猛龍過江
The Way Of The Draon
ドラゴンへの道
■
この辺がちと恥ずかしかったんだよな。
もうそうですね、李小龍(ブルース・リー)の作品について一応レビューを書いたのはなんと十年以上前になります。その内容は今読むと稚拙だなぁって思うのですが、李小龍なら言わずもがな、活字媒体に於いてもありとあらゆる書籍が出版されており、ネットに於いても無論無数のテキストデータが溢れ返っているということで、今更私が語るようなことは残って無いと。
なので書き直しようも無かったのですが(消しゃあいいのですが)、今回はこの「ドラゴンへの道」を日曜日にのんびり観ておりまして思うことも少々あったので書いてみようかと。
※文章は「ドラゴンへの道」ガッツリ観てる人限定かと
願嘉輝(ジョセフ・クオ)渾身、傑作のOPテーマ曲。
冒頭はドラゴンボート、ですよね。
いや日本でもドラゴンボート、やってるんですよ。中国限定かなぁと勝手に思ってましたが私自身が和歌山の海で練習してるとこ見ました。んで調べたら和歌山では大会もやってるそうで。
これー、やっぱドラゴンボートのルーツは助けに行く(ボートで自殺しようとする人を止めに行ったのがはじまり)ことなので、物語と重ね合わせてそういうオープニングにしたんじゃないかしら。
そうするとこのオープニングの最後にボートが巨大な龍とぶつかるのですが、それはチャック・ノリスを表しているのか、それとも昇華した李小龍なのか・・・やっぱ李小龍でしょうけど(そこで監督 李小龍って出てくるわけだし)。
でね、
李小龍のアップからカメラひいて空港のシーンになるのですが、いつも思うんですがこっから苗可秀(ノラ・ミャオ)さんの家に着くまでカメラのピントがあんまり合ってない気がするというか、少なくともこのDVDでは合ってない。ロケだから採光に苦労したのかな?
ともかくほら、本人初監督作じゃないすか。だから宣言が早い。
李小龍のかなり伝わりにくい
「何か食べたい」
のジェスチャー。
マミー!?
空港のシーンは全てコメディになっており、李小龍と言えば寡黙なヒーロー、言い方変えればネクラ、そういったイメージがあってこれは他主演作の影響大ですが、実際の俺は違うぞと。
この唐龍という役柄は素の李小龍に一番近いのではないでしょうか。
思い返すと「死亡的遊戯」(1978年の「死亡遊戯」ではなく李小龍が撮ろうとしていた作品)でも彼は陽気でフランクなキャラクターでしたし、これ一点考えるだけでも結構面白いんですね。
つまり、成龍(ジャッキー・チェン)と李小龍は陰と陽で正反対、これが簡単なイメージですがもし李小龍が他界しなければ、彼は徐々に明るい李小龍というキャラクターを確立していったのではないか?とも思うのです。
ifの話は所詮妄想でしかありませんが、もし「死亡的遊戯」が完成していればそれは功夫映画としてそして彼自身が構築していった截拳道を表現する映画としてこれ以上はないといった作品になる可能性が非常に高かっただけに、截拳道を表現しきってしまった李小龍は次に何を目指したのだろう?
と考えると武術家としての道を進んだのか、役者としての道を進んだのか、もし役者としての道を進んだのならば・・・というところで、ともすればジャッキーと似た道を歩んだ・・・可能性も・・・無いか・・・
ま、無いけども何れは李小龍はノーアクション、ノー功夫の作品にシフトしたのだろうと考えますね。
それと「ロングストリート」(李小龍が準レギュラーで出演したアメリカのTVシリーズ。結構面白いですよ。)観てても思うのですが、李小龍って実際かなりお喋り好きな人だったんじゃないかな?って思うんですよ。倉田保昭さんとの出会いもそんな風にありますし。だから、李小龍主演でトーク満載の映画ってのも出てきたかもしれないですね。
スープ飲みまくり。この後トイレ行きまくり。
実際渡米した時も苦労されたんでしょうね。その辺が反映されていると思います。
何とも言えない間が面白い二人の出会い。
まずパッとビックリするのが、苗可秀さんの髪型。
「ドラゴン怒りの鉄拳」と全く違うカジュアルヘアスタイル。まきまき〜
倉田保昭さんがNHKBSで語っていたことを思い出す。それは、
「撮影を見学しに行ったら猥談で盛り上がってた」
ってなもので、李小龍が
「苗可秀のおっぱいがおっぱいが・・・」
と興奮してた・・・中学生かよ。
ってなわけで実は本作、
前半は李小龍自身の功夫アクションをわざと抑えてあるのですが、その分は苗可秀さん特集で楽しんで下さい(ついでにローマ観光)な作品であったりします。
んで、ところで男性と女性は映画の見方が違うと。
ってのがあって、それは男性は映画全体を観てるし、その間女性は
この役者さん歯並びが悪いわねとか、このロケ地は綺麗ねとかディテールから入ってることが多いんですね。
ディテールを観ていくのは男性だと二回目以降になるんです。
女性は一回目からいきなりその視点で観てる。
本作は私ももう何回も何回も観てますから完全にディテールしか観てないのですが、まぁその辺から個人的には監督李小龍が望んだと思われる本作での苗可秀さんのキャラクターは抜群で、「ドラゴン怒りの鉄拳」では清純で古風なヒロインを演じていた苗可秀だが本作は正反対に明朗快活でカジュアルなお姉ちゃん、はっきり言って本作の苗可秀さん大好きです。
田舎者の登場に冒頭からウンザリ気味の苗可秀さん。
「苗可秀のおっぱいがおっぱいが・・・」
・・・・・・・・・確かに。
苗可秀さんに限らず昔の香港女優さんははっきりとボディラインのわかる衣装を着ることが非常に少ないだけに、本作の苗可秀さんファッションは価値が高い。そして監督・李小龍として目を付けたのは苗可秀のスタイルの良さ、なんですね。もう他の監督、作品、誰も目を付けてないんじゃないかな?李小龍だけっすよ、彼女のこの辺の素晴らしさにちゃんと気づいてスクリーンに反映させてるのは。
何となく間が悪い二人。
ペンダントが胸に沈んでるもんなぁ・・・
余りにも間が悪いので遂に自ら強者アピールする李小龍。
・・・・・。
ますますシラける苗可秀さん。
李小龍が真の実力を見せるまでの苗可秀さんはとにかくシラけていく一方で・・・まぁ後で書きますが。
ほんで李小龍さんはジャッキーさんと違って、派手目の女性が好きだったんじゃないかなぁ・・・虚虚実実考えてもそんな気がする。
この後にオッパイを披露するこの白人女性さんですが実はちゃんとでっかく、
イタリアンビューティとして最初に紹介されたりなんかして。
大筋とは全く関係ないし、出番は正味二分ぐらいですけど。
か、完全に・・・
李小龍が真の実力を・・・トイレ行ってて見せられなかったこのシーンでは苗可秀さん完全にシラけきって、白けきって、
顔真っ白表情が無くなっています(笑
素敵なお尻
い、いやね、さっきからなんかスケベ中年の発言ばっかりしてますが、そうではなくて・・・い、いやそうでして、このシーンはフレームに苗可秀さんがお尻向けて入ってくるんですね。普通はフレーム横から入って来そうなもんですがお尻から。これなんかほぼ間違い無く李小龍監督が、
「ケツから入れ。ケツから。」
って言ったと思うんです。ダイレクトに言ったか知りませんが。
この辺はスケベ中年の年齢に入っていた李小龍監督も
「素敵なお尻・・・」
と思ったからでありまして、
この笑顔!
李小龍監督のこの真から幸せそうな笑顔!
本当に苗可秀さんを魅力的に撮ってるなぁと感じるわけです。
この筋肉!
前半に抜群のスタイルを披露した苗可秀さんに代わって、今度は監督本人が抜群のスタイルを披露、このわき腹の筋肉が凄い!
もう世界一着やせしているキン肉マン!超鍛錬の賜物。
練習の後にエッチな画を発見する李小龍さん。
李小龍 「うおー!いかんいかん!!」
意外と見過ごされてるこのシーン。
頭の中は苗可秀さんのことでいっぱいおっぱいの唐龍青年、なんてったってこの辺では既に苗可秀さんは
うふふ
こんなラブラブ状態で前半のシラけから一転してますからね。
これ不思議なのは下の競技やってたとこも石垣でビッシリ。
平らな部分が無い!この上に板とか敷いてやってたのかなぁ・・・残酷な競技を。
まぁ何か猥談ばっかり話しましたけど、一点真面目な話をするならばやっぱここですよ、黄宗迅(ウォン・シンシン)叔父さんの裏切り。
これー前半からずーーっと伏線は張ってあるんですけど、それでもやっぱり唐突に感じたものでどうして私がこの裏切りを唐突に感じたのかって言われたらやっぱそれは・・・渡米してないからですよ。
「香港に帰って妻や子供と幸せに暮らしたい!」
って、これはそのまま李小龍自身の言葉とも取れるわけで、黄宗迅叔父さんの裏切りってのはある意味、実際に渡米して苦しい生活を強いられた李小龍自身も一歩間違えば三歩間違えば・・・ってことなんですね。
李小龍の人生はこの「ドラゴンへの道」そのもので、香港から何も知らずにアメリカに飛んだ李小龍はそこで様々な経験をして失意の内に香港へ戻り、本当のドラゴンになった。まさにドラゴンへの道なのですがその裏腹にもし人生まかり間違えば黄宗迅叔父のような人生になったかもしれない・・・そうなってしまうのが非常に怖かった、そうなってしまわないように戦っていたんだってことを李小龍は表現したかったんじゃないでしょうか。
ま、というわけで
敢えてメインのバトルシーンに一切触れないで書いてみました。
本当はその辺が魅力の全てである作品なので、ええと・・・観てください。
■CAST&STAFF |
監督・脚本・製作 |
李小龍(ブルース・リー) |
出演 |
李小龍(ブルース・リー) |
苗可秀(ノラ・ミャオ) |
チャック・ノリス |
ボブ・ウォール |
黄仁植(ウォン・イン・シク) |
劉永(トニー・リュウ) |
小麒麟(ユニコーン・チャン) |
金帝(チィン・ティ) |
魏平澳(ウェイ・ピンアウ) |
黄宗迅(ウォン・シンシン) |
マリサ・ロンゴ |
劉榮 |
陳福慶 |
金金 |
胡美 |
陳炳熾 |
武術指導 |
李小龍(ブルース・リー) |
小麒麟(ユニコーン・チャン) |
音楽 |
願嘉輝(ジョセフ・クオ) |
製作総指揮 |
鄒文懐(レイモンド・チョウ) |
制作年度 |
1972 |
唐山截拳道
Legend of Bruce Lee
■
これが最初の何宗道(ホ・チェンタオ)さんが偽李小龍(ブルース・リー)と化した作品だったかな?
偽李小龍は何人も存在し、2012年となった今となっても存在はするがそうなるに至った経緯は人様々だ。
呂小龍(ブルース・リ)はなりたくてなったんだろうし、巨龍(ドラゴン・リー)は訳もわからずやらされたと言われている。李截(ジェイソン・スコット・リー)は勿論、李小龍の奥様リンダさん公認の下に李小龍を演じた。ちなみに石天龍は知らん。
そしてなんとも李小龍となった動機に小市民らしい哀愁を感じさせられるのが何宗道である。
これも彼のインタビューや撮影裏話、伝聞からの推察になってしまうがどうだろう?
もしあなたがイッパシの役者を目指していて、容姿が李小龍っぽいから
「主演やらせるし李小龍やってくれ」
って頼まれたら?
これを足掛かりにと考えるが当然であろう。
売れるのはほんの一握りである役者の世界で例えそれがどんな役であろうと千載一遇のチャンスである。
結果、何宗道は世界中の功夫フリークの間で知られる存在となった。フリークであればあるほど彼が単なるエピゴーネンではないというのは理解するに至るが、やはり数々の有名なトンデモ李小龍映画の主演であるイメージは避けられない。
現在、彼は台湾で整復師として生計を立てている。
かつての活躍にそして未だに主演作品がソフト化され、世界中で発売されていることに本人は何を想いはべらせながら、静かに暮らしているのだろうか?
ええと、本作は一応李小龍伝記として頑張ってみた作品です。
■
物語は少年時代から。
いやあのな・・・
出だしから功夫学んでる李小龍少年。
って、葛小寶が邵漢生先生のつもりか・・・怒られるわ!
しかもこの先生は大したこと無いという演出たっぷり
・・・なおさら怒られるわ!
なので、全然弱い李小龍少年はガキ大将にも勝てません。
だからあのな・・・
なので寺のジジイに習おう・・・
もしかしてこれが葉問(イップ・マン)先生とか言うんじゃないだろうな・・・
・・・たぶん言うんだろうな。詠春拳出てきてるし。
いつも一緒
左はたぶん小麒麟(ユニコーン・チェン)のつもりなんだろう。
劇中の最初から最後までほとんど一緒にいるよな。
少年時代に子役やってたとかも無いし、ご両親も全く出てきません。
成長した李小龍・・・いや何宗道・・・いや何宗道演じる李小龍・・・
ややこしいなぁ(以下、李小龍にしておきます)
野外練習してた空手部練習生達に一方的にケンカを売ったりなんかして。
・・・ああ、まぁ李小龍はケンカばっかしてたって言うし。
ま、そんなことはどうでもいい実は今回のなるこうの目的はただ一つ、
謝玲玲(ツェー・リンリン)さん。
謝玲玲さんは王羽(ジミー・ウォング)「ドラゴン修行房」のヒロインで、というかそれ以外の作品で観た事が無かったので今回が二作目。
ま、あのーはっきり言って好きだ。
どうやら出演作品は少ないみたいなのだが、「ドラゴン修行房」が
「クン・パオ!燃えよ鉄拳」となったという超ひょんなことから一応ハリウッドデビューしていることに・・・なる?
李小龍の幼馴染で恋人という設定
楽しくデートしてたらチンピラに絡まれました・・・いやこれ、
先の空手部が頼んだのかな?それだったら元々李小龍が悪いで。
しかも、
うそぉん!!
謝玲玲 「アタシの彼氏、よわっ!」
李小龍 「覚えてろよ!」
うわーっ!李小龍のイメージが・・・本人に怒られるで。
弱くてもいいので
寛容な謝玲玲さん。
謝玲玲 「とにかく就職してください」
って言ったかどうだか知りませんが、もっと強くなってやると功夫修行一本槍の李小龍さんにとうとう、
だめだこりゃ
そんな謝玲玲さんの気持ちも知らずにアメリカ行って、なんかのチャンピオンになりました。なので、早速道場開きました。
偽
リンダさんも登場します。この口説き方は
「ドラゴン/ブルース・リー物語」とほぼ同じだったな。
そしてこれが有名なコイン取りのエピソード。
「ブルース・リー物語」にも出てきます。
後は「ブルース・リー物語」だったらモトワキにあたるライバルの敵は山茅(サン・マオ)さんがやってます。
かの有名な
そしてこれが、恐らく私の世代では非常に有名な一シーンである。
何の本だっけな?とにかく本作を紹介しているスナップショットはいつもこれって印象で、もういよいよ怖いことに25年ぐらい前からこのショットだけは知っていました。ああこれかぁ・・・
左に写ってるのは魏平澳(ウェイ・ピンアウ)だったのね・・・って、
魏平澳が鄒文懐(レイモンド・チョウ)に扮しているのか!
さぁ映画主演だ!!
いやだから記事よく見たらこれは「新死亡遊戯/七人のカンフー」かよ!
もしこれ当時、本作の後に「新死亡遊戯/七人のカンフー」が本当に公開予定だったんだとしたら、なかなか斬新な宣伝ですな!
「ドラゴンへの道」撮影中ですな!
ラストは龍飛(ロン・フェイ)と対決ですな!
そして逝去されました。
終劇
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・・・なんかあれだな。
本作があったからこそ「ブルース・リー物語」が生まれたような気がするな。
呉思遠(ウー・セイエン)は当然、李小龍本人について詳しかっただろうし
「ちょと待てよ」
と本作を観たらそう思っただろうなってことは想像できる。
んなわけで、伝記ものとしてはかなりリサーチ不足というかなんちゅうか。
ただ、個人的にはもっと酷い出来を予想していたので結構楽しめました。
なんかこれだと功夫好きが講じて頑張ってたらあれよあれよとスターになりました・・・なんか、あっさ
って感じだけど、浅いはつまり軽いで青春映画のように爽やかな音楽に乗せて陰惨なドラマも無く、ポップに頑張る何宗道の姿は清々しくもありました。
後半であっさり謝玲玲にフラレるあたりもまだまだ小市民っぽさ満々で素敵。
「新死亡遊戯/七人のカンフー」なんかよりずっと面白いです。
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■CAST&STAFF |
監督 |
Ling Ping |
出演 |
何宗道(ホ・チェンタオ) |
謝玲玲 |
龍飛(ロン・フェイ) |
山茅(サン・マオ) |
魏平澳(ウェイ・ピンアウ) |
葛小寶 |
歐陽鐘 |
葉小儀 |
戴良 |
胡秋萍 |
鐵人 |
林仲 |
葛長生 |
権永文 |
王國輝 |
制作年度 |
1976 |
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