ジャッキー・チェン第二部

一躍香港No.1スターになりながら羅維プロとゴールデンハーベストの間で
大揺れの問題になったり、そんでもって「A計劃」という
今のジャッキー映画の原点となる傑作を作り上げた時代。


拳精
SPIRITUAL KUNG FU
拳精


監督・製作総指揮 羅維(ロー・ウェイ)
出演 成龍(ジャッキー・チェン)
田俊(ジェームス・ティエン)
武文秀
李桐春
苗天
武徳山
李文泰(リー・マン・チン)
李昆(リー・クン)
石天(ディーン・セキ)
王青(ワン・チン)
江志平
李海龍
方秀一
謝銘文
王清
王光裕
高強(コー・チャン)
武術指導 成龍(ジャッキー・チェン)クレジット名は陳元龍
音楽 陳勲奇(フランキー・チェン)
策劃 陳自強(ウイリー・チェン)
製作 李先章
制作 許麗華(シュー・リー・ホワ)
制作年度 1978

少林寺から暗殺拳「七死拳」の秘伝書が何者のかに盗まれる。
その後、「七死拳」を使う謎の拳法使い(田俊)が現れ、
拳法の達人達を次々とうち倒し、拳法界の支配を目論む。
そんな時、少林寺に隕石が衝突する。
その衝突で出現したのはなんと「七死拳」に唯一対抗できる「五獣拳」の精霊達だった。
少林寺の僧相手にいたずらを繰り返す精霊達。
しかし精霊たちを捕まえたのは寺男の一龍(ジャッキー・チェン)だった。
一龍は精霊の正体を知り、「五獣拳」を伝授してもらうことにする。

羅維
がウッシッシと何やら不気味な笑みを浮かべて歩いてくるのをみて
僕は何だかとっても嫌な予感がした。

上記はジャッキー自伝から(若干意訳)。
ウッシッシというのは「拳精のお話を思いついてウッシッシ」というわけで、ジャッキーは
特にパンツにドジョウを入れなければなかった事が非常にムカついてるらしく、
この作品に良い評価を与えていない。
ただ、少なくとも私と同世代だったガキどもにはなかなかの人気があり、今でもジャッキー話の中で
よく出てくる映画である。とすれば、
「羅維コメディもまんざらじゃなかったかもね」
とも思え、「最初からこんな路線だったら成功してたかもね」とつながる

(それはそれで飼い殺しにされそうで、ゾッとするのだが)
「特撮トリックも幼稚だし嫌だった」
はジャッキーの弁で、この時からすでに
「どうせ幼稚になる特撮なんか最初からしたくない」
と、後に反ハリウッド体制で映画を撮り続ける土台とも取れそうな興味深いお言葉だと思った。

■お話

つーか、昔混乱してたとこがあって、
「落ちてきた隕石に五獣拳の精が乗ってたと思ってた。」
隕石が落ちてきたせいで本棚が倒れ、そっから五獣拳の奥義書がたまたま見つかっただけなのね。
だったら別に隕石とかSFチックにしなくても地震でもいいじゃないか・・・と思うんだけど、
この辺はSFチックにしたかったからでしょう。

それよりも問題なのがやっぱ館長様。
少林寺の館長様が
「昔、強かったのに少林寺拳法界に邪魔されて最強の名をもらえなかった」ことにご立腹。
息子さんになってもらうよう、七死拳の秘伝書を盗んで息子さんに教え、
息子さんの田俊は修得した七死拳を使って名のある拳士を次々血祭りに・・・でもさー
だって少林寺の館長様やってるじゃん
それ以上に拳法界最高の名ってなによ?具体的になかったぞこの作品では。
館長様までやってて何が満足できなかったか不明なんだがさらに、

「最強の七死拳!これを破れるのは五獣拳だけ!」
とここまでは良いとしても館長様。
七死拳使わずとも館長様は五獣拳使うジャッキーより強かったじゃん
ジャッキーは五獣の精の力を借りてズル勝ちするわけなんで。
つまりわざわざ七死拳の秘伝書盗んで来なくとも、館長様の技を直々に息子さんに教えれば
一番良かったような
気がするんですが。

■コメディ


というわけでジャッキーは毛嫌いしているみたいだが、それに反して個人的には結構好き。
確かに今回、
毎度の石天さんのインパクトは弱いが五獣の精とのカラミではしっかり笑わせてくれはする。
何気にコメディアクターとして「この人も才能あるなぁ〜」(というか大先輩ですな)の李昆和尚も
得意の「気絶二秒前の寄り目」で笑えます。←「ドラゴン怒りの鉄拳」でもしっかり披露
後はジャッキーと五獣の精との「SFチックなカラミ」。
なんだかんだジャッキーも頑張ってやってるんですよね」
やってるウチに楽しくなっていたのを今では忘れたかジャッキー。それとも芸人根性かジャッキー。
ヒロインの女の子(いるんかい)とのほのかなロマンス(戦いだけど)も良い。

■アクションと十八羅漢拳

いや実際、
金玉の修行まで今でもやってるらしいから、これもあったんだろう」
って気がします。
本作のウリのアクションシーンがここで、次々に襲いかかる棍棒を持った坊さんと
珍しくトンファー持ったジャッキーとの戦い。
五獣の精とじゃれてただけでよくそこまで強くなったもんだ
十八羅漢に扮する坊さんは今まで何をやっとったんじゃ(ジャッキー一人倒せないで)」
なんてツッコミがすぐ湧くので、実際あったかどうか疑問になっちゃうんですが。
これが意外と後のBIG2、サモハン、元彪は恐らく「少林寺難関シリーズ」を
映画上でこなしたことはなく、ジャッキーだけです(「木人」とこれ)。
そもそもBIG3は少林寺モノは少ないのですが。

田俊とのラストの戦いなんか観てください。
明らかにリズム感が出てますね」(やっぱり「蛇拳」参考にしたのが正しいか?)
これまでとは全然違います。やっぱり袁和平との交流からジャッキーも進歩してるんですね。
まったく袁和平ってヤツは・・・これからの袁ファミリーにも期待。

■その他

やんややややんやんやんやーんややんやんやん♪
ちゃいながーる ちゃいながーる



蛇形刀手第二集 醉拳
DRUNKEN MASTER
ドランク・モンキー・酔拳


監督 袁和平(ユアン・ウー・ピン)
出演 成龍(ジャッキー・チェン)
黄正利(ホアン・チョン・リー)
袁小田(ユアン・シャオ・ティエン)
石天(ディーン・セキ)
林蛟
林瑛
王将(ワン・チェン)
蒋金(ジャン・ジン)
黄蝦
師傅仔
王憾塵
袁信義(ユアン・シュン・イー)
山怪
唐晶
徐蝦
袁和平(ユアン・ウー・ピン)
武術指導 袁和平(ユアン・ウー・ピン)
徐蝦
武術副指導 袁振辰
袁信義(ユアン・シュン・イー)
脚本 羅文
何天誠 他
音楽 周福良
撮影 張海
製作 張灌
脚本・製作総指揮 呉思遠(ウー・セイ・エン)
制作年度 1978

◆名門黄麒英道場のドラ息子黄飛鴻(ジャッキー・チェン)は、食堂では食い逃げをし、
 女の子にはいたずらするわで父・黄麒英の頭を悩ませていた。
 そこで麒英は酔拳の達人蘇化子(袁小田)に無理矢理弟子入りさせ、
 根性を鍛え直してもらう事にする。
 何だか意味の分からない修行が嫌で逃げ出した飛鴻だったが、
 殺し屋の鉄心(黄正利)にこっぴどく虐められたのが原因で改心。
 父・麒英の命を狙う鉄心を苦行の末、会得した酔拳で倒すのだった。


余りにも思い入れが有りすぎる作品。
そりゃそうだ。だってこれが俺の始まりなんだもん。これを観たからこのHPがあるんだもん。
そんなに美辞麗句並べてもしょうがないのだがやっぱ並べたい並べよう。
以下、個人的なものも多々含む。

「コメディクンフー完全確立そして最高傑作」
「クンフー映画中でも三本の指」
「ジャッキーが日本でも人気を勝ち得た記念すべき作品」
「俺が無人島に持っていく映画」

みんな観ろ!劇終


スカッ
としたが、これだけで済ませまい。つーか、このHPに興味持ってここ読んでくれてる時点で、
「この作品観てる可能性高すぎ」
あんま関係ないが、カウンターってさぁ・・・・・・半分ぐらい俺のアクセスにすぎないような・・・・・・
もっとこのHPを色んな人に見て貰いたい・・・でも興味の無い人が観たって面白くはない・・・
興味がある人なんか現実少ない・・・ぼちぼち続けるしかないか・・・・・・
それにしたって自分で読んで思うけど、
「わからない人には暗号の文章みたいな感じもするな」
で、冷たい現実はこっちもそうで「酔拳」香港公開年の興行収入No.1は
「Mr.Boo!インベーダー作戦」なんだよね。本作はNo.2。
ジャッキーは
「つーか、俺のがNo.1ヒット」って堂々と書いてたけど、どうなってんだろ。

■ヒットの理由はジャッキー

他にもたくさんたくさんですがとにかく、
ジャッキー本来の魅力が目一杯に弾けた!
これですよ。これが一番デカい。
その魅力について語るのは別の機会にしたいと思います。
(語らなくても別にみんな知ってるかな)

■初めてでしょうかコメディ黄飛鴻

これは香港にとってインパクトデカいでしょう!
(日本で黄飛鴻が広く知られるのは李連杰ワンチャイ後)
なんてたって中国きってのヒーローが
關徳興様がずーーーっと演じてたお堅い黄飛鴻が、
「女にキスさせたり抱きついたりするセクハラ野郎になってる!」
あーあーあー香港ってのは意外に寛容なところなのか?だって例えるならこれは、

「ぼ、ぼ、ぼ、ぼくはおむすびが欲しい、だ、だ、だけなんだな。」
と芦屋雁之助扮する裸の大将、無欲の画家・山下清先生が、
「ぼ、ぼ、ぼ、ぼくはおなごが欲しい、だ、だ、だけなんだな。」
と窪塚洋介扮する別の意味で裸の大将に変わっちゃったぐらい
のもんだぜ!
(窪塚洋介は単に坊主だから思いついただけ)

この不真面目黄飛鴻がウケたのも、ひとえにジャッキーの賜物だと思う。
流石にこれを石天さんが演じてたら・・・・・・個人的にはちょっと観たいが・・・・・・うーんちょっと品が・・・

ともかくこの不真面目黄飛鴻を思いつき、実行し、成功させた功績は素晴らしい。
発案者はジャッキーと本人は言っているが果てさて・・・?
(後の譚詠麟のコメディ黄飛鴻はずっと後の作品なので言及しません)

■ジャッキーがキスする女優さんは誰

そのままです。
だって、小学生の時好きやった女の子に似てるんだもん雰囲気が。
「燃えよデブゴン3」でもこの女優さんを確認してますが未だ名前知りません。
誰かご存じの方、お教え下さいませ。
唐晶ちゃんでした。情報提供ありがとうございました。)

■爺ちゃんとの触れ合い

「蛇拳」爺ちゃん+広東十虎の蘇乞兒(汚らしかったので、あだ名らしい)=赤鼻蘇化子爺ちゃん誕生!

おお!素晴らしきアイデア到来!
ジャッキーが「自転車アクション」思いついた事より素晴らしいアイデア到来だと思いますよ。
だって、あれ得意そうにジャッキーが「すげーひらめいたんだ!」って言ってたけど、
2つの映画からパクって来たんじゃん
って言ったらそれまでだし(俺はジャッキーが嫌いなのか?)。怒らないでジャッキー。
以後、赤鼻爺ちゃんをパクったキャラが映画、漫画、ゲームでどれだけガツガツと出てきたことか!
もちろん袁小田爺ちゃんも引っ張りだこでしたしね。
そもそも「スターウォーズ」に出てくるヨーダとスカイウォーカーの関係
「まさかあの作品がそんな・・・・・・」
ってことで今まであんまり取り沙汰されてないけれども、どう見ても本作からインスパイアでしょう。

「少林寺木人拳」の章でもちょっと触れましたけど、
爺ちゃんとの触れ合いには何ともほのぼのした「情緒」があるんですね。
鉄心にボコボコにされて落ち込んでいる黄飛鴻とその黄飛鴻に溺死させられそうになって怒ってる爺ちゃんとか、
なかでも心静かに情緒を揺るがすのが、2人で酒を酌み交わすシーンですね。

■鉄心という強敵・そして無影手

ジャッキー映画で印象に残る強い敵、まず最初にパッと思いつくのは人様々ですが、

「ヤング・マスター/師弟出馬」の黄仁植
「スパルタンX」のベニー・ユキーデ
そして本作の黄正利

ではないでしょうか。最初にパッとですよ。ちょこっと考えれば「アラン君も頑張ってたな」とか、
「盧惠光の足技も良かったぞ」とかありますけどね。

さて、黄正利扮する鉄心(香港での役名不明)。
ジャッキーボコボコにして股くぐらせるし、殺し屋だし完全な悪役です。しかし他の悪役とちょっと違って
格好良いところもあります。どこが格好良く感じたかというと、
「わざわざ自分の必勝法を自信たっぷりに言ってくれる」

「手を全て防ぎ、足で打つ!」
「手が3分、足が7分!」


戦いのさなかにイチイチ言ってくれるもんだから、しびれるってもんです。漫画みたい。
そして無影手。
手をバイバイバイバイと相手の顔の前で振ることで、視界をそらして殴っちゃうあれです。
当時は全くわかりませんでしたが、今見てみれば名前からもわかる通り、
黄飛鴻の必殺技「無影脚」をパロってるのがわかります。あれを手でやったんだと。
どうせなら、黄正利は足技の達人ですから黄正利連続足技が炸裂し、それをジャッキーが真似、
そっから「無影脚」が始まった・・・の方が面白かったかもしれませんね。

■型がそのままラストの戦いにイカされている

ここまで忠実に活かされている映画はそうそうあるもんじゃありません。つまり、


劇中でジャッキーが酔拳演舞披露

いざ、鉄心と決戦!

演舞で披露していた技をそのまま使っている

そしてその技が通じたり、通じなかったり・・・他のクンフー映画では、
「劇中で習ってたはずの型が決戦でまるで使われてない」
このような事がよくあります。一体、お前は何を覚えて来たんだと。
正直、前作「蛇拳」でもそのような感じは見受けられます。
それに比べてこの映画は何と忠実なことか!ここが凄いと思うのです。

■弟子は師匠の教えを発展させるのメッセージが前作と同じ

ここには袁和平監督からの強いメッセージがあるようでなりません。つまり、
受け入れるだけでなく、自分で考えて行動することが一番大事だ
「蛇拳」ではその後、「猫の動きも取り入れたら良さそうだ」と弟子が猫形蛇拳を編み出しました。
本作では「何仙姑の型」を覚えてなかった黄飛鴻が、
他仙人の型を混ぜ合わせて「オリジナル何仙姑」を編み出しました。
私たちも今まで糧にしてきたモノを活かして何か編み出しましょう(堅い話になったのに変な言い方)

■ラストがまた

飛鴻 「父さん!師匠!勝ちましたよぉ!!」
麒英 「さすがは我が息子じゃ!わっはっは!」
赤鼻 「ワシも鼻が高いぞい!」
麒英 「さっ・・・・・・そろそろ警察でも行こうか。人殺しは人殺しだし・・・・・・」
飛鴻 「えっ!?と、父さん・・・・!?」

なんてやり取りが無いのが実にいい。
この当時のクンフー映画のほとんどが終わりが「尻切れトンボ」になっており、かなり多くの作品が
「ここで終わるんかい!」
ってな、あっという間終劇。本作でもその流れに沿ってるのだが、ここではこれが大正解。
上記のアホやり取り読めばわかるように、「後の想像は観客に任せるのが一番」なのである。
余韻に浸れる楽しさってのも残すからね。「少林寺木人拳」でもノーカット版では
ジャッキーが剃毛して出家するシーンまであったが、あれでも私は不必要だと思った。

■ジャッキーが倉田さんに愚痴った

これは「蛇拳」撮影時かもしれないが、倉田さんと撮影場所が近く(倉田さんは「霍元甲」の撮影?)
「ギャラ安い、しんどい、体痛い」
とネガティブ・ジャッキー炸裂だったそうだ。そりゃ、しんどいよ。袁和平監督の要求は本当に高いだろうしね。
よく頑張ったよな。そう思うと最近の袁和平にシゴかれたチャン・ツィイーなんかでも思うけど、
スターには並大抵の根性では到底なれない
って気がしますね〜
あと、あの強がりジャッキー(そこが素晴らしいのだが)が倉田さんに愚痴ってたって事は
「心を開ける良き先輩」として倉田さんも尊敬されてたんでしょうね。それと、
本作での「寶芝林」(黄麒英道場)と倉田さん出演作「霍元甲」での「精武館」(になっていくとこ)は
同じロケセット、同じ撮影時期なので(「霍元甲」は完成に三年かかってるそうですが)
「この酔拳のウラで霍元甲も撮ってたんだ・・・」
「袁和平が本当に撮りたかったのはどっちなんだろう?どっちもか?どっちか片手間か?」
などと想像巡らせるのも楽しいのです。

オープニングの違い

これは有名ですね。
TV放映版は酔拳演舞で日本で作った主題歌『拳法混乱』が流れますが、
元々は黄正利と袁信義が決闘するといったものです。どちらかと言うとTV放映版の方が人気がありますが、
私はここで黄正利の足技がドーン!と炸裂する方が好みです。後の興味にも役立ちます。

■実は長い

気がする。これ、ノーカットで見てみますと「友人の小豆とのやり取り」とか、
「修行シーンの多さ」が目を引くんですよね。実に丁寧に描かれているのがわかります。
当時のクンフー映画としては珍しいのではないでしょうか。

■余波そして脱却

ご本人はこの流れを「笑拳」一本で済ませましたが、まぁとにかくとにかく色んな拳法出てきました。
それどころか勿論、本作後この流れに従ったクンフー映画が数多く乱立しました。
名作、傑作、佳作、駄作・・・・・・ただ一つ言えるのはどれも本作「酔拳」を超えられなかったということです。
そしてそれは決して良い循環を生み出さない・・・ともなります。しかし、
「乱立したからこそ俺は作らないぞと思えた」とも取れそうです。だから「プロジェクトA」につながるんだと。

■追記
(以下はfake様より頂いたコメントです)
『インベーダー作戦』は『酔拳』より予算も撮影期間も段違いで、
低予算で撮られた『酔拳』の方が利益の回収効率という点では優れており、
ジャッキーのいうNo.1ヒットもあながち嘘ではないのです。  
倉田さんが撮影中だったのは『Gメン』の香港ロケだったとご本人のインタビューにありました。


ああシネスコDVDで収集しておきたい・・・HKLEGENDであるけどリージョンとかが〜
あとですね〜これは最近になって気づいたのですが、
袁和平(ユアン・ウー・ピン)本人が劇中で出てるんですね。いやぁ気づかなかったぁ(画質の問題もあるし)
冒頭の方の王将(ワン・チェン)にぶつかる野菜売ってた人がそうです。



笑拳怪招
THE FEARLESS HYENA
クレージー・モンキー・笑拳


監督・脚本・武術指導 成龍(ジャッキー・チェン)
助監督 趙魯江
陳誌華(チェン・シー・ホワ)
曾志偉(エリック・ツァン)←ノー・クレジット
出演 成龍(ジャッキー・チェン)
田俊(ジェームス・ティエン)
石天(ディーン・セキ)
任世官(ニン・シー・クワン)
李昆(リー・クン)
陳慧樓(チェン・ウェイ・ロー)
金英一
馬場
鄭富雄(チェン・フー・シェン)
何興南
程天賜
王圻生
金世玉
音楽 陳勲奇(フランキー・チェン)
策劃 陳自強(ウイリー・チェン)
製作 李先安
製作総指揮 許麗華(シュー・リー・ホワ)
制作年度 1979

◆清朝政府は殺し屋のニン(任世官)を使って、反政府分子の一掃を繰り返していた。
反分子のボス的存在であるチン老人(田俊)は孫のシンロン(ジャッキー・チェン)と
隠遁生活をしていたが、シンロンが街で道場の師範代のバイトをやった事で、
ニンにチン老人の存在を知られてしまい、チン老人は殺されてしまう。
仇に燃えるシンロンの前に謎の男・八本足(陳慧樓)が現れ、秘伝の「笑拳」を伝授。
ニンをうち倒す。

ジャッキー初の公開年興行収入第一位作品。やったね♪
やっとこさ羅維から文句も言われなくなり、厳しい袁和平監督の元も離れた一人舞台。
いきなり監督・脚本・武術指導とこなしてやりたい放題!のように見えそうですが、実はそこには
絶対にヒットさせるための細かな計算

がたくさん隠されていると思われます。それでは書き連ね。

■監督4人

ジャッキーはあくまで総監督。ってか素人。
まずクレジットはされてないですが、曾志偉(エリック・ツァン)
「自分の監督デビュー作」
と堂々と発言しています。ってことは多分彼が一番監督っぽいことしてたんでしょう。
脚本についても「ジャッキー原案、書き下ろしは曾志偉」だったんではないでしょうか。
そして趙魯江と現場では気の知れた陳誌華とも相談しながら・・・
って感じでしょうね。
まず監督・脚本ってところで手抜かりがないように最善を尽くしているのがわかります。

石天、李昆、田俊、任世官

もちろん、ジャッキーご自身でも笑いを取るため八面六臂なのですが、しっかり
石天さん、李昆さんといった信用おけるコメディアクターを起用しているのも注目です。
後にこの辺でつながる「石天さん、曾志偉」がガルボ映画社→シネマシティと発展するのも興味深いことです。
李昆さんのダメダメ道場主は当たり役でしたね〜これを真似したダメダメ道場主が他のコメディクンフーに
けっこう現れたことも確かなことです。本人も「猫拳カンフー無宿」で同じよな役柄を演じています。
そして田俊、任世官については
「一緒に仕事をしてきた奴ら、クンフーもばっちり」
ってことで起用でしょう。最初は慣れてる間柄から・・・ということですね。
特に任世官は当たり役を手に入れた!というよりその堂々とした悪役振りは凄いものがありました。

■話はシンプルに、アクションは精密に

お話はいたってシンプルです。
反政府の田俊一派に殺し屋の「鉄の爪」(任世官)が差し向けられ、どんどん殺され田俊も遂には殺され、
生き残った八本足(陳慧樓)と田俊の孫、ジャッキーが「鉄の爪」を倒す。
枝葉はもちろんありますが、要はそれだけです。さらに言えばこの映画、
ヒロインが全くいません
こんだけシンプルにしてるのは、
素人監督が難しいもの撮ったって失敗するだけだから
にあると思われます。初監督作はシンプルに!と割り切っていたのではないでしょうか。

「じゃージャッキー、裏では何をしたの?」
って聞かれれば、裏方ですとやはり武術指導の部分が大きくウェイトを占めてきます。
こここそが本作を作るときの彼の裏方本領発揮でしょう。考えに考えたのではないでしょうか。
今までの作品と際立って相違する部分があります。それは、
小道具を多く使うアクション
これが今までとは段違いに表現されています。床机、食べ物、大小のツボ、お箸、おちょこ・・・
ジャッキーの映画では昨今でも「ちょっとした手遊び」がふんだんに出てきます。それは流石に、
「普段からこうした手遊び演出も考えなくてはならない」・・・ではなくて、
「その辺の手遊びで本当に遊ぶのが好き」・・・と捉える方が自然
だと思います。つまり、
ジャッキーは昔から「ちょっとした手遊び、特に道具を使った遊び」が好きだったのではないでしょうか?
そして本作は自分が監督。その手遊びを取り入れてみたくなったのは言うまでもない・・・どうでしょうか。
「手遊び」と表現しましたが、ここで見せるのはもちろん小道具+全身を使ってのアクション、
ツボからツボから渡り歩くアクションから、香港人得意の(?)床机アクションまでまで。
本当に緻密に計算された細かなアクションが展開されます。NGテイクもたくさんあるんでしょうね。
特に八本足師匠が食事の邪魔をして、なかなか食べる事ができない「お箸と食べ物を使ったアクション」。
これは本人も「無いだろ無いだろ他には無いだろ俺が最初だろどうだ!」って改心の気持ちがあったのでは?
そしてこの「小道具アクション」がどれだけ評価されたかについては、他のコメディクンフーの真似っぷりが証明しています。

そして三省拳士。
「蛇鶴八拳」の章で書きましたが、あの素晴らしいアクションをもう一度!
ということなのでしょう。「今度は大勢が見てくれるはず」の期待があったんでしょうね。

さらにヒットした「酔拳」・・・・

こっから学んだモノは「元からある伝統的なモノを発展させて成功につなげた」でしょうか。
中国では非常にポピュラーな拳法「鐵線拳」。それをさらに誇張して作ったのが「笑拳」。
これはジャッキー流(袁和平流?)「酔八仙拳」、そして英雄・黄飛鴻のキャラをアレンジして作った
「酔拳」と似た手法だということが伺えます。この辺も安易にただ頭の中で、
「あっ、パンダ拳とかやったら面白そうだな・・・」
て感じで作ったわけではない
というのが理解できますね。


■さすがだな

突然、スターダムにのし上がった役者さん、調子に乗って監督作まで作っちゃったら大失敗
よくありますよね〜この流れ。例えばジ○○○・リーとか。ジャッキーはこのような事に陥らず
しっかりと初監督作も計算して良いモノを作り、大成功させたわけです。
やはり安易な映画作りに走らず、少なくとも「スターになっても映画作りは一生懸命」
これをしっかり忘れなかった事が功を奏したのでしょう。
ただ、香港の役者さんはある程度成功すると必ず「んじゃ監督も」って流れになるみたいですが。

■むきむき

もう一つ、本作に特筆すべきことですが、
ジャッキー筋肉美自慢
これ珍しいですね〜ここまで彼の肉体を誇示した映画は後にも先にもこれのみです。
でも誇示するだけの体あり!素晴らしい筋肉美なんですよね〜
ラストに上半身裸で戦ってるのもこれ一本じゃないかな。

■ほんで

日本劇場公開版には冒頭にモンキー・パンチのアニメがついてるんですよね。それも
ジャッキー風の男が通りすがりにギャルのパンツを泥棒!
という、今のジャッキーなら増して激怒しただろう的アニメが。こんなんいるんかいな。



刀手怪招
必殺鉄指拳

監督 金〔金金金〕(チン・タイ)
出演 成龍(ジャッキー・チェン)
袁小田(ユアン・シャオ・ティエン)
石天(ディーン・セキ)
韓國財(ハン・クォ・ツァイ)
権永文
田豊(ティエン・ファン)
蒋金(ジャン・ジン)
陳鴻烈
銭月笙(チェン・ユーサン)
輝仔
馬剣索
金軍
泰山
許金
司馬華龍
甘露
黄妹
爾峯
元彪(ユン・ピョウ)
武術指導 成龍(ジャッキー・チェン)
元奎(ユン・ケイ)
師傳仔
朱剛
蒋金(ジャン・ジン)
製作 老二
製作総指揮 李浪観
制作年度 1978

◆拳法の達人として名を馳せていた4人が、殺人の依頼を請けたことから決裂。
1人は殺され、1人は逃げ出してしまう。
数年後、殺された達人の息子ドラゴン(ジャッキー・チェン)は謎の老人(袁小田
の元で修行し、がんがん強くなっていた。
そんな時、逃げ出した達人であったドラゴンの叔父(田豊)が2人の達人に殺されてしまう。
怒りに燃えたドラゴンは死闘の末、仇を討った。簡単やな。

インド版VCDのタイトル画面
バッタモンはスターの証

李小龍は皆まで言うな、倉田さんも李連杰もありますバッタもん。
ジャッキーのバッタモンはこれ。
主演デビュー作「広東小老虎」のフィルムにお馴染みの
「袁小田爺ちゃん+石天さん+そしてそっくりさん」 をプラスして勝手に作ったもんです。
これさー、別に死んだわけでもないのにここまでやるかね普通。推測だけど、

「広東小老虎」のフィルムを手に入れる業者「これで金儲けだ!」

しかし「酔拳」「蛇拳」等には到底及ばない出来上がりに気付く

無理矢理コメディクンフーに作り替えてしまえっ!

でしょうかね。
まぁ個人的にはここまでは許せますけどこんな中から怪作も出てくるってもんですし。

■なんで

どうしてあなたはバッタモンの映画に出演できるのですか?
ってところを、石天さん、袁小田さん等に聞いてみたいものである。別に責めてるわけではない。
単純に理由が聞きたいだけ。パッと考えられるのは、

・バッタモンとは知らなかった
・ジャッキー映画の追加撮影だと思った
・ギャラがよかった
・脅されて出演した
・役者なんて使ってもらってるウチが華だ
・マネージャーが勝手に仕事を入れた
・バッタモン大好き
・ジャッキーが嫌いだ

等々理由が思いつく。なんとなく香港人の感性でいくと「ギャラがよかった」が近いのだろうか。
これも別に香港の人を罵っているわけではない。何よりもシンプルに「家族、金、仕事」と
一番大切な事をひたむきにそして楽観的に追い求める様はむしろ見習うべき
ところだと思う。

■良くないとこ

「お前は酒飲みだが良いヤツだ」
「お前は良いヤツだが酒飲みだ」

意味は同じだが印象が違ってくる。後者だと同じ意味なのに悪く感じてしまう。
だからどうしたって?どうもしないんだけど、良くないとこを先に書いてみよう。
まず、コメディ部分そのものが面白くない。「広東小老虎」は勿論、元々大して面白くないシーンなのに
妙な効果音つけて笑わそうとするのでかな〜り「しらーっ・・・」とする。
「広東小老虎」自体が少々陰惨なのは仕方がないとして、問題なのはこっちで作ったオリジナルの方、

「石天さんの麻雀拳」
・・・すまんが、まるで笑えない。冗長して退屈なだけだ。石天さん自身頑張ってるのは理解できるのだが。
無理矢理付けたにしては頑張った方・・・てのは言い訳。客にとって作った理由などは関係ない。

お話。
これもそりゃ無理矢理なんだから当たり前。多くは言及しまい。

■よさげ

これのオープニングで権永文が演舞してるとこ好きなのよね。
権永文がツボを蹴り割りしたら中からなぜか鳥がパーッと出てきて、
なぜ鳥なんか仕込むんだろう
ってことはおいといて、壮大なイメージの音楽がなってさぁ・・・ここが一番好きだよ。
その後ロールの時のBGMも好き。なんでと言われても困るが。

後は権永文決闘前の爺ちゃん+偽ジャッキーの修行シーン。

「具体的に何の修行してるかわかんない」
ってのはあるんだけど、ここも大袈裟なBGMがいい。
これ子供の時、「修行ごっこ」とか一人でしてここのBGM一人で唄ってたりして・・・(なぜ気持ちが空しくなるの)
ここにバージョン違いがあり、
インド版VCDには「酔拳」演舞シーンが挿入されていたが、日本版ビデオには無し。
恐らく日本側が「これはあまりにも・・・」ってことでカットしたのではないだろうか。

うなだれるジャッキーのすぐ左に見えるのが元彪(ユン・ピョウ)

■なぜ夜と昼

注目はやはりここに集まるか。

・北京語バージョン

昼の修行に続けて、深夜も修行を続ける偽ジャッキー。
と、そこに権永文一行が襲撃。これを返り討ちにした偽ジャッキー。権永文と目隠しをつけたまま対戦し、
最後は権永文を崖から突き落とすのだった・・・劇終。


・米国バージョン

修行が一段落付いて、決戦の場に赴く。

まずはおデブの蒋金(ジャン・ジン)と軽い前哨戦。

その後は「酔拳」よろしく爺ちゃんのフォローを受けながら
権永文を倒して劇終。


なんとなく「広東小老虎」を使って金儲けしたかった奴らの「わずかな良心」が見え隠れしてるよな・・・
なぜなら北京語バージョンは「暗くて何だかわかんない」「権永文は勝手に落ちてっただけ」と
酷い出来上がりなのである。「これじゃいくらなんでも・・・」と作った方も困っちゃったに違いない。
そこで、米国あるいは日本のTV局に売る際にあたり、改めて米国バージョンを撮ったのではないだろうか。

日本で既発売のビデオバージョンが「北京語バージョン」だったのは、放映したTV局と関連が
無かったのかもしれないし、そんなのどうでも良かったのかもしれない。

だから面白いのは勿論、昼の決闘米国バージョン。


inserted by FC2 system