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■成龍(ジャッキー・チェン)1981  
 


砲弾飛車
The Cannonball Run
キャノンボール



鄒文懐(レイモンド・チョウ)がその力を見せつける為だけに存在したような映画。ただそれが別に悪いことだとは思わない。ハリウッド至上主義の映画界においても
中国人の力を見せてやろうぜ!
ってことで心意気は素直に買いたい・・・かも。
日本では本作・続編ともヒットしたが他ではどうだったのだろう。
あくまでゴールデンハーベストの力の顕示が先で、
ついでにジャッキーも売ってみよう
とこのような感じだった気がしてならない。だって、ジャッキー売りが一番の目的だったら 最初から主演作作ればいいわけだからね。

当時、子供だったため、逆にハリウッド・スターの名前をこれで初めて覚えたって方が印象深く、
「あのスターがこの映画に!?」
って驚きはロジャー・ムーアしかいない。この当時に既にハリウッドをよく知ってるちょっとした大人はハリウッド・スター続々登場のこの映画に狂喜乱舞したのだろうか?

■夢の競演

レイモンド・チョウの力を示す・・・
とはいったものの、この豪華2人ジャッキー、マイケル・ホイコンビが
「日本人レーサー役」
にされてるところをみると、脚本に圧力を加えられるほどじゃあないってのもわかる。確かに乗ってる車は三菱だし、日本は自動車産業国だから中国人レーサーよりインパクトつけられるんだけどね。海を越えたらカンフーもブルース・リーも芸者も相撲も富士山も一緒くたにされてるくさい。
しかし、広東語喋る日本人は流石にどうかと。あっちにとってはどっちでもいいかと。

なんとこさ勿体ない競演の仕方。
ジャッキーとホイだぜ。
この組み合わせだけで全くの第三者でも良いアイデアがとくとくと湧いてくるよ全く。マイケル・ホイなんかハリウッドにどう観られたかと思うと
「背が低くて眼鏡かけてて口うるさくてスケベ典型的なアジア人」
「ティファニーで朝食を」(だったっけ?古典知識へぼです)
で出てくるいや〜な日本人にしか取られなかっただろうな〜
全然違うわい!
「ホイさんはな〜、
 お前とこの何とかマーフィより数倍面白いんだぞ!この野郎!」
(余談だが、サッカーの岡田監督も典型的なネガティブアジア顔なので、そのままで監督として頑張ってもらい、世界を驚かして欲しい
) という認識をさせたかった〜。
俺が言っても仕方ないんだけど。

■吹替え

これ、吹き替えじゃないと今じゃ〜ちっともなのが正直なところ。
吹き替えの際の見所はもちろんこれ。
広川太一郎、マイケル・ホイとロジャー・ムーアの2役で吹き替え まぁどちらも出番は多くありませんが、この辺は楽しめます。

■CAST&STAFF
監督 ハル・ニーダム
出演 バート・レイノルズ
ファラ・フォーセット
ロジャー・ムーア
ディーン・マーチン
サミー・デイビスJr.
ピーター・フォンダ
エイドリアン・バーボー
タラ・バックマン
ジャック・イーラム
成龍(ジャッキー・チェン)
許冠文(マイケル・ホイ)
バート・コンビー
テリー・ブラッドショー
ビアンカ・ジャガー
メル・ティリス
ドム・デルイズ
脚本 ブロック・イェーツ
原案 ハル・ニーダム
ブロック・イェーツ
音楽監修 スナッフ・ギャレット
製作 アルバート・S・ラディ
製作総指揮 鄒文懐(レイモンド・チョウ)
制作年度 1981


老鼠街
The Gold Hunters


さて、これは珍しいあの

馮克安(フォン・ハックオン)の監督作品である。
製作は成龍(ジャッキー・チェン)。
ジャッキー唯一の功夫映画プロデュースだけ作品である。
武術指導だけの作品はままある、「舞拳」「三十六迷形拳」。だがプロデュースとなると後にも先にもこれ一本。

プロジェクトA」で日本のファンは・・・いや当時の少年達と言った方が良いのかな、はっきりと分かれていきました。即ち、
「もっと功夫が観たかった」
「ジャッキーってすげぇ!!」
勿論、私は後者ですからこうやってHPなんかやってたりしちゃったりなんかしちゃってますが、前者もやはりたくさんいたわけで、功夫離れが少年離れを引き起こしたのも事実でありましょう。しかし、あの時の脱皮が無ければそれこそ今のジャッキー・チェンなど影も形もありますまい。10年後にヨン様が支持されているでしょうか・・・まぁそれはともかくとしてですね、ここでどうしても本音、というか探究心というものは出てきます。また即ち、
「あのまま功夫映画を撮り続けたらどうなった?」
ハイパーレベルにあったジャッキーの功夫映画を数多く観たかったという気持ちには流石に私も嘘はつけません。それというのも意外とですね、ジャッキー印の功夫映画ってのは少ないのです。
「蛇拳」「酔拳」で彼はスターになりましたが、これらの作品は監督は袁和平(ユアン・ウーピン)で、武術指導も袁家班が中心となったものです。
ジャッキーが完全に主導権を握って作った功夫映画(羅維時代は完全ではない)というのは結局「クレージー・モンキー・笑拳」「ヤング・マスター/師弟出馬」そしてあの「酔拳2」の3本しか無いわけです。自分主導で功夫映画をたくさん作った洪金寶(サモ・ハン・キンポー)とは数が違いますね。

そこで本作の登場となるわけです。
本作は「ヤング・マスター/師弟出馬」の後も功夫映画を作っていたらどうなったのか?を探求できる貴重な作品です。

流れ

ケチな泥棒稼業が主でありながら、腕っ節の強い仲良し3人組、劉家勇、孟超、李海生(リー・ハイサン)は今日もそれぞれのバイトをしながらも盗みを繰り返しながら街のチンピラと功夫バトルを展開して仲睦まじく暮らしていた。
オープニングでかかるBGMがいきなり水前寺清子の「365歩のマーチ」広東バージョンなのが凄い。なぜ?

場面変わって金塊護送中の朱鐵和と黄錦〔炎木〕(メルヴィン・ウォン)。
この情報を聞いた3人組は強盗計画・・・これでは憎めない悪ガキども・・・じゃなくて、完全にワルなんですが。
早速、3人組vs朱鐵和、黄錦〔炎木〕の功夫バトル!
抜群なバトルの末に朱鐵和が黄錦〔炎木〕を間違って殺しちゃう・・・と思ったらこの朱鐵和も出し抜いて金塊を独り占めしたいのであった。と思って周りを見渡すと金塊も無ければ3人組もいない!

「うひひひひい!」
と3人組は戦いをこっそり抜けて金塊の入った箱を持ち帰ったのだが中身は塩!!
あったはずの金塊が無い!?
どうやら朱鐵和が隠し持っていたようです。
が、バツの悪いことに死んだはずの黄錦〔炎木〕が復活、警察に事件を告げたために朱鐵和は逮捕、投獄。

金塊のありかを知った者は牢の中へ。
ということで、牢獄に潜入する3人組。
そこへやって来た馮克安(フォン・ハックオン)と看守の馮峰(フォン・フン)、つまりは実際での親子がここでコントとというかコントと言うにはアクションがハイレベルなのだがそんなもんを繰り広げて立ち去る。あれは何だったのか?

ヒントを解き明かした3人組は早速現場へ向うが、そこには朱鐵和の仲間である唐偉成が待ち受けていた。
というわけで3人組vs唐偉成!!
これも相当のハイレベル功夫バトルである。
の末に唐偉成を倒し、いよいよ金塊があるとされる屋敷に忍び込んでいく3人組であったが、同じ情報を掴んでいた盗賊の岑潛波らと今度は暗闇の屋敷で戦うことに!

すったもんだでやっと金塊の在り処を突き止めたのだが、
やっぱりラスボス・馮克安が立ち塞がる!!
というわけで3人組vs馮克安!!

とんでもない死闘の果てに
3人組が手にしたものとは・・・・!?

終劇




もし。
この映画の武術指導が成家班ではなくて、その辺の2流、3流の殺陣師だったとしよう。
だとするとこの映画の評価は一気に中の下の下といったところか。物語がわかりやすいものだけに、こういったものは非常に演出力が問われるし、出てくる面子を見れば一目瞭然、功夫職人がウジャウジャ登場するこの映画、しかし決定的なスターには全く持って欠ける。仮に仲良し3人組の面子に元彪(ユン・ピョウ)、梁家仁(リャン・カーリャン)が入ってたりなんかしたら、注目度も含めて功夫映画の歴史に残る作品になっただろう。そこがなんと最早惜しい。

で 今回の武術指導はもちろん成家班。
製作としてしか名を連ねていないジャッキーが本作の殺陣部分にどれだけ関わったのかは不明だが、ジャッキー・ブランドの功夫アクションであったことは確か。これは推測にしかならないのであるが、ジャッキー除く当時の成家班の筆頭は馮克安だったのではなかろうか?
事実「ヤングマスター/師弟出馬」「ドラゴンロード」ではジャッキーと共に武術指導に名を連ねているし、「プロジェクトA」は馮克安は仕事が忙しかったのか、関わっていないようだが「ポリス・ストーリー/香港国際警察」では敵役を演じていることを考えても、推測はかなり真実に近いと思われる。
まだある。
本作での功夫アクションは2つの映画のアクションにとても良く似ている。
1つは勿論「ヤングマスター/師弟出馬」だ。その小気味良いリズムを意識した功夫アクションはあの作品での白扇子アクションやスカートを使ったアクションを連想させる。複数の敵を相手にして蹴散らしていくサマも実にあの作品的だ。
最も成家班的、というよりもジャッキー的であるシーンは暗闇の屋敷の中で戦うシーンで、これは
ジャッキー版"鏡の間の戦い・爆笑篇"
とでも言おうか。
暗闇の中に大きな鏡がやたらあるもんだから、鏡に写った自分を敵と間違えるわ、鏡のフリはするわ(このシーンの一糸乱れぬパフォーマンスが絶妙!)、まさに笑いと感嘆アクションが交錯する本作の名場面である。
そしてもう1つ。
それは「ヤングマスター/師弟出馬」とほぼ同時期に撮られたと思われる呉字森(ジョン・ウー)監督の「豪侠」である。こちらの武術指導は紛れも無く馮克安。
「豪侠」は呉字森が放った武侠片で、と言ってしまうとドラマ重視かと思いがちだが何の何のこれでもか!これでもか!と連続して至極のソードバトルが展開される功夫迷ならそれだけで満足できそうな一品である。
その「豪侠」で韋白(ウェイ・パイ)とのベストバウトを残している馮克安であるが、本作の殺陣テンポとあの映画の殺陣テンポが非常に似ている気がするのだ・・・って同じ人が殺陣やってりゃそりゃそうなんだけど。
本作のラストバトルは馮克安が仕込みの入ったステッキを持って闘って圧倒的な力を見せつけ、それに対抗して3人組は武器を持ってみたり、ステッキを取ろうとしたりとあれやこれやの作戦とハイテンションで臨む、もうほんとに名バトルの1つである。
このバトルと「豪侠」でのそうだな〜・・・まぁ全体的に似てるんだけど、李海生vs韋白、劉松仁バトルなんかは良く似ている。
というわけで当時の成家班のボスは馮克安。
・・・それだけ言うためにゴチャゴチャ長々と書いてしまった・・・

と、とにかく
この日本という国に功夫映画の名作は全て出回ってしまったのか?
いやぁそんなことはない、そんなことはないぞぉ!
と胸を張って送り出せる作品の1つである事は疑いない。
スターがいないのが甚だ残念ではあるが。

功夫迷よ、堪能しよう。

■CAST&STAFF
監督 馮克安(フォン・ハックオン)
出演 劉家勇
孟超
李海生(リー・ハイサン)
馮克安(フォン・ハックオン)
唐偉成
朱鐵和
劉雅麗
黄錦〔炎木〕(メルヴィン・ウォン)
馮峰(フォン・フン)
午馬(ウー・マ)
太保(タイ・ポー)
唐炎燦(トン・インチャン)
張英
泰山
王坤(ウォン・クワン)
岑潛波
黎強權(ベニー・ライ)
何栢光
陳虹
蔡昌
武術指導 成家班
脚本 黄炳耀(バリー・ウォン)
音楽 陳勳奇(フランキー・チェン)
策劃 陳自強(ウィリー・チェン)
製作 成龍(ジャッキー・チェン)
制作年度 1981


老鼠街
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