七劍
Seven Swords
セブンソード
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人によっては駄作が傑作だったり、傑作が駄作だったりするし、
俺個人としても
「駄作とわかっちゃいるけど好きな作品」
ってのもある。だから面白かったのは傑作選に入れてそれでまぁ大体は問題は無いんだけど、こっちのカテゴリーはハッキリ言って選考基準がバラバラである。
・つまんなかったもの
・良かったけどどう考えても珍作なものバカ映画過ぎるもの
・面白くないことはないが、もっかい観たいと思わないもの
なので、このカテゴリーにある作品全てが全て駄目駄目だということはない。巷の評判が大変良いものに偏っていると知っていても自分の気持ちに正直にこちらのカテゴリーに入れた作品もある。
その中で本作をこのカテゴリーに入れた理由は上記の3番目にあたる。
面白くないこともないが、特にもっかい観たいと思わない
徐克(ツイ・ハーク)はある意味で素晴らしいのだが、ある意味で湧いて尽きせぬ才能の泉は涸れてしまったのかと思わざるを得ない作品だ。
大体・・・・・・
「ミッドナイト・エンジェル/暴力の掟」「蜀山奇傅・天空の剣」「皇帝密使」「北京オペラブルース」「男たちの挽歌」「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」「スウォーズマン/剣士列伝」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」シリーズ、さらに言えば「
ドリフト」・・・・・・・・・・・
いつでも香港映画界の先頭をきって突っ走っていたのはあなただったではないか。それが
「天上の剣」という先駆的作品の存在もさることながら、ブームの後追いをする必要がどこにあったというのか。
いや、どこかにあるはずだ。その必要が。
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流れ
清朝が発した"禁武令"により、武芸者たち更に彼らを住まわせる村々が武芸者を殺すことで金儲けする孫紅雷(スン・ホンレイ)一味の襲撃を受けて大量に殺戮される。
これに奮起した劉家良(リュー・チャーリャン)は6人の仲間を伴い"天山"に向かうとそこで各々セブンソードを授かり、彼ら7人は清朝そして孫紅雷一味に戦いを挑む。
終劇
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最初に観た一言素直な感想としては
「・・・・・・普通じゃん」
だった。
これも香港で最近撮られた武侠片ですよ、と徐克映画と知らないで観たならば、
「ああ・・・まぁなかなかじゃないの」
という感じか。
ようはこれ、冒頭に言った様に
散々他の人に先を越されてるのに何故また武侠片か?
というところでその徐克が放つ"新しい何か"が正直見出せなかったのである。
何かあるはずだ。彼ならば何かあるはずだ・・・・・・・・・あれ?
私の観点や洞察が浅すぎるのだろうか。
確かに果てしなくいつもの徐克映画ではある。
まさに徐克が好む混沌とした世界、そこに息苦しく生きる人々の描き方は今までの彼の作品と同じだ。さらに黎明(レオン・ライ)や楊采女〔尼〕(チャーリー・ヤン)の新境地的な役柄、孫紅雷(スン・ホンレイ)の魅力的な悪役、白彪(パイ・ピョウ)、威冠軍(チー・クワンチュン)、王敏コ(マイケル・ウォン)、そして劉家良(リュー・チャーリャン)師父とベテラン勢の絶妙なキャスティングも素晴らしい(特に白彪が印象に残りましたね)。この辺は徐克の得意とするところである。
しかし、それ以外に何があったというのか。
そのようなものはこれまでの徐克作品にもあったではないか。
以前とどこが違う?どこが新しい?
アクション面についても同様の感触を抱いた。
トータルとしては成功しているとは言えないが画期的である徐克作品「ドリフト」で見せた九龍城でのアクション、あれは観るものをしびれさせジェットコースターに乗せてくれるような躍動感溢れるシーンだった。
「そうだよこれが徐克だよ」
と思わせるにふさわしいシーンであった。
考えてみれば数々の彼の傑作にはみんなそんなところがあるのだ。
「天地大乱」で久々にアクションシーンから受けた強い衝撃を俺は忘れていない。
本作のアクションは「ドリフト」で見せたあのアクションはどこに行ってしまったの?というようなアクションばかり。リアルに抑えていると言って劉家良師父の色が濃く出ているわけでもない。唸るようなアクションシーンだけで言うならば劉家良作品
「超酔拳」で見せた劉家良vs劉家輝の方が遥かに素晴らしい。勿論、これは俳優のアクションポテンシャルも関係してくるところであって、確かにこちらのラストのドニーvs孫紅雷だけは手に汗握る良いアクションシーンであるが、これはそれこそアクションポテンシャルが高いから。ドニーファンには迷わずオススメ出来る作品ではあるのだが、やはり腑に落ちない点が残る。
「ドリフト」で華麗なアクションを見せた伍佰(ウー・バイ)はアクションの経験豊富な俳優であったのだろうか。彼の詳細は触りだけしか知らないのでこれ以上私に言う資格は無いが、ただドニーよりもアクションポテンシャルが高いか低いかに関しては言うまでも無いだろう。
私は本作に「ドリフト」発展系+劉家良どっしり功夫の合体を想像し、それは実現不可能な気がするアクションではあるが、
「徐克ならば・・・」
という期待を持って観てしまったので、いささか残念なところである。
も一つ言うとこれ、
「
続片腕必殺剣」にも似てるよね。
あの敵役の頭半剃り女が意外にあっさり死んだのには驚いた。
めっちゃ目立ってたのに。