大太監
The Traitorous
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これは悪役時代のサモハン出演作品で、当時は所属のゴールデンハーベスト作品が当然多い中では中々異色の作品である。
元々、主演の黄家達(カーター・ウォン)や張翼(チャン・イー)はゴールデンハーベスト所属時代もあっただけにサモハンと被る所は多いのだが、とは言っても台湾色の強いこの映画は不思議な感覚がある。
胡金銓(キン・フー)作品大ヒット作の1967年製作「残酷ドラゴン/血斗竜門の宿」にあやかってか、題材は同じ明時代の魏忠賢が指揮した"東廠"を扱っている。
■流れ
林小虎君は羊飼い。
巻き割りしてる父さんの關洪。
わらじか籠を作ってる爺さん謝興。
洗濯してます陳佩玲。
そこに張翼率いる東廠軍が馬で・・・なかなか来ねぇ溜めすぎ。
どうやらスタッフロールが終わるまで来ないようです。
史実通りに魏忠賢に扮する張翼は反分子の一掃にやって来る。
平和に暮らしていた林小虎ら家族だったがこれと戦うことになり、
父ちゃん爺ちゃんも奮戦するのだが張翼が強いのは勿論、手下のサモハンと黄飛龍も十二分に強く、な、な、なんと今回のサモハンは蟷螂拳使いである!
サモハンの蟷螂拳って見たことないなぁ!構えが変な気がしますが。
奮戦空しくも幼い林小虎を残して(隠れてたので)全滅。
母さん陳佩玲はサモハンに目を潰されて殺されるという何とも衝撃の幕開けである。
程なく反対勢力を討ち滅ぼした張翼は、尭天舜徳至聖至神と自らを名乗り、一時代を築く。
突然家族を失った幼き林小虎。
こういう時に頼れるのは・・・そう、殺し屋養成所"少林寺"だ!
李振和尚に早速弟子入りすると、厳しい修行を経てスクスク成長。
幼き林小虎は勇敢な青年・黄家達(カーター・ウォン)に。
郭南宏(ジョセフ・クオ)監督が大好きな銅人の戯れ修行もそこそこに(本作の監督は宋廷美)、仇討ち出発だ!
一方で、張翼は絶大な権力を奪取。
手下のサモハンは更に東廠軍を強固なものにするため、少林羅漢陣ならぬ東廠軍を使ったサモハン羅漢陣(笑 みたいなのを完成させていた。サモハンの太鼓で攻めろ!とか守れ!とかそういう陣を作るんです。太鼓叩いてるサモハンが実に楽しそう。
張翼の義娘である上官靈鳳(シャンカン・リンフォン)がこのサモハン羅漢陣に挑戦するも、捕まる感じで張翼は一層強くなっていく我が軍を見てほくそ笑む。
それにしてもここのシーン、サモハンvs上官靈鳳がギリギリニアミスで実現してないのが実に惜しい。観たかったのに。
町の食堂でも横暴を繰り返していた東廠軍。
これに見兼ねて東廠軍をフルボッコにしたのは黄家達だった。
張翼 「なにぃ!?」
まだこの俺に反発する奴がいようとは!?
とりあえず調査に行ったのは上官靈鳳。
黄家達と軽く手合わせをしたが、待ち伏せた東廠軍を見て黄家達は馬で逃走。
夜半に今度はもう1人の手下・黄飛龍が反対勢力の疑いある屋敷を強襲!
だが逆にここに待ち受けていたのは黄家達だった。
直接黄家達の父・關洪を殺したのはこいつだ!
強力な虎拳で黄飛龍をフルボッコ!
黄飛龍は卑怯な隠し武器を持っていたが、その昔に父が殺られる時にそれを見ていたので難なくそれを交わすと、黄飛龍にトドメを刺して仇討ちを果たす。
張翼 「なになにぃ!?」
流石に片腕の側近が殺されたということで今度はマジガチ。
サモハン、上官靈鳳の2ショット
マジガチで黄家達を探すサモハン、上官靈鳳。
・・・ロケーションの都合もあり、都合というかサモハン羅漢陣をロケする広い場所が必要だったこともあり、野原で決闘する黄家達とサモハン羅漢陣!
それにしても今回のサモハンは大勢東廠軍引き連れて随分と偉そうである。上のサモハン見てもらえばわかりますが「残酷ドラゴン/血斗竜門の宿」での悪役宦官・白鷹(パイ・イン)まんまの衣装。
サモハン太鼓によって攻撃を繰り出し、防御も堅固なこの陣に苦戦する黄家達であったが、こっそりと上官靈鳳が別の太鼓を取り出してチャカポコ叩き出した。
「おい誰や?叩いてるの?」
あれ?おや?
せっかく気持ちよく太鼓叩いてたサモハンだったが、どこかで誰かが別の太鼓を叩いてるので、わけわかめ状態。
その内にダブル太鼓なので羅漢陣も攻めるか守るかどっちやねん状態になって混乱。
この混乱に乗じて一旦黄家達は逃走。
やはり上官靈鳳は張翼を憎む反勢力分子の1人であった。
サモハン太鼓が大失敗したことで張翼は上官靈鳳が裏切り者であることを見抜いたが、サクッと現れた黄家達に助けられ一緒に逃走。
本当に手際の良い黄家達と、手際の悪い張翼。
来るべき決戦に備えて修行してるサモハン。
備えあれば憂いなし・・・・でもなかった。
ここに遂に黄家達が現れ唐突決戦へ!
流石にサモハン蟷螂拳は強かったのだが、黄家達の虎拳も強力で気づいたらボコボコにされてるサモハン。
それにしても数年後に、
悪将軍・サモハン vs 若者・黄家達
という図式が「デブゴン太閤記」で、
悪皇帝・黄家達 vs 若者・サモハン
と完全に入れ替わってしまうところなんか何とも笑える。
目を潰されて殺された母と同じくサモハンの目を潰してやっと仇討ちを果たす。
残りは張翼1人。
上官靈鳳と協力してぶっ殺せ!
終劇
■
めっちゃ簡単に言うがなかなか面白かった。
同じ"東廠"を題材にした「残酷ドラゴン/血斗竜門の宿」とは違い、死ぬほどシンプルな物語になっているが、テンポもよくアクションもポンポン飛び出すので飽きることが無い。相変わらず皇帝とか言いながらあっさり1人で現れる張翼(君は1人も部下のいない皇帝かと)など、低予算ならではのしょぼさは正直目に付くが、なかなか良い作品である。
この作品で不思議なのは武術指導をサモハンが担当していないといった点で、当時のサモハン出演作品ならほとんどが自身で担当しているのが、やはり本作は客演で呼ばれたんだろうなと思われる。恐らくではあるが胡金銓作品に携わってきたキャリアとその胡金銓作品「忠烈圖」で見せたサモハンの悪役ぶりか買われてのことだったのではなかろうか。
しかし、代わって武術指導を担当した陳全、葛炮の殺陣はとてもキレが良く、大柄なサモハンがコチャコチャと素早い蟷螂拳を繰り出してくるのはなかなか迫力がある。悪役時代のサモハンとしても憎々しげに悪役を演じるサマは変な話、悪役時代の代表作と言っても良いかもしんない。出番もたくさんあるしね。ただ、繰り返すが上官靈鳳と対戦が無かったのは残念だなぁ・・・
うん。これは結構オススメの作品ですよ。
江生(ジャン・シェン)は羅漢陣の1人でたぶん彼という人がいたがようわからず。サモハンが五毒を操るというコラボも夢がありますね。
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