ジャッキー・チェン

数々の端役・スタントをこなして羅維プロ所属の主演スターになり、
しかしながら全然作品は売れず、ダメダコリャの時にやっとこさ
「蛇形勺手」というヒット作を作り出せた苦労苦労のスターダム前時代。


順天立地/北派功夫
Not Scared to Die
ファイティング・マスター


監督 朱牧(ジュー・ムー)
出演 王青(ワン・チン)
成龍(ジャッキー・チェン)
李文泰(リー・マンチン)
(チョイ・チンチュン)
(ヤム・ホイ)
武術指導 成龍(ジャッキー・チェン)クレジット名はおそらく陳元龍
製作総指揮 (カイ・ニン)
制作年度 1971



ジャッキーが小さい独立プロの社長に見いだされ、初めて準主役という大きな役をもらった記念すべき作品・・・
ではあるけれども、正直言ってジャッキーが出てる映画の中でもダントツのクズみたいな映画。
反日感情バリバリで中国の戯劇団とそれを追う日本軍との闘いなんですが、
その日本人描写はすさまじく酷く醜く、とても観てられない演出。
それと同時に、「この頃の日本人はこんなにも酷かったのか」というか、
こんな演出をしてしまうぐらい、日本人は中国・韓国などに対してヒドイ弾圧を行ったのかと思います。戦争反対。
主役が王青ってのが「なんでやねん」って感じ。あの悪役専門顔の彼がぁ〜!?
で、王青の弟がジャッキーで、登場回数もすこぶる多く頑張ってはいます。
結局はジャッキー、日本軍のリンチにあい、ボコボコのグッサグサにされ血塗れで死にます。
「少林門」の格好いい死に方(呉字森やからね)と比べ、もの凄い空しさ・・・・
挙げ句、戯劇団は女・子供容赦なく殴られ刺されブチ殺されます。怒り爆発の王青が・・・・
この作品はビデオ化も早く、すぐにでも観ることが出来たのですが、
今日の今日まで観ていませんでした。絶対つまんないと思ってから。
でも実際観たら想像以上に酷かったです。



女警察/師妹出馬
Police Woman
ヤング・タイガー


監督 朱牧(ジュー・ムー)
出演 秦祥林(チャールス・チン)
(カム・カーファン)
成龍(ジャッキー・チェン)
武術指導 成龍(ジャッキー・チェン)クレジット名はおそらく陳元龍
製作総指揮 (ハン・カン)
制作年度 1971


タイトル通り女の刑事と男の刑事(秦祥林)が悪組織を潰す現代アクション。
ジャッキーは悪組織の用心棒役で出ている。っていうかチンピラ。劇中でもジャッキーが一番のクンフー使いなのに、
なぜかクンフーのできない刑事にあっさりやられてしまう。ジャッキーが武術指導を兼ねている。
上記の「順天立地」と同じ製作会社の作品。
会社は確かこの二本程度でほとんど倒産
同然になったとか。
そりゃ悪いけどこんな作品の出来映えじゃあなぁ・・・

廣東小老虎
Little Tiger from Canton
燃えよジャッキー拳

タイガー・ プロジェクト/ドラゴンへの道・序章

監督 魏海峰(ナン・ホイフン)
出演 成龍(ジャッキー・チェン)クレジット名は陳元龍
韓國財(ハン・クォツァイ)
田豊(ティエン・ファン)
陳鴻烈
許金
泰山
金軍
元彪(ユン・ピョウ)
武術指導 成龍(ジャッキー・チェン)クレジット名は陳元龍
元奎(ユン・ケイ)
音楽 陳勲奇(フランキー・チェン)
制作年度 1974


ジャッキー初主演作。幼い時に父親を殺された若者が叔父に育てられ、父の仇を討つまで。
実は元表も出演しているらしいが、未だにどれが元表か判別できていない。
(教えられてやっとこさどれが元彪か判明。あ、これかぁ。)

オープニングの演舞がなかなか良いんだよね。「気合い入ってます!」って感じで。
BGMもなかなか。
武術指導は本人と七小福同志の元奎だから、2人で仲良く考えたんだろうな〜って感慨深い。
ジャッキーが、「殺陣で一番重要なのはテンポだ!」 って言ってたけど、
この時それはまだまだ。

ジャッキーも若いもんね。

韓國財がまぁ・・・いつも通りなんだけど良い味出してて暗い映画の明るい照明として
ジャッキーよりも役立ってます。

陰惨な物語でありながらも、やはりこの頃からジャッキーのコミカルさもある。
まだまだ完成されていないクンフー・シーンが間延びしてやや退屈ではあるが、
この時から『強敵を倒すため、そばにいた猿を見て猿拳をやる』などのシーンがあり、
いずれ完成させるコミック・クンフーの原型がもう既にここにあるのだ。



少林門
Hand of Death
ジャッキー・チェンの秘龍拳/少林門


監督・脚本 呉字森(ジョン・ウー)
出演 譚道良(レオン・タン)
田俊(ジェームス・ティエン)
洪金寶(サモ・ハン・キンポー)
成龍(ジャッキー・チェン)クレジット名は恐らく陳元龍
呉字森(ジョン・ウー)
元彪(ユン・ピョウ)
朱青
高強(コー・チャン)
楊威(ヤン・ウェイ)
武術指導 洪金寶(サモ・ハン・キンポー)
音楽 顧嘉輝(ジョセフ・クオ)
製作総指揮 鄒文懐(レイモンド・チョウ)
制作年度 1974

元少林寺の高僧でありながら、政府に寝返り少林寺を焼き討ちした将軍(田俊)を
少林寺の修行僧(譚道良)が鍛冶屋(ジャッキー)や刀匠と力を合わせて将軍を倒すまで。

今日では「ブロークン・アロー」「フェイスオフ」「MI-2」「ウインドトーカーズ」等のハリウッド監督として知られる
呉字森
監督の初期の作品。
クンフー映画自体が下火時代とあって、しばらくはオクラにされた。

実はジャッキー、洪金寶元彪のゴールデントリオが共演した最初の作品かもしれない。 (ちゃんと全員役柄があって)
この時はみんなゴールデンでも何でもないけど。
だって、ユン・ピョウは矢を射たれて死ぬし、デブゴンは悪役で倒されるし、準主役のジャッキーも志し半ばにして死ぬし。
すでに、武術指導家としてはジャッキーの一枚上手を行っていたサモが担当なので、古い作品ながら殺陣はなかなかである。
元々サモは香港映画界最初の武術指導家韓國傑のアシスタントである。
主演の譚道良は実際に『神の足』と謳われたテコンドーの達人。確かに凄い。でもブサイク
小学校の同級生で譚道良そっくりな女の子がいた
。関係ないけど。

とにかく、子供の時これを観た衝撃は「ジャッキー・チェンの秘竜拳」と
新聞TV欄に書かれてあるのを読んでトキメキドキドキと放映時間を心待ちにしたものだが、

いざ始まってみるとオープニング演舞はどう見てもジャッキーではないブサイクな兄ちゃん。
「あれ?あれ?」
と凄く不安にさせた(後に出てくるジャッキーも正直ブサイクだが)。
その後、観ながら「これは主役じゃないぞ!」といくら小さいガキでも悟り、ジャッキーが死んだ頃には
「ほら、やっぱり!」
恐らくこれのTV放映時には同じようなジャッキー好き子供関係からの苦情が殺到したことだろう。

で、この頃から呉字森の才能がチラホラと作品に垣間見える。
特にジャッキーが死ぬシーン。仲間が立ち去る間の数秒に間があってゆっくりと倒れる。
これは後の「英雄本色」(「男たちの挽歌」)で周潤發が機関銃に撃たれて倒れる時とショットが同じである。
しっかしあそこまで出世するとはなぁ、呉字森。
その呉字森本人も反清分子の重要な人物として登場してます。まだ若いやね〜
よくこんな頼りなさそな兄ちゃんに監督やらせたもんだ。
その辺の度量の深さ(いい加減さかもしれんが)が香港は凄い。
「男たちの挽歌」でも味のある刑事役演じてましたね。
この映画のメインテーマBGMが大好き。昔、ベーシックプログラムで作ってみたぐらいに。



新精武門
New Fist of Fury
続・怒りの鉄拳
レッド・ドラゴン


監督・製作総指揮 羅維(ロー・ウェイ)
出演 成龍(ジャッキー・チェン)
苗可秀(ノラ・ミャオ)
陳星(チン・セイ)
韓英傑(ハン・イェンチェ)
蒋金(ジャン・ジン)
鄒秀秀
魯平
韓甦
劉明
魏莱
葉海清
翁小虎
陸一龍
孫嵐
史亭根
林仲
王永生
陳森林
陳震
侯伯威
曾明昌
何維雄
孫新祥
羅維(ロー・ウェイ)
武術指導 韓英傑(ハン・イェンチェ)
成龍(ジャッキー・チェン)クレジット名は恐らく陳元龍
音楽 陳勲奇(フランキー・チェン)
脚本 羅維(ロー・ウェイ)
潘壘
策劃 呂三民
製作 陳國章
制作 許麗華(シュー・リーホワ)
制作年度 1976

◆日本軍の弾圧から逃れて上海までやってきた『精武門道場』一行だったが、ここでも日本の『大和道場』の弾圧を受けてしまう。
かねてから反日感情に燃えていた若者一龍(ジャッキー・チェン)が『精武門』に入門し、修行の末『大和道場』を打ち破る。

李小龍の精武門」(「ドラゴン怒りの鉄拳」)の正式な続編。
監督も同じ人。
ヒロインも同じ苗可秀
李小龍死後、第二の李小龍を求めた羅維の奥様がたまたま「少林門」に出ていたジャッキーを観てスカウト。
李小龍に准えてこの作品を撮ったが興行的には大失敗に終わる。

ジャッキーの顔がシリアス向きでなくあまりに迫力が無かったのだ。
この時のジャッキーにははっきり言って大したスター性があるようには見えない。
一重瞼のなんかボケッとしたジャッキーは、やがて二重瞼の整形手術を余儀なくされる。

でもなー
俺はジャッキーのファンだ。そりゃ間違いない。でもなー
あの当時のジャッキーをブルース・リーの後継者としてスカウトするか?

正直ぃ・・・格好良くないで、「少林門」で後ろのザコやってた元彪の方が良くないか?
まぁこれがあったから今のジャッキーがあるわけで、やっぱりその時も何か光るモノがあったと思いたいが。

うーんこれが正式な続編なのは間違いないのだが、スケールダウンはもの凄いモノがある。
李小龍という存在がとてつもなく大きいということがまざまざバッチシ。
逆に「ドラゴン怒りの鉄拳」という名作に近づける作品ってのはそうそう拝見していないのだから、
「納得しろよ」ってのもあるが、テイストは同じ羅維監督の「老虎急星」に近いというかあれになってる。

ただし、良いとこ挙げれば
ジャッキーが「精武門」の看板持って行進→ノラ様が陳真(リー)の前影とフラッシュバック
ってシーンもなかなか感動するし、

ラストの珍しい組み合わせ、ジャッキーvs陳星ではジャッキーが三節根持って戦うところも珍しく面白い
アクション自体もなかなかよかったのではないか。陳星は迫力あるっす。
特に目に付いちゃったのは、
陳星に吹っ飛ばされたジャッキーが壁に激突→詰め寄る陳星に意表を突いた正拳突き!
この流れと全く同じシーンが後の「ドラゴンロード」にもあり、私は先に「ドラゴンロード」を観たのだがその際に、
「うわっすんげぇ!?」
とびっくらこいた(俺が意表突かれた)もんだ。そのような殺陣の流れを既にこの作品で見つけてしまったので、
「この時からあったのか!?」
とさらに驚いたり感心しちゃったりなんかした。

それと一言、石丸博也さんは言わずもがな、青野武さんの陳星がとてもよかった。

ラストシーンは困ったもんで、どうしたもんかな。
これも言わずもがな皆まで言うななんだけど、
怒りの鉄拳のラストは撃たれるシーンが無いから超最高なわけで
確かにラストシーンが名シーンってのはどの映画でもあんまりお目にかかれないもの。
それでも「怒りの鉄拳」ラストほど格好良く、記憶に残り、
後に「うむうむ!」と思い出しほくそ笑むシーンはそうそう作れない。

本作のようにジャッキーがボハッボハッ!と撃たれて劇終!
見せちゃー余韻もクソもないでしょ
。ダメでしょ、それは。
おまけに言えば、陳星の悪仲間がその際に間違って撃ち殺されるのも、観客の憤慨を静めるために
わざわざやってるご都合主義が目立ってしまって頂けない。
「じゃあどんな終わりがいいのよ?」
って聞かれれば、確かに李小龍と同じ事やっても仕方がないわけだし、余りに「精武門」が可哀想だから
ハッピーエンドにしとけば良かったんじゃないの?って思う。
歴史上どうたらはよくわからないけど「精武門」ってなんかいじめられっ子すぎ

後一つ、「精武門」の奴らに言っておく。
「怒りの鉄拳」でも本作でも思ったが、
お前らもうちょっと強くなっとけよ!ちゃんと修行しろよ!
「怒りの鉄拳」の田俊なんかたぶん二番弟子だろ。
一番弟子の李小龍があれだけ強いんだからあんたも柔道のおっさんぐらい倒せよ。他も弱いよ。
本作だってジャッキーは映画の中盤から入門した新入りの炒り卵だぜ。何あっさり抜かれてんのよ

陳星の娘役やってた鄒秀秀も女ドラゴンとして扱うべきなのでしょうか。



少林木人巷
Shaolin Wooden Men
少林寺木人拳


総監督・製作総指揮 羅維(ロー・ウェイ)
監督 陳誌華(チェン・シーホワ)
出演 成龍(ジャッキー・チェン)
金剛(カム・コン)
龍君兒(ロン・ジェンエール)
蒋金(ジャン・ジン)
苗天
張冰玉
陸一龍
魯平
何剛
金金
張亦飛
李敏郎
李笶叢
武徳山
社偉和
元彪(ユン・ピョウ)
趙豪江
翁小虎
陳威安
林文田
武術指導 成龍(ジャッキー・チェン)クレジット名は陳元龍
李銘文
脚本 金〔金金金〕
音楽 周福良
策劃 羅維(ロー・ウェイ)
呂三民
製作 李先章
制作 許麗華(シュー・リーホワ)
制作年度 1977

口の不自由な少林寺の見習い僧侶イーロン(ジャッキー)はその人柄から、先輩達に可愛がられ
内緒で酔拳や蛇鶴八歩の技を教えてもらいどんどん強くなっていく。
洞窟の奥に鎖で繋がれた謎の男(金剛)にも気に入られ獅子拳をも会得する。
少林寺の修行、最後の難関である『木人拳』を見事突破したイーロンは遂に下山する。
町でイーロンは謎の男と偶然再会するのだが・・・・。

ナムコの『鉄拳3』に木人が登場しているのが証明であるように、意外と多くの人が観ているジャッキー初期の傑作。
劇中に出て来る『木人拳』の修行は少林寺映画ブームの時に作られたたくさんの少林寺映画のベースになっているシーンである。
ジャッキーは役柄上、口を聞けないので台詞はほとんどない。おまけに一重瞼ジャッキー最後としても貴重である。
今回もユン・ピョウがチンピラ役でひょいと顔を出している。仕事無かったんやな。
俺のおかんもお気に入りの作品である。凄く地味な映画だけどね。

(こっから下は4年経って改めて書いています)
ああ・・・改めて時が経って改めて「本当に好きな映画だ!」と思える作品
無人島に持っていっても良い感じ。もう陳誌華監督の大傑作!
何故か?
私もはっきりわからないので、いいとこ挙げながら探っていきたいと思う。

■お話

極めてオーソドックスな仇討ちモノ。ただし、他の仇討ちモノとまた決定的に違うのが、
仇討ち相手に恩がある
ということ。大抵の仇討ちモノだと仇討ち相手がただひたすらに憎たらしいだけ。これは違う。
考えてみればその敵である金剛さんも、愛弟子と戦うことにためらったり、情を見せたり・・・・
ととても素晴らしい演技をしています。ジャッキーが修行をほぼ完遂したときの
「よくやったな」
って笑みも素敵。
単純な復讐劇に終わらせず、観てる側の気持ちに大きく絡む要素となっていそうだ。

口がきけないこと


これはデカい。絶対デカい。
つまり「ジャッキーにロクに演技をさせなかった」これがデカいと思う。
元々何でこんな設定したのか原作でもあるのかよくわからんが、大抵の香港映画は喋りすぎる
(胡金銓映画は幾分抑えているが)
それは大きな特色なので今さら嫌うつもりもないが、「男たちの挽歌」(読んでみてね)でも
あったように、
セリフだけで全てを語らせようとする傾向が強い
人間というのは相手の心を読もうとする生き物
だと私は思う。
例え相手が人でなく、動物であっても、植物であっても、天地であっても、むしろ壁であっても。
あなたは寝るときに天井を見上げ、天井の模様を顔と見立てて幽霊なんぞ想像したことはないだろうか?
あれも心を読もうとする人間のクセの一つだと私は思う。
だから、
セリフなんかなくても通じるシーンそしてセリフが余計に感じてしまうシーン
ってのがたくさん出てくるのである。しかしこの映画はジャッキーが喋れないので
「セリフなんかなくても通じるシーンがたくさんあり、セリフが余計に感じてしまうシーンはほぼ皆無」
特に自分が日本人だからってのも大きく影響してそうだが、
ジャッキーの整形前の素朴な表情もさらに相乗効果を生んでいる
と思う。
冒頭の方で金剛が投げ捨てた肉マンの汚れた皮を取ってあげ(しばらくこの食べ方真似しました)、
「うーうー(食べてー)」
と金剛に差し出すシーンのジャッキーの表情、何て屈託が無く、てらいが無く、
ただただ純粋な善意に満ちていると感じてしまうことか。

「感じてしまう」と言ったが、つまり
「表情から感情を読む楽しさ」
がこの映画を観るときに大きく膨れあがり、一層感情移入してしまう原因の一つ
となっていると思う。
(まとまってないかなーごめんなさい)

■木人

これもデカイ。特に子供には大受け。
僕らの世代では「木人ごっこ」をやった奴は大変多いと思う。
これが不思議にジャッキーではなく木人役を大抵はやりたがる
細かいストーリーなど忘れても、子供時代に一度観た人は「木人」自体はずっと覚えているのではないだろうか。
それほどインパクトの強いものだと思う。
なのでインパクトって部分はこれでバッチシ。

■キャラクターが立っている

決して見事とは言えないが、前述のとおりジャッキー扮する一龍は表情のみで語るシーンを
「こう思っているのだろうな・・・」
と観客が想像するだけで充分キャラクターは立つ。金剛もジャッキーとのカラミが多いので然り。
それだけでなく、「酔いどれ和尚」「蛇八歩の尼さん」「謎の男(魯平)」この3人も立っていると思う。
特に「酔いどれ和尚」はいいよねぇ〜袁小田爺さんの原型ですよ間違いなく。
子供の時はこの和尚が見せた
「鉄の橋」
にマジびっくりした。これだけでもインパクトはあるのだが、その後もジャッキーに果物上げるし、
それとなく酔拳教えるし、優しいのなんの。
特にジャッキーが木人突破したときの和尚の静かに喜ぶ表情は最高。なんだかこっちまで泣けてきた。
この辺の数人ではあるがそれぞれのキャラクターが立っているのも面白い原因の一つだろう。

■総じて情緒がある

日本人って情緒大好き。俺も大好き。
この映画には情緒がある。間違いなくある。上記で挙げた良いシーンのほとんどは情緒である。
他にジャッキーの映画でパッと思いつく情緒あるシーンを考えてみた・・・・・・
「酔拳」 袁小田爺さんと酔拳を教えてもらう前日の夜に2人で謳いながら飲み明かすシーン。
「プロジェクトA」 海軍復帰、A計画執行宣言のシーン。
最近では「ゴージャス」 リベンジ修行のシーン(これはジャッキーそのものに対する情緒だが)
他のクンフー映画を考えても、こうしたシーンは大変少ないと思う(十人十色ではあるが)。
その中で本作は「情緒を湧かせるシーン」はすこぶる多い。
結局、この映画が好きで溜まらないのは情緒なのか


■ラスト


でもこれも考えてみよう。
・・・・・・うぬぬ、ここも凄い。未だかつて個人的には敵役がこのような死に方をした映画は観たことがない。
いやでも、自身の観る映画のジャンルは凄い偏りがあるので「いくらでもあるよ」ならそれまでだけど。
最近、どこかのBBSで
最後、金剛は自殺したんだ
のような考察があり、「言われてみれば、そう捉えられなくもないよな・・・」と思い直した。
確かに現実的に考えて殺すつもりなら「必殺の一撃」を加えるための「羽交い締め」を
もっと強く締めとけよ!
ってのはある。あっさり避けられすぎ。避けられたら自分に当たるのもわかってたはず。
だけどやっぱり私としては「殺すつもりだった説」だと思う。

その辺はかず花村さんからBBSに書き込んで頂きました次の文章、
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ダンマリのオヤジを殺したとき、「あいつは金を渡さなかったからだ。」
宿屋を殺したとき、「あいつは少林寺のやつに似ていたからだ。」
「なに!それだけの理由で人を殺すなんてチョットひどいんでないかい?」と思っちゃいました。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
からもわかるように金剛は基本的に大悪党であり、今までの性格ぶりからしても
「愛弟子の命と自分の命」で「自分の命」を取るのはかなり明白だと思うから。
こじつけずとも、
そこまで考えて撮影してなかっただろう
と身も蓋もない本音が一番真実に近いと思うけど。
そうであったとしても、このシーンは深く考察すると非常に面白い。

ジャッキーの一撃で沈む金剛。殺すべきか殺さざるべきか考え、説得を始めるジャッキー。
この後、金剛が
「お前はよくやる出来の良い弟子だ。これは俺がやった罪の報いだ。」
とジャッキーに語り、スキを見て近づき襲うわけだが、この時の金剛の頭の中!
ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる!!!!
こんな状態であったであろう。まぁわかりやすく言えば
殺すチャンスだ!なんて良い奴なんだ!殺すチャンスだ!
 最高の愛弟子よ!殺すチャンスだ!悪いことしたなぁ〜殺すチャンスだ!(繰り返し)

こんな感じ。 関係ないが思い出したが、
「身不由己/斗え!デブゴン」で梁家仁が、憎っくき義兄の張翼を追いつめたところで、
・・・・・・殺していいものだろうか・・・・・・
あれにはひっくり返ったが。
お前、可愛い嫁さんも友達もデブゴンも殺されてるのに、
今さらそれはないやろ!殺せよ!早く!って。

うぬ・・・・・・どうまとめる?
つ、つまりこの映画が好きな大きな理由は一つ「情緒」そして色んなシーンを
自分で膨らませてイメージすることが出来ること
・・・・・・かな?
どれだけ好きかはこれだけダラダラ書いてる文章が証明しております。



風・雨・雙流星
Killer Meteor
キラー・ドラゴン・流星拳
ファイナル・ドラゴン


監督・製作総指揮 羅維(ロー・ウェイ)
出演 王羽(ジミー・ウォング)
成龍(ジャッキー・チェン)
玉霊龍(ジュエ・リンロン)
高飛(コー・フェイ)
陳慧樓(チェン・ウェイロー)
佛林
馬場
薛漢
胡威
李思思
李強
王孫
陸一龍
翁小虎
王若平
李文泰(リー・マンチン)
武術指導 陳信一
脚本 古龍(クー・ロン)
音楽 周福良
製作 李先章
制作 許麗華(シュー・リーホワ)
制作年度 1977

誰も見た事のない最強の武器『雙流星』を携えて各地を放浪している剣士(王羽)は、
領主の妻との恋に陥ってしまうのだが、それは領主(ジャッキー)の画策の一つに過ぎなかった。

自分が子供時代の時点でほとんどの羅維ジャッキー映画は公開されたが、
これがなかなか公開されなかったので結構それまで待ち望んでいた作品。
(今はビデオ化されて容易に見ることが出来る)
やっとこさ、NHKBSで放映(なんでNHKBSがこの映画買ったんだろう・・・バータ?)された。
しかも何故か日曜日の朝(なんでやねん)。NHKだとCM抜く必要がないので楽でよい。
ちなみにあなたはCM抜きますかほっときますか?
僕はタイマー録画で無い限りは抜くようにしますが、途中で録画開始を忘れてて
一部分がカットされてるオリジナルバージョンを作ってしまったりします。
でも、昔のCMって面白いのよねぇ結構。
他界された方とかも出てくるし、まだまだアイドルしてる今やおばさんも出てくるし。
ほんでもって思いっきり恥ずかし事ですが、120分テープの3倍録画で映画が3本入るでしょ?
その3本目が終わってザーッとなってしばらくして、「テープ出そうかな」と思った瞬間
毎度おさわがせします
が始まってびっくりする事があります(自分で録画したこと忘れてる)。
当時、このちょっとエッチなドラマが恥ずかしかったので隠して録画してたんだなぁ・・・
そのまま見てたりして。知りませんか?「毎度おさわがせします」
今となっては知らない人もいるだろうなぁ・・・ミポリンがエッチなんですよ。あのミポリンが。
ミポリンって言い方が古いわな(中山美穂)。
このドラマではチンチンが勃起すると
「ピコリンコ♪」
と音が鳴るので俺の友達が、
「勃起したら鳴るのか」
と思ってたらしいです。そんなもん鳴ったら大変やろ。大体全然関係ない時でも勃起はあるんやから。
ああ・・・・脱線してもっと語りたい話が・・・・・・我慢しよう。

■お話

古龍
脚本なので話は奇天烈。これも裏切りやら何やら交錯しすぎてわけわからん。
でも個人的には面白かったりする。(この映画立派にバカ映画に掲げられていますね)
ここでは「今まで誰もその正体を見たことがないが最強の武器・雙流星」が主軸になるのですが、
(あと敵方が持ってる秘宝)
今まで誰も見たことがないのに何故最強と言えるのだろう?
見た奴は死んでると言える奴は何故知ってるのだろう?死人に口なし
とまぁそれだけで色々と突っ込んで楽しむ事が出来ます。楽しみましょう、こういうのは。
話を一番無茶苦茶にしてるのははっきり言ってジャッキー
で(今回悪役です)、
・雙流星を持っている王羽に妻を殺してほしいと頼んでおいて急襲!(なんで戦う必要があるの?)
・急襲成功したのに雙流星を取らない(取ってどんなもんか見ればいいじゃん)。
・しかも拷問にかけて何か喋らせるということもせず何もせず釈放(じゃ何で捕らえたの?)
・ひきつけ起こして死んだと見せかけて、全ての敵を倒した王羽の前に木の上にわざわざ登って登場!
・「全ては妻を出し抜くためだ!わっはっは!」
・警察長官をなぜ裏切ったのかと聞けば、
 「そ・・そ、それも長官を出し抜くためだ!わっはっは!」(・・・・・・・。)
・王羽がわざわざ雙流星の秘密を喋ろうとしているのに
 「つべこべ言わずに死ね。
 えーっ!?聞いとかなくていいのジャッキー?重要だよそこ・・・?
 
(だから捕まえた時に奪っておけば更に心配もなかったのだが)
まぁこんな風に羅維映画ではジャッキーがこちらが「そ、そうですかねぇ???」と思ってしまうような
行動を取ってることが多い。

■キャラクター

古龍のキャラクターは面白い。個性的。
主演の王羽は雙流星を持ってる最強の拳士。
悪役ジャッキーは花無病という名前のくせに妻に毒を盛られて床に伏している盟主。
花無病の妻が持つ秘宝を巡って陳慧樓王若平ら4人の盗賊たち。
まぁなかでも出番は全然少ないが強烈なインパクトを残したのが、
秘宝を守っている四天王
私は四天王なんて言葉をクンフー映画で聞くと「おっ」とすぐワクワクする体質であるが、
まさにこの映画に史上最弱の四天王あり!

【雀の目も一差しで射れる投げ矢の達人】
王羽に投げた矢をパッとキャッチされ投げ返され刺さって死亡。

【その雀を念力で焼いてしまう事が出来るラマ僧・馬場
焼かれる前に王羽がパンチ一発、死亡。

【何でもその手に引き寄せてしまう事が出来る人・高飛
引き寄せた王羽にパンチ一発喰らって死亡。

【ただただずる賢いだけの策士・李文泰
不戦敗。この後、怒った雇い主に殺され死亡。
特にこいつは天王でもなんでもないぞ!

と、王羽が四天王を倒すまでに一分もかからなかったんじゃないかというヘタレぶり。
しかも、彼らを「強い四天王なんだ!」と紹介するシーンの大袈裟だったこと(こっちの方が時間長いし)。
逆に凄い!
ここまでいけば逆に凄い!
この爽快なめちゃくちゃさ!

■アクション

俺、ジャッキーvs王羽PART1は凄い好き(ラストのじゃなくて)。個人的一番の見所。
ジャッキーが王羽の攻撃を避けてスーッと後ろに下がるのよね(ワイヤーかなんかで)。そこが格好いい。
ああいう動きしてみたいなぁ。トイレ行って小便してトイレ出て扉締めてスーッ・・・とか

次はラストより一歩前の王羽vs長官(芸名知りません)の戦いが面白い。でも酷い。
何が酷いって、あれよあれ雙流星
結局、雙流星の何が凄いって飛び道具&爆発物なんだもの。
散々なかなかなクンフー・ファイトを見せておいて形勢不利と見るや王羽さん。
雙流星飛ばしてぼかぁぁぁん!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・爆発物じゃないのさ。ジャンルが違う武器じゃないのさ。

長官爆死だよ、おいおい。今まで必死で扇ブーメランの技とか披露してたのがバカみたいじゃんじゃん。
こんなの映画館で見てたら場内の温度が5度ぐらい下がったろうなぁ・・・・・・

ラストはねぇ、梅花椿でしょ戦場が。
(杭を梅の形にうち立てて、その上に立って戦う方式。落ちたら死亡。)
今まで「少林寺マスター」「方世玉」あと一つ題名が思い出せない・・・・・・・まぁ結構見たけれど、
撮影がし難いのと、実際役者がおっかなびっくりで大したもんが撮れない
って感じが凄くするのよ。これも野原でやった方がよっぽど良かった。
その上オチが、
雙流星を高く天に掲げると空から流れ星が降ってきてジャッキーに当たって焼死
おいおいおいおい。だから題名が雙流星かよ!「風・雨」って部分はわからんかったけど雙流星かよ!
死んだらお星様になるというが、
そのお星様に当たって死んだのジャッキーだけだぜホントに

「踊る大捜査線」見に行ったら、事件現場がディスコでみんな踊ってた・・・だから踊る大捜査線

と同じようなことでしょうが。


というわけだ。
改めて書くと何とツッコミどころの多いことか。
みんなも借りて観て突っ込んで楽しめますね。



蛇鶴八歩
Snake and Crane Arts of Shaolin
蛇鶴八拳


監督 陳誌華(チェン・シーホワ)
出演 成龍(ジャッキー・チェン)
苗可秀(ノラ・ミャオ)
金剛(カム・コン)
金正蘭(クム・チンラン)
劉雅英
李文泰(リー・マンチン)
苗天
武徳山
何剛
魯平
李永國
陳世
陳盛安
林照雄
王圻生
翁忠穂
李敏郎
社偉和
王盈
武術指導 成龍(ジャッキー・チェン)クレジット名は陳元龍
社偉和
脚本 張信義
音楽 周福良
策劃 呂三民
製作 李先章
制作 許麗華(シュー・リーホワ)
製作総指揮 羅維(ロー・ウェイ)
制作年度 1977

◆少林寺から紛失した最強拳法『蛇鶴八歩』の秘伝書が、今は流浪の拳士・徐英風(ジャッキー)の手にあると
町中の噂になる。善悪入り乱れていろんなものが徐英風から秘伝書を奪おうとしているのに、
徐英風は秘伝書を見せびらかすのを辞めようとはしなかった・・・・。


僕が劇場に観に行ったはじめてのジャッキー作品でもある。
その時の詳細は「私と香港映画の関わり」とかぶるのでここでは省いておこう。
ちなみにオープニングの「ジャッキーvs2人の戦い」が劇場公開の時にあったかどうかが覚えていない。
TV放映版ではカット。その後のビデオ版にはある。
まぁいきなりここの戦いが、前の「少林寺木人拳」と比べ圧倒的にレベルが高く、
「もっともっと面白いことやってやるぞ!」ってな気合いが感じられて興味深い。
お話的にも決定的な破綻はないので問題ないし、無理にツッコむ必要は無い。

面白いのが羅維監督作の「風・雨・雙流星」「成龍拳」「飛龍神拳」などを除いて、
ジャッキーと陳誌華監督が互いにアイデアを出し合って作ったとされる
ジャッキー最初のプロジェクト(本人が自伝に書いてる)、
そして羅維が「ジャッキー売れないから、もう知らない」とほっておいた時に2人で作った3作品、
「少林寺木人拳」「蛇鶴八拳」「カンニング・モンキー・天中拳」だけを挙げれば、
ジャッキーが「シリアスじゃなくてコメディに行くべきだ」と結構短期間で結論出ているのがわかり興味深い。
時代を振り返れば、今何度観ても「ああ面白い」と思うのは個人的な思いも含めてこの3作品だが、
当時はこっちの「ジャッキーのアイデアも通って作った作品」も全然売れなかったわけで、羅維の
ほら、みたことか!
が聞こえてきそうで心痛い。そして、「コメディとはこうやって作るんだ!」と羅維が意気込んだ作品が
「拳精」になるわけである。

■モテにギャルギャル

他と決定的に違うのはやっぱこれ。(「成龍拳」もそうといやあれだが)
そりゃあ、あんだけ強くて優しかったら格好良いわな。おまけに秘伝書持ってんだもん。
「あんたもっと美人なんだからニコニコしなきゃ」
なんて、余計なお世話なセリフを言うジャッキーなんて他にちょっと無さそうだ・・・
しかもそれであっさり口説かれてボディプレゼントの苗可秀も非常に貴重。
関係ないけど中国の下着ってさぁ、何か・・・・・・興奮しないというかまだパジャマ気分というか、
露出度が非常に低いので、夏なんかあのまま歩いてても違和感ないんじゃないかというか・・・ねぇ。
あれ、金太郎かけじゃないけど背中は確かにヒモ一丁でセクシーなんだけど。
本作の苗可秀姉さんはまた良いよねぇ。魅力がよく出てる。
「風流残劍血無痕」で同じような役柄で出てきたのもこれで制作者が気に入ってたからじゃないかなぁ・・・
(あっちは可愛くなかったけど)
あとは乞食党のお嬢様・金正蘭。善役側で死ぬのが彼女一人であることに、同じ頃サモハンが撮ってた
「三徳和尚與春米六」とかに比べ、若干・・・・・・ほんとに若干なんだが「命の重さ」が感じられる。
結局、彼女の死が「ジャッキー全部吐露」のきっかけになるわけだし。
彼女が正装してジャッキーの前に登場するときのマヌケな音楽が微妙に笑えます。

「スターは小技が多い」
どうでしょう。
小技ってちょっとした手遊びとか仕草のことなんですが、例えば
周潤發のコイン手遊びとかライターガス吸いとか、
松田優作の帽子遊びとか(「探偵物語」)、
田村正和そのものとか、
高倉健さんの不器用と言いつつ大抵なんでもこなしてしまうところとか、
ターミネーターの車ドアガラスぶち破りとか・・・・・・・破綻。だめか。関係ないや。失礼。
やっぱり逆に一挙一種がサマになる(インパクトに残る)ことがスターの条件なんでしょね。
本作ではジャッキーが三本の箸をくるっと回す手遊びを披露。この辺はチャップリンしかりなのかな。

お話自体パッと思いつく素朴な疑問は
じじいが小突いたぐらいの打ち身のアザが何年も残ってるかいな
ぐらいのもんで、まぁ後はよく頑張ってるでしょ。

■キャラクター

キャラクターが立っているというのは、か〜なり重要。
映画に入り込めるか否かはここにかかってくると言ってもいい。本作はまぁギリギリか。
なかでも金剛の貫禄ある首領役はデカい。何だかスゲー強そう。
やっぱり役者として立派な人だよ、この人。貫禄なんて年取ったから誰でも出るってもんじゃない
ただただジャッキーをはめるためだけに殺された首領の奥様達は何だか可哀想だったが。
あの三省拳士(勝手にそう呼んでますが)はちょっと頂けない。
最後の最後まで隠し通すだけである程度の期待感は湧くのでまぁいいんだが、
彼らについて分かったことは結局「金に汚い」ということだけだったので、
キャラクターが立っているとは言い難い。うむ・・・これ以上面白かったし無理にいちゃもんはやめ。

■アクション

最初に「グッ」と来るところはあそこやね、
苗可秀姉さんの側近に腕抑えつけられて「こりゃ、まずい」と蛇鶴八歩発動!
普通に殴ってるときは効果音が「ドゴォ!」なのに、蛇鶴八歩になると「ジン!」って変わるんだよね。
この効果音は擬音なので聞こえ方・表現の仕方は人様々だけど、
ありませんか? 「好きな殴り音の種類」
作品によって時代によってそしてプロダクションによって違うんですよね〜効果音が。
私が一番好きなのはまぁこの羅維時代から「酔拳」ぐらいが一番好きですね〜特に袁和平系。
「酔拳」なんか、黄正利が手をバイバイしただけで「ぶぉっぶぉっぶぉっ」←風斬る音。
ジャッキーなんか観てください、黄正利に跳び蹴り喰らって一杯飲んで型を決めるとこ。
ぶぉーーーーーっ!!!!
・・・でも動作は両腕を前に少し出してるだけですよ。
でも夏の終わりの台風のような音が。
(しまった。これは「酔拳」で書けばよかった)
王羽の「ドラゴン修行房」では一挙一足に「だくん!だくん!」と鳴るので友人が、
あの音が気になって仕方がない
って言ってたっけ。
まぁこれ以上の擬音ネタは各作品のところで書くとして、
殴り音聞いて、どの系統・系譜の映画か判別できる
ように好きだったらいつかはなっていくでしょう(私はとっくにそう)。

やはり三省拳士がハイライトですね、私は。
他シーンと比べてクオリティが高いです。思うのですが、「クレージー・モンキー・笑拳」でも
全くと言って良いほど同じシーンがありますよね、最後の方。
通常は同じアクション・パターンはやらないはずのジャッキーが何故?
安易に?
と思ったのですが、これもやはり

ジャッキー 「本作は売れなかった・・・でも槍よけシーンは素晴らしい出来だったはずだ!勿体ない!」

ジャッキー 「自分が売れて、監督出来るようになったぞ」

ジャッキー 「よーし!もう一度みんなにあの素晴らしいシーンを見てもらおう!

ということではないでしょうか(もちろん推測)。
その証拠と言えるほどの事ではありませんが、本作の三省拳士と「笑拳」での三省拳士の中に
同一人物がいます。

金剛対決も悪くはないのですが、そして細かいこと言って申し訳ないですが、
すこ〜し、金剛が遅い
金剛独特の迫力はあるし、
「小僧、この型を破るのは容易ではないぞ」
ってなくだりも面白いですけどね。

■その他

個人的な大きな思い入れも含めて、この映画を取り巻く部分も面白い。
公開当時私は「龍の忍者」と併映で観たのだが、どうやらその前に「龍の忍者」はTV放映で
一度放映されていたらしく、
「あなたは本当に龍の忍者と一緒に観たのか?」
と議論を呼んだこともあった。他では「胸騒ぎの放課後」(だったかな?)と併映だったらしい。
・・・「龍の忍者」併映でよかった。

「やるっきゃない!みるっきゃない!ジャッキー・チェンの蛇鶴八拳!」
っていう広川太一郎劇場予告編も強く心に残っているし、買ってきたパンフレットの
ジャッキーフィルモグラフィ観て、未公開作品をあれこれ想像したりしてたなぁ・・・
このパンフレット、今はボロボロボロボロなので綺麗なの欲しいなぁ・・・



劍・花・煙雨江南
To Kill With Intrigue
成龍拳


監督・製作総指揮 羅維(ロー・ウェイ)
出演 成龍(ジャッキー・チェン)
徐楓(シー・ファン)
李文泰(リー・マンチン)
申一龍
玉霊龍(ジュエ・リンロン)
王〔王〕玉
江青霞
翁小虎
張照姫
陳慧樓(チェン・ウェイロー)
武術指導 成龍(ジャッキー・チェン)クレジット名は陳元龍
陳信一
脚本 古龍(クー・ロン)
製作 李先章
制作 許麗華(シュー・リーホワ)
制作年度 1977

盟主の息子であるシャオレイ(ジャッキー)は、ある夜義賊・蜜蜂党の襲撃を知り、
訳も話せないまま恋人チェンチェン(玉霊龍)を友人に託す。襲撃に両親ともども受けてたったが、
両親は殺され、シャオレイ自身も気を失ってしまう。
襲撃後、失踪した友人とチェンチェンを探して放浪の最中、命の恩人であるルンスー警備隊を助けようとして
逆に重傷を負ってしまうが、重傷のシャオレイを看病したのはなんと蜜蜂党の首領(徐楓)だった・・・。

今更だけど、ちゅうか「成龍拳」ってさぁ・・・なんか他になかったもんか?タイトルが?
この時は「プロジェクトA」とかも公開されてたわけで、何も無理に拳シリーズっぽくする必要・・・・
しないと売れないだろ?って?・・・そうだけど。
ちょっと考えてみた。

「ファンタジー・モンキー・愛憎拳」
「マイガール・モンキー・復讐拳」
「サディスティック・モンキー・火傷拳」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・ああ、わかったよ!確かに「〜拳」の「〜」の部分がパッとは思いつかんよ!(逆ギレ)
しかし、「プロジェクトA」風に考えてみた。

「アベマリアJ」
「バレンシアK」
「ラブクエストE」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・センスねー!!俺って改めてセンスねー!!
そりゃ真剣に考えてはいないけどちょっとへこむよマジで。それでもめげずに
今度は「セックスと嘘とビデオテープ」とか「卒業」とか、あんな感じで考えてみた。

「剣と嫉妬と備長炭」
「恋愛理不尽愛憎絵巻物語」←
日活ポルノだな、こりゃ。
「夕焼けにさよなら」←爽やかにしてみました。
・・・・・・センスはない。センスはないが何気に「備長炭」が気に入った。
口に出して言ってみた時のゴロがなかなか(何言ってんだ俺)。
いやーこれは見に来るぞぉ「備長炭に秘められた謎を探して」お客さんが〜(来ません)。

なまじ、下記の「飛龍神拳」が3D映画じゃなかったらそっちが公開されてただろうなぁ。
ちなみにオープニングは日本版と香港版、違うんだろうなぁ・・・(向こうはまだ未確認)

で、これは名匠胡金銓監督作品の花形女優だった徐楓との共演作。
そして古龍脚本と胡金銓的演出の合体を試みているよな気がしないでもない。
こうして振り返るとさぁ・・・ジャッキー自伝ではかなり羅維のことボロクソに書いてあったけど、
羅維も色々と「ジャッキーが売れるためにはどうすればいいか」一生懸命考えてたのは確かだよなぁ

下の梁小龍と共演させた「飛龍神拳」からも感じ取れるし、例えそれが商魂だけだったとしても
ジャッキーと義理の親子であった手前、色々手を尽くしてくれたのは間違いないでしょう。

胡金銓さんが、
「むしろ武侠片から離れたものを撮ろうとしてるんだけど」
って発言はひとまず置いておきまして、やはりジャッキーが敵蹴ったら屋根の上まで「びよーん」と跳んでいく演出や、
どこからともなく突然飛んでくる(まさに飛んでくる)、そして飛んでいく徐楓も
名作「侠女」から飛んで来ましたって感じで、
胡金銓監督のようなエッセンスも入れられたらなぁ・・・
と試行錯誤してみた感じがしてならないんですよね。個人的に。
人がびゅんびゅん飛んでくるのは胡金銓映画ではないと本人も仰ってることですし、言い難いことなんですけども。

それにしてもチープなSFというか演出がなかなかに素敵(素敵かい)。
冒頭の
「俺の手を返せ〜」
って言ってた奴が手を奪って帰っていくとき、ハンディカメラでもすぐ撮影できるよな
一時停止つなぎ貼り映像で帰っていくんですよね。安いぜー!思わずスローで見たぜー
ラストのジャッキーが木をぴょんぴょん飛んでるところ、
胡金銓の「龍門客機」でも白鷹が同じようなことをやってるのですが、こちらはもっと安い。
木に飛び乗った(ような)瞬間を、何度も再生しているだけ。安いぜー! スローで確認なんかしないぜー

特に徐楓一行様が団体で現れるシーンはかなり恐怖感を煽った演出にしたかったんだろうけども、
大笑い!幼き俺でも大笑い!変な仮面!

■お話

好きになることに理屈はない。
ああ、全くその通りさ。例え、それが両親を殺した奴の息子だったとしても(そうか?)。
受けた恩は感謝するべきだ。
ああ、全くその通りさ。例え、それが目の前で両親を殺した女だったとしても(そうか?)。
この2点に尽きる。

個々の価値観が違うし、ちょっと不毛かなとも思うのでこれ以上の言及は留め。
ただ、ジャッキーのいじめられっぷりは本当に酷いもので、中途半端に弱い役柄だから
二、三回半殺しにされるし、徐楓に喉は潰されるし、顔は焼かれるし、おめーよ、
好きな人の声潰したり、顔焼いたりするか!?

しかも、最後に渡した奥義書だかなんだかも本当に役に立ったのかわからんかったぞ。
だって、ジャッキーぼこぼこにやられて何とか自分の意地・偶然だけで勝ったようなもんだもん。
だから恋愛は理不尽・・・・・・で済ましていいものだろうか。

■アクション

本人が「寒いから撮影嫌だった」と語ってはいるものの、ラストの戦いは充分長い。
これは悪く取ればジャッキーがボッコボコに蹴られるのも含めて「羅維の憂さ晴らし」に考えられなくもないが、
ジャッキーが「ここだけでも見せ場を作ってみせるぞ!」と意気込んでみた結果とも取れなくもない。
ジャッキーが特にスタント・アクションにおいて自ら「痛そうなアクション」をすすんで演じていたのは
今日までの作品が証明しているし、本作のラストもその一端なのかもしれない。
何気に場所を変えてはジャッキー殴られ、場所を変えてはジャッキー蹴られ・・・ってのは
倉田保昭、ブルース・リャンコンビであったハイスパート・クンフーにも似ている。
(特にまるで背景のお寺の観光案内が。「ドラゴン世界を征く」のローマ戦闘案内に似ている)
大袈裟な言い方をすれば、こちらでの若干冗長な長いファイトシーンがあったから、
「ヤング・マスター」での最長死闘に活かせたのではないかとまで思えてしまう。やって損はなかったと。

■勝手な想像

全くもって勝手なんですが、本作での主人公とヒロイン、つまりジャッキーと玉霊龍という流れが
そのままお話的に上記の「風・雨・雙流星」とつながるなぁ・・・と思ってまして、(照らし合わしてみてね)

本作のラストでやっとこさジャッキー、玉霊龍正式結ばれ

結婚。ジャッキーは元々盟主の息子。当然後継ぎ盟主になるわけで。

やがて盟主ジャッキーは花無病と人々から呼ばれるように。そして夫婦の仲違い。

ほとんど別居状態となり、玉霊龍夫人はあの史上最弱ボディガード4人を雇ってお隠れに。

夫人に毒を飲まされた花無病、やってきた雙流星を持ってる拳士(王羽)に夫人殺害を頼むことに。

あとは「風・雨・雙流星」を観てください。

ほら!
と言われても困るでしょうが。

■追記
(以下はfake様より頂いたコメントです)
『成龍拳』の香港版OPは花火がドドーンっと鳴っている夜空をバックにしょぼい字幕が出るだけでした。



飛渡捲雲山
Magnificent Bodtguards
神拳ヤング・ボディガード
燃えよ飛龍神拳・怒りのプロジェクト・カンフー


監督・製作総指揮 羅維(ロー・ウェイ)
出演 成龍(ジャッキー・チェン)
田俊(ジェームス・ティエン)
梁小龍(ブルース・リャン)
鹿村泰祥
汪萍(ワン・ピン)
劉明(リュウ・ミン)
王君
高強(コー・チャン)
李文泰(リー・マンチン)
方芳
高強(コー・チャン)
王青(ワン・チン)
武術指導 成龍(ジャッキー・チェン)クレジット名は陳元龍
脚本・原作 古龍(クー・ロン)
制作 許麗華(シュー・リーホワ)
制作年度 1978

◆ それぞれ拳法の達人である神拳使い(ジャッキー)、義賊のチャン(田俊)、足技のルン(梁小龍)が
力を合わせて『捲雲山』に潜む山賊団を討伐するまで。

この映画、元々は3D映画。
日本でも公開された3D映画「空飛ぶ十字剣」(「少林門」の譚道良が主演)の大流行りで、
その人気に便乗して作られたものかな?
でもジャッキー自伝では「こっちが3Dは最初。」って言ってるけど。真相不明。
よって、平面だとどうも滑稽なアクションシーンが数々あります。そういうことなのね。

脚本はまたも古龍
・・・この人の脚本ってさぁ、
どんでん返しもたくさんあって非常に面白いとは思うが、監督が原作を昇華しきれない
って感じがするのね。何か良い台本が監督のスキルの低さによって粉々にされてるような・・・
羅維
だけの話じゃないですよ〜例えば倉田さんの「飛刀又見飛刀」でも最後は本当に
ごめんなさい!まとめられません!逃げます!
って感じがしたもん。で、こいつはどうか。
キャラクターの立ち具合面白さもさることながら、話のどんでんどんでんも驚きがあり(ありすぎたか?)
確かに予想はつかなかったので、まぁ難しい事は考えずに面白かったと言えるでしょう。
もしかして羅維監督ジャッキー主演のベストかな?「拳精」と甲乙ってとこかな?

■お話の流れ

幕が開いたら、すぐにジャッキーが戦うってのは要は演舞オープニングと一緒だし、
そこの戦いからなかなか面白いので(3D映画独特の演出も手伝って)ツカミにはばっちし。
流れるサントラも良いのだが、
これはジャッキーが言ってたパクリ差し替え+TV放映時にさらに差し替え・付け足しの部分が多そうだ。
いずれは香港版VCDで確認してみたいところ。

その後もガンガン戦い挟みながら、勇士3人が「捲雲山」までのボディガードに付くというわけで。
そんでもって運ぶ篭に入っている人が誰だか最後までわからないミステリー付きというわけで。
この辺もグググッと惹きつける力を充分持っていると思います。
ちょっと面白いというか珍しいのが、捲雲山に赴く際にボーカル付きの挿入歌が流れるところ。
例えてみれば、「プロジェクト・イーグル」の砂漠に向かってるところ。
まさか参考にはしてないよな・・・(関係ない関係ない)
ちゃぶ台ひっくり返す言い方すれば、結局ガードしてた人が捲雲山の本当のボスで、
捲雲山にいた偽ボスはババァが扮しててあらびっくり!
ば、ばあさん・・・・田俊と街でお話しした後に、猛ダッシュで帰ったのか?「捲雲山」に。
無茶苦茶すぎるのだが何だか面白い。もういいや。

その本当のボス倒してしまえば後日談なんか何もない!何もないっ!!
って感じのラストがまた素敵。こっちは「話がまとめられなかった」というよりも、
これ以上描くことないのでさよならっ!」って感じ。

まぁけなしてんだか歓迎してんだか(自分でもわからんもん)、とにかく「龍拳」とかに比べても
「話を追っていく楽しさ」ってのは充分備わってる映画だと思われます。

■キャラクター

とにかく本作の面白いとこはこれよ、これ。
出てくるキャラの何だか面白いこと。ここまで個性的なキャラがバンバン出てくるなら
キャラ立ちはこっちでやってしまおう!という気にまでなってくる。

・ジャッキー
神拳の達人。(でも神拳ってあるの?)
逆に一番個性が低いといえばそう。ただし、「成龍拳」「風・雨・雙流星」に比べて
明るいし強いしユーモアあるし、従来のジャッキーキャラに非常に近い役柄といえる。

・梁小龍
足技の達人。そのままやん。言われなくても達人やで。
本作ではなくもっとジャッキー無名時代の現場では相当いびっていた・・・
なんてのが通説だが何故か劇中でのジャッキー、田俊とのコンビネーションはとてもよく、
普段コミカルだけどイザとなれば足技で一蹴!
の頼れる軽い兄ちゃんが好感です。しかし・・・・・・改めて背低いね。

・田俊
皮剥ぎ義賊。
田俊さんの出演作は未見も一杯あるので断言できませんが、今まで観た中では文句無し、
本作での彼が一番格好良い・ベストアクト
です。もう一個印象に残ってるのはやっぱりあれかな、
「ドラゴン怒りの鉄拳」での師匠の遺影を蹴られながら守るところ。
本作でのインパクトは他のどの濃いキャラクターよりも更に強烈。
冒頭、登場シーンから投げ矢使いを倒すのだが、両腕はぶった斬るし、頭の皮剥ぐし
しかもその後、涼しい顔して出てくるしでもの凄い衝撃!

いったいこいつのどこが義賊なんだ!?
その後も旅の途中で仲間が不備をやらかしたら、
お前ら若いから許してやる。もし今度失敗したらその時はその場で殺す!
ええーっ!?
若くなかったら殺されてたんですかっ!?
とそのマイペースぶりは他に比類無し。敵の山賊との駆け引き時も容赦なし。
敵に囲まれて下手に出るかと思った瞬間、敵の小ボスを斬殺!命乞いの暇全くなし!
いったいこいつのどこが義賊なんだ!?
ラストでは敵が見目麗しき女性でも全く関係なし!皮剥ぎ!

ってなことで、
この主人公3人「二枚目半、三枚目、極悪人」とキャラ性格がかぶってないとこもいい。

・坊主(李文泰
元は僧侶で(少林寺か?)、今ではその時の弟子僧侶を従えて悪寺を構えるボス。
金をゴンゴン鳴らして失神させる罠を持ってた。

・学者
二枚目。彼が何となく三枚目の梁小龍と特に敵対してしまったところも
また面白い。結局、学者たる学者らしい策略も見せぬまま梁小龍にやられて敗北。

・お付きの女の子(2人)
主人公3人と一緒に旅をする2人。正体は真のボスの側近。
それまで結構梁小龍と仲も良かったのに、その梁小龍にあっさり殺される。
もうちょっとこの辺、膨らませそうだったのに。例えば、
すっかり梁小龍に情が移っていて、ボスの攻撃に耐える梁小龍の身代わりになって
死んでみるとか。

・女盗賊
この子も足技の達人。
ジャッキーとなかなか色っぽい対決をご披露。

・捲雲山のボス(鹿村泰祥
とにかく無茶苦茶強い。強さの秘密は胸にぶら下げてるUFOチョコ。
これはどう見たってUFOチョコですよ、あなた。詳しくは観てね。

・六本指の宿主(王青
彼もなかなか強烈なイメージを残した。大口会心の演技(声優さんの力もその時はあったが)。
ジャッキーとやり取りをするときの「強烈な気持ち悪さ」があった。説明し難いのだが。
その後、田俊に皮を剥がれます。

と、挙げたくなった方だけでもこんだけいらっしゃいます。
他にもガードの護衛を依頼した女性や、「天中拳」で鉄腕ルーやってた人や・・・・
こんだけおもしろキャラが揃ってればですよ。

■アクション

基本は忠実なクンフー・アクションだけど、場面場面でワイヤーを使ったアクションもふんだんにある。
また、そのワイヤーアクションが「成龍拳」に比べ進歩しているのも興味深い。
特に面白かったのが、偽ボスvs真ボスで一人二役を隠しながらも
「両方ともすげーつえーぜ!」
とはっきり思わせる迫力の戦いだった。後ろに見えるワイヤー線はご愛敬ということで。
団体戦でも当然、戦う相手ともどもジャッキー、田俊、梁小龍、李文泰、鉄腕ルー、鹿村などなど
が絡み合っているので面白くないわけがない。
梁小龍の足技もたっぷり拝める。
ラスト、個人的には最後のガチンコに複数参加しているパターン、3人vs1人、2人vs1人は
あんまり好きではないのだが、こちらの主役3人vs鹿村の戦いは大好き。
この黄金の3人の攻撃に全く怯まない鹿村さんに、
日本人にまだこんな奴いたのか!?
って思わせる力もあった(倉田さん以外にということ)。

■ほんで

なまじ3D映画であるがために、未だに他ジャッキー作品と違って入手しにくいのが困る。
こいつを綺麗なDVD映像で是非、観てみたいもの。
余談で、出演している鹿村泰祥さんは王羽「四大天王」にも出てますし、
「ゴッド・ギャンブラー」ではなかなか美味しい役で周潤發とも共演。
もうちょっと注目されても良さそうなもんなのに・・・
さらにはっきりとウラは取ってませんが、どういう巡り合わせか柏原芳恵さんと結婚したそうです。
紅茶の美味しい喫茶店。


一招半式闖江湖/點止功夫〔口甘〕簡單
Half a Loaf of Kung Fu !
カンニング・モンキー・天中拳


監督 陳誌華(チェン・シーホワ)
出演 成龍(ジャッキー・チェン)
石天(ディーン・セキ)
金剛(カム・コン)
田俊(ジェームス・ティエン)
龍君兒(ロン・ジェンエール)
金正蘭(クム・チンラン)
李海龍
馬如龍
林照雄
李文泰(リー・マンチン)
江志平
高強(コー・チャン)
李敏郎
牛馬(ウー・マ)
武術指導 成龍(ジャッキー・チェン)クレジット名は陳元龍
脚本 湯明智
製作 李先章
製作総指揮 羅維(ロー・ウェイ)
制作 許麗華(シュー・リーホワ)
制作年度 1978

◆何をやっても半人前のチェン(ジャッキー)が、ひょんな出会いから拳法を習い盗賊一味を倒すまで。

イヤキカカカキヤ カンニングモンキー♪

これを一体、子供の時に何度唄ったことか。意味もわからずイヤキカカカキヤイヤキカカカキヤ・・・・・・
意味無かったんかいっ!!
相当後でしたよこれ知ったの。てっきり何かしらの英語がイヤキカカカキヤって聞こえるだけだと。
そのまま歌詞イヤキカカカキヤじゃん!!
よく通ったな、これで。俺が上司なら絶対許可出さないぞこんな歌詞。いくらゴロがいいからってさぁ。
まぁこの曲作ってるミッキー吉野は「西遊記」モンキーマジックの歌詞でも訳してみたら、
西遊記の出だしをそのまま英語で唄ってただけじゃん!
ってのもあったし。ちなみに作詞がミッキーではなくタケカワユキヒデさんだったらすいません。

イヤキカカカキヤ カンニングモンキー♪
もうこれですよ、これ。
けなしといて誉めますが、公開前からこれを聞いて完全にトリコでしたよ私は。
「これが無ければこの映画は面白くなかったのだろうか?」
という大きな疑問が出てはきますが、
酷評もあるこの映画、大人になった今でも充分私は評価しているのです。

■だって最初のジャッキー・コメディ

これだけで私はもう・・・・・・
だけでは終われませんが、オープニングから七変化でお客さんを何とかクンフーだけでなく
笑いで掴もうと必死。そういう意味での気合い充分だし、
今となっては空回りしてサブく感じるギャグも多々ありますが、全編に渡って何とか
コメディ初挑戦の彼が笑わそうと四苦八苦している姿が目に浮かぶじゃないですか。
これってジャッキー自身がいつも表してくれる「作品への情熱・楽しんでもらいたい情熱」だし、
まぁ完全に羅維にほっとかれて、やりたい放題って言えば聞こえは悪いけど
狭い範囲の中でも一応は解き放たれたジャッキーパワー開眼の原点だと思うんですね。
それに当時併映だった邦画「伊賀野カバ丸」を観る機会があれば、見比べてほしいのですが
「コメディ部分はどっちもどっち」
この時はまだまだ何だか日本映画の方が技術的にも演出的にも優れている時代だったと思うのですが、
コメディ演出は「伊賀野カバ丸」の方が本当に若干上ぐらいにすぎなかったです。
ただし、当時ガキだった私は「伊賀野カバ丸」もとても気に入っている作品です。
確かに本作は完成して、羅維に「くだらんわい!」と怒られしばらくはオクラにされ、
やっと公開したものの香港ではやっぱり全然当たらなかった作品です。でも私は
こっから始まったんだ・・・
と思えば感慨ひとしおってなもんです。・・・だめ?

そしてもう一つ、
この映画のコメディ部分に大きく役立っているのが間違いなく石天さんの存在
これは、香港映画に全く興味はないがジャッキーが流行っている時代に
何となく観てた友人達の言葉からも見て取れました。
ああ、あの屁っこきが出てた。乞食の人が出てたやつ。友達の輪とかやってたあれ。
ジャッキーの印象よりもこんな記憶ばっかり出ておりました。
でも考えてみれば石天さんが大きく目立つシーンは実は石天vs金剛ぐらいしかなく、
まぁここだけで充分笑えるのですが、後は例えば「燃えよデブゴン2」のように
際立っているわけではありません。それでも人々の記憶に残っているのだから、
改めて彼の才能を褒め称えたい気分です。

■お話は・・・ですが、でも。

「不老長寿の薬、運ぶよ〜」
と言っといて、寄ってきた賊どもを一網打尽。半人前のジャッキーが最後に一番強い金剛倒した!終劇
に過ぎないのですが、ちょっと特筆というかどうしても書いておきたいことがあります。
それは、ジャッキーが強くなっていく過程のことで、まぁ言ってみれば
こいつ本当に強くなったのか?
ってとこです。石天さんが師匠の時点でかなり怪しいですし、
「型なんか一杯覚える必要はない。大事なのは頭を使うことだ。」
なんて石天さんが偉そうな事を教えるわけです。ってことでジャッキー大した修行もせず
最後には奥義書チラチラ見ながら金剛と戦って何故か勝ってしまうという流れ
なのですが、
これってあれと似てると思うんです。
ピンと来た方もいらっしゃると思います。
「無名小卒」=「Mr.ノーボディ」
です。
あちらでも、梁家仁が同じように
「蛇拳、酔拳なんてもう流行ってないぞ!頭を使えばいいじゃんか!」
ってなセリフがあります(英語ですから意訳になりますが)。
これ自体は勿論当時大ヒットしていたジャッキー作品へのパロディ・皮肉ですが、
皮肉に対して皮肉なことに
、ジャッキー作品では「酔拳」を作る前から既にやっているんです。
ボスに対してガムシャラに突っかかり、何故か勝利してしまう点も同じです。
そしてどちらの作品も信頼できなさそうな師匠役を石天さんが演じている、
つまりシネマシティ立ち上げ人の一人、石天さんが絡んでいる
わけです。
私はすでにこの「一招半式闖江湖」の時点で、当時あのシネマシティ兆候軍らが
「新機軸な映画への脱却」を狙って作っていたものを作っていた
ように感じてしまいます。
どうでしょうか。
「そうじゃないでしょう」と思われる方のご意見ございましたら是非お寄せ下さいませ。
聞きたいです。

■アクション

てなわけで、確かに本作のアクションは同時期の「飛龍神拳」「拳精」などに比べ質は落ちます。
無理にフォローする気はありませんが、ただ本作で初めて
「人を笑かすアクションはどうすればいいのか?」
ってのジャッキーが考え始めた、やはりコメディアクション原点であるならば
これ以上、文句も麗句も留めておきたいものです。

■その他

気に入ってるのはジャッキーと石天さんが仲良しってところ。俺ってやっぱり平和主義者。
「蛇拳」「酔拳」は仲悪かったもんね。「拳精」ではほとんど絡みはないし。
この2人でツープラトン攻撃ってのもこの作品のみだし、何せラストのストップモーションが
「ジャッキーのおどけ、石天さんのガチャ目!
やからね。

田俊
さんが裏切り者役、相手賊党の単なる側近、しかも大きな見せ場もなく殺され。
なんだか残念というか何というかこの人「役を選ばないよなぁ〜」

公開当時、併映「伊賀野カバ丸」の舞台挨拶に主演の黒崎輝、高木淳也が来る!ってことで、
そりゃー見に行きましたよ。でも、一個目の映画館が一杯で入れなかったので
急いで次に舞台挨拶に来る次の劇場に走ったりした思い出なんかがあります。
ジャッキー映画が一杯で入れないなんて・・・・・・今と比べれば・・・・うっ(半泣き)。

後、当時出てた本作に関連する書籍、パンフレット、そして香港版ポスターなどに
ジャッキーが竹林みたいなとこで修行するシーン
ってのが載っているのだが、未だに見たことはない。あるのだろうか。



蛇形勺手
Snake in the Eagle's Shadow
スネーキー・モンキー・蛇拳


監督 袁和平(ユアン・ウーピン)
出演 成龍(ジャッキー・チェン)
黄正利(ホアン・チョンリー)
袁小田(ユアン・シャオティエン)
石天(ディーン・セキ)
王将(ワン・チェン)
蒋金(ジャン・ジン)
陳耀林
ロイ・ホラン
陳龍
趙志凌
馮敬文
陳立品
蔡輝
徐蝦
馮安克(フォン・ハックオン)
武術指導 袁和平(ユアン・ウーピン)
徐蝦
武術副指導 袁振辰
袁信義(ユアン・シュンイー)
元奎(ユン・ケイ)
脚本 呉思遠(ウー・セイエン)
英華安
蔡維光
音楽 周福良
製作 張灌
製作総指揮 呉思遠(ウー・セイエン)
制作年度 1978

道場でやられ役をやっていた孤児の単呆(ジャッキー)は、ある日隣のライバル道場の連中に殴られそうになっていた
老人白長天(袁小田)を助ける。心の優しい単呆に感動した白長天はお礼に単呆に
「蛇拳」を伝授する。おかげで潰れかけていた道場も単呆の「蛇拳」で持ち直す。しかし、そこに
蛇拳派を根絶やしにしようお目論む鷹拳使い(黄正利)が現われ、単呆と白長天を狙う。


まずね・・・これを作ろう!と最初に思ったのは誰なのかなぁ?
間違いなくジャッキーではない。プロデューサーの呉思遠かこれが監督デビューの袁和平か、
たぶん2人のどっちかだろうけど、はたまた他の誰かなんじゃろか。
だってね。凄いよ、これは。
ここまでだって前述よろしくクンフー・コメディ的映画は一杯あったわけで、
古くは同じく呉思遠の「帰って来たドラゴン」もまわりに氾濫していた暗い映画に比べて、めちゃくちゃ明るいし
笑えるシーンもおバカなシーンも一杯あるし、おまけに石天さん従来のコメディアクターっぷりもばっちりだし。
受け売りになっちゃうけど、コメディクンフーの走りは劉家良作品にあるらしいし。
でも、本作がヒットすることによって、
これこそがコメディクンフーだ!ばばーん!!
ってなっちゃうのよね。ばばーん!!となったって事はそりゃそれなりに理由があるわけで、
その辺の理由をつらつら感想書き連ねながら探っていきたいなと思います。
それと、日本人にとっては「酔拳」「蛇拳」全てが新鮮で刺激的だったはずなので、
あくまで香港でなぜウケたかの話。

■人柄(キャラクター)

まず、何と言ってもこれが一番デカイと思う。パッと思いつくのは勿論、
じじい汚い
これ。
例えばいきなり「暴れん坊将軍」が暴れなくなったり、「水戸黄門」が引きこもりだったりしたら、
賛否に関わらず与えるインパクトが凄いことは間違いない。それと一緒のことであろう。
「お師匠様は高尚なモノ」
という既成概念を打ち砕いた
のである。いきなり冒頭から
いじめられるホームレス
・・・・・・しかし、この既成概念打ち砕きっぷりも考えてみれば物凄いモノがあるよな。

後から蛇拳の達人であることは判明するが、
 金持ってない乞食同然の身であることは別に変わらず

実はどっかのデカい道場主ってこともないんだよな。やっぱ茅葺きに住んでる貧乏人に過ぎないし。
じゃーなぜ受けたのか?
一番の理由は本当に個人的に思ってるだけだけど、この爺さんに扮した袁小田さんの人柄
である。
勿論、脚本の影響は大いにある。第一、いくら袁小田さんでも役柄が悪役だったらこうはいかない。
しかし、しかし、
「茶碗遊びをしてみせる彼を汚らしい、じじいが何やってんだと思っただろうか」
「茅葺きに倒れた彼を汚らしいホームレスと思っただろうか」
そう、彼には彼がこれまで生きてきた道のりがあるからこその品格があるのだ。
猫舌であるという設定も何だか可愛らしいと思えていたのは自分だけであろうか。
この彼だからこそ、「空が天井、地がベッドだ」と言い放った(これは「酔拳」だが)言葉に
物凄い説得力が湧くわけである。
大袈裟に言えば「物事の価値は見た目ではない」ということまでも。
「飾ってなく嫌みでなく、限りなく小市民で、それでいて強く、優しく、英雄の言葉を発する」
評価されないわけがない。(ちょっと誉めすぎかな)
袁小田爺さんの設定はジャッキー自伝で発案者が自身であるように書いている。それは、
「少林寺木人拳」の酔いどれ和尚+「天中拳」の李文泰師匠(更にこれの元は「蛇鶴八歩」の彼)
にあるとみてほぼ間違いないところからも見て取れるような。

そしてジャッキー。
彼の魅力の開眼はこっから始まったと言って過言でないはず。
ただし、「彼の魅力」ってのもを書き出すならばそれこそ別コーナーを設けなければいけないし、
「あまりに好きだから、好きすぎて書くのが恥ずかしい」
ってのもあって、ここでは深く言及しない。この作品のジャッキーに対して言えばとにかく「おめでとう」だ。

そして後2人は石天さんと黄正利。
石天さんにいじめられて半泣き
石天さん、結局これが一番ジャッキー映画の中での感じ悪さベスト1になっちゃった。
でもねーしっかり倒れてくれるのよ王将にやられてガチャ目で。
「天中拳」のところで書いたように彼が出てるだけでコメディとしてのレベル上げに一役買ったのは間違いない。
黄正利。
そうねーやっぱ彼が最初のジャッキーのライバルというか、まぁ「成龍拳」の申一龍(?)も
「飛龍神拳」の鹿村さんも悪くはなかったけど、なんせ黄正利には足があるからね、足が。
これでも、鷹爪拳使いのくせに全然鷹ポーズ取らないし(今考えてみればね)、決めは全部足だもん。
「酔拳」の鉄心に叶うべくもないが、ここでの彼のアクションもジャッキーに負けず劣らずで見物。
さすがジャッキーの前歯を容赦なく折ったテコンドーファイターだ。
(ただ、彼は格闘家というより出てる作品多すぎで役者が本業じゃないの?って思う)

■お話

筋の部分は酷い。
一杯殺しましたー!
冒頭の「蛇拳派の門弟3000人を殺した黄正利〜うんぬんちょっと待て
「10人殺せば極悪人、100人殺せば英雄だ。じゃー3000人は?神か?修羅か?」
さすが「一騎当千」なんていかにも中国らしい大袈裟な言葉があるだけはある。ハッタリ大好き。
重箱の隅をつついて悪いけど、まずそこまでして何故蛇拳根絶やしが必要だったのかは
描かれてないし、完全に身を落としてる爺ちゃんに向かってそこまで執拗にしなくてもいいだろうって感じ。
しかも布教に来た宣教師(ロイ・ホラン)さんまでもが鷹爪派で爺ちゃん狙ってたというからこりゃ参った。
おいおい・・・・・・宣教師さんがどう関わるんだよぉ。宣教師じゃなかったら元々誰なんだよぉ。
関係ないけど鷹爪派の白塗りの男が徐蝦だとわかるまでには随分かかった。だって白だもん。
それにしたってクドイようだが3000だぜ3000。呂布レベルだぜ。
貧弱だった孤児がちょちょいと猫拳編み出して勝てるような相手じゃねーぜ、正直。
まぁ、その辺が「酔拳」の黄飛鴻に対して説得力が無いのは確か。黄飛鴻はそりゃー黄飛鴻だもん。
それなりに最初から強くて当たり前だし、センス・才能も言わずもがな。
こっちは道場主の陳耀林があっさり負けてた蟷螂拳使いの王将に、これまたあっさり勝ったりするのもね。

袁小田爺ちゃんとの触れ合いは言うまでもなく好き。難を言えば、
「足痕を追ったりするだけでバック転とか出来るようになるんかいな」

■アクション

これもデカい。
何せ袁和平監督デビュー作だから、その辺も相当気合いが入っていたでしょう。それにジャッキーも
「新しい監督で新しいことが出来そうだ」
という気持ちがあったでしょうしね。ジャッキー「マイストーリー」にて当時の自分流の蛇拳を
どのようにして作っていったか?ご自身が語られています。
個人的に一番びっくりしたのはあれ。
「ブリッジしたままころころ転がる」
これには当時びっくらこいたなぁ・・・後に元彪とかもやるんだけど。
上と話題がかぶるけどやはり黄正利。
彼がジャッキーに全然負けない強さ、しかも目立つ足技使いということで果たした役割は大きい。

■つまり・・・?

・既成概念を打ち破るキャラクターの存在
・ジャッキーというスターの開眼
・上質なアクションの展開

ヒットした理由はこの3つということかな。
なんか今ひとつピリッと来なくてごめん。


龍拳
Dragon Fist
龍拳


監督・製作総指揮 羅維(ロー・ウェイ)
出演 成龍(ジャッキー・チェン)
苗可秀(ノラ・ミャオ)
任世官(ニン・シークワン)
田俊(ジェームス・ティエン)
林銀珠(リン・インチュウ)
徐蝦
高強(コー・チャン)
欧陽莎菲
金英一
王光裕
徐少洪
武術指導 成龍(ジャッキー・チェン)クレジット名は陳元龍
脚本 王中平(ウォン・チュンピン)
策劃 陳自強(ウイリー・チェン)
製作 李先章
制作 許麗華(シュー・リーホワ)
制作年度 1978

道場主の父を殺されたアーロン(ジャッキー)が、「龍拳」を会得し
仇討ちに向かう。だが、殺した張本人は既に自分の足を切断して断罪していた。
仇を討てず途方に暮れるアーロン。そこに悪組織がつけ込み出す。

子供の時はジャッキーの珍しくクールな格好良さにしびれ、TV放映一日千秋だった作品。
元々これ、作ったはいいけどそれまでのジャッキー映画がヒットしてないのでオクラに。
その後「蛇拳」がヒットしたのでこちらも公開に至れた。

うーん・・・これ。
何だか羅維最後の抵抗だったような作品だなぁ・・・

「新精武門」で第2の李小龍にしようとして失敗

その後、古龍脚本での武侠片スターにすべく頑張るが失敗

最後にもう一度、第2の李小龍に出来ないか頑張ってみる(これが本作)

古龍自身が、
「俺の脚本のイメージがジャッキーじゃない」
と、羅維と揉めた事もあり「苦肉の策で撮った」ってのもありそうだ。

羅維自身がジャッキーに「コメディアクターとしての才能」を見出せなかったのが残念とも言えるし、
現在の結果だけを見れば「それでよかった」とも言える。

本作に救いがあるのは、「新精武門」のように
「コテコテの李小龍狙い」ではなく、若干ではあるが
「ジャッキーなりの悲劇のヒーロー像」を作ろうとしてた感じ
が受けられるところであろうか。

■お話

観ればわかるとおり、
親父か師匠が死んだので仇討って終劇
という「いつものパターンをひねろうとした形跡」は充分に買える。本作では師匠(徐蝦)を殺した
任世官
を倒すため、龍拳の修行をして訪ねていったところ任世官は既に足を切断して断罪しており、
それでも殺したかったけんど師匠の奥さん(欧陽莎菲)に止められてジャッキーが途方に暮れる・・・って流れになる。
途方に暮れた後が問題で、一番未整理になっているのはジャッキーのキャラクター。
殺したいのか味方なのか何だかわかんない
高強
につけ込まれて任世官道場の門弟をジャッキーが虐め、そしてそれは奥さんの解毒剤のためとか
この辺が全然はっきりしない。おかげでクライマックスのジャッキーが高強軍団に放つ言葉、
任世官(ほんとは役名)さんには指一本触れさせないぞ!!
しらーっ・・・・・・
(どっちやねん)続いて
「お前(高強)のやり方は悪逆非道だ!うんぬんかんぬん・・・」
・・・わかってたんかい!
だったら最初から高強と戦えよ君ぃ。
この辺の経緯があって、悲しみに暮れるヒーローに全然感情移入できなかったのである。
意図することはわかる。
「倒すべきか敵か味方か」
この辺のところで苦悩する悲劇のヒーロー像を作りたかったのであろう。んだけど、
消化しきれなかったためにこうなった。李小龍映画が単純な復讐目的で動いていたのに対して
複雑にして差別化を図ったのは理解できるのだが・・・

■キャラクター

ジャッキー格好良い。
おいおい、さっきボロクソ言ってたやんか!なんだけど、話に関係なく格好良かったのは事実。
そして格好良いからと言って、話に感動したかと言えば「それはなかった」というのも事実。
特に「龍拳」を修得して最初にチンピラどもを軽くハッ倒していくところは素敵。惚れる。
高強の側近を怒りの余り、ぼこぼこぼこぼこぼっこぼこ!にするところも素敵。
本人の演技力が格段に上がってきていたのは確かだったと思う。

苗可秀しょぼい。
師匠の娘さん役ということで一緒に旅をするのだが、事も有ろうに苗可秀さんともあろう方が
呆れるほど目立っていない
こんなに目立たない苗可秀さんなんて他にあるのだろうか。パッと印象的なシーン考えても・・・・
全然思いつかない。いや、出てたのは覚えてるよ。高強にボディアタックしたのも彼女だよ。だけど。
どうせならいっそのことジャッキーとラブラブラブラブで際どいシーンまでやっちゃったら良かったのに。
セリフも全然覚えてないぞ。

林銀珠
おいしい。
林銀珠が美味しいってわけじゃないぞ。私はそんなにタイプじゃないぞ。そう要は、
苗可秀が林銀珠の役を演じれば良かったじゃん
ってとこ。彼女の方がずっと目立ってる。役柄は任世官の娘。
私はジャッキーがちょい好きよ。でも父さん殺されるわけにはいかないわよ。改心してほしいのよ。
 でもジャッキーが好きよ。でも・・・

ほらみろ!
これ程までに乙女心揺れ動いてる役だぞ!
なぜ苗可秀じゃないのだ、全く。

田俊これまたしょぼい。
実際、彼のスターレベルというか地位がどのような感じであったのか非常にわかりにくい。
だって主演作あるでしょ?たくさん。「ドラゴン危機一発」だって元は彼が主役だったって聞くよ。
それが何でまた台湾で落ちぶれてジャッキーには悪いが売れないスターの作品で、
誰からも嫌われるような裏切り者役やってんだろう。
本作では特に強くもないし、裏切るし、みんなに押さえつけられて叩かれて死ぬしで散々。

■アクション

これがね。
それまでの羅維モノとちょ・・・・・・・っとだけ違うような気がするんですよ。
その相違点はリズム!
昨今ではジャッキーが「殺陣で非常に大切なのはリズム」と言っているように、
「少林寺木人拳」「蛇鶴八拳」等と比べても本作はリズムをもっと考えて作ったような気がするんですよね。
それは、「蛇拳と同時撮影だったからコッチでも参考にしてみた」のか
「ジャッキー自身が悟ってやってみた」のかわかりません。
特にそのリズムが感じられたのは側近ぼっこぼこ!のシーン
ばばばばばばばん!どん!ぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱん!
どぼっ!どぼっ!ばしぃ!!

ほらね(わかるかっ!!)。
実際に観て確認してもらうしか無いですが、非常にリズムがあると思います。
もちろんこれ以外のシーンでもリズムを感じる殺陣は多々ありました。
ゆえにその辺では武術指導家としての成長ぶりが伺えます。
それと「龍拳」ってこんなんなのかしら。高強は簡単に倒しちゃうし、その前のトンファー使いとは
棍棒で戦ってたので、どの辺がどう龍拳だったのかよくわかんないんだけど。

■うーん・・・

やっぱり・・・似合わないのかな。というか成功しないかな?ジャッキーのシリアス。
考えてみても最初から最後までシリアスな映画って本当に少ない。で、その少ない作品がどうだったかと
考えてみればうーん・・・・・・
さぁアクション脱却を計る、ハリウッドのジャッキーどうする?

そう言えば、香港版ってか元のオープニングは日本語版(トンファー野郎と戦う事がいきなり出てくる)とは
違うらしいがまだ未見。

余談でPCエンジンという昔のゲーム機にて「THE功夫」というゲームがあったのですが、
敵としてジャッキーが登場し、その戦い方、衣装は本作そのままです。
後々ジャッキーマニアにとってはレアアイテムになるかも?(ならへんならへん)

■追記
(以下はfake様より頂いたコメントです)
 『龍拳』のは現在までのところ短縮版が2パタ ーン(うちひとつは日本公開版)、
他に2時間近いロングバージョンの3つが確認されています。
三泰師匠(徐蝦)がトーナメントを勝ち抜いて"武林至尊"の称号を得るまでがタイトルバックです。
ロングバージョンはジャッキーが板挟みで苦悩している描写が長く、
そこへ付け込んだ魏(高強)がさらに悪辣な罠を仕掛けています。


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