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■成龍(ジャッキー・チェン)1994  


醉拳U
Drunken Master2
酔拳2




高名な武術家であり医師としても名高い黄麒英(狄龍)とその息子黄飛鴻(ジャッキー)は列車による旅の帰りだった。
税関から逃れるため朝鮮人参を貨物列車に隠した飛鴻は人参を取りに行くさい、軍師のフク・マンケイ(劉家良)を泥棒と間違え、大乱闘になってしまう。なんとか誤解も収まり別れた2人だったが、フクは太子の金印と間違えて人参を、そして飛鴻は人参と間違えて金印を持ち去ってしまう。
帰郷した飛鴻は人参を催促しに来た客人を誤魔化すため母(梅艶芳)と共謀して盆栽の根を朝鮮人参だと言い張って渡してしまう。
そんな時、金印を持ち去られてしまったイギリス大使館では犯人の逮捕と、 金印奪還を命じていた。飛鴻に目をつけていた大使館一味は飛鴻にいちゃもんをつけ襲撃するが、母の焚き付けもあって、飛鴻は父に禁じられていた「酔拳」を使いこれを撃退。だが、父の麒英に見つかってしまう。
父から説教を喰らっている最中、偽の朝鮮人参を呑んだ客が倒れたとの情報が入り、朝鮮人参の件もばれ、父の怒りを買った飛鴻は勘当されてしまう。ヤケになり酔いつぶれていた飛鴻は、再度大使館一味の襲撃を受けあえなくダウン。丸裸にされて吊されてしまう。
父の許しを得た飛鴻は金印を探しに来たフクと再会。
フクの考えに共感し金印を渡すが突然の襲撃に合い、フクは射殺され大使館一味に金印も取られてしまう。フクの仇と金印争奪のため友人と大使館に乗り込む飛鴻だったが、逆に捕まってしまい、麒英は息子を大使館から帰してもらうために土地を乗っ取られてしまう。
そんな時、大使館が管理していた製鉄工場の荷物から大量の盗品が工員により発見。大使館が中国文化の盗難売却を行っていたことが明らかになるが、工員は1人を残して捕まってしまう。そんな一報を聞いた飛鴻は意を決して一味との最後の闘いに臨むため、工場に向かう。
ほとんどの一味は蹴倒したものの一味のボス(盧惠光)には歯が立たず、 飛鴻は絶体絶命の危機に晒されてしまう。
とその時、飛鴻は工業用アルコールを目にした。

なぜ功夫映画が好きなのか?

今年(2003)の締めくくりとして一番根本的なところに迫ってみたいと思う。 と言っても、ここで「こうなのだろう」と語って全て説明しきれるとは到底思えない。思えないが、HPを開設して5周年経ったので、この「醉拳U」を目安に一度そういうことをやってもいいと思った次第である。
まずは本作のレビューを。


わーいわーい

本作の製作を聞きつけた時はまさにそんな感じ。
「ジャッキーがまた功夫をやってくれる!」
「しかも流行のワイヤーワイヤーではなく、正面切っての功夫映画だ!」
当時の私は高校生。
セックスと嘘と進路みたいな、いわゆる自分のことだけでいっぱいいっぱいで 周りが何も見えず、小さな世界で戦っていた時代。今思えば一番香港映画から離れていた時代と言えるだろう。(ただ、放映される功夫映画はしっかりチェックしていたが)
「映画なんか見に行ってる場合か」
そんな状況の影目をぬって、こっそりと劇場に足を運ばせたことを覚えている。満員! そう、私が行った劇場は満員だったのだ。「炎の大捜査線」なんか私を含めて4,5人という屈辱的経験もしてるのに・・・
「やっぱり功夫なのか?そうなのか!?」
・・・・・・・・・うーん・・・・・・・・・・・・・そりゃそうなんだけど、つまり
シュワちゃんの「キンダガートン・コップ」なら観ないけど「ターミネーター3」なら観に行っても良いかな? 当然、そこに行き着くわけだ。
(いや「キンダガートン・コップ」はつまんなかったけど)
やっぱり大変だなぁ・・・

良い味出してるキャラクターたち

観る前に一番楽しみだったのは「くいしん坊!万才」な劉家良さんとの共演そして対決・・・もそうなのだが、個人的には狄龍(ティ・ロン)との共演である。当時は特に「男たちの挽歌」観てメチャクチャ好きになってた時ですから。しかも勿論、昔は功夫スターとして倉田さんや姜大衛(デビッド・チャン)としのぎを削った腕前!しかも俺はその功夫をほとんど観ていない!(当時) 期待せざるえらいでか!
可哀想にのぉ・・・
ショーブラNo.1スターと言って差し支えない人物でありながら、独裁政権のショーブラではあれだけのスター狄龍もロクに金も貰えず、義理と仁義を貫いてショーブラを離れ、張徹と台湾まで着いていった挙げ句の果てに、散髪代も都合出来ない貧乏人に成り下がる・・・
俺だって散髪代ぐらい都合つくよ。
その後、「男たちの挽歌」で大復活!!幾ら何でも金持ちになったろう!
長い時を経て一応めでたし!

という、スターなのにスターらしからぬ苦労に苦労を重ねた苦労人。
だからこそ、
年齢の大して変わらないジャッキーの親父役でもちゃんと映えるんですね
スター街道を歩みつつも、色々な苦労を乗り越えてきたからこそ出せるこの貫禄。また今回も酔いどれのバカ息子に苦悩する姿の似合うこと。

まぁただ一番この作品に貢献した出演者は梅艶芳(アニタ・ムイ)その人に間違いありませんね。ジャッキーの母ちゃん役というマイケル・J・フォックスもびっくりの設定もすんなり受け止められるだけの、芸量があるというかなんつーか、天下の黄麒英を手玉に取って息子の黄飛鴻を子分の如く戦わせる、肝っ玉そしてコメディエンヌぶりは素晴らしかったですね。
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※追記
本文は12月頭に書き、「今年の締めにしよう」とここまでアップしなかったものです。ところが、アップする2003/12/31の1日前に梅艶芳さんがお亡くなりになられました。享年40歳。
心よりご冥福お祈り申し上げます。
RoseRose I Love You・・・・・・
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深く突っ込めば、出番は少なきながらもその行動で人柄がしのばれる黄飛鴻の友人役・錢嘉樂(チン・ガーロッ)も良いですね〜
後はチラチラとお馴染みの太保くんの野次馬や、韓義生のおっちゃんが珍しく良いおっちゃんですし、ちょっとジャッキーラブな蛇拳の女の子も良いっす。 酔いつぶれたジャッキーの前で胡弓を弾いているのが実は段偉倫だったりします。

バシッバシッ!

本作は元々監督だった袁和平(ユアン・ウー・ピン)がジャッキーとモメモメで降板。ジャッキー自伝読むと、2人で呉思遠(ウー・セイエン)の前で
「次はこんな映画考えてんすよ!」
と「ドランク・モンキー・酔拳」のアイデアを披露し合う経緯なんか、微笑ましいんだけどなぁ・・・やっぱ年数を経てお互いに「自分なりの作り方」ってものが完成しちゃうから、今回は譲り合いが出来なかったんだろうなぁ・・・
そして続く劉家良(リュー・チャーリャン)もジャッキーとモメモメで途中降板(クレジットは残した)。

このおかげでとっても良い感じに功夫が仕上がっている

かつてサモハンが放った「燃えよデブゴン」という作品が
"李小龍からサモハンまで"
といった、功夫映画の殺陣構成の流れを総括して見せた映画であったように、本作そのものが功夫映画のそしてジャッキー功夫の歴史を表現し切れているのだ。

ジャッキーvs劉家良
ファーストアクションは夢のマッチの1つが実現したと言っていいだろう。
お互いに功夫映画を極めあった者同士の対決。そして流派違い(アクションチーム違い)。この対決は劉家良の基本型を重視したどっしり功夫+ジャッキーアクションの間を含ませた非常に秀逸な功夫シーンになっている。
どの辺がジャッキー的演出で、劉家良的か。 これはもうVTRでも用意して説明しないと&俺の功夫映画を観てきた目で判断したに過ぎないということで説明は省く。割合でいけば 劉家良8:2ジャッキー の功夫シーンかな。
もう、出来る奴らだけが出来るような・・・
そう、 釈由美子やキアヌ・リーブスはもちろんケーン・コスギだって こんなに息のあった丁々発止の功夫シーンをこなすのは困難極まりないだろう。
ピカソの画は誰でも真似できそうではあるが、
様々な基本を経て苦労を経て、はじめてあのような抽象画に達したピカソと、いきなり最初からピカソの画に挑戦してみた奴らとの差は歴然なのだ


ジャッキーvs??
すんません、ジャッキーの親友役で一緒に大使館に潜り込んだ友人役の人はなんて芸名ですか?とりあえず短いけどその友人との腕試しのシーン。 ジャッキー黄飛鴻が一番黄飛鴻っぽい動きを見せるシーンかもしんない。
その理由は勿論、ジャッキーが酔拳披露を我慢して洪家拳を使うから。つーかね、 空手の上段捌きはここから来てるのかしら?
ジャッキーが攻撃を裁くために使う洪家拳は空手捌きっぽいよね。
割合で行けばこのシーンは 劉家良6:4ジャッキー ぐらいかな?
両者とも洪家拳には通じていますが、そりゃ劉家良は本家お膝元ですから。 ただし、立ち回りを見せるテンポ・演出はジャッキー的。
ジャッキーはシンプルな攻撃や防御をインパクト強く残せる演出が出来ます。パッと思いだしても「新精武門」「蛇鶴八拳」「笑拳」「ヤング・マスター」・・・(もうええわ)
これも上段捌きを繰り返し力強く描写することで、基本技の大切さ力強さを表現するのがとても上手いな〜と思いました。この辺ではジャッキー演出の方が長けてる気がします。

ジャッキーvsゴロツキども(成家班)
私の一番感動したシーンです。
詳しくは「私と香港映画の関わり」をご参照下さい。
もうこのシーンだと 劉家良2:8ジャッキー? 
ぐらいに劉家良テイストは感じません。感じるとしたら酔拳ポーズを取る前のグラグラ揺れるジャッキーぐらいかなぁ・・・?

ジャッキー、劉家良vsゴロツキども
気づいたら敵だらけ。
報仇」の狄龍が集団攻撃を受けて絶命するシーンに強くリスペクトされています。本作にも狄龍が出ているのがまた何とも奇妙な縁ですよね。今回はジャッキーが目をグサッで死ぬことはありませんが(そりゃそうだ)、
中2Fから落ちたら1Fも敵だらけだった
敵がみんな黒服
敵がみんな小斧を持っている
「報仇」とリンクする点はたくさん出てきます。
「報仇」を観たときは姜大衛(デビッド・チャン)が飛びついたシャンデリアのアレにも驚きましたし、ほんと功夫映画製作マニュアルみたいな映画ですね。このシーンだと 劉家良6:4ジャッキー と盛り返す感じかな?
団体戦の演出はジャッキーも得意ですが、劉家良も大得意。「霹靂十傑」「阿羅漢」で証明済みです。
ジャッキーが敵をガツガツとぶっ倒していくあたりは、いつものやられながら何となく倒していくジャッキー演出とは違い、「続少林寺三十六房」「阿羅漢」などで主人公が見せるソレに近いモノがあると感じましたし、ホウキ棒で敵を倒していくサマも劉家良作品っぽかったです。ただスタントシーンを見ると途端にジャッキー演出っぽくなりますね。

ジャッキーvs盧惠光(ロー・ワイ・コン)の子分ども
もういないっしょ劉家良は。
クライマックスは割合 劉家良0:10ジャッキー だと思いますよ。
ただし、このシーンを見ればわかるとおり、
"盧惠光とのガチンコは好きなようにやらしてもらうが、ここはそこそこ劉家良的演出に倣った功夫でいくから勘弁してね(もしくは俺なりのどっしり功夫を見せてやる)"
ところどころで型がバシッバシッ!
合間に危険な炎スタントを挟んで、ジャッキーお馴染みの混戦アクションから またも華麗な型がバシッバシッ!
まさに色々な"功夫映画のひな型が融合した"素晴らしい功夫場面になっていると思います。

ジャッキーvs盧惠光
思いっきしジャッキー流のガチンコです。
間とリズムとスピード!
それにこだわる対決としても抜群なジャッキーガチンコ勝負と言えるでしょう。また、戦い始めに足技で散々蹴られて、工業用アルコールに手を出してラリって、ガムシャラメチャクチャ酔拳炸裂! ってのは自身の「ヤング・マスター/師弟出馬」vs黄仁植戦 を意識したものだと思われます。
(もっかいここで酔八仙の名前を読み上げてくれたらもっと最高だったんだけど・・・)

このように

キャラクター、功夫場面だけを取り上げてみた場合
"いったい何処に抜かりがあるんだ?"
って気がします。だけども私自身、
"全体の評価としてはそんなに高くない作品"
だったりします。こんだけ語っておいて。
それは典型的な時代劇的話の流れが個人的に好みではないということも1つあります。ジェット・リー「黄飛鴻」でもそれは目立ったように、私自身、息苦しさを感じる映画があんまり好きではないんですね。
でも、それだけじゃないと思います。
この映画の場合、その"悪いとこ"ってのを説明するのが非常に難しい。

だけども

そろそろ本題だったような気がする"なぜ功夫映画が好きなのか?"に迫りたいような気がしてきたな。

必殺!少林寺vsラマ」「水滸伝」「少林寺・怒りの大地」
例えばこれら3つの作品は、全体としてはあまり好きではありません。
しかし功夫部分は好きなので、そこだけは繰り返し見てる。
上京して一人暮らしを決めた時も、たくさんの功夫映画ビデオテープを持っていけない、でもジャッキーぐらいは持っていきたい、それも全部は難しい、ということでダイジェストビデオを製作した。とどのつまりは、

功夫さえ見てれば幸せな俺がいるのだ

なんで?
他のジャンルだとこの方法は成立しない。
ターミネーターの生まれたとこだけ見たってしょうがないし、寅さんとたこ社長がケンカしてるとこだけ見たってさらにしょうがない
他に1つだけ成立するジャンルがあるとすればアダルトぐらいだろう。

穿った見方をすれば功夫シーンなんて、星の数ほど見てきたしとっくに飽きててもおかしくないはずだ。
現実的には酔拳や鶴拳でK1でチャンプになれるなんて思ってない。
象形拳なんていうが、ムリして低い位置から鷹拳のポーズを取ったりするよりボクシングを習いに行く方が強くなれるだろう。
功夫は素晴らしいが最強じゃない
そんなことは子供の時から分かってる。
それでも何故魅かれ続ける俺がいるのだろうか?

病気だから

これは3:7 7割は本気の言葉だ。
病名は?

功夫映画依存症

功夫シーン依存症と言っても良いが、要はそういうことだと思う。
俺は功夫映画を見続けないと「見たい〜!」と禁断症状が出てしまう人間なのだ。だからこそそれが怖くてダイジェストビデオなんか作ったのだ。
じゃなぜそんな病気になってしまったのか?

子供の時に功夫映画から大きなカタルシスを得すぎてしまったから

子供の時からたくさん功夫映画を観て、たくさん興奮を体験してきた。
「魔拳!カンフーチェン」のJACアクションでさえ満足しないガキが、他のヒーロー戦隊ものや描けば誰でも出来る(と当時は思っている)アニメで満足するわけがない。
「レイダース」は素晴らしい映画だが、ハリソン・フォードの肉弾戦を屁とも思わなかったのも事実だ。こんなものは個人差でどうとでもなってしまうが、ともかくあくまでも俺にとっては

真似できないという意味・憧れで功夫映画を超えるものなど一切登場しなかったのだ

できないから憧れる。
憧れの存在がさらにさらにと凄い功夫を見せてくれるから強いカタルシスを得られる。これを何年も繰り返すことで「功夫映画依存症の俺」が誕生することになったのだろう。
真似できないという意味で興味深い部分がもう一つある。
例え僕がメッチャクチャ修行をして一人前の功夫使いになったとしても絶対真似できないこと。

それは

子供の時にいわゆる"功夫ごっこ"をしたことがある人は思いだして欲しい。
どぼぉ!! じじんっ!! ぼほーっ!!
効果音の表し方は人それぞれだが、拳が風を切る音、殴る音、防御する音、どれも口で発生しながら遊んでいたりはしなかっただろうか。俺はそうやって遊んでいた。
実際出るわきゃない
実際出るわきゃないからこそ、昨今の功夫映画では最小限の表現になってはいるが、当時の功夫映画には一切の遠慮が無かった。劇中の功夫使いだけはそれがジャッキーであれサモハンであれ、石天さんであっても
殴れば豪華な音が出た
単純だがこれも憧れを高める、依存症を深める大きな要因であったことは疑いない
だからこそ今でも、例えトータルしてつまんない作品であっても功夫シーンがそれなりに出来映え良ければ、
すーっ・・・・・・やれやれ
と表現は悪いがニコチンのように俺に安らぎを与えてくれ、ある程度の満足感を得られるのだろう。

やりすぎは良くない
やりすぎはビタミン剤でも慈善事業でもなんでも体に毒だ
せめて、広く浅くか、狭く深くか、どちらかに絞らなければいけないだろう。
毒を食らわば皿まで
今さら俺にそんな選択の余地は無いけどね。
・・・つーか、皿まで食う奴はいねーだろっと茶化して、
今年(2003)の更新はひとまず終わりです。また来年!

■CAST&STAFF
監督 劉家良(リュー・チャー・リャン)
出演 成龍(ジャッキー・チェン)
梅艶芳(アニタ・ムイ)
狄龍(ティ・ロン)
盧惠光(ロー・ワイ・コン)
劉家良(リュー・チャー・リャン)
黄日華
錢嘉樂(チン・ガー・ロッ)
太保(タイ・ポー)
劉徳華(アンディ・ラウ)
何永芳
蒋志光
董驃(トン・ピョウ)←日本公開版はカット
翁虹
韓義生
劉家勇
黄新
段偉倫
劉兆銘
關秀媚
火星(マース)
武術指導 成家班
劉家良(リュー・チャー・リャン)
脚本 ケ景生(エドワード・タン)
唐敏明
阮繼志
音楽 胡偉立
製作 ケ景生(エドワード・タン)
曾志偉(エリック・ツァン)
(バービー・トン)
製作総指揮 何冠昌(レナード・ホー)
制作年度 1994

 
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