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■成龍(ジャッキー・チェン)1980  
 

師弟出馬(台湾版)
The Young Master


獅子舞合戦でライバル道場の獅子を担いだ兄弟子(ウェイ・パイ)は育て親で道場主(ティエン・ファン)に勘当されてしまう。が、飛び出していった兄弟子を連れ戻してこいと弟弟子のドラゴン(ジャッキー・チェン)に依頼。ドラゴンは兄探しの旅に出る。



さて、「ヤングマスター/師弟出馬」に残された若干の謎が解けるバージョンの登場である。
当時、素人監督のジャッキーが費やしたフィルムは凄い量でその後の「ドラゴンロード」「プロジェクトA」にもいえる言えるのだが、この辺の初期監督作品の未使用フィルムを集めて、「必殺鉄指拳」「醒拳」方式を取れば後2本ぐらい映画が出来るんじゃないかといったところがある。パッと思い出すとそう言えば「七福星」のNG集にも使われていないシーンが出てきてたなぁ・・・

私はジャッキーファンであるが、実はジャッキーグッズなんてものにはとんと疎く、余り興味が無い。例えば仮にオークションで「ジャッキーが映画で実際使ってたメガネ」とか出されたとしても全然興味が無い。ちなみにスケベなのは認めるが、
"女性アイドルの誰々が使ってた何々"
なんてものにも全く興味が無い。物は物。人は人だ。誰が使っていようとメガネはメガネ、服は服だ。
ええと・・・・なに話すんやったっけ?
ああそうそう、つまり私はジャッキーグッズとかそういうのにはあんまり興味が無いのだ。実用品であるなら別だけど。

と、そんなドライな私でも興味がある、集めたいと思っているものはある。
本作はその1つ。
つまり、私は
"ジャッキー関係の観てないフィルム"
これは流石に観たい。
ドラゴンロード大陸版」を観てみると改めて
"ああジャッキーはこういう意図で撮りたかったのか"
というのを再認識または新認識する。
観てないシーン、未使用シーンとは即ち
"作品をさらに奥深く知る鍵"
にも成り得る。
監督がどういったものを作りたかったのか?
好きな作品、俳優であれば自ずとやはり知りたい。

本作は勿論、「ドラゴンロード大陸版」のように作品の意図を根底から再び製作者に叩きつけられるような衝撃はさすがに無いものの、「ヤングマスター/師弟出馬」という作品に一歩半歩と近づけるものであることは疑いない。
それでは具体的にどこが違うのか?検証してみよう。

違い

現在日本で一般的に流通しているものと比較して、こちらで削除されている箇所は一箇所。後はみんな追加シーンである。

まず中盤のジャッキーvs石堅(シー・キェン)の戦い
石堅の刀でサンダルを真っ二つにされたジャッキー、そのサンダルを"靴飛ばし"で石堅に投げつけます。
通常版では真っ二つにされたサンダルを投げるシーンが無いので、いつの間にか裸足になっているように見えますね。ここで投げつけたとは。

続いて、ジャッキーvs馮克安(フォン・ハックオン)、李海生(リー・ハイサン)
びみょーーに違います。
まず野次馬を映すショットが一箇所追加があります。
その後、ジャッキーがスカートを使う直前、馮克安にズボンの膝から下を両足とも引きちぎられるシーンがあります。

ズボンを引きちぎられて恥ずかしい

スカートで隠す

李麗麗(リリー・リー)のスカート拳を思い出す

本当はこういう流れが正しかったみたいです。正しかったというかそういう見方も出来るということですね。そこまで回りくどくしなくてもいいと判断してカットしたのでしょうか。

本作と通常版の最大の違いはここからです。
「商売敵が潰れてラッキー」
と喜んでいる反物屋のご主人がいますね。後で自分の店も荒らされて大変なことになっちゃうあの人です。
ジャッキーが銀行で馮克安&李海生を縄で縛って兄貴の韋白(ウェイ・パイ)と一緒に逃げた後、警察官を率いた石堅が銀行に踏み込んで御用、と。
この後に
「白扇子はどうしたんだ!?」
ってことでひと悶着あるのがまず1つ。
元彪(ユン・ピョウ)もここに登場します。親父・石堅の言葉に呆れてか何だかですぐ退場しますが。
で、先の戦いで被害者だった反物屋のご主人が連れてこられて事情聴取というわけです。

その後、逃げ出したジャッキー&韋白はひとまず食堂へ。
ここに刑事(?)みたいな人が現れて2人に手配書を見せます。その手配書が面白いことに、
1枚目が
こいつね
「少林寺怒りの鉄拳」のサモハン春米六(と思われる。春米六ははっきり書いてある)
2枚目が
かのお方
袁小田(ユアン・シャオティエン)扮する蘇化子。これは間違いありません。
語学が堪能ではないのではっきりとはわかりませんでしたが、このシーンはなかなかに興味深いです。
あのね、もし彼らがこの劇中で問題のある人物として手配書を出されていたとしたら、
"ジャッキーの豪胆すぎる勝利宣言"
みたいなもんになりません?
まるで「サモハンには負けない、爺さんの下にもいない」
このシーンをはっきりと理解してはいないので、これ以上断言は全然出来ないのですがもしそうであれば、カットされるのは至極当たり前です。それやったら嫌われますよ。
逆にこの2人に敬意を表しているシーンなのかもしれません。このシーンの解明は語学堪能な方に任せたいところ。

この刑事をうまくやり過ごした後、
「自首してくれ、俺が何とかするから」
とジャッキーが説得して、韋白に手錠をかけます。
通常版にある手と足に手錠繋がれて話しながら歩くシーンはここから派生しているのですね。あっちではいきなり手錠でしたからこれで1つ謎が解けました。

そして自首して警察署、ではなくて石堅のお家。
まだ反物屋のご主人への尋問が続いてたりなんかします(笑
そしてジャッキーと石堅とのやり取り。
通常版ではここに反物屋のご主人も韋白もいませんが、実は2人ともいます。
通常版でのこのシーンに
「韋白はどこ行った?」
という単純なそしてこっちもあんまり考えることなく
「まぁいいか」
で済ましていた疑問があったのですが、これでこちらも解決しました。みんなの前で黄仁植(ウォン・インシク)を捕まえてくるとジャッキーは宣言していたのですね・・・・って、

韋白止めろよ!
あんたがどっちの実力も知っている唯一の人間なんだから止めなさいって、普通ならあんなの絶対勝てないんだから。

さぁさぁそれはさておき。
最後の追加シーンがあのラストバトルにあったりします。
そして通常版にあるバトルの冒頭(関節技に行く前ですね)、ちょう!ふぁっしょ!
という掛け声の下に黄仁植が足技を下段、上段、中段に繰り出して対応できないジャッキーが下段を喰らって転ばされるシーンがありますね、これがこっちはありません。
代わりに黄仁植がやっぱり滅茶苦茶強いぞコイツ!
と思わせるインパクトあるシーンがこっちにはあります。

文章で書くのは難しいのですが、
腕をブンブン振り回して攻撃するジャッキーの技を全てヒラリヒラリと足だけ使って交わす黄仁植

交わした後に黄仁植がヒップアタック

吹っ飛びそうになったジャッキーの腕を手で掴むと、掴んだままジャッキーに下段蹴りを連打!
足元フラフラのジャッキーに対して腕を掴んだまま今度は連続中段蹴りを連打連撃!

うずくまったジャッキーの頭を左足で小突いて転ばして構え

こんな感じです。
ちょう!ふぁっしょ!
のアクションも格好良いのですが、
「コイツ滅茶苦茶つえーぞ!?」
と再認識させるにはこっちのシーンが良いですね。黄仁植が滅茶苦茶格好良く強く見えます。
なぜこれをカットしたかということを敢えて追及すればヒップアタックがややコミカルで黄仁植に合わないってところなんでしょうか。うーむ・・・・

なんにしても通常版で小さく「?」と思っていたことが結構解けました。



あなたの好きな映画、始めから終わりまで全部思い出せるような映画を思い浮かべてみてください。
大小関わらず「?」というようなシーンはありませんか?
それらはこういったバージョン違いを観ることによって解決することもあるのです。
好きな映画の色んなバージョンを探してみるのも一興ですね。

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以下はfukuchan様より頂いた書き込み及びレスです。情報提供有難うございました。

師弟出馬(台湾版),人相書のシーン
fukuchan
投稿日:2005年3月31日<木>13時23分
なるこうさん,初めまして. いつも楽しくレビューを読ませて頂いております. タイトルの件に関し,北京語がネイティブの知人に通訳してもらったので,おおまかではありますが,お知らせしようと思い書き込んでおります.

<洪金寶>
反物屋「(襲った人は)こいつに違いない」
警官「こいつは春米六だ.清朝に手配されて以来,ずっとつかまっていないんだ.こいつの訳がない」
どうやら,手配された時点とは時代が違うので,犯人であるわけがない,というニュアンスらしいです.
<袁小田>
反物屋「あー!犯人はこいつだ!!」
元彪「この人は蘇化子さんだよ.ずいぶん前に引退されたからこの人が犯人なわけないよ.」
反物屋「そういえばもうちょっと若かったような気が…(のぞき込んでいる成龍を見つけて)おまえだー!!」
以上のような感じで,特にネガティブな会話というわけではなく,単にしゃれっ気で入れたシーンのようです. 完璧な翻訳ではないのですが,少しでもお役に立てれば光栄です. これからもレビュー楽しみにしております.
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Res:fukuchan 題名:連投失礼いたします
投稿日 : 2005年3月31日<木>14時55分
先ほど書き込んだ後で思ったのですが,会話の内容が二人を「過去の人」扱いしているようにも受け取れますね. そう意図していたとは思えませんが,削除された理由はそのあたりにもあったのでしょうか?
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Res:fukuchan 題名:レスありがとうございます!
投稿日 : 2005年4月1日<金>15時31分
>サービスで最初は入れたもののやはりカット
このシーンをカットするために前後のシーンも大幅にカットしたり,撮り直したりしたのかなあ,と妄想が膨らみます. >こちらのご投稿はHP、「師弟出馬」ページに掲載させて頂こうと思います。
大変光栄です.ありがとうございます.
少し追加なんですが,
元彪「この人は蘇化子さんだよ.ずいぶん前に引退されたからこの人が犯人なわけないよ.」

元彪「この人は蘇化子さんだよ.『江湖の人だったけど』ずいぶん前に引退されたからこの人が犯人なわけないよ.」
『江湖』に相当する日本語がないので,困ってしまうのですが,訳してくれた知人は
【とても功夫が強くて,旅の生活をしている】
イメージだと説明してくれました.
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■CAST&STAFF
監督 成龍(ジャッキー・チェン)
出演 成龍(ジャッキー・チェン)
黄仁植(ウォン・イン・シク)
石堅(シー・キェン)
元彪(ユン・ピョウ)
李麗麗(リリー・リー)
韋白(ウェイ・パイ)
蒋金(ジャン・ジン)
王坤(ウォン・クワン)
李海生(リー・ハイ・サン)
馮安克(フォン・ハック・オン)
太保(タイ・ポー)
馮峯(フォン・フン)
田豊(ティエン・ファン)
唐炎燦(トン・イン・チャン)
樊梅生(フォン・メイ・サン)
黎強權(ベニー・ライ)
武術指導 成龍(ジャッキー・チェン)
馮安克(フォン・ハック・オン)
脚本 ケ景生(エドワード・タン)
童路
劉天賜
成龍(ジャッキー・チェン)
音楽 陳勲奇(フランキー・チェン)
製作 何冠昌(レナード・ホー)
製作総指揮 鄒文懐(レイモンド・チョウ)
制作年度 1980

 
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