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香江花月夜 Hong Kong Nocturne 香港ノクターン ■ ワシは舞台観賞はまぁまぁあるが、ミュージカルはほとんどなく宝塚なんかは行った事もないの。でもでも本作を見て 「ああ、ミュージカルも良いかも」 って初めて思ったりなんかしてみてたりなんかしたわけ。 当初の目的は「ペイペイの他作品を」とやや不純な動機で始まり、しかしながら 「ミュージカル、しかも古いミュージカルは辛いかなぁ・・・」 と他にも観てみたい作品がたくさんなので、どうしようか困っておりました。 そこでネット検索してみますとつい最近本作は東京国際映画祭アジアの風部門で「香港ノクターン」としてリバイバル公開されており、そこで非常に好評を得た、と。「おおそれならば!」と入手しまして結果、 「手を出してよかったなぁ」と思っております。 勿論当たり前ですが本作は功夫映画ではありません。それらしいシーンも一切出てきません。 監督は石原裕次郎 「嵐を呼ぶ男」を撮った井上梅次さん。 ショーブラから頼まれて相当香港でも映画を撮ってます。んで、本作は元々ご自身の監督作「踊りたい夜」('63)のリメイクであり、ペイペイの役(次女)は倍賞千恵子さんに当たるそうです。井上監督作品の他はさすがに観ていないのでどんなもんか知りませんが(別に「踊りたい夜」を観たいと思わない)、本作は「大醉侠」と同じく昭和42年から「こんな傑作があったんだなぁ」と思わせるに十分の素晴らしい作品でした。付け加えるとそれはペイペイ様好きになっていることも加味してであります。 左から長女・何莉莉、三女・秦萍、次女・ペイペイです。 歌劇はイダチには向いてないやね 三姉妹はマジシャンの父ちゃんの脇を添えるアシスタントダンサーとして生計を立てています。ファミリーのショーは大好評。今日も喝采を浴びるショーを披露するのでした。しかし、 良い歳して父ちゃんさぁ・・・ 父ちゃんは小悪魔(左)に魅せられてお金をガンガン巻き上げられてしまいます。小悪魔の前で次々と魔術を披露するおかしな姿が哀しい・・・ 「やってられっか!ばーか!」 コトに気づいた三姉妹、当然雷落としてファミリー大喧嘩!これをきっかけとばかりに 何莉莉はお目当ての彼氏と結婚へ! 秦萍はプロのバレエダンサーへ! それぞれ目的目指して出て行ってしまいます。ペイペイも一時出て行きましたが、「出てってアタシ、何やるねん?」 つーか父ちゃんを気遣って家出取りやめいたしました。しかし、 あんた鬼畜か! 好評を得ていたショーは三位一体+父ちゃんで初めて成り立つもの。ペイペイ+父ちゃんだけじゃーお客さんの評価はうなぎくだり(俺はペイペイソロで十分なのだが)。困った父ちゃん、ショーマネージャーの余計な提案を実行。それは、「ペイペイヌードマジックショー」 お前はそれでも親父か! 「冬寒い、それにつけても金の欲しさよ」かお前は! 当然、ペイペイが応じるわけも無く悲しみに暮れ、終始見ていたペイペイの彼氏(彼氏前?)はペイペイを連れて逃げるのでした。そして、 「結婚すか!?」 ペイペイに愛を告白した彼氏。 しかしですなどーも個人的にですが、 「女優は可愛いけど、男優はあんまりなぁ・・・」 ってのはこの時代の香港多い。時を越えても女性の美しさは変わらんが、男性は変わって見えるぞこの野郎。 この辺でホントに男前やなぁ・・・と思えるのは今のとこ狄龍(ティ・ロン)だけだ。不幸が一転、ペイペイ様にも「つくしの目」が見えてきたのでした。しかし、 「桃尻娘/ピンク・ヒップ・ガールとかどうかねぇ、うひひひ」 家出して結婚して日本に行って活躍して映画女優(?)になるプランだった長女のリリーさん。残念ながら結婚相手は名うての結婚詐欺師であり、逆に金を取られた挙句逃げられて、紹介された監督は ポルノの監督だったのです。一番父ちゃんに怒っていたのに父ちゃんと一緒やん! 可哀想なもんですホントに。だって、 こんなに喜んでいたのに! こんなに喜んでいたのに!(タイタニックかよ) 結婚の嬉しさのあまりに3回も唄って踊ってしていたんですね、彼女。キレイなセットまで作って。日本落ちして彼女は帰っていきます。そして、 三女の秦萍は新人ダンサーとして 知り合った若者と共に頑張って練習していましたが、 そんな踊りでガミガミガミガミ!! 田豐先生にガミガミ怒られてしまいます。そりゃ、怖いわな。ジャッキーもガミガミ怒られたよなぁ。というわけで、こっちもあっさり挫折し(早すぎ!)、帰っていきます。ですが、 テンション高すぎのペイペイ一行 2人が帰ってくると既に「バカなことをしてしまった」とへこんだ父ちゃんは消息不明。結婚が決まったペイペイ姉さんは屋上でフィアンセ&岳華らのダンス友達と大騒ぎ。長女であるリリーさんは 「これでよかったのよ。秦萍、あなたは頑張って練習を続けなさい。」 と三女をなぐさめ、またまた去っていくのでした。そして、 よくやったな、うう・・・(涙、涙) 三女は頑張ったおかげで、典型的なパターンの世界へ。そもそも田豐先生が厳しくしていたのは彼女にセンスがあると思ったからで、道を間違えないよう厳しくしつけていたわけで。しかし、ちょい道を間違えたらしく、三女は年齢差のありすぎる田豐先生に恋をしてしまいます。そして、 どんな取り合わせじゃ リリーさんは場末のクラブで踊っていたのですが、色眼鏡で辛い思い。そんな時、トランペッターの男(凌雲)と知り合いフォーリンラブ。2人でショーを演じて成功!その後、父ちゃんと再会し「同じ穴のムジナ」だった2人は和解! 3人でショーを演ずるのでした。だがしかし! あんた男運ないね〜 今度のトランペッターは詐欺師ではなかったのですが 「2人で仕事して2人で家庭を作るのは無理だ。前もそうだった、だから結婚は出来ない。」 とわかったようなわからんような 「そんなもん、お前の愛情の問題だろ」 と俺の小憤怒をよそに別れることに。リリーさん、またも永遠の伴侶を手に入れられないのでした。うむむ。 「でもアタシは強く生きていくわ!」頑張れ長女! 瞬時瞬時で魅力が変わるんだなぁ こっちはいつの間にやら身重のペイペイ様。ご主人を見送って幸せ一杯です。 彼女の魅力は「さっきのシーンが落ちついた女の魅力なら、このシーンは若き妻の少女らしい可愛らしさ」とくるくるそれが変わることであり、さらにアクションも出来るとあっては非の打ち所も打つ必要も無い感じであり、そもそも(しつこいので以下自粛) このシーンの演出が当時にしては秀逸では? 外は嵐。ですが、家族はすっかり元通りの楽しいファミリー復活し、三人の唄に父ちゃんが魔術を披露して楽しい食卓に。 調べてみるとどうもこの父ちゃん役、日本では有島一郎さんが演じたみたいです。「なるほどなぁ・・・」(有島さんをよくご存知の方ならわかるはず) 嵐はもちろん、次に来る不幸を意味しており、話は更なる悲劇へと発展します。が、全部喋るともったいないので内緒。 ついに赤ちゃん誕生 関係ないけど、左の方はジャッキー 「龍拳」の奥様(歐陽莎菲)です。まだ痩せてますね。 教えることは何もない 秦萍は修行を終えたものの、大好きな先生と離れられず愛の告白。 「ボクはこの通り足が悪く、体も悪い。君は19歳だろ?年齢差もありすぎる。君にはピッタリの彼がいるじゃないか。」 と秦萍を影でサポートしてきた若者を指差します。父ちゃんのように若い娘にほだされたりすることなく、実に大人の対応をする田豐先生。美味しいなぁ。 関係ないけど、その若者。 「ドラゴンロード」で太保と一緒にジャッキーの子分やってたあいつなのが何だか可笑しい。 悲しみ苦しみを乗り越えて・・・ それぞれに心に傷を持ち、癒し、復活してきた三姉妹。 それぞれに思いの人を胸に抱きながら、愛すべき父のもとで 誘われたTVの「歌劇ショー」で大歌劇を披露するのでした・・・ 終劇 ・・・この映画が華やかな歌劇でそれこそスカーッ! と幕を閉じたとき、考えるよりも先に心から湧いた感想はこうだった、 「緊迫した今の世界がなんとバカバカしい」 これを書いてる今日にも戦争が始まるかもしれない、日本は湾岸の時のように傍観ではいられず被害を受ける可能性もある。 「あーバカバカしい」 人は戦争なぞ無くても「悲しみ、苦しみ」を嫌でも味わって生きていくものであり、それを乗り越えて楽しく生きてこその人生であり、それだけだ。 「幸せ」の入った箱には、常に「不幸せ」が一緒に入っており、その箱を開ける勇気が無ければ本当の幸せなど絶対に掴めない。人が生きるとき、当たり前のルールがそこにあるのに何故誰も国も従って生きていこうとしないのか。 この映画はそんなメッセージや深いテーマが重厚に入っているわけでもなければ、仰々しく説教垂れたりすることも一切ない。ただ、苦しんで悲しんでそれでも楽しんでケンカして笑って生きていく人々の姿が簡単に描かれているだけだ。 しかし、これだけの単純な娯楽映画にこれだけの感銘を受け、色んなところで忘れてしまっている"一番大事なもの"ってのは確実に存在すると感じたのも事実だ。 そしてこの映画が作られた時代に"大事なもの"ってのは存在したはずだ。なぜなら、「この映画にはその大事なものが計算もてらいもなく当たり前のようにあるのだから」 主旨も一貫性もバラバラ、反論も自分で思いつくよな感想ですまぬ。 ただ今回に限っては単に「ペイペイが可愛かった」でこの映画の感想は終えたくなかった。歌劇シーンに関しては、セットも衣装も(セクシーなの多いし♪)凝っているし、 ダンスもパフォームも面白く飽きさせない。 ええと冷静に、 私自身はメチャ面白かったです。 ペイペイ好きには文句無しお奨め。
上海之夜 Shanghai Blues 上海ブルース ■ いや疑問に思うことが一杯あってさ〜 この映画の感想なんかを述べながら、その辺を探っていきたいな〜 と思っております。 私のとこでは徐克作品も一杯レビューがありますが、実はそんなに徐克って方を考察してもいないし、気の利いた感想も大して書いてないのが自分自身の感想の感想だったりします。 徐克を今まであんまり大きく取り上げなかったのは何故かって言うと、 ・リメイクばっかじゃん ・作品によって出来不出来が激しい という印象があったから。 しかししかし見直してみると自分自身の「成こ家班映画金馬賞」、2002年は最佳劇情片 「ミッドナイト・エンジェル暴力の掟」徐克監督って自分で選んでやんの。あれ〜? そういえば 「皇帝密使」も好きだし、「金玉満堂」も好きだし、なんだかんだ俺評価してるじゃん! ってことで、タイミングよく休日の外をフラフラしている時に安手で見つけたのがこの作品でして、徐克の傑作!との定評を耳にしてますし、「これは・・・」と手にしてみました。 内容的に2人のヒロインが活躍するってことでカテゴリーはここで。 「君の名は」じゃん あれでしょ?数寄屋橋の下で・・・ってあれ。観たこと無いけどそれぐらい知ってますよ。調べてみたら本家は1953年製作って、おいおい徐克おまえなぁ〜・・・ と、冒頭の展開に正直がっかりしたのです。それでも映画が幕を引くときは「確かにこれは面白かった!すまぬ徐克。」 話を要約すれば 1937年、戦火のさなか空襲を免れるために橋の下にたまたま避難しあった男と女が その場で一瞬のうちに恋に落ち、 「戦争に勝って、必ず10年後にこの場所で!」 と別れて10年経ってそして・・・ だから「君の名は」じゃん なんだけど、これ以上は「君の名は」を観ないと何とも言えないので追及中止。 その後の展開を観ていけば 「ああ、徐克だな〜やっぱり。」 と思うのです。そして何だかんだクライマックスでは感動してました。 なにが徐克だと思ったのか? ■徐克は混沌好き 好んでこの先何処へ流れるのかわからない時代を取り上げた映画が多いと思いますし、またその混沌とした時代の様子とそこに生きる人々を描くことに異常なほどこだわりがあるように思います。 「男たちの挽歌3 アゲイン明日への誓い」 これは挽歌シリーズとしては評判悪いですが、個人的には好きな映画です。まぁ関連してるのは周潤發の設定がマークの過去ってことぐらいで、完全に徐克映画でしょ。ってやっぱり俺、徐克好きなんじゃん。 ともかくこちらではベトナム戦争におけるサイゴン陥落寸前のまさに超混沌の中に生きる人たちの描写がとにかく細かく、さりげないセリフにも徐克からのメッセージ、時代描写が反映されてます。 「ミッドナイト・エンジェル暴力の掟」 一見、戦争も無い時代。 んだけどその実、香港は1997年返還に向けて一体どうなってしまうのか? その辺も含めて1997年辺りに将来のビジョンを掲げたい若者達の混沌とした時代であり、徐克はこれを出来るだけ現実に忠実に甘ったるいものにすることなく描写しました。 「黄飛鴻シリーズ」 これこそ和洋折衷じゃなくて中洋折衷というかまさに孫文やら袁世凱やら勿論第一次世界大戦ってことで 一体、この先どうなってしまうのだろう? と揺れに揺れまくっていた時代の物語です。その舞台に現れた英雄だったのですから徐克にとっては格好の素材。製作者ではなく監督としてそしてシリーズとして撮り続けた気持ちが何となくわかります。 そして本作。 1937年の日中戦争から始まって、大東亜共栄圏、太平洋戦争、蒋介石、抗日戦争の一応の勝利、そして10年後の中華民国憲法の公布と嫌というほど混乱しまくっていた時代です。 だから「徐克だな。」って思ったんです。 たぶん・・・だけど、 だめだこりゃ状態、 何とかせんと死ぬぞ状態になった時こそ人は本当に人である だからこそそこに真のドラマを求め続けたのではないかな? 幼少から成長期にかけてベトナムで育っているのが影響しているのは勿論で。 ■描写細かい なるほど。 自分で書きながら自分でわかりつつあるかも。ちょい前に胡金銓作品「天下第一」のところで "徐克が胡金銓の弟子だか何だか知らないが、"英雄"の作り方は全く違う。" と書いたけれども、確かにその辺は全く違うが共通してるのは "歴史の再現にこだわっている" ってとこだわ。観点が違ってた。ただやはり歴史の取り上げ方はそりゃ全然違う。 胡金銓作品が "大地の上で歴史が踊る" といった表現をしているとすれば徐克の場合は "歴史のうねりに飲み込まれた人々" を中心に表現しているということであろう。本当にこの"人々"という点では徐克は本当に細かく、メインキャストは勿論、 後ろで働く人、ぼやく人、歩く人までに混沌さを織り交ぜていると思う。 ■それでいて 基本的に娯楽映画を撮る能力は確かに高い。 それは本人が「やりたくない」と言っていた「皇帝密使」の出来上がりを観れば、要求に関してはきちんと答えを出せる監督だってのもわかる。本作にしても、簡単に言えば「せつなくて楽しい人情喜劇」であり、もっと簡単に言えば「ちゃんと娯楽映画」だし、ベタベタした恋愛劇ではなかったし、 うーんと・・・ 時代のうねりをちゃんと描いて + 暗くならずに人情ドラマを乗せる っていうのかな。 山田洋次監督とまで言うと方向見失いそうだけどその辺に通じるものもあったと思う。ああ、回りくどくなっちゃったけどつまり 悲劇なら幾らでも作れそうな重く暗い時代を取り上げてもちゃんと娯楽映画が撮れる 「上海ブルース」は基本的に楽しい映画です。と言い切れます。 ■どこが楽しい そりゃ、あんた 張艾嘉お姉さまがあれだけ奔放にさりげなくセクシーに魅力の全てを出してくれたら、わしゃーもうそれだけで!え?だめ?そりゃそうだ。 ただ、張艾嘉は本作で女らしさ、男らしさ、気強さ、気弱さ、ユーモアさ、美しさ、可愛さ、そしてブサイクさ、 要は功夫以外は全部披露している 張艾嘉ファンはあまりにも100パー必見 どうしても俺にとっては葉倩文の冒頭の姿と立ち振る舞いからあのう・・・ 画像は「舞拳」の茅瑛(アンジェラ・マオ) これとイメージ被ったりして・・・ そんなの失礼だ!・・・えっ?どっちに? こっちもやはり個人的には 「狼 男たちの挽歌・最終章」の薄幸薄幸な彼女より本作の貧乏でも元気ハツラツ娘や 「スペクターX」でのおきゃんな彼女が好み。実は女性として一番魅力的に感じたのは 「新Mr.BOO!!鉄板焼」なんだけど。 このヒロイン2人の出会いシーンが絶妙だし、その後の漫才もドラマも面白い。 鍾鎮濤は前から知ってるがいつも俺が観るとゲスト出演ばかりだったので、 今回は主演の彼も注目してみた。 それなりに感じ良いし渋めのハンサム・・・だと思うがイマイチ印象に残らないかな。ただ彼と田青おじさんとのやり取りもこりゃまた笑えました。 成奎安が出てくるところの葉倩文を酒で酔わせて・・・ って一連は完全にコメディ。このシチュエーションなら思いっきり悲劇的展開も考えられるんだけど、ちゃんと喜劇として見せられるんだよね。 俺的ポイントはやっぱり幼き李麗珍でしょ。 すでに存在感あるしセクシーある。出番も多いし。かなり得した気分。 言うまでも無くどこが楽しいって、 そりゃ俳優さんたちが頑張って織り成す人情喜劇よ。 それでいて張艾嘉の魅力たっぷりで李麗珍の初々しさもはっきりでそりゃ楽しいわ。 ■徐克 あれがつまらなかったな〜 「ダブルチーム」徐克のハリウッド監督作品。正直言ってなんだありゃ。どうもハリウッドが才気ある香港映画人のどこに特徴を見出して引っ張ってくるってとこでお門違いっていうのかな。 本当にそうか?徐克はそんなとこが良いから評価されてきたのか? 編集がどうした?スローモーションがどうした? デニス・ロッドマンがどうした? なにやってんだハリウッド みたいな映画だが、少し理解できる部分はある。それは、徐克はどの内容でもエンターテイメントとして作れる恐らくそこに注目したのではないか。この脚本で徐克なら良い娯楽映画に仕上げられると。 申し訳ないがあれがサモハン殺陣だろが何だろが、あの程度の内容で功夫はじめとするアクションや編集技術目的で徐克を抜擢したのであれば一言、滑稽だ。徐克を呼んでくる必要がどこにあるのか。ヤン・デ・ボンでもいいじゃん。 うむ。 徐克の良いとこってのは どの素材でも娯楽に仕上げられる なのがまず挙げられるし、今どれを出せば売れるという先見の明も著しい。 ただし、私が徐克の好きなところは うねる時代を溺れて泳ぐ人間ドラマの部分であり、やはり個人的にはそこを評価したい。 私もやっぱりこれが徐克の今のとこベストになっちゃうな〜 より面白いのは「皇帝密使」、 より好きなのは「上海ブルース」かな。
火拱楓林渡 Dragon Fury Forest at Duel ■ ※中国原題はfakeさんより情報提供して頂きました。ありがとうございました。 何とも観終わって何というか 知ったこっちゃない みたいな感想が湧いてきた映画でした。実にスケールの小さい作品です。 決して「どこが悪い!」ってアラが目立つ作品でもないのですが、 逆に「どこが面白い?」って聞かれたら、一つも思い浮かばないよな映画です。 ■お話みたいな感想みたいな 冒頭はなかなか派手な音楽と共にSLが走ってきます。ゴシュゴシュ! 列車の中では1人ボケーッと佇む男・聞江龍が。 聞江龍も結構出演作のある俳優さんですが、残念ながらほとんど未見なので詳しく紹介できません。段偉倫がもっと痩せたような感じというか。逆に田鵬が太った感じというか。 駅で降りたら聞江龍は1人山を見つめてそのまま回想シーンへ。 回想の内容は 鉱山で働く若者だったが、自ら起こした事故で現場監督を過失致死させてしまう。んで、投獄。聞江龍には結婚を約束した彼女(陳莎莉)もいたのに・・・ つまり出所後、またこの鉱山の村に戻ってきたみたいです。 と、そこに李強・戴徹らチンピラ共に因縁付けられている同じく降車したばかりの女の子(徐楓)が登場。助ける助けないの前に、徐楓はさっさとチンピラバトル開始。んだけど、チンピラもなかなか弱くはなかったので、満を持して聞江龍が助けに入って打ちのめす。 お礼を言おうと思った徐楓は聞江龍を見て急に態度を激変。得意の冷酷顔に戻ってその場を立ち去ります。徐楓はシチュエーション萌え対象者として俺的に非常に高いですな。 そ、それはともかく聞江龍は元婚約者である陳莎莉のところへ。 だがしかし、陳莎莉は既に結婚しておりガキまで作っていた! へこみまくる聞江龍。そして冷徹に追い返す徐楓。どうやら彼女は陳莎莉と姉妹のようです。そう言えば、聞江龍も徐楓を知ってる風でした。 陳莎莉は結婚したものの、旦那は博打好きのヨタ者(結婚前に気づけよ)。 旦那は今日も陳莎莉とガキを無視して賭博場へ。賭博場で聞江龍が腐っていると、博打旦那を叱るためにやって来た徐楓が暴れ出す。またもそれを助ける聞江龍。 足技の達人みたいな張紀平と対決になるが聞江龍はそれより強い。 「やはり今も暴れ者か!」 と踏み込んできたのは警察(自警団?)してる楊倫だった。彼は聞江龍を目の敵にしているようだ。とりあえずこの場は捕まることなくご注意で終わる。 と、そこへ李敏郎をハーフにしたみたいな外タレが登場(今後敏郎ハーフと呼ぶ)。聞江龍に 「ウチに来ないかね?ゴーンなんてな。」 と用心棒勧誘するが、聞江龍は断る。(あんた定職無いんだからやったらいいのに・・・) ヒゲを剃ってもっかい陳莎莉のとこへ。しつこい奴だ。 聞江龍 「なんで結婚したんだ!?」 いやだからあんたが捕まったからじゃないの? 聞江龍に断られた敏郎ハーフは徐楓に 「ウチに来ないかい?てーんくるくるなんてな。」 と再び用心棒勧誘するが、徐楓も嘲笑ってこれを断る。(セリフは創作です) 逆ギレした敏郎ハーフは徐楓に刺客を差し向ける。 徐楓ピンチ! 聞江龍は徐楓に嫌われているので、覆面被って(ってか単なるマスク)助けに入る。 徐楓 「あなたは誰?」←若干ときめいている あのなー 聞江龍の顔、めちゃ濃いでーこんなん目だけでもすぐわかるわ ・・・と聞江龍本人も思ったのか、こりゃすぐバレるとばかりに素顔を晒す。 徐楓 「あ、あなたは!?聞江龍!?」 ・・・わ、わざとらしい。 ここぞとばかりに聞江龍は鉱山事件当時の言い訳をベラベラと話始めた。しかし警察の楊倫が 「話は聞いたよ。」 と突然登場する「太陽にほえろ!」のヤマさんのように現れて 「いい加減な事を言うな!」 と邪魔をする。 ここぞとばかりに聞江龍は・・・ でも鉱山の事件ってあんたの回想通りでしょ? 言い訳もクソもないと思うのだが、さらに悪者にされたのか? 別に誰かが故意に事故を仕掛けたようには全然見えなかったぞ。 襲撃もうまくいかず、苛立ちの収まらないような敏郎ハーフは次の嫌がらせを考案。 陳莎莉の旦那が「博打好き」ってことでイカサマではめようってわけだ。かなり間接的な徐楓に対する復讐だと思うそして野望の小さい奴だ。しかし旦那はイカサマを見破ってしまう。「こりゃまずい。」 ってことで(恐らく)、敏郎ハーフの側近・張紀平は旦那を殺してしまう。 ところで、 張紀平って人は「天使行動2」で李賽鳳と戦った人のような気がする。羅鋭(アレクサンダー・ルー)系統の映画にたくさん出てるようだが覚えがない・・・どれじゃ? そんな事は描写されていないが、旦那が死んで一番喜んでるのはもちろん聞江龍&陳莎莉であろう。むしろ、 「よくぞ殺してくれた!」 ってところか。 敏郎ハーフのやってることは嫌がらせどころか仲の取り持ちになっちゃったのだ。善役側が殺されてるのに喜ばしい映画なんて珍しい。 というわけで、聞江龍&陳莎莉が復縁する。 だけど、ガキはそれを許さなかった。逃げ出すガキ。 勝手に崖に落ちそうになったので、 おいおい、このガキも物語の都合上おだぶつか? と思ったが聞江龍が助け、ここに新しい家族が誕生する。 終劇 と、話的にはもう終わった気がするが、相手に嫌がらせどころか最高の幸せをもたらしてしまって敏郎ハーフは納得できない。 とうとう自ら徐楓・陳莎莉らの住まいに乗り込んだ。徐楓側の不利な戦いが続くが、これを聞江龍が助け・・・ って、この映画一体何回 聞江龍が助けてるんだ!そればっか!! さらに鉱山で働いてただけ彼がこれだけ強い理由はなんだ!? 張紀平を締め上げて、 「私が殺しました!」と自白させた。 これで実は聞江龍&陳莎莉の共謀殺人・・・なんて線は疑われなくて済むわけだ。警察の楊倫も都合よく駆けつける。 相手側の仲を取り持った上に、自分の立場が大変まずくなった敏郎ハーフが逃げ出す。何とここから 聞江龍と敏郎ハーフのハイスパート・クンフーが始まる のだから、驚きとかの前に 「早く終われ。」 ついでに 「刺馬」のオープニングBGMが使われてて何だか腹が立つ。 しかも「DragonFury」のタイトル通り、なぜか聞江龍は怒り狂ったように敏郎ハーフを蹴り飛ばし蹴り飛ばし絶命に追いやってしまう。 あんた、敏郎ハーフのおかげで復縁できたのに何を怒ってるの? ああ、哀れ敏郎ハーフ。 だって、旦那を殺したのは張紀平の独断であって殺人教唆じゃないし、そのおかげで復縁出来たんだろ。敏郎ハーフが何したって言うのさ。 そして聞江龍は汽車で来たくせに馬で何処かに1人去って行くのだった・・・ えっ?さっきの復縁はどうなった? そして徐楓は結局なに? 徐楓さんは単なる暴れ妹ってだけで終わってるんだけど。 終劇 (一部展開が前後してるのですがご勘弁を) それだけの話。 劇中、聞江龍がしつこく陳莎莉の前に顔を出すのが、こちらも男として 「スッパリ諦めろよ!」 と図々しさに腹が立つ。加えて徐楓がピンチになる度に駆けつけるのも何だかムカツク。だいたい、相手が結婚してたってわかったんだからあんたはさっさとどっか行けばと思うのに、その後もへこんで賭博場でグズグズグズグズ、陳莎莉の前でグズグズグズグズ・・・ ほんとに、もう。 それが敵の助けによって実に都合良く解決するってんだから、 世の中そんな甘くないわい! と言いたくなる。 かなり知ったこっちゃない。 悪側にしてみても、徐楓や聞江龍を攻撃したところで一体何の特があるのか? 単に「組織のメンツ」だけならあまりに動機が薄い。 アクション的には製作年度も考えて、そんなには悪くない。 ただし、物語が進むに連れて殺陣のアイデアねたが切れていった・・・ って感じがする。その証拠に最後に見せるハイスパート・クンフーは退屈。 退屈だったらそれはハイスパートとは呼びたくないが、展開は 「帰って来たドラゴン」と同じだ。 俺的ポイントは徐楓さん一点に尽きる。 だからこちらのカテゴリーに出した。 話の展開上、ほとんどのシーンで得意のムッツリ顔してるのが残念だが、 それだけに時折見せる笑顔の可愛らしさは 天照大神が扉をちょっと開けてこちらを覗いているようだ・・・ ごめん、言い過ぎた。 でも、劇中での彼女の笑顔がそれぐらいレアなのだ。まだまだ 「侠女」的初々しさ可憐さもあるし、アクションもたくさん披露してくれる。 アクションしてる時の彼女は、楊紫瓊やシンシア・ロスロック、大島由加里のように既に男より遥かに強くなってしまった女性達とは違い、 女性の骨のままで戦っている この「華奢さと強さ」のアンバランスさが妖艶な魅力を醸し出している。 画像は「侠女」より カメラ目線で睨みつけられると「こりゃ確かに怖い」のだが、 例えばそれを乗り越えて、 徐楓さんを口説くことが出来たら 徐楓さんを女らしくさせられたら 「それこそロマンだなぁ・・・」 と思う1975年から28年後のこの頃。 徐楓さん一点に絞って鑑賞出来る人にだけ薦められる作品か。 彼女がいなかったらこの作品のレビューを書くのもしんどいな。 ちなみに別題名の「Forest at Duel」の由来は単に敏郎ハーフが作戦を立てるとき何故か森の中だった ってだけ。
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