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■成龍(ジャッキー・チェン)2003  
 


飛龍再生
The Medallion
メダリオン


※レビューの前に
ジャッキーや陳嘉上(ゴードン・チャン)、サモハンら香港クルーがハリウッド出資の元、まず「ハイバインダーズ」なる作品を製作、が出資したハリウッドの映画会社がそのフィルムに大幅な見直しをするよう求める。滅茶苦茶がっかりした香港クルーが撮り直ししてさらにタイトルを改題したのが本作「メダリオン」である。よって、これから述べる感想は元もとの「ハイバインダーズ」にしてみれば、
「本当はそうじゃなかったのよっ!」
ってところがあるかもしれないが、そのフィルムは見れそうにも無いので今回のこの「メダリオン」での批評となる。

流れ

人身売買組織を率いるスネークヘッドを追う、英国人のインターポール捜査官アーサーと香港の敏腕刑事エディ。2人は、組織に誘拐された中国人少年を救出しようとして殉死するも、少年の持っていた不思議なメダルの力によって超人的パワーを持つ”ハイバインダー”に生まれ変わった。だがスネークヘッドは、その力を上回るハイバインダーだった!
※オフィシャルサイトより抜粋

物語から

はっきり言って駄作だ。

「英雄であるあなたがワイヤーで空を飛ぶのなら役者を引退をしてくれ!」
と「タキシードを脱げ」で私は述べた。そして、
「そらみたことか!」
と思わず言いたくなってしまうのが本作へのまず第一感想である。
がしかし、本作がダメなところの主がそのワイヤーアクションにあるのかと言われればそうではない。そうではないがこの出来では思わず、そんな言葉を吐かずにいられなくなったのもまた然り。

まるでやっつけで春の株式公開に無理やり合わせてクソゲーが発売されたような、似たような印象を受ける。
もし自分が脚本を売り込まれる映画会社の立場で考えてみなはれ。
「それを持てばスーパーマンになれる不思議のメダルの争奪戦を描く映画ッス!」
と売り込まれたとしたら、俺だったら
「そういうのは散々観たので却下」
と一蹴するだろう。
悪いけどこの映画のストーリーは本当に酷い。
たっぷり手垢の付いた素人でも考え付くようなお話で、隅から隅まで本当にあの張堅庭(アルフレッド・チョン)が考えた原案なのか?「オン・ザ・ラン 非情の罠」を手がけた人間が書いた脚本なのか?と疑ってしまう。
ああ酷い酷い・・・・・・ん?と思って自分のHPを読み返してみるとだな、
"セリフやト書きが重要であって大筋は重要ではないかもしれない"
こんな文章を自分が書いてたりする(「大醉侠」)。
まぁこの時は「大醉侠」を初めて見た興奮があったし、ちょっと極論気味になってるのだが、要は自分で
"話が単純素朴でも工夫次第で面白くなる"
と言っているのだ。
そう、この映画の本当にダメなところは
"本末転倒と本末転倒が折り重なって共倒れ"
ってところにある。
こんな物語になってしまっているのも、元々は以下述べるようなことが原因だったのかもしれない。

アクションから

消去法を取るとこれしかない・・・と感じたのではないか。
「ワイヤーアクションやってみよう」
ジャッキーのワイヤーアクションだってあっていいはずだ。それは私もそう思う。だから最初に書いた「英雄である〜うんちゃら」は当てはまらない。当てはまらないが---
じゃ、どんな物語にするのか?
というところで選択肢が限られてくるのがジャッキーならではの話になる。
ワイヤーアクションに説得力を持たせたい
現代劇でその辺歩いてたジャッキーが何の根拠も無しに空を飛び出したら確かに説得力が無い。
説得力を持たせた上でワイヤーで飛ぶにはどうすればいいか?カンの鋭い方々ならもうここで選択肢が限られてることに気づくと思うが、説明したいのでゆっくりと。

1.武侠片にする
「グリーン・デスティニー」「英雄HERO」とアメリカでもヒットを飛ばしたオシャレな武侠片にすれば良い。
しかし、であればつまりですなそれは
「功夫映画になってしまう」
そりゃそうやね。でもジャッキーがこのタイミングで功夫映画はやらないでしょう。

2.特に意識しない
説得力なんかいらないってなら「チャーリーズ・エンジェル フルスロットル」なんかが近いでしょうか。とりあえず飛ばしとけってパターン。これはやばいですよジャッキーにとっては。
・歳だからワイヤー使ったとハッキリ思われる
・この使い方ならジャッキーじゃなくても・・・と思われる
ジャッキーがそんなことやるわけがありません。
ロミオ・マスト・ダイ」みたいになるんじゃないかって?
それは違うと思いますよ。なぜならとっくに昔からそうなってます。細かいところでは当然差がありますが、そうなってます。

3.スーパーマンになる
結局これしかないのです。
ジャッキー得意の現代アクションでワイヤーで飛ぶけどそれにはちゃんと理由付けがあって、となると不思議な力を得てスーパーマンになるしかないでしょう。ジャッキーがこれを選択したのはこれしか選択できなかったからと言っていいでしょう。

で、まぁそのワイヤーアクションですが、成功してるとは言えないでしょう。ジャッキーがやるのなら、
「俺ならワイヤーアクションこんな感じ!」
という何かが絶対に必要だったはずです。
「ワンス・タイムなんちゃら」はじめ古装片ブームに沸いていた時代に「醉拳U」を製作し、
「俺の古装片ならこんな感じ!」
とやってしっかり成功させたように。
本作に出てくるワイヤーアクションは李連杰(ジェット・リー)が得意とするソレに遥かに及んでおらず、かと言ってジャッキーならではの何かリアクションがあるのか言えばそれもない、正直つまらないものです。どうせやってしまうならサモハンより程小東(チン・シュウトン)呼んでもっと派手にバンバンやってしまえば良かったのにね。

ワイヤーアクションであるが故に物語の幅は狭められた。
「シャンハイヌーン」には西部劇があった
「ラッシュアワー」にはビバリー・ヒルズ・コップがあった
「タキシード」にはジェームス・ブラウンがあった?
でもこの映画には何も無い。
"話が単純素朴でも工夫次第で面白くなる"
この映画には工夫が足りなかったのではないか。

鍾麗〔糸是〕(クリスティ・チョン)が可愛かったのでもう少し出番を増やして欲しかったというか、「ハイバインダーズ」にはあったのかな?

■CAST&STAFF
監督 陳嘉上(ゴードン・チャン)
出演 成龍(ジャッキー・チェン)
クレア・フォラーニ
リー・エヴァンス
ジュリアン・サンズ
ジョン・リス=デイヴィス
黄秋生(アンソニー・ウォン)
鍾麗〔糸是〕(クリスティ・チョン)
動作指導 洪金寶(サモ・ハン・キンポー)
脚本 張堅庭(アルフレッド・チョン)
陳嘉上(ゴードン・チャン)
ポール・ホイーラー
ベネット・ジョシュア・ダヴリン
ベイ・ローガン
原案 張堅庭(アルフレッド・チョン)
製作 張堅庭(アルフレッド・チョン)
ジェームス・フリン
製作総指揮 成龍(ジャッキー・チェン)
楊受成(アルバート・ヨン)
陳自強(ウイリー・チェン)
制作年度 2003


千機變
The Twins Effect
ツインズ・エフェクト



遅ればせまして失礼しますが、やっと観ました。
物凄いタイトル通りな作品でしたねぇ。

流れ

香港に何故か吸血鬼はびこる。
反吸血鬼同盟のヴァンパイアハンターである鄭伊健(イーキン・チェン)はパートナーとともにドラキュラ・ミッキー・ハートを退治せんとしたが、逆に返り討ちにあいパートナーを死なせてしまう。
一方でドラキュラ王子6人のうちの1人である陳冠希(エディソン・チャン)は家老的存在の黄秋生(アンソニー・ウォン)と共に教会に居を構えて平和に暮らそうとしたりなんかして。

鄭伊健は次のパートナーに鍾欣桐(ジリアン・チョン)を迎えるのだが、
「もうパートナーに恋はしない」
と誓っていた。
とりあえず同居することになるのだが、鄭伊健の妹である蔡卓妍(シャーリーン・チョイ)がすげー嫌がったりなんかして。

一方で先のミッキードラキュラが陳冠希を除く5人の王子を殺害して生き血の塊を入手。どうやらこれが秘伝の書を紐解く鍵らしい。てなわけで陳冠希も何れ狙われる身に。
陳冠希の父は逃げてしまい、自分で人の生き血を吸う事が出来ないそして許さない彼は飢餓状態に。
いつの間にやら彼をドラキュラと知らずに恋人関係になっちゃってた蔡卓妍は彼がドラキュラであることに気づくと、救急隊員の成龍(ジャッキー・チェン)の協力もあって敵のドラキュラ軍をはねのけて輸血用パックを入手し、彼に飲ませる。

余り頼りにならないパートナー鍾欣桐を差し置いて1人でミッキードラキュラとの対決に出向いた鄭伊健だったが、ミッキーはこれを用意周到に待ち伏せ逆に彼をドラキュラにしてしまう。
鍾欣桐は蔡卓妍と陳冠希を連れて、ミッキー退治に出向くのだが、陳冠希はミッキーにやられて瀕死状態に、鄭伊健はドラキュラになって処置無しなので断腸の思いで処断。
怒りに燃えたツインズは決死の覚悟でミッキードラキュラに立ち向かっていく・・・

終劇




まぁ簡単に言えばこんな感じ。
まずもって何故キョンシーというポピュラーなチャイナドラキュラがいるのに、わざわざ「ドラゴンvs7人の吸血鬼」でもあるまいにドラキュラを遠くから持ってきて題材にしてるのか不思議。キョンシーじゃ駄目か?ちょっとカジュアルさに欠けるか?何でもありの香港映画なので別に良いんだけど。

予想以上に面白かった(簡単な感想やな)。
全く持ってホラーなのかコメディなのかシリアスなのかジャッキー・チェンなのかわからない映画ではあるが何も無理にカテゴライズする必要もあるまい。
面白きゃええのだ。

まず主演のツインズが頑張らされているところに注目したい。
香港のアイドルは大変だ。
売れたらいきなり誰でもワイヤーアクション、功夫アクションをやらされる。
彼女たちだってその練習は相当にしただろう。日本ではそんなんない。
向こうは張曼玉(マギー・チャン)だろうが關之琳(ロザムンド・クワン) だろうが誰だっていつかはワイヤーに吊られて空を飛び回らなければならない(全然そんなのやりたくない人だっているだろうに)。それでこそまず一流女優としての登竜門だ・・・そうか?
本作でもツインズは出来るだけダブルなしで大変頑張っている。素晴らしい気概だ。と同時にもう一つの気概を感じやしないか。

ハッキリ言って本作はツインズを売り出すためのアイドル映画である。
個人的にはこの2人、どうにも色んな面で中途半端な感じなところがまた可愛くもあるし、決して嫌いではないがさして好きでもない。という私的印象は置いといて、言うべくもないがこの作品では裏方に甄子丹(ドニー・イェン)が回り、ジャッキーらがゲスト出演で盛り上げ、鄭伊健(イーキン・チェン)とベテランの黄秋生(アンソニー・ウォン)が要所要所でシーンを締める。スタッフ他の面々についてもまた然りで、何が言いたいかと言うと、香港映画に携わる既にビッグな怱々たるメンバーが
「いっちょアイドル売り出しに協力してやろうじゃないか」
と一丸となってこのアイドルの背中を押してやっているということなのだ。
ここの彼らベテラン勢の気概の良さ、結束力の高さが実に見て取れるではないか。「美味しんぼ」で中国人の若夫婦が横浜で食堂を出すために華僑ネットワークのメンバーの前で料理を作って認めてもらって融資してもらうなんてエピソードがあったのだが、本作はまさしく華僑ネットワーク的なチャイナの結束力、
「この若い力をみんなで応援しようじゃないか」
という頼もしい気概を感じるのだ。

そういえば結局キョンシーなどのホラー映画に主演しなかったジャッキーではあるが、ドラキュラに噛まれそうになってアクロバティックに逃げ回るジャッキーを見て、
「あんた、それ得意分野じゃんか」
と思った。つまり、よく考えたらホラーコメディにぴったりの良い動きが出来る人じゃんかと。今からでも遅くないので今度はホラーコメディやってみても良いかもしんない。林正英(ラム・チェンイン)の後継いでみますか、ツインズ引き連れて。

■CAST&STAFF
監督 林超賢(ダンテ・ラム)
聊合導演 甄子丹(ドニー・イェン)
出演 蔡卓妍(シャーリーン・チョイ)
鍾欣桐(ジリアン・チョン)
陳冠希(エディソン・チャン)
鄭伊健(イーキン・チェン)
黄秋生(アンソニー・ウォン)
ミッキー・ハート
成龍(ジャッキー・チェン)
莫文蔚(カレン・モク)
何超儀
劉思惠
蒋雅文
動作指導 甄子丹(ドニー・イェン)
脚本 陳慶嘉
呉〔火韋〕倫
製作 張承?
製作総指揮 楊受成(アルバート・ヨン)
制作年度 2003


龍的深處失落的〔才井〕圖
Traces of a Dragon Jackie Chan & His Lost Family
失われた龍の系譜 トレース・オブ・ア・ドラゴン



まず最初に本作が製作されたこと、そして小規模ながらも日本公開されたことで、改めて成龍(ジャッキー・チェン)という男の偉大さを感じた。
監督に張婉〔女亭〕(メイベル・チャン)、ナレーションに狄龍(ティ・ロン)、撮影に黄岳泰(アーサー・ウォン)とこれだけ豪華な布陣でお送りする作品の内容は何とジャッキーの父・陳志平と母・陳月榮の生涯ドキュメント。

確かにその生きてきた歴史は凄まじいものがある。
父は国民党のスパイで、母は阿片ブローカーにしてギャンブラー。
それぞれ子供はいたものの、伴侶を無くした2人は捕まえる側、捕まえられる側として出会い恋に落ちる。そして間に生まれたのがジャッキー。
共産党が勝利し、追われる身となった2人はジャッキー以外の子供を大陸に残して香港へ。ジャッキーを于占元の中國戯劇學校に預けるとさらにオーストラリアに飛び、領事館のコックとして過ごした。

梅艷芳(アニタ・ムイ)主演の「さらば英雄 愛と銃撃の彼方に」を彷彿とさせるような凄まじい人生である。正直それが嘘か誠かなんてことには余り興味が無い。映画には映画であるべきための大袈裟さはいつも存在するもので、文字通りその通りのことであっても大袈裟になってしまうものなのだ。
本作は彼らの生き様を通して当時の中国の時代背景が脳裏に浮かび上がる非常によく出来たドキュメントである・・・あるが、
これ一つで映画にしちゃうとはよくやったもんだ
というのが個人的な本音。
李小龍(ブルース・リー)の父母の一生を描いた作品が存在するだろうか、ジェームス・ディーンは?チャップリンは?
如何にその人生が凄まじきものであろうとも、ジャッキーの両親というだけで映画まで作ってしまうことが一番凄い。良いドキュメントではあるが、正直TVメディアレベルで十分な内容で、わざわざ映画にするほどのことかと思ったのが正直なところ。

■CAST&STAFF
監督 張婉〔女亭〕(メイベル・チャン)
出演 陳志平
陳月榮
成龍(ジャッキー・チェン)
ナレーション 狄龍(ティ・ロン)
音楽 梁允文(ヘンリー・ライ)
製作 蘇志鴻(ソロン・ソー)
陳自強(ウィリー・チャン)
製作総指揮 成龍(ジャッキー・チェン)
制作年度 2003
 
 

ツインズ・エフェクト
失われた龍の系譜 トレース・オブ・ア・ドラゴン
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