴らしいと感じた。
「〔足易〕舘」ではアクションを見せてくれなかった李麗麗(リリー・リー)も本作では素晴らしいアクションを披露しており、流石は劉家良(リュー・チャーリャン)作品で重宝され、ジャッキー「ヤング・マスター」でも活躍したアクション女優であることを見せる。
高飛(コー・フェイ)に関しては今回は彼のベストバウトと言ってもいいのではかろうか。長身な体から繰り出されるしなやかでキレある技は本人の顔に伴わない美しさがある。まぁ彼には「非情のハイキック〜黄正利の足技地獄〜」での黄正利(ホアン・チョンリー)との対決もあるが。
また興味深いところで権永文の手下役で陳少龍が出演しており、功夫を披露しているのだ。
陳少龍は事の真相は知らないが「必殺鉄指拳」でジャッキーのそっくりさんを演じた役者と言われている。大旗や蟷螂拳の修行をするシーンや権永文(また権永文だな)とのラスト対決は彼が演じたと。
本作を見てもらえば一目瞭然、確かにこの男、体格がジャッキーと似ているし、功夫の腕も確か、噂が真実でも納得できる。
ということはここからが面白くなってくるのだが、ジャッキーに逃げられてしまった羅維(ロー・ウェイ)は後にジャッキー作品の未公開フィルムや偽ジャッキーの追加撮影でこの後に「醒拳/新クレージー・モンキー・大笑拳」を製作するのだがやはりこの映画の偽ジャッキーも彼が演じたのではないだろうか。完全な推測だが、本作で陳少龍と羅維が繋がったことを確認してしまうとどうしてもそのように邪推してしまうのだが。
改めて曾志偉らしい功夫作品に仕上がっていると感じた。
物語は「悪漢探偵」とかぶるところがあり、凸凹コンビが宝の地図を探しているところや・・・つーか、宝の地図の場所は「悪漢探偵」まんまです。ジゴロのジョーのあれね。細かいところでの小さな笑いの演出、恐怖と笑いを交互に織り交ぜるところなど如何にも彼らしいディテールに凝った演出だと思った。本作がマニアックなところで評価されている他の功夫作品と比べると全然名前が挙がってないので是非これも良作の功夫映画として再評価してほしいところ。
ところで本作を見て凄くびっくりしたことが。
ジャッキーが最初に興した映画会社は豊年影業公司。
豊年影業公司は「クレージー・モンキー・笑拳」を一本製作しただけでジャッキーがゴールデンハーベストに逃げちゃったため、消えた・・・はずだったのだが、本作のオープニングを見てびっくり!
この映画は豊年影業公司製作なのだ!(ロゴ出ます)
「〔足易〕舘」は私が持っているVCDでは会社ロゴが表示されないため確認できないが(FORTUNE STARのVCDなら確認できるかも?)、本作が豊年影業公司製作なら恐らく同じだと思われる。
ということは事実上、ジャッキーという社長不在だったとしても豊年影業公司は最低3本の映画を製作したことになるのだ。
ジャッキーが逃げてる間、戻ってくると思っていた羅維(ロー・ウェイ)が豊年影業公司を暫定的に残し、そしてその間の穴埋めとして「クレージー・モンキー・笑拳」の大ヒットで儲かったお金で「〔足易〕舘」と本作が作られたのだという推測が出来る。
※亜州影帝さんの情報によるとFORTUNE STAR版「〔足易〕舘」は羅維モーションピクチャーのロゴだそうです。
ということは豊年影業公司は2本製作か・・・
才能ある曾志偉が逃げないように彼に豊年影業公司を譲り渡して利益の不平等が起きない為の羅維の配慮だったのだろうか。しかし、残念ながら曾志偉もこの後すぐにシネマシティに行っちゃってるのだが。
この運命の歯車は非常に微妙なところで、
ジャッキーが逃げたからこそ2つの傑作が生み出されたとも言えるし、ジャッキーが逃げてなければ、さらに曾志偉監督でのジャッキー映画が出来たのかもしれない。後者であれば曾志偉はジャッキーの右腕として活躍し、「悪漢探偵」の登場があったかどうかも微妙になってくる、ということは香港映画の大きな流れそのものを動かしかねない事態であったということになるのだ・・・まぁワンマン主義のジャッキーだから結局そうはならなかっただろうとも言えるけれども・・・
というわけでこの作品はあらゆる意味で、香港映画史における歯車の小さな、小さいけれども外れれば全てが壊れてしまうような非常に意味ある作品なのだ。
|
■CAST&STAFF |
監督 |
曾志偉(エリック・ツァン) |
出演 |
姜大衛(デビッド・チャン) |
徐小強(ツイ・シャオチャン) |
高飛(コー・フェイ) |
李麗麗(リリー・リー) |
権永文 |
沈雪珍 |
金世玉 |
徐忠信 |
李剛 |
米奇 |
陳軍堡 |
何志偉 |
蘇玉峯 |
陳少龍 |
黄哈(ウォン・ハー) |
楊昌平 |
張美麗 |
呂小紅 |
裘莉媚 |
張振森 |
武術指導 |
水怪 |
何細寶 |
何志偉 |
脚本 |
黄鷹 |
音楽 |
陳勳奇(フランキー・チェン) |
策劃 |
植耀昌 |
製作 |
羅維(ロー・ウェイ) |
制作年度 |
1980 |
五爪十八翻
Dragon's Claws
■
っていうか黄正利(ホアン・チョンリー)ってすげぇ。
本作は郭南宏(ジョセフ・クオ)製作・監督であるが、執行導演の魯俊谷、出演者の劉鶴年、王葆真、朱鐵和、陳流で何よりそのストーリー展開は非常に協利電影的である。
fake様(「香港電影的日常之二風雲再起」)より紹介を受けた協利電影作品はここまで当HPで
「非情のハイキック〜黄正利の足技地獄〜」
「必殺のダブルドラゴン」
「鷹爪鬼手」
と紹介してきているがどれもこれもアクション面での水準が高く、物語面でも工夫を凝らした作品ばかりで、どちらかというと硬派でオーソドックスな作品を得意としていた郭南宏らしくない作品である・・・まぁ確かに郭南宏も後期は「不死身の鉄腕28房」のような怪作を発表してはいるのだが、とかくストーリー面においてはより郭南宏らしくない。
またあくまで今となっては「カンフーハッスル」で猛烈おばさんを演じた元秋(ユン・チウ)の若き日の出演が貴重である。「ツーフィンガー鷹」での冒頭でもちょっとだけ功夫を見せてはいるが、本作はほぼ全編に渡って功夫アクションを披露しており、「さすがは七小福!」といったキレある動きを満喫させてくれる。
■流れ
早速オープニングでのファーストアクションを展開する黄正利先生。
もう何か黄正利の冒頭アクションってやつを俺は何作品見たのだろう。
いつも通り華麗なアクションで相手をぶっ倒す。
場面変わって功夫練習中の龍形門道場生。
「いかんいかん!そんなことじゃ!」
と劉鶴年師匠が弟子を指南していくのですが、指南の途中にゴホゴホゴホ!
「いかんいかん!わしが病気じゃ!」
と突然病に倒れてしまう。
いきなり病床にふける劉鶴年師匠。
とここに押し込んできたのは黄正利。
かつて劉鶴年と同門であった黄正利は龍形門総帥の座を争ったが劉鶴年が総帥の座に。
これには訳があり、元総帥の娘であった元秋を劉鶴年がレイプし、そのままなし崩し的に結婚していたため劉鶴年が総帥となったのだ。しかも元秋と黄正利は元々恋人同士。
複雑な人間関係を知らない劉鶴年の息子である劉家勇は黄正利に戦いを挑むがあっさりあしらわれる。
ムカムカしていた劉家勇は薬売りの王葆真に八つ当たり。息子もなかなか人間的に出来ちゃいない感じだな。
「自業自得。」
旦那の劉鶴年に冷たい元秋であったが理由が理由なので当たり前。
さらに病床に耽っている理由は、元秋が若い時に放った一撃によるもので、簡単に言うとこれを喰らえば18年後に死ぬといったもの。
再度、今度は朱鐵和、陳流を引き連れて乗り込んできた黄正利。
劉鶴年vs黄正利になるのだが、ただでさえもう物語関係なくどう見ても黄正利の方が強い上に病床とあっては歯が立つわけもない。
勝利を収めた黄正利は総帥の証であるメダルを手にすると、元恋人・元秋の下を去っていくのであった・・・
劇終・・・・・なわけない。
しかしここまでの展開ならこれ、どっちかと言うと悪役は劉鶴年で黄正利は過去の借りを返しに来た主役みたいである。
だがそうはいかなかった。
メダルをよく見てみると偽物。
本物は何処に行ったのか誰もわからず、
「こりゃやばい」
とばかりに一門はチリジリに消える。
元々怠け者であった劉家勇は母・元秋と共に身を隠すとその母を師に功夫修行。元秋師匠に劉家勇という非常に貴重な修行シーンである・・・がなかなかあんまりこいつが成長しない。
劉家勇の友人であった韓國才(ハン・クォツァイ)がいつの間にかチョイ強になってることに気づく劉家勇、
「どこで覚えた!?」
「薬売り」
というわけで、前八つ当たりした薬屋・王葆真に非礼をお詫びして弟子入り。
「全くウチの息子は・・・」
と思ってた元秋であったが、対戦してみるといつの間にか強くなってる劉家勇にびっくり。ここでかつて龍形門最強と言われた王葆真の存在を確信する。
しかしちょっと遅かった。
この親子の居場所を見つけた朱鐵和、陳流が元秋を襲い、これを殺して劉家勇を待ち受ける。
母を殺され怒りが爆発した劉家勇は朱鐵和、陳流を倒すと真のメダル持って黄正利との最終決戦へ!
終劇
■
もし、朱鐵和、陳流の明らかな悪役の存在がなくて、黄正利の裏心理面を深く描写していたらそれこそ異色の渋い傑作になったのになという感じもする惜しい作品である。
アクション面は流石に面子が揃っているだけあって上質、ラストバトルも流石に黄正利といった感じ。
っていうか黄正利(ホアン・チョンリー)ってすげぇ。
様々な功夫映画に出演していた黄正利であるが、彼が見せるラストバトルでレベルの低いものがない。全て高水準である。どの作品に出演しても彼のアクションは一級品を保ち続けている。巡り合わせの妙もあるだろうが他の一流功夫マンが作品によってはしょぼいアクションだけで終始してしまうことも多々あるだけに(あのサモハンでさえも!)、彼ほど珍しい存在もおるまい。まさに黄正利、この目印こそ良質功夫映画の安心マークである。
それにしても武術指導の師父仔って誰だ?
土豆くん(師傅仔)じゃないだろうな。
※脇役王さん情報によると本当に土豆くんみたいです。驚き!
|
■CAST&STAFF |
監督・製作 |
郭南宏(ジョセフ・クオ) |
執行導演 |
魯俊谷 |
出演 |
劉家勇 |
黄正利(ホアン・チョンリー) |
元秋(ユン・チウ)
※クレジットは甘家鳳 |
劉鶴年 |
王葆真 |
朱鐵和 |
陳流 |
韓國才(ハン・クォツァイ) |
岑濳波 |
武術指導 |
師父仔 |
脚本 |
江冰涵 |
音楽 |
陳勳奇(フランキー・チェン) |
策劃 |
羅嘉甫 |
製作総指揮 |
郭潘俐君 |
制作年度 |
1979 |
山東響馬
Bandits From Shantung
■
これは洪金寶(サモ・ハン・キンポー)がまだ朱元龍名義で黄楓(ファン・フェン)監督の下で修行を重ねていた初期の作品である。
基本的にサモハンは、韓英傑(ハン・イェンチェ)から武術指導家としての基本を叩き込まれ、監督として製作者としてのノウハウはこの黄楓より学んだものと思われる(勿論、その他の人間の影響もある)。
この当時の格闘アクションというものはその格闘テクニックよりもどちらかと言えばアイデア重視の兆候にあり・・・それは勿論まだ本物の武術家が映画界に雪崩れ込んで来ていないというのもあるが、要は場面場面でハッとするようなアイデアで敵を倒す!そのアイデアがどんなものか?この辺が当時の映画をヒットさせる条件にも大きく関わっていた気がする。
そこにきて当時まだ22歳前後であるサモハンの殺陣というのは、他の名武術指導家と比べて何ら遜色ないクオリティを出しており驚きである。
これは全くの推測になるが「十二金牌」('70)で共同で武術指導を担当した徐二牛がサモハンに与えた影響は大きかったのではないか。徐二牛の殺陣の特色はその戦闘アイデア、シチュエーションを構築するアイデアの豊富さにあり、「十二金牌」そして「聾唖劍」ではそれを十二分に堪能することが出来る。本作を観ているとそんな一端を連想する。
■流れ(というほどのものが・・・)
凶悪強大な山賊"山東響馬"がとある町にやって来る。
先んじて噂を聞いた町の人たちは敵前逃亡とばかりにチリジリに。
つーわけで、茶屋の爺ちゃん残して町人ゼロ・・・
低予算でエキストラ導入が厳しいところを上手く言い訳で逃れたような気もする展開である(笑 いや笑っちゃいかんが・・・
親を探してこの町にやって来た張翼(チャン・イー)は何故かしら既にメチャ強い。
爺さん1人の茶屋で茶をすすっていると町の事情を知らない胡錦(フー・チン)夫婦と、銭月笙(チェン・ユーサン)らチンピラ3人もやって来て茶をすする。
銭月笙が得意の軽業で胡錦をからかったりして遊んでいたが、世の中は一気に地獄に。"山東響馬"のサモハン、易原が現れたからである。
さてこうなるとさっきまで元気だった軽業師の銭月笙もシュンとするばかり。
どうやら"山東響馬"って連中は半端な強いようだ。
皆の頭に向かって鈴を投げるサモハン。
これがまた怖いシロモノで、鈴を頭の上に置かれた人間はその鈴を落とさないようにしないと落とした途端に殺されるといったもので、どいつもこいつも素直に落とさないようにジッとしている様はかなりの恐怖。
しかしここで結局、胡錦が鈴を落としてしまい、胡錦も銭月笙も殺される・・・
つーか最近、胡錦が出てる映画をよく観るなぁ・・・そしてどれも死んでるような気がするが・・・死んでないのは「用心棒ドラゴン」ぐらいか?
というかですね。
本作では胡錦さんのクレジット、でっかくゲスト出演 胡錦 って出るんですけど無残に殺されて終わりっていうもので、この辺は日本と意識の違いだなぁって思うのですが、日本ではゲスト出演ってのはいわゆる美味しいピンポイントな役ってのが普通で、無残な死に方をする無名の役者みたいな使われ方をすることなんかまず有り得ないんじゃないでしょうか。
ところがこれが香港になると「激突!蟷螂拳」にゲスト出演した劉家輝(リュー・チャーフィ)は戦ってあっさり殺される僧侶役だったり、「贊先生與找錢華」にゲスト出演したは劉家榮(リュー・チャーヨン)は戦うだけ戦って無残に殺されたり、ちっとも美味しくない出演が多い。今思い出して美味しいゲスト出演は「沙胆英」での陳觀泰(チェン・カンタイ)しか思いつかない。
さて脱線から戻って。
胡錦も銭月笙も死んでから仕方なく戦いだす張翼。死ぬ前にやれって。
というわけでvsサモハン!
ここは武器を持たない徒手空拳な戦いだが敵はサモハン、さすがに"山東響馬"、三下一個上ぐらいのサモハンでもかなり強くてしぶとい。自分が武術指導なだけに前半の最初の見せ場である。
サモハンを倒して今度はvs易原!
で、こいつも打ち破る。
翻って"山東響馬"の目的は金塊。
警備隊が町を通る時にこれを襲い、奪取する腹である。
いつの間にか出てきた張翼の彼女を人質に取った"山東響馬"は、守備隊の金塊を身代金に要求。
守備隊隊長と示し合わした張翼は金塊を渡し、彼女を救うことに成功する。
「ガッハッハ!金塊頂き!」
とアジトに帰って喜んだ"山東響馬"ボスの白鷹(パイ・イン)であったが、箱を開けると全てが石ころ。
「おのれ!だましたな!」
と怒る暇もあったような無いようなでアジトに突入してきたのは張翼であった。
町の平和を守るため、ほんでもってあのままでは逃げられないので先手を打つところが実に中国人らしいというかなんちゅうか。
とにかくメチャ強い張翼は屈強な山賊たちを全て打ち倒すと、ボスの白鷹も死闘の末に倒し、町に平和をもたらすのであった・・・
終劇
■
まぁ町にフラリと現れた流れ者が悪漢ぶっ倒す痛快劇って、いつものあれである。
いつものあれではあるが、前述したとおりそのアクションはキレあるものでなかなか面白かったのではなかろうか。武術指導家として初期のサモハンながら流石と思わせる仕上がりであった。
|
■CAST&STAFF |
監督・脚本 |
黄楓(ファン・フェン) |
出演 |
張翼(チャン・イー) |
白鷹(パイ・イン) |
胡錦(フー・チン) |
張正國 |
金起範 |
崔聖寛 |
洪金寶(サモ・ハン・キンポー)
※クレジットは朱元龍 |
田蜜 |
易原 |
銭月笙(チェン・ユーサン) |
武術指導 |
洪金寶(サモ・ハン・キンポー)
※クレジットは朱元龍 |
音楽 |
王福齢(ウォン・フーリン) |
製作 |
鄒文懐(レイモンド・チョウ) |
制作年度 |
1972 |
花旗小和尚
American Shaolin
The King Of The KickboxersU
Karate Tiger5
No Retreat,No Surrender5
キング・オブ・キックボクサー〜ファイナル
■
典型的な作品ではあるが、なかなか面白かったのがこの作品である。
呉思遠(ウー・セイエン)がアメリカ資本の功夫映画を連発していた頃の作品で、この辺の類のものはTV放映されたもので「シンデレラボーイ」ぐらいは何とか知名度はあるものの、どのようなものがどれだけ作られたのか実は私もよく知らない。しかし、アジアだけでなく如何に当時功夫を基調とする格闘技映画を欲していたかがよくわかる作品である。
■流れ
リース・マディガン君は中国人の老師に功夫を習っていた青年。
しかしもって試合でコテンコテンに負けてしまってへこむ。
「少林寺行って来ます!」
もっと強くなりたいとリース君は少林寺入門を決意。
・・・しかしさぁリアリティに考えて1993年という少林寺の全貌も完全に明らかになった時代にわざわざ少林寺に行くというのもどうかね。素直に有名なジムに行けばよかです。
というわけでアメリカ離れていざ、中国少林寺へ。
「白人なんか、入れません」
おお、早速人種差別攻撃の少林寺であるが、なにくそ!と門前に座禅を決め込み居座るリース君。
「少林寺列伝」の傅聲(アレクサンダー・フー・シェン)とかと同じですな。
「よっしゃ、入れてやろう」
ようやく入門許可で早速修行開始。
ところが修行は土木作業ばかり。
「これじゃ土木のアルバイトじゃん」
全くその通り。
なので、アメリカから持ってきた(持ってくんなよ(笑)エロ本見て楽しむリース君。なにやってんすか。
サマータイムブルース♪
シャオリンタイムブルース♪
あの名曲で"シャオリンタイムブルース"なる替え歌まで作って皆で歌ってしまうとこがイカす天国。
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シャオリンタイムブルース
はるばる来たぜ〜中国少林寺♪
早速練習してメチャつよなるぜ〜♪
なんの修行だ〜木人拳か〜♪
たんなる伐採作業だけだった♪
冗談じゃねぇぜ♪何のため?♪
修行がまわりくどいシャオリンタイムブルース♪
-------------------------
↑せっかくなので(なにが)、僕も作りました。
元曲を知っている人は是非歌ってみてください♪
この手のカバーだとやっぱりRCサクセション・忌野清志郎さんの「COVERS」が最高ですな。またああいうカバー集やってほしいなぁ。
さぁシャオリンタイムブルースを口ずさみながら段々と腕を上げていくリース君とその仲間たち。
遠征して親善大会で以前のライバルと決闘だー!
終劇
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それだけかい。
誠にそれだけでクライマックス手前で再会するヒロインといきなりディープキスな展開も、そこまでの馴れ初めは大して描かれていないので唐突だ。唐突だと言うかそれは痴漢だ。
んだけども、予想してたよりもずっと爽やかな展開と、白人が中国少林寺で修行するというウルルンな展開もオーソドックスながら面白いし、B級映画としては十分良い作品である。まぁ「シンデレラボーイ」から大した進化は見られていないが。
ただアクション面は元奎(ユン・ケイ)武術指導ということで、まだまだワイヤワークに頼らない、肉体を駆使した力強く且つ繊細な功夫シーンは良いものを残しており、全体的なアクションレベルは功夫映画という視点から見て良いところにいっているし、白人功夫映画と考えれば高及第点であろう。
著名な香港功夫マンが出ていないのはちと残念だが、その手の映画が好きな人なら薦められる作品だ。
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■CAST&STAFF |
監督 |
ルーカス・ロー |
出演 |
リース・マディガン |
トレンド・ブッシー |
ダニエル・デ・オム |
ビリー・チャン |
クリフ・レンダーマン |
アンドリュー・シュー |
武術指導 |
元奎(ユン・ケイ) |
脚本 |
キース・W・ストランドバーグ |
製作 |
キース・W・ストランドバーグ |
呉思遠(ウー・セイエン) |
製作総指揮 |
呉思遠(ウー・セイエン) |
制作年度 |
1993 |
馬永貞
Boxer From Shantung
上海ドラゴン/英雄拳
■
本作の最初にクレジットされるのは主演の陳觀泰(チェン・カンタイ)ではなく、ヒロインの井莉。男性重視の張徹(チャン・ツェー)作品で女優が一番最初にクレジットされるのは極めて異例のことであろう。
姜大衛(デビッド・チャン)、狄龍(ティ・ロン)に続いて陳觀泰、ようやくショーブラ三羽烏の功夫スターが揃ったわけだ。
こういった作品はレビューの書き始めが非常に難しい。
今年(2007年)久々に大当たりした個人的大傑作である。
■流れ
山東からやって来た田舎者の陳觀泰扮する"馬永貞"とその弟分・鄭康業。
日銭もままならない暮らしの中で鄭康業が見つけてきた馬車洗車の仕事をしようとするが、御者の馮克安(フォン・ハックオン)ともめる。
この揉め事を遠巻きに見ていたの上海2大ボスの1人、姜大衛(デビッド・チャン)で馬永貞の腕っぷしの強さを見抜いた姜大衛は軽く腕試しをすると馬永貞に上海の掟について教え、颯爽とその場を去っていく。
馬永貞 「俺もああなりたい・・・」
小銭しかなかったので何となく小食堂に入る馬永貞であったが、ここでは姜大衛の手下と上海2大ボスのもう1人、斧頭党の姜南(チャン・ナン)が放った四天王の3人、田、谷峰(クー・フェン)、馮毅(フォン・イー)がシマの奪い合いで争っていた。訳もわからず見ていた馬永貞であったが、姜大衛の手下が次々と倒されていくのを見て助けに入り、ここでいきなり田、谷峰、馮毅を蹴散らしてしまう。
馬永貞 「俺は俺のために戦う。誰のためでもない。」
と言って、唐炎燦(トン・インチャン)ら姜大衛の手下からのお礼を拒否する馬永貞。
上海では闘技場での戦いが話題になっていた。
斧頭党興行による、白人レスラー・トーミラーとの試合させお金を取って儲けていたのである。
これを観戦していた馬永貞。
次々と同胞の中国人が倒されていく中でナショナリズムの虫を触発された馬永貞は遂にトーミラーに挑戦。
流石に巨体のトーミラーに苦戦するのだが、人間離れしたパンチ力で馬永貞が勝利。賞金を手にして帰ろうとしたが、面子も潰されお金も取られそうな斧頭党が黙ってるわけにはいかない。手下どもと大乱闘になるのだが、戦いの疲れを微塵も感じさせずにこれをも粉砕した馬永貞。
一躍、上海の時の人となった馬永貞は労働者時代の仲間(徐蝦など)を引き連れて小さな徒党を組み出す。
祝杯でも挙げるかと以前の小食堂に立ち寄った馬永貞はここで、小食堂一帯のシマは姜大衛より譲り受けたことを知る。
馬永貞 「遂に自分のシマを手に入れたぞ!」
喜ぶ馬永貞であったが、
「やっぱり結局どうしてもヤクザなのね・・・」
密かに馬永貞のことを思っていたしがない歌手の井莉は、馬永貞にがっかりして身を隠してしまう。
小さな町のボスに収まった馬永貞であったが、自分が集めるみかじめ料は貧しい人から搾り取る日銭であることに気づく。遂にはキセルも買って馬車も手に入れ、憧れの英雄・姜大衛に近づけたとは思っても、元々貧乏人である馬永貞には貧乏人を苛めて金を毟り取ることなど到底出来ないのであった。
馬永貞 「金のあるところから金を・・・」
と思った馬永貞は斧頭党のシマであった賭博場を狙うことにする。
既に手下となっていた唐炎燦らは相手が斧頭党なので流石に躊躇するのだが、大胆にも馬永貞は1人で賭博場へ。
賭博場で谷峰軍団と一騎打ち!
後からやってきた唐炎燦や徐蝦も参戦して大暴れ!
知らせを聞いた斧頭党のボス・姜南は
「二兎追うものはどっちもだめじゃん」
というわけで、ひとまず馬永貞は置いておき、阿片密輸の取引関係で揉めていた姜大衛を暗殺することに専念。
谷峰軍団との戦いは谷峰軍団の退場によって勝利し、見事に賭博場を我がシマとする馬永貞であったが流石に地獄の一丁目。
姜大衛は手下の王鐘(ワン・チュン)に裏切られて刺殺され、
自分に報いてくれた馬永貞は斧頭党に復讐することを心に誓う。
そして山東からずっと着いて来てくれた鄭康業を田舎へ帰す。
姜大衛を仕留めて邪魔者は馬永貞だけとなった斧頭党は姜南の企みで罠を張り巡らす。
会食の場所となった青蓮閣では客や従業員、売り子など全てが斧頭党の部下と摩り替えられ、姜南1人のフリして死ぬほどたくさんいる子分が馬永貞を待ち受ける。
始めから姜南を殺すつもりでやってきた馬永貞であったが、馮克安がぶっ掛けた熱湯を合図に谷峰が馬永貞の腹を切り裂く。既にこれで致命傷なのだが、馬永貞はこれで簡単に死ぬような男ではなかった。
引き裂かれた腹を抱えたまま、谷峰、田、馮毅、そして王青(ワン・チン)の四天王を手下を倒しながら次々と撃破。這いつくばって2階の姜南に迫るが階段から蹴落とされてしまう。もう階段を上る力は無い。
悟った馬永貞は最後の力を振り絞って梁を叩き割って2階のフロアごと叩き落し、姜南を落下させると一撃を喰らわせ地獄に落とす。
姜大衛の仇討ちを果たし、斧頭党をも叩き潰した馬永貞は遂に上海No.1の大ボスになった。
薄れゆく意識の中で本懐を遂げて悲しく高笑いする馬永貞を無名のチンピラが斬り殺す。
田舎に戻る列車に乗るため人ごみを掻き分けて乗車した鄭康業は上海を去っていくのだった・・・
終劇
■
おっと、これだと斧頭党が全滅してるので馬永貞の妹である馬素貞が復讐にやってくる「地獄から来た女ドラゴン」や「ドラゴン覇王拳2」が作れないではないか。って、張徹が女ドラゴンものなんか作るわけないか。
茶化しはともかく、大傑作である。
冒頭の姜大衛との出会いからこれから成り上がっていく馬永貞を思ってワクワクするし、期待通りに悪漢や白人レスラーどもを次々と叩き潰して大きくなっていく馬永貞の活躍は胸のすくもので本当に心からスカッとさせてくれる。
特にクライマックスの腹裂かれながら大人数を相手に1人と1人とぶっ殺していく様はこれぞ滅びの美学!といった感じで功夫映画名場面の1つとして僕のような人間は絶対に語り継いでいかなければならないシーンである。
名作というものは匂い、雰囲気がある。
それはジャッキーでいうと「酔拳」そして「プロジェクトA」、他では「悪漢探偵」
にも感じる。
張徹でいうと「ブラッド・ブラザーズ/刺馬」にもそれを感じることが出来るが、本作は張徹作品の中で最も名作的雰囲気を感じた(最も、未見の作品が数知れずあるが)。
キャスト面に目を向けてみるとショーブラだといつも通りの豪華なやられ役が揃った布陣で、「吼えろ!ドラゴン 起て!ジャガー」の頁で書いたばっかりなのだが、またしても馮克安は前半は姜大衛の御者を演じていたのに後半になると斧頭党の1人として活躍・・・また裏切りやがった!
その裏切りっぷりはやっぱりいつもの馮克安だ(笑
また徐蝦にも目を引く。
彼はこの時代だとやっぱ顔のせいか、悪役の後ろで息巻いて立ち、主役に絡んであっさり殺されるチンピラが十八番なのだが、今回は馬永貞の労働者仲間役で後半は仲間となって馬永貞と行動を共にする1人で、笑顔で祝っていたりするシーンがあったりと豊富で興味深い。
それと四天王最後の1人としてラストまで出番を待ち続けた王青が、ラストまで溜めて溜めて出た割にはいともあっさり殺されたのには笑ったな。
尹發(ワン・ファ)さんは今日も地道に稼いでおります。
追って王羽(ジミー・ウォング)が製作する馬永貞もの「ドラゴン覇王拳」との対比も面白い。王羽演じる馬永貞にはチンピラがのし上がっていく描写もなければ姜大衛が演じた英雄・譚四もいない。ただひたすらに悪漢をぶっ倒していく王羽さんの姿ばっかり描かれていて限りなく王羽映画である(笑 ただこちらも面白い作品ですよ。
また本作のリメイクである金城武の「暗黒街/若き英雄伝説」('97)とも比較してほしい。本作を見ると冒頭などはかなり忠実にリメイクしてあるのがわかるのだが、クライマックスになって死んだはずの元彪(ユン・ピョウ)扮する譚四が復活している展開なのも面白い。
主演デビュー作でこんだけの傑作に出演できた陳觀泰も幸せだったか。
その後はやはり馬永貞的な陳觀泰兄貴作品は多く登場する。
「成記茶樓」「大哥成」は正に陳觀泰兄貴作品だし、やたらおっぱいがぽろぽろ飛び出す李作楠(リー・ツォ・ナン)作品「ブラッドブラザース/男たちの誓い」も陳觀泰兄貴がヤクザの大ボスにのし上がっていく物語でありB級的馬永貞物語を楽しめたりなんかする。
誠に男臭い映画ではあるが、
功夫映画迷必見の作品といえよう。
ちなみに助監督は呉宇森(ジョン・ウー)である。
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■CAST&STAFF |
監督 |
張徹(チャン・ツェー) |
鮑學禮(パオ・シュエリー) |
出演 |
陳觀泰(チェン・カンタイ) |
井莉 |
鄭康業 |
馬蘭奴 |
田 |
谷峰(クー・フェン) |
馮毅(フォン・イー) |
姜南(チャン・ナン) |
王青(ワン・チン)
クレジットは王清 |
王光裕 |
王鐘(ワン・チュン) |
陳漢 |
梁尚雲 |
唐炎燦(トン・インチャン) |
蘆葦 |
沈勞 |
徐蝦 |
李文泰(リー・マンチン) |
馮克安(フォン・ハックオン) |
曾楚霖(ツァン・チョウラム) |
袁信義(ユアン・シュンイー) |
黄哈(ウォン・ハー) |
尹發(ワン・ファ) |
山怪 |
姜大衛(デビッド・チャン) |
武術指導 |
唐佳(タン・チァ) |
劉家良(リュー・カーリャン) |
劉家榮(リュー・チャーヨン) |
陳全(チン・チュアン) |
脚本 |
張徹(チャン・ツェー) |
倪匡(イ・クオン) |
音楽 |
陳勳奇(フランキー・チェン)
クレジットは陳永U |
製作 |
邵仁枚(ランミー・ショウ) |
制作年度 |
1972 |
仇連環
Man Of Iron
復讐ドラゴン/必殺拳
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上記「馬永貞」の姉妹作的作品。
あまりに2匹目の泥鰌を狙いすぎたような。
ちょっと露骨過ぎたなぁ・・・まぁ例えば「酔拳」だってそうだろ、って言われればそうなのかもしれないが、あれは前作「蛇拳」に負けない新しいアイデアと舞台設定が成されていた。本作はどうかというところで・・・
■流れ
馬永貞は死に、彼の生き様は上海の伝説となった。
20年後。
産業革命の波に飲まれ、かつての馬車はバイクへと変わった。
そのバイクにまたがりこの上海を自分のものにしようと野望に燃える男・陳觀泰(チェン・カンタイ)扮する仇連環が現れる。
というか仇連環って役名だったのね。
馬永貞と違ってチンピラとしてはのし上がっている仇連環。
既に側近には王鐘(ワン・チュン)らが従えている。
上海No.1のボス、楊志卿の息子である田とカジノでギャンブル。
流石は元祖・ゴッドギャンブラー?陳觀泰仇連環なので、勝ちまくり。
田の子分である楊斯(ヤン・スエ)を軽く薙ぎ払うと賞金抱えて仇連環は立ち去った。
その時、田の女である井莉に仇連環は一目惚れしてしまう。
一目惚れしてしまった仇連環の行動は早い。
大胆にも田の屋敷に現れてバイクで屋敷の中に突っ込み大暴れ!
護衛に王將(ワン・チェン)や前作で活躍を見せた徐蝦。
井莉に挨拶に来たが、
「チンピラ風情が二度も私に会えて幸運だったわね」
とフラレ気味の台詞を吐かれる。
「無名のチンピラと遊んでる場合か!」
父ボス楊志卿に怒られる田。
このままじゃ面子が立たない田なので、仇連環のアジトに殴りこみ!
やられる手下たちだったがこれまた仇連環が大暴れで田を捕まえて、彼のギャングとしての地位を叩き落し、遂に仇連環は大屋敷も井莉もモノにする。
だが、結局彼は伝説の"馬永貞"に近づくことさえも出来なかった。
天下は全く長く続かず、楊志卿の手下である朱牧(チュー・ムー)らによって重症を負わされ、井莉の隠れ家に匿われる。
以前から野心を漲らせていた朱牧が遂に本性を表す。
田、楊斯と次々に殺すとボスの楊志卿も殺し、
楊志卿の部下であった江島や李敏郎を仲間にしてNo.1ボスに朱牧がなると改めて仇連環組織の根絶やしを実行。
まずは側近の王鐘を殺して腹を裂き海に沈める。
井莉の聞き込みによって、王鐘らを惨殺されたことを伝え聞いた仇連環は単身、朱牧組織の下へ乗り込んでゆくのだが・・・
終劇
■
まず前作が余りに完成度の高い作品であるのが、
本作を観ると改めてわかってしまうというのが感想で、
展開は同じような感じなのに、本作が大きく見劣りしてしまうのが正直なところで、仇連環が"馬永貞"の伝説に近づけなかったように、本作も「馬永貞」の素晴らしさに近づけなかったという感じである。
ただしやはりアクション面では盛り上がりを見せるし、似たようなクライマックスではあるが、最後の大乱闘も手に汗握る戦いだ。いつものように豪華な絡み役を探すのも一興。
ちなみに前作「馬永貞」から続けて出演した田さんの活躍が印象に残る。
前にも何度か書いたが田さんのショーブラ時代はいつもこんな感じで、虎の威を借る狐的役割が持ち味。
唯一、ショーブラで格好良い役というのはやはり「笑傲江湖」での東方不敗役でしょうね。
その後は「上海ブルース」での鍾鎮濤(ケニー・ビー)との親子演技が良いっす。「ロレッタ・リーのハード・ロリータ〜禁断の果実」にも出ておりますです。
これに傅聲(アレクサンダー・フーシェン)が出てるらしいのですが、見つかりませんでした。見つけた人、教えてください。
※小金龍様に教えて頂きました。
傅聲は自転車でぶつかりそうになり、陳観泰に「待ち伏せしてるよ」って教える役で登場しています。
小金龍様、ありがとうございました。
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■CAST&STAFF |
監督 |
張徹(チャン・ツェー) |
鮑學禮(パオ・シュエリー) |
出演 |
陳觀泰(チェン・カンタイ) |
井莉 |
王鐘(ワン・チュン) |
朱牧(チュー・ムー) |
田 |
楊志卿 |
楊斯(ヤン・スエ) |
王光裕 |
劉剛 |
盧迪 |
陳全(チン・チュアン) |
張景坡 |
楊澤霖 |
鮑嘉文 |
梁尚雲 |
江島 |
何剛 |
李敏郎 |
王撼塵 |
沈勞 |
蔡婉萍 |
蘆葦 |
王青(ワン・チン) |
王將(ワン・チェン) |
徐蝦 |
黄培基 |
盧慧 |
李超 |
傅聲(アレクサンダー・フーシェン)? |
周江 |
黄梅 |
劉家榮(リュー・チャー・ヨン) |
ケコ祥 |
馮克安(フォン・ハックオン) |
陳狄克 |
黄哈(ウォン・ハー) |
袁祥仁(ユアン・チョンヤン) |
任世官(ニン・シークァン) |
袁信義(ユアン・シュンイー) |
周潤堅 |
神仙 |
師父仔 |
武術指導 |
劉家良(リュー・カーリャン) |
陳全(チン・チュアン) |
音楽 |
陳勳奇(フランキー・チェン)
クレジットは陳永U |
製作 |
邵逸夫(ランラン・ショウ) |
制作年度 |
1972 |
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