Contents
 
トップへ
掲示板

■ドラゴン傑作選23  
 

南少林與北少林
Invincible Shaolin
南少林寺vs北少林寺



実はこのいわゆる五毒メンバーによる五毒映画に関してだけは、字幕の入っていない海外版の入手をためらっている。
というのも、五人が作品の度に善者・悪者・裏切り者の役割を次々と変える上に追加キャラクターも必ず登場し、さらに当時の他の功夫映画に余り無い特色として脚本面での濃密さがあるのでストーリーは複雑なものが多く、字幕の無いものを観たところで恐らくストーリーを理解し難いし、レビューも曖昧なものになるし、何より自分が100%楽しめないのが辛い。
既に名作と言われる物が続々と発売されているのは知っているのだが、この五毒作品だけは字幕付けて欲しいところ。でも需要から考えると正に今こそノンスター映画の弱みが出てしまっているのだが、ノンスターだけに日本発売は難しいのかなぁ・・・字幕無し買うか・・・


流れ


また王龍威(ワン・ロンウェイ)か。
何かこの人のこういった役柄やたら観た気がするなぁ・・・
皇帝とか将軍とか偉い系。
今回は少林派撲滅を企む将軍。
官兵を鍛える師範を名目として北少林寺から江生(ジャン・シェン)、鹿峯(ルー・フェン)、孫健(スン・ジェン)、南少林寺から狄威(ディック・ウェイ)、孫新祥、余太平を招聘。
「勝った方が師範、負けた方が副師範ね。」
と互いの対抗心を煽った王龍威。
あっさり挑発に乗った南少林派は北少林派と対決するが南少林派の完全敗北。はっきり言って話しにならず。

「帰ろ・・・」
負けた南少林派は帰り支度をしたが、そこへ王龍威が現れて3人ともたったの一撃で殺害・・・
こんだけ王龍威が強いなら南少林派は気にすることもないんじゃ・・・

と俺が思ったところで物語は続く。
「北少林の奴らが・・・」
3人の遺体を南少林派の師・・森に届けたところで、上手いこと言って北少林の責任にしてしまう将軍の側近・孫樹培。
「北少林寺め!」
いともあっさりと復讐の炎をメラメラ燃やす南少林派はさらに3人の若者たちを戦いに送り出す。

またしても完全敗北南少林・・・よわーい
しかも今度は不慮の事故も手伝って2人死亡。
ちょっと待て。

阿羅漢」の南少林派、胡堅強(フー・チェンチァン)は素晴らしい強さだったぞ。こんなに弱いのはどうしてだ?と思って考えてみると「阿羅漢」での南少林派の師匠があっさり殺られていたのを思い出したりなんかして・・・あれは南少林派の劉家良(リュー・チャーリャン)が撮ったんだがなぁ・・・

生き残って帰った1人も恥を忍んだか自害。
これで南少林派は6人も死ぬ。
「ゆ、許せん北少林寺め!」
実に何と言うかちゃんと考えろよ!南少林派!
と言いたくなるのだが、とにかく朝廷ではなく北少林派に対して復讐心たぎらせる南少林派。
しかし、このまま戦ったところで北少林派は強く勝てまへん。
なので最後の頼みである腕利きの3人、羅奔(ロー・マン)、郭振鋒(フィリップ・コク)、韋白(ウェイ・パイ)を招聘。

さらに羅奔を蟷螂拳の達人・井Eのところで修行させ、
韋白を詠春拳の達人・王清河のところで修行させ、
郭振鋒はさらに棒術を極めさせるため・森のところで修行と、
3人3様の修行が始まる。

勝手に南少林派と対立させられて妙なことになっている北少林派だったが意外とお気楽な奴らで、真面目なリーダー格の孫健は将軍の養女である惠英紅(ベティ・ウェイ)とイチャイチャ。
これが面白くない江生と鹿峯は町に繰り出すと果物屋の恬〔女丑〕と尤翠玲をナンパしてお茶する・・・何やっとんじゃ!北少林寺は!

全く南少林派はとことん乱暴者で、
北少林派は色欲坊主の集まりか!
こんな俗だらけの寺など潰してしまえー!
と、祇園の客は暴力団と坊主と芸能人ばっかりじゃんという京都出身の俺は思う。俺は王龍威派だ!

それはともかく南少林派の修行は続く。
それぞれジャッキー的修行をこなして飛躍的に強くなり、
道場に帰還するのだが病に倒れていた・森は
「必ず復讐を果たせ!」
と言い残して事切れる。この人、最後まで何も気づかなかったのね。

ここまで来て流石に南少林派も
「なんか変やな・・・」
と感づき始めてはいたのだが、師匠があんなこと言って死なれたとあっては引き下がるわけにもいかない。
その上、北少林派の孫健は将軍の養女と結婚するという。
「身売りして朝廷に媚入る気か!」

結婚式。
招かれざる客、南少林派がやって来る。
それぞれ、
羅奔vs鹿峯
江生vs郭振鋒
孫健vs韋白
でのハイパーバトルが開始される。
心配する新婦・惠英紅の隣でほくそ笑む王龍威。

流石にそれぞれ各個だけを倒すための修行を積んできただけあって、南少林派優勢で戦いは進む。
鹿峯が羅奔の蟷螂拳に倒れ、孫健が韋白の詠春拳的ワンインチパンチに沈み、相討ちになるはずだった江生vs郭振鋒は先に江生が致命傷を負うことでやっとこさ、本当にやっとこさ真相に気づいた郭振鋒が、
「戦いは中止だ!これは罠だ!」
と言ったが時既に遅し。
満を持して王龍威が彼らに襲い掛かる!

「五体満足なお前らは逃げて少林武術を残せ!」
その掛け声と共に致命傷を負っていた鹿峯、孫健、郭振鋒、江生は最後の力を振り絞って王龍威を打ち倒し、韋白と羅奔は逃げて後世に少林武術を残すのであった・・・

これだと余りにも新婦ら女性陣が浮かばれないが・・・


終劇





そもそも少林寺という建物が一切出てこず、あくまで少林派である町道場の対決・・・のように見えてしまうこともあって、坊主的宗教観念が全く登場せずに堂々と殺し合いを続ける少林連中を見てしまうと、本家少林寺からしてみれば、
「あれはウチとは無関係」
と言われてしまいそうな物語である。
幾らなんでも特に南少林派の連中にはもう少し忍耐を身に着けてほしいものだ。少林寺は殺生は無論、争いごとそのものが禁止された寺なのだから。

という物語的クエスチョンは頭によぎるのだが、
それを払拭すればとても面白い作品である。

アクション面は全く申し分が無い。
五毒+韋白のポテンシャルは相変わらず高いもので、まるで保証された一流ブランドかの如く、素晴らしい功夫シーンを構築している。何がどうあれこういった功夫シーンが好きな俺みたいな人間は必ず満足するだろう。

本作は張徹(チャン・ツェー)の監督としての柔軟さが顕著になっている作品である。
かつて男臭い血生臭い名作を放った張徹は時代が移り変わり、ジャッキーを筆頭としてコメディ功夫ブームが到来するとその作風を変え、本作での中盤ではジャッキー的激しい修行シーンからジャッキーの肉体ポテンシャルを大きく凌駕しようかという筋肉の羅奔、軽業の郭振鋒、器用な韋白を登場させジャッキー作品的面白さ+αを描写、一方で血生臭い展開だけではライトな作風を好むようになった観客に合わないと綺麗処の惠英紅、恬〔女丑〕、尤翠玲を出し画面に華を彩って気遣うところを見せている。
ただあくまで骨格は今まで通り張徹作品の特色である大勢の熱い男どもが主役なので当たり前であるが、彼らが交わす友情や復讐、そして滅びの美学を描いた"漢"のドラマなのだ。
かつてある一定のジャンルで高評価を得た監督が、時代の移り変わりに着いていけなくなり、駄作を撮る監督に堕ちてしまう例もある中で(誰とはちょっと可哀想なので言わないが)下降線を辿っていたとしても今もって張徹監督の手腕は明らかに群を抜いたものであることを十分証明している。
もう一つ言うと、私見だが張徹監督とは正に娯楽映画の巨匠なのだ。
後年になると"芸術"という枠の中に逃げ込み、自分だけ楽しければ良いような作品造りに傾倒してしまいがちな流れの中で、観客が楽しめるものは何か?を常に考えて撮っていたことがよくわかる本作は結局傑作なのである。
(だからこそ他の五毒映画も字幕付きで楽しみたいのだが)

■CAST&STAFF
監督 張徹(チャン・ツェー)
出演 羅奔(ロー・マン)
江生(ジャン・シェン)
孫健(スン・ジェン)
鹿峯(ルー・フェン)
郭振鋒(フィリップ・コク)
※クレジットは郭追
韋白(ウェイ・パイ)
王龍威(ワン・ロンウェイ)
恬〔女丑〕
惠英紅(ベティ・ウェイ)
孫樹培
・森
楊熊
楊雄
王清河
井E
尤翠玲
蕭玉龍
譚鎮凌
狄威(ディック・ウェイ)
※クレジットは屠龍
孫新祥
余太平
林輝煌
夏國榮
陳鴻
黎友興
陳志強
劉晃世
周麥利
武術指導 梁廷(リャン・ティン)
戴徹(ロバート・タイ)
※クレジットは戴其賢
儲陸峯
脚本 張徹(チャン・ツェー)
倪匡(イ・クオン)
音楽 陳勳奇(フランキー・チェン)
※クレジットは陳永U
製作 方逸華(モナ・フォン)
製作総指揮 邵逸夫(ランラン・ショウ)
制作年度 1978


天下第一拳
King Boxer
キング・ボクサー大逆転



ここのところ、功夫映画の草分け的作品を何故か多く観ることになっているが、本作も大きなエポックの1つである。
まぁここ読んでる人はほとんどが知っていると思うが、

「燃えよドラゴン」の公開前に全米で公開されて大ヒットを飛ばした作品である。
なぜ本作がショーブラから選ばれて全米公開に至ったのかは今となってはハッキリしないが、香港の功夫映画が海の向こうでどれだけ通用するのかという実験的意味合いもあったのではなかろうか。
また本作も幼い頃からいわゆる功夫本を読み漁ってきた私のような人間にとっては待ちに待った作品である。


流れ


片田舎の道場で功夫の練習に励んでいた羅烈(ロー・リエ)は、師匠の薦められて街の尚武国術館に入門してさらに強くなることになる。
「がっかりす」
しかし、尚武国術館長の房勉(ファン・ミエン)は彼の力を見て落胆。これじゃとてもウチでは修行させられんと羅烈に下働きを命じる。朴訥として田舎者の羅烈は兄弟子の南宮勳(ナン・ゴンクン)にいびられながら苦しい日々を送る。

街では武術大会が開催されようとしていた。
尚武国術館は大本命とされる道場であったが、これを妬んで何とか大会をモノにしたいと考えていた悪辣な百勝武館の田豐(ティエン・ファン)館長は息子の〔人冬〕林(トン・リン)を使って尚武国術館に様々な嫌がらせを展開。さらに使い手の趙雄を呼び寄せ尚武国術館の門弟たちを痛めつけた。

戦いたくても師匠の手前、何も出来ないでいた羅烈はその師匠から下働きは彼の根性を鍛える修行だったと諭される。そして門下生の誰をも差し置いて秘技・鉄掌を授けられる。
これが面白くない兄弟子の南宮勳は百勝武館と結託。
松林で羅烈を待ち伏せをかけた南宮勳らは羅烈をリンチし、これで"鉄掌"は使えまいと手を潰してしまう。

絶望の羅烈だったがヒロイン汪萍(ワン・ピン)と影から羅烈のことを支えていた別の兄弟子のフォローもあって手は順調に回復。むしろ文字通り怪我の巧妙か、さらにパワーアップした"鉄掌"を会得する。

尚武国術館長では大会出場者を決めるために試合が行われていた。
手の怪我の為、候補に名乗り出ないと思っていた羅烈は全快して参加。
遂には兄弟子・南宮勳を倒し、代表者になってしまう。

これがまた面白くない南宮勳はまた百勝武館と結託しようとしたが、
「もういいです」
といった田豐の指示で〔人冬〕林が南宮勳の目を抉り取り、追い出す。

いよいよ大会。
さらに百勝武館は会場に向かう羅烈を襲うという卑劣な真似をしたが、これを跳ね除けて羅烈は大会に参加。
身に着けた"鉄掌"で〔人冬〕林を倒し、遂には優勝する。
怒り心頭の田豐は、房勉師匠に挨拶するフリしてこれを刺殺。

殺された師匠を前にして怒り爆発の羅烈であったが事件は先に起こる。
がっかりして帰った田豐、〔人冬〕林親子。
部屋の灯りを点ける前に暗闇に潜んでいた南宮勳が逆襲。
逆に今度は〔人冬〕林は目を抉り取られる。
「俺の息子にっ!」
と田豐が南宮勳を殺そうと思ったら間違って息子を殺してしまう。
改めて南宮勳を殺したところに羅烈が乱入をかけるが、地位も息子も失ってしまった田豐は自害するのであった。

物語はこれで終わりではなかった。
趙雄が羅烈を待ち受けていたのだ。
今、最後の戦いに男たちが臨む・・・


終劇





いわゆるショーブラのこの当時のアクション映画というのは、イコール張徹(チャン・ツェー)映画であったのかもしれない。
それを証拠に本作ではショーブラお馴染みの脇役・チョイ役にいたる豪華なメンバーがいない。徐蝦しか見つからなかった。
勿論、スター三羽烏の姜大衛(デビッド・チャン)、狄龍(ティ・ロン)、陳觀泰(チェン・カンタイ)も出演していない。
武術指導もお馴染みの唐佳(タン・チァ)や劉家良(リュー・チャーリャン)ではなく、そのアシスタント的存在であった劉家榮(リュー・チャーヨン)や陳全が本作のメイン武術指導に当たっている。

要は贅沢にキャストや予算を使えなかった上での制約ある中で、どうやってインパクトある作品を生み出せるのか。
監督・鄭昌和(チェン・チャンホー)の手腕はここに光る。
今の目で見れば、ストーリーは凡庸だし華やかさの無い映画に映ってしまうこともしょうがないことではあるが、当時にしてみれば際立つ残酷描写や羅烈、趙雄、〔人冬〕林、南宮勳そして楊斯(ヤン・スエ)と死ぬほど男くさい濃すぎるメンバーの抜擢による濃厚な色の統一感、

KILLBILL」でも散々出てきた主人公の必殺技がヒーローちっくなところなど、細かいところに工夫が感じられる。

んでもってこれは個人的見解だが本作は「吼えろ!ドラゴン 起て!ジャガー」のリメイクではなかったのだろうか。
主役は「吼えろ!ドラゴン 起て!ジャガー」で悪役に扮した羅烈が演じて、対立する道場の構図と同じように師匠が房勉で、敵役は趙雄で一回こっぴどくボコにされた主人公が再起して必殺技を身につけ復讐を果たす展開はほぼ同じである。
ということは、本作の大ヒットも大きく見れば王羽(ジミー・ウォング)の影響が関係してるのかもしれない・・・やっぱり王羽万歳?

しかし、
当HPでも数多くの羅烈出演作をレビューしてきたが、もしかして今回が初めてか?彼の主演作と言うのは・・・

大女侠」は主演とは言えないと思うしなぁ・・・
■CAST&STAFF
監督 鄭昌和(チェン・チャンホー)
出演 羅烈(ロー・リエ)
汪萍(ワン・ピン)
趙雄
房勉(ファン・ミエン)
田豐(ティエン・ファン)
〔人冬〕林(トン・リン)
王金鳳
・森
南宮勳(ナン・ゴンクン)
楊斯(ヤン・スエ)
顧文宗
游龍
染野
楊澤霖
金淇珠
陳鳳鎮
洪性中
曾楚霖(ツァン・チョウラム)
徐蝦
武術指導 劉家榮(リュー・チャーヨン)
陳全
脚本 江揚
音楽 陳勳奇(フランキー・チェン)
※クレジットは陳永U
製作 邵逸夫(ランラン・ショウ)
制作年度 1972


拳撃
Duel of Fists
フィストバトル/拳撃



なかなか何を書いていいものか難しい作品である。
ただ、これもやはり張徹(チャン・ツェー)監督の手腕の高さが光る一作である。


流れ


趣味で功夫やってる建築士の姜大衛(デビッド・チャン)は、仕事中に父が倒れたとあって急いで病院へ。
「実はお前には腹違いの兄さんがおるぞ」
と言って事切れる親父。
姜大衛はその兄貴を探す旅に出ることを決意。
たぶん有休とってタイに出発。
イカした(イカれたとも言う)ファッションに身を包み、タイの町を満喫する姜大衛。
こいつ、兄貴探し名目で観光しとりますがな。

一方でタイのキックボクサー・狄龍(ティ・ロン)は新進気鋭のボクサーとして名を挙げていたが、今キックボクシング会は元キックボクサーにしてプロモーターの陳星(チン・セイ)によって牛耳られていた。
陳星はまず狄龍に
「ウチの事務所に来ない?」
と勧誘したが、狄龍が悪辣なプロモーターの言いなりになるわけがない。
ということは見せしめである。
早速タイで劉蘭英という彼女を作ってみたファッショナブルな姜大衛が観戦する試合。
ここで陳星事務所所属の現チャンピオン・谷峰(クー・フェン)が試合。
観戦する狄龍の前で
「次はお前だっ!」
と言わんばかりに対戦相手をボコボコにしてぶち殺す。

「なんて卑怯な奴らだ」
と見ていたこの時は単なる観客である姜大衛は思っていたが、相変わらずタイ観光が楽しそうな感じが気楽でいいなぁと。俺も海外旅行したいなぁと。

狄龍の彼女のである井莉、そういえば井莉は時代劇扮装が多いのでミニスカート姿ってのは貴重だなぁ・・・
ってのはおいといて、
「谷峰に殺されるわっ!」
と井莉はチャンピオンと戦うことを止めようとするが、
「じゃ止めます」
ともし狄龍があっさり引き下がったら物語はいったいどうなってしまうんだろうというか、そんな物語はこの世に存在するのだろうか。

谷峰vs狄龍!

裸になった狄龍を見て姜大衛びっくり!
真の兄貴の証拠である刺青を狄龍がしているではないか!
「兄さん!」
しかし今は試合中で再会の喜びをしている暇などない。
やはり谷峰は屈強、さらに陳星の怒りを買っている狄龍なので谷峰は容赦無し。
リング上なので助けようもないまさに晒し者状態が続いたが、こんなことでくたばる狄龍ではなかった。
何かに吹っ切れたかのように・・・いいやまるで「ヤング・マスター/師弟出馬」のクライマックスのジャッキーのように復活すると、谷峰をボコボコに。
見事、谷峰を自分1人の力で倒し、チャンピオンになる。

優勝だ!チャンピオンだ!弟だ!俺が兄さんだ!
と喜んでた狄龍、姜大衛であったが裏でコトは動いていた。

意気消沈で控え室で不貞寝していた谷峰。
この谷峰を以前谷峰が殺したボクサーの弟である王鍾(ワン・チュン)が仇討ちで襲い、これを絞殺。
見つけた陳星は試合に負けた怒りも合わせて爆発。
王鍾の家に手下を向かわせる。
そのお隣さん(?)だった狄龍なので、手下と鉢合わせてバトル!

近所の人から王鍾の話を聞いた狄龍、姜大衛はそのまま陳星屋敷に向かったのだが、王鍾は既に惨殺されていた。
トチ狂ったファッションの姜大衛、
チャンピオン狄龍、
そして伝説のキックボクサーとしてメチャ強い陳星の最後の戦いが始まった!


終劇





少し歪な形を残している映画ではある。
その歪さとはここでは残酷さという部分を指す。
作品そのものは完全にかっちょいい姜大衛のファッションショーとかっちょいい上半身裸の狄龍こそが魅力の全て。
おまけでタイ観光もしたよってところか。
確かに本作は彼らの魅力を余すことなく描写している作品である。
それだけに残酷描写が余計に感じてしまうのはちょい残念だが、張徹だからしょうがないといやそうやな。
とはいってもショーブラの2大スターを使って作る映画はいつも血を血で洗う復讐劇、というわけではなく客層に合わせて作品の色を変えて見せることが出来る張徹の腕前はやはり高い。

それと狄龍の息子・譚俊彦が
「ロッキーより先」
って語っていたのでそう考えるともっと評価して良いのだろう。
いわゆる格闘スポ根モノとしての面白さも定番ながら十分あるのではなかろうか。

でもこれが「続・拳撃 悪客」に繋がると考えると
「今度は日本観光だ!」
というのがよくわかりますね。

■CAST&STAFF
監督 張徹(チャン・ツェー)
出演 姜大衛(デビッド・チャン)
狄龍(ティ・ロン)
井莉
陳星(チン・セイ)
谷峰(クー・フェン)
劉蘭英
王鍾(ワン・チュン)
乃濃
井E
楊志卿
唐迪
胡威
王光裕
邸明
李鵬飛
袁和平(ユアン・ウーピン)
任世官(ニン・シークァン)
袁信義(ユアン・シュンイー)
袁祥仁(ユアン・チョンヤン)
陳全
武術指導 劉家良(リュー・チャーリャン)
唐佳(タン・チァ)
脚本 倪匡(イ・クオン)
音楽 陳勳奇(フランキー・チェン)
※クレジットは陳永U
製作 邵仁枚(ランミー・ショウ)
制作年度 1971


天涯・名月・刀
The Magic Blade
マジック・ブレード



いきなり冷酷な話。
残念ながら張徹(チャン・ツェー)監督は有名な監督で・・・
といったところで世間一般的に知られている監督、
スティーブン・スピルバーグやジョージ・ルーカス、黒沢明やリュック・ベンソンや中国系なら李安(アン・リー)、張藝謀(チャン・イーモウ)、呉宇森(ジョン・ウー)、北野武は元々タレントとしての名が先なので別で。
ぶっちゃけ、
日本人で張徹なんか誰も知らない
と言ってもいいぐらいの低さがものすごーーーく残念である。

とは言っても昨今のリバイバルな雰囲気で再び王羽(ジミー・ウォング)がクローズアップされたり、リマスターに伴う日本での発売で過去の張徹作品が掘り出されて以前に比べれば少しは浸透してきてはいる。当HPなんかはその辺を世の中に広める役割の一端を担っているともいえるので頑張りたい。

しかしもってさらに置き去りにしないでほしいのは本作の楚原監督である。
後年の俳優としての活躍も印象的だが、やはり職人中の職人である職人芸を感じさせる作品の質の高さを感じ取ってもらいたい。


流れ


"傅紅雪"に扮する狄龍(ティ・ロン)は以前打ち負かしたことのある、羅烈(ロー・リエ)からの再挑戦を受けて廃墟と化した町で戦う。
その果し合いの最中、刺客が2人を襲う。
刺客が狙う標的は狄龍ではなく羅烈で、2人は一致団結してこれを蹴散らす。
このハプニングで意気投合した2人は客棧で会食。
しかし、どういうわけかこの客棧周りにも隠れて敵が一杯。
「まともに食ってられんな」
ということで刺客どもを蹴散らすと、羅烈行き付けのお店へ(いちげんさんお断りって奴ですな)。

綺麗な料亭では女将美人の恬〔女尼〕(ティー・ニー)が。
この頃、正直言って個人的に好みだ。幸薄い感じが。
その恬〔女尼〕が
「武林No.1の黄様は剣豪の狄龍と最強武器の"紅葉"を恐れてらっしゃる」
というわけで、狄龍と羅烈は最強武器"紅葉"を求めて次へ。

"紅葉"を持っているとされる井Eの館へ。
意外にも歓迎される狄龍と羅烈。
実は"紅葉"は当然黄様に狙われているので、この"紅葉"を使って良いから黄様を逆に倒して欲しいとのこと。
というところで側近である・森が裏切った。彼は黄様が送り込んだスパイだったのだ。
ところが、・森が奪い取った宝箱の中は空っぽ。
井Eが真の"紅葉"を使って・森を退治するのだが、井Eも・森の毒矢に冒されてしまう。
「娘を頼む・・・」
といって井Eは事切れる。

狄龍と羅烈は井Eの一人娘である井莉を連れて引き続き旅を続ける。

とうとう、黄様が本格的に動き出す。
自前の刺客である、
谷峰(クー・フェン)、李麗麗(リリー・リー)、徐小強(ツイ・シャオチャン)、樊梅生(ファン・メイサン)、顧冠忠らが動き出したのだ。

彼ら刺客たちを一人また一人とピンチを乗り越えながら蹴散らしていく狄龍と羅烈であったが、いつの間にか羅烈は行方不明に。

熾烈な戦いと騙し合いの末に狄龍が見たものは、
そして黄様とは?


終劇





長編小説を2時間にまとめているので、主人公の性格描写がもうちょっと細かくあったらなぁという気持ちは残るが、観ていて気持ちの良いアドベンチャーな時間を過ごせる武侠片である。

古龍の武侠片はユニークな敵キャラクターが登場するのが特色であるが、本作も人肉饅頭を売るババアの殺し屋とか、将棋を指さないと戦えない殺し屋とか、琴を奏でないと戦えない殺し屋とかたくさん出てきて楽しいです。
今回の物語は後もう一ひねりあったらもっと面白かったんだけど、十分及第点か。

それにしても評価したいのは画作りそのもので、一つ一つのシーンの豪華なセットをフルに使った画そのものも存分に楽しんでほしい。ロケの壮大さは全く無いが、セットを使った独特の雰囲気は他には無いものである。

■CAST&STAFF
監督 楚原
出演 狄龍(ティ・ロン)
羅烈(ロー・リエ)
井莉
恬〔女尼〕(ティー・ニー)
谷峰(クー・フェン)
李麗麗(リリー・リー)
徐小強(ツイ・シャオチャン)
樊梅生(ファン・メイサン)
井E
顧冠忠
唐菁
・森
呉杭生
徐忠信
元華(ユン・ワー)
山怪
袁信義(ユアン・シュンイ−)
武術指導 唐佳(タン・チァ)
黄培基
脚本 倪匡(イ・クオン)
司徒安
原作 古龍
音楽 陳勳奇(フランキー・チェン)
※クレジットは陳永U
製作 邵仁枚(ランミー・ショウ)
制作年度 1976


十三太保
The Heroic Ones
英雄十三傑



香港で年間配収4位('70)に食い込んだヒット作である。
自分がそろそろ本格的におっさんと呼ばれる年齢になってきてやっとこさこの辺の作品を網羅しだした感じだなぁ・・・(感慨にふける)


流れ


つーか、これ五代十国時代なんだよなぁ(907年-960年)。
また古い時代のお話をやったもんだ。
私も知ってると言うほど知らないけど、朱全忠や李克用の名前ぐらいは知ってるぐらいでそれはまた。

んで、李克用って偉い将軍と言うかなんちゅうか、ともかく彼には義理本物含めて13人の息子がいてそれが、

【十三太保】
金漢
鮑嘉文
羅威
南宮勲(ナン・ゴンクン)
劉剛
宋原
黄培基
王光裕
陳全
劉家榮(リュー・チャーヨン)
狄龍(ティ・ロン)
王鍾(ワン・チュン)
姜大衛(デビッド・チャン)

長男が金漢で、次男が鮑嘉文で、三男が羅威で、四男が・・・
とこんな順番で末っ子が姜大衛(デビッド・チャン)です。
んで、彼らが当時戦っていた敵だから・・・黄巣軍相手に勝ちまくっていたと。

「そりゃすげーじゃねーか」
ってことで、陳星(チン・セイ)扮する将軍・朱全忠が祝いの席に出席するのですが、十三太保+親父・谷峰(クー・フェン)扮する李克用はへべれけの呑みまくり。いやはや張徹(チャン・ツェー)監督だ。こんだけ呑めや歌えやしてるのに女の色気は全くねぇ。

「なにやっとんだ君たちは」
流石にバカ騒ぎする十三太保+親父を怪訝な顔で見つめていた朱全忠は、一番フラフラしてた姜大衛に難癖つけるのだが、その姜大衛と賭けをして朱全忠が負けてしまい、皇帝から貰った締め帯を取られてしまう。

「ふんがー!!」
怒った朱全忠。
はとりあえずほっといて物語は進む。

攻撃予定だった黄巣軍が占拠する町をどうするかってことで、
「忍び込んで党首の首だけ獲って来るべ」
って感じで、十三太保(の半分ぐらい)が動き出す。
最後の最後までバレないようにやる予定で上手くいっていたのだが、親父の李克用が末っ子・姜大衛ばっかり可愛がるもんだからそれを妬んでいた南宮勲(ナン・ゴンクン)と王鍾(ワン・チュン)が手柄欲しさに突然敵に強襲!
おかげで大軍勢と戦うことになってしまい、党首の首も取れぬままに逃げ出す。これを匿ってくれたのが町娘の李麗麗(リリー・リー)であった。
・・・って、今度は早速その李麗麗を強姦しようと襲い掛かる南宮勲と王鍾。
どーしようもねー奴らだ。ちゃんと口説け。
ここに姜大衛が割って入り李麗麗を助けたことから、兄弟の間で決定的な溝が生じる。

「首を刎ねろ!」
作戦失敗の原因を作った南宮勲と王鍾を殺してしまえの親父・李克用。
ま、確かに一部の息子しか可愛がってないみたいですな。
しかし、他の息子たちの引止めによって死刑は免れる。これこそが地獄の始まりだった。

一方、些細なことから李克用を敵視するようになった朱全忠は、彼を出し抜いて出世することを決意。南宮勲と王鍾vs姜大衛であることを知っていた朱全忠は彼らを勧誘、罠の提案を導き出して、李克用と狄龍(ティ・ロン)らを宴に招く。
冒頭の続きのようにぐびぐび酒を呑みまくる李克用と狄龍ら。
遂には全員が酔い潰れてしまった。
そこで強襲!
朱全忠が用意した兵士たちが一気に襲い掛かる!
何とか起きた狄龍が酔いながらも孤軍奮闘の活躍でその場を凌いでいたが、仲間は次々とやられ側近の唐炎燦(トン・インチャン)、鄭雷らも命を落とす。
自身も既に致命傷を負っていた狄龍は弁慶ばり、いやそれ以上かという忠臣ぶりのロンリーファイトで敵を塞ぎ、遂には李克用を他の息子たちのところまで送り届けるのであるが、仁王立ちで絶命!壮絶な死である。

この一連の謀略には南宮勲と王鍾が関わっているのではないかと疑念が湧く十三太保たちであったが、先に動いたのはその南宮勲と王鍾であった。
狄龍死の悲しみの余韻を消さないままに、今度は姜大衛を上手く騙した南宮勲と王鍾は何と姜大衛の五体を縄で縛って馬で引っ張りその体をバラバラにしてしまう。張徹映画史上

新片腕必殺剣」の狄龍の死に様と並んで凄惨過ぎる死である。

南宮勲と王鍾の謀略に気づいた李克用は、他の残った十三太保を使って二人を追う・・・


終劇






普通に考えりゃ主役2人が途中で死んでるので、「これは?」と思うだろうがここは復活を遂げたfake様のHPを参考にしてくださいまし。

そろそろこの、
あーあー♪
ああー♪
ああー♪
ああー♪
ああー♪
ああー♪
ああー♪
ああー♪
ああー♪
という本作でも使われており、

「怒れるドラゴン/不死身の四天王」でもテーマ曲でもあり、「出籠馬〔馬留〕」のテーマ曲でもあり、「ドラゴン少林拳」で流れることもあり、「大武士與小〔金票〕客」で流れることもあり、他にもたくさんあるだろうこの曲の元ネタが知りたい。

感想として張徹監督よりも胡金銓(キン・フー)監督が好みそうな題材ではある。彼ならもっと淡々と大地の視線で物語を捉えただろうから、それを想像するのも楽しいが、やはりこの歴史を熱い"漢"のドラマでかつ娯楽大作としてカッチリ仕上げてきた張徹監督の腕を褒めるべきだろう。
流石に造詣が深い張徹監督だけあって、歴史考証も確かなものが・・・あるかどうかってのは俺が歴史造詣に深くないとわからないのだが、普段の清朝末期を扱った作品には出てこない建造物や古美術品が登場しているのでそうなのだろう。李克用の実際の系譜に倣って十三太保もちゃんとその手の服装をしているのも興味深い。

アクション面でも嫌というほど充実しており、歴史ものと言いながらも剣劇アクションとしての面構えは何の申し分も無い。
ちょい残念なのは十三太保のうち、半分以上はロクに描写されていないといったところか。劉家榮(リュー・チャーヨン)が十三太保にキャスティングされていたので、大きな出番があるのか?と期待したが顔さえロクに映らない・・・

それはともかく、この手の歴史に好きな人は勿論、純粋に剣劇アクションとしても十分楽しめるし、ちょっと私は自分の世代について思ったところがあったのですが、私の世代というのは子供の時に、
「キン肉マン」
「北斗の拳」
「魁!男塾」
「ジョジョの奇妙な冒険」
面白いところで横山光輝の「三国志」
このような熱い"漢"の物語を読んで育ってきている世代だけに、香港映画に興味が無くともその辺が今でも好きな人には楽しめると思うんですけどね、張徹作品。

■CAST&STAFF
監督 張徹(チャン・ツェー)
出演 姜大衛(デビッド・チャン)
狄龍(ティ・ロン)
谷峰(クー・フェン)
陳星(チン・セイ)
王鍾(ワン・チュン)
南宮勲(ナン・ゴンクン)
金漢
羅威
鮑嘉文
黄培基
劉剛
宋原
陳全
劉家榮(リュー・チャーヨン)
王光裕
李麗麗(リリー・リー)
楊斯(ヤン・スエ)
唐炎燦(トン・インチャン)
鄭雷
藍偉烈
金童
洪性中
李海龍
陳輝
雷龍
袁和平(ユアン・ウーピン)
盧慧
古龍
袁祥仁(ユアン・チョンヤン)
袁信義(ユアン・シュンイー)
鄭康業
曾楚霖(ツァン・チョウラム)
周小來
陳鳳真
岑潛波
王青(ワン・チン)
黄梅
何柏光
任世官(ニン・シークァン)
徐蝦
馮克安(フォン・ハックオン)
武術指導 劉家良(リュー・チャーリャン)
唐佳(タン・チァ)
劉家榮(リュー・チャーヨン)
脚本 倪匡(イ・クオン)
張徹(チャン・ツェー)
音楽 王福齢(ワン・フーリン)
製作 邵逸夫(ランラン・ショウ)
制作年度 1970


書剣恩仇録
The Emperor And His Brother
書剣恩仇録



一言で言えば古龍武侠片と比べて金庸(カム・ヨン)武侠片の方が品格が上って印象を受ける。
怪しすぎるキャラクターが乱立してくる古龍武侠片のようなものではなく、歴史の扉にもう一歩深く入りこんでおり、興味深い。


■流れ



白彪(パイ・ピョウ)扮する乾隆帝にはある出生の秘密があった。
その秘密を知る紅花会のケ偉豪、陳hh夫妻に対し、
「死人に口なし」
とばかりに夫妻暗殺を羅烈(ロー・リエ)将軍に命じる乾隆帝・・・
ちょっと待て、後で1つやってみたいことがある。

羅烈軍に追われていた夫妻は名家・谷峰(クー・フェン)のところに身を落ち着ける。反清復明の同士として彼らを快く出迎えた谷峰であったが、羅烈軍の捜索の手が入った時に思わぬ落とし穴が。
羅烈が手にしていた望遠鏡を興味深く見ていた谷峰の幼き息子、
「夫妻の居場所を教えてくれれば、これをやる」
羅烈の勧誘に幼き息子は夫妻の居場所を教えてしまい、妻・陳hhは弟子の顧冠忠と逃げ出したものの、夫・ケ偉豪は捕まってしまう。
逃げ出した陳hh、顧冠忠。
実は顧冠忠は陳hhのことを好いており、
「人妻に手を出した者は殺す」
といった紅花会の掟もあって顧冠忠は姿を消し、陳hhは紅花会に戻る。

「裏切り者は誰だ!?」
夫妻を売った裏切り者を探す谷峰であったが、幼き息子がその裏切り者であったことを知り、やむを得ずこれを処断する。

谷峰家が夫妻を売った!?
反清復明であったはずの谷峰家に裏切られたと聞いて、谷峰家に駆けつける紅花会。宗主は狄龍(ティ・ロン)である。
事態は予断を許さなくなるが、狄龍との1vs1の勝負に負けた谷峰が事の真相と幼き息子の亡骸を見せることで、両者は和解。
羅烈軍が谷峰家を潰しにかかってきたので谷峰家は解散し、谷峰と娘の文雪兒は紅花会に身を寄せることに。

一方で宗主・狄龍は一人、身分を隠して乾隆帝との談義に花を咲かせていた。
反清復明のボスなのに実に大胆不敵。
その夜、またたった一人で乾隆帝の屋敷に忍び込んだ狄龍・・・
使えそうな部下はたくさんいるんですけどね。つーか、部下使え。
隠し通路から暗い洞窟を抜けて遂にケ偉豪を見つけ出すのであるが、羅烈に見つかってしまい、バトルの末に一旦退散。

ひょんなことから谷峰の娘・文雪兒と結婚することになってしまった紅花会の知恵袋であり"武諸葛"と呼ばれる孫健(スン・ジェン)が練ったケ偉豪奪還作戦を開始する紅花会一門。
しかし、意外にあっさりその策を羅烈に見破られ、塔に閉じ込められてしまう紅花会一門・・・なにが"武諸葛"じゃ!ボロボロやんか!
紅花会危機一髪!
これを身を挺して救ってくれたのは姿を消して出家していた顧冠忠であった。

またしても奪還失敗の紅花会。
今度は宴会の席で乾隆帝を誘拐し、乾隆帝←→ケ偉豪ってな感じにしようという作戦だが、相変わらず切れ者の羅烈が目を光らしており、はてさて上手くいきますかどうか・・・・?

終盤にはゲスト出演の楊菁菁、元コが登場する華やかなバトルシーンがあるよ!


終劇





やはりは楚原武侠片。
その面白さの安定度の高さは素晴らしいものである。

今まで「流星・胡蝶・剣」以前の作品も含めてハズレなし!
ついでに周潤發(チョウ・ユンファ)の「大丈夫日記」も。

本作も典型的な武侠片の1つとしてとても楽しめる作品になっている。
乾隆帝という比較的庶民的な皇帝に対して、紅花会がどのように関わっていくのかという点だけ観ていても面白いし、それぞれブレイク前である鄭則士(ケント・チェン)や元華(ユン・ワー)、元華なんかは楚原武侠片脇役の完全な常連さんなのだが本作の役柄はかなり美味しい方である。

アクション面でもたくさん詰め込まれているし・・・ただ狄龍の分身技はちょっと失笑ものだが。
クライマックスは紅花会連中と羅烈が用意した武術軍団の対決が用意されており、申し分なし。

また白彪と狄龍という取り合わせも新鮮味があって良かった。
いつもいつもこれが狄龍と韋弘とか、そんなんじゃね・・・

ほんで・・・
後で1つやってみたいことがある。
前に1回やってるがしょうがない、もう1回やるか。


羅烈が出てる作品幾つレビューしたんだ?

「大女侠」
「吼えろ!ドラゴン 起て!ジャガー」
「キング・ボクサー大逆転」
「五毒天羅」
「流星・胡蝶・剣」
「三少爺的劍」
「マジック・ブレード」
「刃覇劍」
「獨臂拳王勇戦楚門九子」
「獨臂雙雄」
「太極八蚊」
「天羅・飛沙・夕陽紅」
「大武士與小〔金票〕客」
「少林虎鶴拳」
「少林寺三十六房」
「ドラゴン太極拳」
「虎姑婆」
「醉猴女」
「魔界天書」
「獣たちの熱い夜 ある帰還兵の記録」
「少林皇帝拳」
「続・少林虎鶴拳 邪教逆襲」
「マッドクンフー猿拳」
「伏撃」
「ガッツ・フィスト・魔宮拳」
「ミッドナイト・エンジェル暴力の掟」
「激突!少林拳vs忍者」
「獵魔者」
「タイガー・コネクション」
「サイクロンZ」
「奇蹟/ミラクル」
「愛と欲望の街/上海セレナーデ」
「ポリス・ストーリー3」
「フライング・バトル」

忘れてるのもあるかもしれないが、たぶんこの33本である。
意外こんなもんかな?って感じもあるが、
今後も彼の出演作は続々レビュー予定なのでお楽しみに?

■CAST&STAFF
監督 楚原
出演 狄龍(ティ・ロン)
白彪(パイ・ピョウ)
谷峰(クー・フェン)
羅烈(ロー・リエ)
文雪兒
孫健(スン・ジェン)
王戒
黄敏兒
鄭則士(ケント・チェン)
元華(ユン・ワー)
關鋒
艾飛
顧冠忠
ケ偉豪
陳hh
楊志卿
元彬
楚湘雲
廖麗玲
尤翠玲
井E
林崇正
元コ
呉杭生
楊菁菁
楊熊
葉天行
武術指導 ケコ祥
元華(ユン・ワー)
元彬
脚本 倪匡(イ・クオン)
原作 金庸(カム・ヨン)
音楽 王居仁(エディ・ワン)
製作 方逸華(モナ・フォン)
製作総指揮 邵逸夫(ランラン・ショウ)
制作年度 1981


楊過與小龍女
Little Dragon Maiden
レスリー・チャンの神鳥英雄伝



私なんかはほとんどが後付け後追いになっちゃうのだが、後追い的な説明をすると本作"楊過と小龍女"、

この楊過と小龍女は「カンフーハッスル」に登場する元華(ユン・ワー)と元秋(ユン・チウ)の大家夫婦である。説明が逆なのだが、それを想像して本作を見るとますます楽しいのだ。


流れ(簡単に)


張國榮(レスリー・チェン)扮する楊過はやんちゃだが武術は弱い子。
戦にまぎれて毒にやられて戦死した剣士の握り飯を食おうとしたが、その際に毒に触れてしまって大変なことに。
これを救ったのがやたら逆立ちで歩く蝦蟇拳の羅烈(ロー・リエ)で・・・
羅烈さんレビュー作35本目です(笑
この恐らく強いが頭の弱い羅烈が解毒してくれはするのだが、
「その代り、俺が父親」
と義親子の契りを交わしてしまう。

実際、楊過には陳觀泰(チェン・カンタイ)と劉雪華という両親がおり、実は名家。
息子のやんちゃぶりに呆れた親父は孫健(スン・ジェン)を宗主とする派に楊過を弟子入りさせるのだが、入門の際にその派の後継者候補である尹志平、趙志敬といざこざを起こしたために入門後の楊過は苛められることに。

なんだかんだでボコボコにされた楊過は、その様子をいぶかしく見つめていた謎の老婆に助けられる。
老婆は孫健宗主が護る古墓派の祖で、ここに身を預けられた楊過は古墓派の翁静晶扮する小龍女に今度は弟子入りをする。

弟子入りといっても、2人は同年代の男女。
しかも古墓派は師弟同室に寝るといったしきたりがあり、ごく自然な流れで愛を育んでしまう。

・・・途中の羅烈と谷峰(クー・フェン)の絡みのシーンがどうも意味不明。
谷峰さんはこの後も物語にほとんど関わりがないのに出ていたな。

小龍女との間で腕前を上げ、愛も深いものにしていた楊過であったが悲劇は起きる。
義親父である羅烈に再開した楊過は
「誰が親父だ?」
とそんなこと完全に忘れていたアホ羅烈に新たな技を教えてもらうのだが、羅烈がふざけて小龍女に金縛りの術をかけて去っていってしまったため、たまたま動けない小龍女を見つけた尹志平は我慢できずに強姦してしまう。

金縛りでわからなかった小龍女は楊過と契りを交わしたと思っていたが、当の楊過は何のことかわからず。
怒った小龍女は楊過の下から去ってしまう。

小龍女を捜し続ける楊過。
その一方で楊過の両親と確執を持っていたどっかの王子・顧冠忠が攻め入り、陳觀泰はピンチに陥っていたのだが・・・


終劇





また話が上手く説明できてなくてスマヌ。
最初に不満を言うと、余りにラストが唐突でこれが純粋な功夫映画ならわからんでもないが、エピローグが欲しかったというよりはこれは完全な尻切れトンボである。あれはどうなった?これは?が多すぎるのだ。

しかしもって興味深い点が多い作品である。
これも順番が逆ではあるが、張國榮が陳觀泰や羅烈、孫健といった往年の功夫スターと絡む点が非常に新鮮に映るし、ほとんどダブルでありながらも彼の剣劇アクションと言うのもなかなかに珍しい。

翁静晶は女優としてはほとんど知られていないが劉家良(リュー・チャーリャン)の愛人としては有名で(惠英紅の2番手)、劇中のその強気な性格付けが何となく惠英紅とかぶるのも面白い。やはり好きになるタイプというものはあるんだなぁ・・・ちなみに俺は今まで恋した人のほとんどが俺より背が高い・・・それはともかく。

アクション面で見るとその劉家良や唐偉成(ウィルソン・タン)等、有名な武術指導家が抜けてしまった後のショーブラではあるが、それを感じさせないワイヤーを駆使したテンポよいチャンバラは良いものがある。殺陣師の頑張りもあるがこれは

吼えろ!ドラゴン 起て!ジャガー」で撮影を担当して小気味よい功夫アクションをカメラカットで見せた華山(ファ・シャン)監督のセンスが光っているのだと感じる。

も1つ言えば「カンフーハッスル」で完全なカカア天下となっていた夫婦像が出会いから既にカカア天下だった(何せ師匠ですから)のを見ると思わず笑ってしまう・・・が、自分の現状を考えると付き合う人ってあれですねぇ・・・それはともかく。

■CAST&STAFF
監督 華山(ファ・シャン)
出演 張國榮(レスリー・チェン)
翁静晶
陳觀泰(チェン・カンタイ)
谷峰(クー・フェン)
羅烈(ロー・リエ)
恬〔女尼〕(ティー・ニー)
孫健(スン・ジェン)
劉雪華
顧冠忠
趙志敬
尹志平
武術指導 劉志豪
江道海
脚本 譚寧
蔡乃斌
原作 金庸(カム・ヨン)
製作 方逸華(モナ・フォン)
製作総指揮 邵逸夫(ランラン・ショウ)
制作年度 1983


雍正與年羹堯
The Rebellious Reign


龍方(ロン・ファン)といえば、パッと思い出す方も少ないのではないかと思うが、

ゴッド・ギャンブラー」で張敏(チョン・マン)を犯そうとして2Fから落として殺してしまったあの悪い奴、と言えば観てる方なら「あいつか」と思い出すだろう。更に「ゴッド・ギャンブラー3」でも鞏俐(コン・リー)相手にほぼ同じ事をしており、更に更にその悪いお顔立ちからノワールものの悪役と言えば成奎安(シン・フイオン)と並びはしないものの、彼も十分な常連である。
その昔、彼を第2のジャッキー・チェンにしようとした大馬鹿・・・い、いやともかくその龍方も立派な功夫スターであろうとした時代があった。「南拳北腿活閻王」や「~刀流星拳」といった李作楠(リー・ツォナン)作品の脇役でくすぶっていた彼はジャッキーに逃げられた羅維(ロー・ウェイ)に見出されて主演に抜擢。さて・・・


流れ


龍方扮する年羹堯は反清復明グループの有志。
師匠・陳慧樓(チェン・ウェイロー)と共に画策を重ねた年羹堯は清の武官になって"草"となり(つまりスパイ)、清を内側から崩そうと考える。
オープニングから刺客が襲う功夫アクションが素晴らしい。ここからいきなり龍方の功夫スターとしての腕前を十分に堪能できる。

町で陳軍堡扮する第十四皇子といさかいを起こした徐忠信を助け、
「こいつやるじゃん」
と腕を見初められる年羹堯。
今度は徐忠信とバトルしながらお互いが反清復明であることを確認するとその場を別れた。

ただ実際に年羹堯を見込んだのは第十四皇子ではなく第四皇子の徐少強(ツイ・シャオチャン)。
些細なことから徐少強の側近・権永文とやりあった年羹堯はそのまま徐少強のお付に。
・・・つーか、かの皇太子がやたら町をホイホイふら付いているのもどうかと思うが。

ここからの描写が希薄な気はするのだが、つまり年羹堯が何にもしてない感じがするのだが、遂に重要な指名を徐少強が下す。
皇帝が書いた"王位継承権"の書を盗んで来いというのだ。

盗みました。
・・・つーか、かの皇帝が書いた書をいとも簡単ですな。

「4じゃなくて14かよ!」
書には第十四皇子が皇帝にって感じで。
怒り狂った第四皇子・徐少強は書を改ざんして第四に書き換えたりなんかして。この話はいつも出てきますが、史実でも似たようなことがあったんでしょうかね。

雍正帝(徐少強)誕生!
ここから物語は加速。
"王位継承権"の書を盗んで名を挙げた年羹堯は皇帝の武官に成り上がる。
しかし、これを疎んじていた権永文は年羹堯を調査。
遂には年羹堯は陳慧樓とつるんでいることが露見する。
このバトルシーンの場所は

蛇鶴八拳」でジャッキーが女2人と戦ったあの屋敷である。

「ふざけんなっ!」
怒った雍正帝は年羹堯を含む反清復明グループ皆殺しを命令。
いともあっさり見つけられたアジトへの強襲から始まり、町での清軍vs反清復明グループの壮絶な戦いが繰り広げられると、反清復明グループメンバーもみんな強いのだが、ザコに混じった権永文が強いので一人一人と命を落としていく。

拳精」でヒロインを務めた武文秀も良いアクションを見せるのだが、権永文に撲殺される。・・・つーか、ロクに台詞も無かったが。

遂に追い詰められた年羹堯、徐忠信と組んでバトルを繰り広げるが多勢に無勢で傷つき、致命傷を負いながら権永文は何とか倒すも徐忠信は殺られてしまい、残る年羹堯は最後の力を振り絞って清軍を倒していくが、眼前にいる雍正帝には全く及ばないのであった・・・


終劇





・・・ていうか、たぶんfakeさんも醒龍さんところのブログ「電影フリークス」からのインスピレーションでお書きになられたかと思いますが、作品が重なったのは全くの偶然なんですよ〜ほんまに。ご了承ください。

まず、fakeさんが
"今にして思えばだが、ジャッキー主演で見たかったとも思うが、当時のジャッキーにこれをやらそうとしていた羅維のセンスの無さは、もはや神がかり的だ。"「香港電影的日常之二風雲再起」引用
と語ったのに笑わせてもらいました。神がかり(笑

本当にこの人は「ドラゴン怒りの鉄拳」の夢よもう一度!
こればっかりだったんですね〜
確かに本作は李小龍(ブルース・リー)がやったとすれば全体的にとてもいいものになる・・・とは思いますがラストが怒りの鉄拳ライクになれば、それは李小龍としても2回も同じことは納得しないし、観客も面白さ半減だろう。
それなのに羅維は・・・

というのを置いておけば、
なかなか素晴らしい作品である。
陳勲奇(フランキー・チェン)が作曲したのかわからないが、妙にメロディが噛み合っていない主題歌、主題歌があるのも珍しいのだが、この辺から力の入れようが感じられる。ほめてんのかけなしてんのか。
出てくる面々は羅維プロオールスター的な印象もあり・・・って地味やなぁ・・・その地味な名前わからんけどジャッキーの映画に出てたなぁ・・・って人も出てくるし、そのジャッキーが戦った羅維プロいつものロケーションで繰り広げられる功夫アクションが何より素晴らしい。
このアクションを構築した武術指導は徐忠信で、

魔界天書」でも宋錦成と共同で武術指導を担当して素晴らしいアクションを構築しているが、本作も素晴らしいものを残している。
ショーブラ時代は端役一個上二個上程度の役ぐらいしかないみたいだし、その後も彼自身は決してジャッキーやサモハンのようにメジャー路線を走れたわけではない徐忠信であるが、その活躍が評価されてか本作から11年後の「ラスト・ヒーロー・イン・チャイナ 烈火風雲」では見事に李連杰(ジェット・リー)の敵役を務めて良いアクションを見せている。個人的な彼のベストバウトは「少林寺必殺ラマ剣法」で羅鋭(アレクサンダー・ルー)と戦ったラストファイトだ。
また龍方としても代表作の1つだろう。
そこかしこに後の悪役の表情が見て取れるのが苦笑だが、見事に年羹堯を演じて良い役者振りを出しているし、何よりその功夫スターとしての腕前の高さは立派である。

しかし・・・
最早、自分で言ってて皮肉か賛辞かわからんが、羅維自身がプロデュースした

クレージー・モンキー・笑拳」が大ヒットしてコメディ功夫ブーム真っ只中で敢えてこの作品を撮る羅維を考えると余りにも観客の需要への供給の格差が激しすぎる。大挑戦者だな。そりゃ失敗するがな。

■CAST&STAFF
監督 方翔
出演 龍方(ロン・ファン)
徐少強(ツイ・シャオチャン)
徐忠信
権永文
李昆(リー・クン)
武文秀
鄭富雄(チェン・フーシェン)
李岡
陳慧樓(チェン・ウェイロー)
金世玉
朱美音
陳軍堡
葛天
武術指導 徐忠信
音楽 陳勲奇(フランキー・チェン)
策劃 植耀昌
製作 羅維(ロー・ウェイ)
製作総指揮 許麗華(シュー・リーホワ)
制作年度 1980

キング・ボクサー大逆転
フィストバトル/拳撃
マジック・ブレード
英雄十三傑
書剣恩仇録
レスリー・チャンの神鳥英雄伝
雍正與年羹堯

inserted by FC2 system