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冷血十三鷹
The Avenging Eagle


武侠片の傑作と言われるもので観ていないものもまだまだあるのだが、これは個人的に「流星・胡蝶・劍」と並んでの傑作ですな、これは。強いてどっちかを選ぶなら私はこっち。

流れ

鷹爪ばいーん
"冷血十三鷹"という組織は谷峰(クー・フェン)が孤児を集めてしごきにしごき、そこから選び抜かれた13人の殺し屋がメインとなっているごっつ悪い組織。仕事なら何でもやる。
そんなまさに冷血な組織の在り方に疑問を感じていたメンバーの1人、狄龍(ティ・ロン)は組織から逃げ出していた。

逃げ疲れて倒れたところを、謎の男・傳聲(アレクサンダー・フー・シェン)に助けてもらう。助けてもらうが、他人が信用できない狄龍は傳聲を殴りつけると馬を奪って立ち去る。
その後、十三鷹メンバーの2人に居場所を見つけられたが、追ってきた傳聲と一緒にこれを倒し、2人は仲間となる。

旅を続ける2人。
狄龍が逃げ出して経緯も謎であるが、一緒に旅を続ける傳聲の思惑もまた謎。

果たして敵か味方か?
だんだんと打ち解けていく2人、狄龍は十三鷹の誕生から自分が逃げることになった経緯までを話し出す。

十三鷹の残りメンバーは狄龍を許さない。
唐炎燦(トン・インチャン)が、狄威(ディック・ウェイ)が、高雄(エディ・コー)がと次々に襲い掛かってくるが、これを2人で蹴散らしながら物語の真相へと近づいていった。

客棧で最後の残りメンバーである王龍威らを騙し討ちして遂には狄龍以外の十三鷹は全て滅んだ。


息を呑むクライマックス!
2人は意を決して谷峰の屋敷に乗り込んでいくのだが・・・


終劇




なんか勿体無い感じもするので、お話は大まかなところで留めておきます。狄龍の経緯と傳聲の真の目的は実際にご覧になって確かめてみてください。

狄龍一本の話だと余りにもシンプルすぎるとは思うのだが傳聲の謎が絡ませてあるので、話も程よくスリリングで面白く、ダブル主演ということで絡み合う2人の友情・憎しみの演技がもたらす物語が実にハードボイルド。これぞまさに中華ハードボイルド。
この傳聲という男、どの映画を見てもジャッキーを彷彿とさせるような陽性の明るさと親しみやすさ、そして格好良さが備わっていて、
「スターってのは一目で違うとわかるもんだなぁ」
としみじみ思っていたのだが、この映画では従来の彼の持ち味を殺すことなく、
迫真の表情!
さらに今言った中華ハードボイルドな渋味まで漂わせており、その哀しき英雄像が格好良いことこの上ない。持ち味を殺すことなく新境地を拓いたって感じ。

またこの映画では全編に渡って狄龍は

三節棍を持って戦っており、その三節棍捌きは劉三兄弟もびっくりの上手さでどのバトルシーンを見ても舌を巻く。それにしても全編に渡って三節棍だけを使い続ける作品なんて、これ一本しか知らないなぁ。
とにかくその次から次に始まるバトルシーンが素晴らしく、武侠片バトルというものをたっぷりと堪能出来る。

狄龍の代表作と言えばまず「男たちの挽歌」が出てくるだろうけども、数多ある彼の主演作の中でこの映画も代表作として選ばれるべき作品である。

またこの映画は、

どのアップを切り出しても素晴らしく画になる硬派の二枚目狄龍と軟派の二枚目傳聲がダブル主演ということで、女性でも楽しめるのではなかろうか。是非、ご覧になって頂き2人の格好良さにシビレて頂きたいところである。

■CAST&STAFF
監督 孫仲(サン・チュン)
出演 狄龍(ティ・ロン)
傳聲(アレクサンダー・フー・シェン)
谷峰(クー・フェン)
王龍威
唐炎燦(トン・インチャン)
狄威(ディック・ウェイ)
クレジットは屠龍
林輝煌
黄培基
高雄(エディ・コー)
陸劍明
楊志卿
歐陽莎菲
尤翠玲
陳龍
張國華
張有
小四
元兵
郭惠冰
施思(シー・ズー)
于榮
唐佳(タン・チァ)
武術指導 唐佳(タン・チァ)
黄培基
脚本 倪匡(イ・クオン)
音楽 陳勳奇(フランキー・チェン)
クレジットは陳永U
撮影 藍乃才(ラム・ナイチョイ)
製作 邵逸夫(ランラン・ショウ)
方逸華(モナ・フォン)
制作年度 1978


蟷螂
Shaolin Mantis
激突!螳螂拳


壮絶バトルが連続しまくるこの作品いってみようか。
なんちゅうかこの作品すんげーんだよ。
なにがすんげーってなんかすんげーんだよ。
かなり劉家良の武道哲学からは離れてる気がするんだけどすんげーんだよ。

流れ


このオープニングの相手をするのが、錢月笙(チェン・ユーサン)ともう1人が小候じゃないかと思うがはっきり確認できず。

姜大衛(デビッド・チャン)は朝廷の上官を父に持つ諜報部員にして、御前試合でも李海生(リー・ハイサン)、劉家輝(リュー・チャーフィ)という猛者どもをぶっ倒して皇帝・韋弘を喜ばせる功夫の達人だ。

ゲスト出演というより単なるやられ役の劉家輝

ところでパッケージデザインが酷いぞ!
デカデカと劉家輝の顔が載ってるが出番はここだけ、しかもあっさり死んでるじゃねーか。幾ら「キル・ビル」あやかりだとは言え初代亜洲影帝をバカにすんな。

劉家榮(リュー・チャーヨン)家が
「反政府組織ではないか?」
ということで、姜大衛は家庭教師に扮してこの家に潜り込む。
ところが、自分が教えることになった劉家榮の娘・黄杏秀(セシリア・ウォン)と恋に落ちてしまい、姜大衛は仕事よりも恋を選ぶ感じに。
一気に結婚へと推し進めたい気分満載というか推し進めたのだが、劉家榮は彼が朝廷の犬であることを見抜いてしまう。
「両親に結婚報告してきます!」
そう言ってこの屋敷から出ようとする姜大衛であったが、これを許すはずも無い劉家榮。屈強な劉家榮の息子たちが彼に襲い掛かる。

張午郎(チェン・ウーロン)、唐偉成(ウィルソン・タン)、徐少強(ツイ・シャオチャン)、そして黄杏秀の姉である李麗麗(リリー・リー)との連続バトルを黄杏秀と協力して打ち破っていく姜大衛であったが、ラストの劉家榮が強すぎ。
得意のキセルを武器にして姜大衛&黄杏秀でも歯が立たない。
遂にはこの戦闘の犠牲者として黄杏秀が死んでしまう。劉家榮は娘を殺してしまったのだ。
何とかして1人逃げ出した姜大衛ではあるが、そもそも恋人の黄杏秀が死んでしまってはどうにもならない。怒りに燃え復讐を誓う。

逃げ出した先で1匹のカマキリを見つけた姜大衛。
このカマキリの動きをヒントに新たな拳法が作れるのではないかということで孤独に猛特訓開始。

ついには必殺の蟷螂拳を編み出す。


劉家榮家に再度乗り込んだ姜大衛。
すでにこの前の戦いである程度の勝利は得ている気もするのだが、また張午郎、徐少強、唐偉成と戦い、今度は彼らを死に追いやる。

さらにラストバトル!
必殺の新技・蟷螂拳を駆使して最強の敵・劉家榮に立ち向かう!

終劇




というわけで、物語としてはかなり「?」が付く内容に私は感じる。
朝廷にしてみれば反政府組織が勝手に潰れてくれてめでたしめでたしって感じだし、恋人死ぬし、劉家榮はじめ彼の息子たちも反政府の人間だというだけで別に具体的に悪いこと何もしてへんし、確かに彼らは黄杏秀を死に追いやったかもしんないがそれはかなり間接的なことで直接的には劉家榮の過失で死んだんだし、何も終盤に来て姜大衛に皆殺しにされる必要は無い感じがしてならない。劉家榮自身もはっきり言ってそう。もっと細かく言えば最初の御前試合も別に殺さないでおいても何ら問題はない。犠牲者はもっと最小限に止められたはずだ。
ここに来て劉家良の武道哲学はどこに行ってしまったんだー?というのが本作の物語に対する主な感想である。
※本作の経緯、及び劉家良のこの頃についてはfake様HP「香港電影的日常」。

しかしながら本作はその暗い展開を吹っ飛ばすものがある。勿論それは功夫!
まずオープニングから劉家輝との戦いまでのツカミアクションが素晴らしいし、特に屋敷を脱出することになってからは蟷螂拳の特訓も含めて凄い功夫アクションのオンパレード!これぞ功夫パレード!おなかいっぱい!
特にどれが凄いって言われてもみんなすごいんだよね!
みんなすごい!功夫万歳!


黄杏秀もなかなかに可愛かったのだが、この後「少林皇帝拳」にゲスト出演した惠英紅(ベティ・ウェイ)の登場によって彼女の劉家良作品出演は無くなった感がありますなぁ・・・

ともかく功夫迷ならそのストーリーに躊躇することなく手を出しておくべき作品である。

■CAST&STAFF
監督 劉家良(リュー・チャーリャン)
出演 姜大衛(デビッド・チャン)
黄杏秀(セシリア・ウォン)
劉家榮(リュー・チャーヨン)
李麗麗(リリー・リー)
徐少強(ツイ・シャオチャン)
唐偉成(ウィルソン・タン)
張午郎(チェン・ウーロン)
韋弘
李海生(リー・ハイサン)
劉家輝(リュー・チャーフィ)
井E
王清河
夏萍
錢月笙(チェン・ユーサン)
武術指導 劉家良(リュー・チャーリャン)
唐偉成(ウィルソン・タン)
脚本 司徒安
音楽 陳勳奇(フランキー・チェン)
クレジットは陳永U
製作 邵仁枚(ランミー・ショウ)
方逸華(モナ・フォン)
制作年度 1978


武館
Martial Club
ワンス・アポン・ア・タイム英雄少林拳 武館激闘


これもまたどうなんでしょね、お話的には「ワンス・アポン・ア・タイム英雄少林拳」で一人前の功夫使いに黄飛鴻が成長するのですが、その後の話みたいな感じ。既に強し。
というわけで主人公はまたも黄飛鴻だったりします。

流れ


冒頭に劉家良(リュー・チャーリャン)監督本人が出てきて、獅子舞合戦とは何か?を実演しながら説明するという一風変わったオープニング。

でオープニングの人間ゴールデンポイントみたいなもんと、「陸阿采與黄飛鴻」 での"炮"大会をミックスさせたものが「ドラゴンロード」のそのゴールデンポイントみたいだなぁと思ってみたり。
唐偉成(ウィルソン・タン)率いる武館は獅子舞合戦で陸師父が経営する武館とモメモメ。

これを谷峰(クー・フェン)扮する黄麒英が会食を成して三者面談して和解に持ち込むが、劉家輝(リュー・チャーフィ)扮する黄飛鴻や唐偉成とこの麥コ羅ら若い者は血の気が多くて本当にもう・・・

ことあるごとに功夫の腕を競い合う黄飛鴻と麥コ羅。
しかしもって

(画像は「御猫三戯錦毛鼠」)
こういう奴らとは違って友達は友達だったりする。さすが黄飛鴻、人間が出来てますな。

和解はしたものの怨恨は消えてない感じで物語は続く。

麥コ羅の妹・惠英紅(ベティ・ウェイ)の後押しや黄飛鴻の弟弟子・小候によって、2人は強い相手求めて街をフラフラ。ほんでもって師父たちに怒られたりするのだが。

というところで街に風来坊みたいな王龍威(ワン・ロンウェイ)が現れる。彼がなかなか出来る奴!と惠英紅&小候が見るとさっそく黄飛鴻と麥コ羅が腕試ししようと挑戦。
しかしやっぱり王龍威は滅茶苦茶強くて黄飛鴻が目を離した隙に麥コ羅は王龍威が出した虎拳を喰らって重傷。
「あんたがやったのね!」
虎拳使うの大好きなのはそりゃ黄飛鴻。
現場を見てない惠英紅、しかも黄飛鴻と自分の兄が友達だということを知らないのでバトルが始まる。
可愛いポーズ
腕をくりんと丸めたポーズが非常に可愛い惠英紅だったが、やっぱ強し。さしもの黄飛鴻も本気出さないと負けちゃうぞと。

一方の王龍威はライバル武館・陸師父の縁故の中でここを訪ねる。
麥コ羅に犯人がやはり王龍威だということを聞いて、

武館に2人で乗り込んでバトル!
・・・というかそもそもケンカ吹っかけたのは麥コ羅、黄飛鴻の方なんですけどね。
というわけで、このバトルも黄麒英、唐偉成師父が仲裁。

仲裁したが良いが腹の虫が治まらないのは陸師父。
自分が主催する京劇団の公演に黄飛鴻、惠英紅、小候らを招待すると、その劇場を締め切って彼らを閉じ込め、大勢で襲い掛かるという卑怯な手を使う。

絶体絶命のピンチをすんででかわすアクションが面白いこのシーン。惠英紅さんの三つ網姿がプリティ。
陸師父はこの襲撃に切り札の王龍威を投入しようとしたが、
「大勢で強襲なんて卑怯なことはしない」
とこれを拒んで、今回なかなか格好良い王龍威。
結局は警察が介入して何もかもがうやむやに。

ただひたすらに武館の同士の因縁だけが深まり、
「これではいかん!」
と思っていた黄飛鴻。
1人、陸師父の武館に乗り込むと王龍威とのガチンコ対決を申し出る。この戦いで一切のわだかまりを収めようと。


ラストバトル!
劉家良映画史上屈指のバトルが始まる!

終劇




とにかく見所はその劉家輝vs王龍威のラストバトルで、2人は戦いすぎなぐらい色んな作品で拳を交えているが、文句無しこれが彼らのベストバウト。やたら対決が多い2人ってのは古くは王羽(ジミー・ウォング)vs龍飛(ロン・フェイ)、いったい何本の映画で対決してるんだろうこいつら。この2人の対戦歴を並べてみたら面白いかも。他には元彪(ユン・ピョウ)vs元華(ユン・ワー)ってのもあるやね。

この戦いでは幅の狭い街道をバトルスペースにし、

だからこそ構築できる緻密で大胆な殺陣が絶好調!
ジャッキーが
「功夫アクションで一番大事なのはつま先」
と言っていたように、洪拳を使いこなす劉家輝の足捌きだけでも見とれるほど素晴らしい。
まさに功夫迷必見の功夫の真髄濃縮度200%なバトルである。

しかしもって、全体的な感想としては個人的にも一つ気持ちが乗れない感じがしたのも確かか。
武館同士の争いってのも使い古された感はあるし、死人が出ないファイトを貫いてるのは素晴らしいことなのだが、今回はそれだけにバトルが最後には勝ち負けはっきりしないまま仲裁仲裁って感じで、中途半端に終わってしまうシーンが目立っているように思った。それだけにラストバトル以外は消化不良な気持ちもある。

王龍威が登場するシーンの彼は気さくな風来坊、でも腕っぷしは強いって感じで、他の作品で見たことのないキャラクターを披露しており、「おっ」と多分に興味を惹かれたのだが、それ以降はいつもの王龍威の芸風に戻ってしまっているのは残念。「御猫三戯綿毛鼠」でもコメディ演技に乗り切れていない感じだったし、この人役柄の幅が狭いな。

いつもの如く、惠英紅(ベティ・ウェイ)さんは劉家良が相当可愛がっていたのが十分わかる。出てくるシーンで衣装や髪型を変えて登場し、ベティ迷、つまりは私を楽しませてくれる。アクションもバッチシ披露してCOOL!

・・・って、ベティさん!?

■CAST&STAFF
監督 劉家良(リュー・チャーリャン)
出演 劉家輝(リュー・チャーフィ)
惠英紅(ベティ・ウェイ)
麥コ羅
谷峰(クー・フェン)
王龍威(ワン・ロンウェイ)
小候
王清河
唐偉成(ウィルソン・タン)
井E
石崗
朱鐵和
京柱
劉家良(リュー・チャーリャン)
武術指導 劉家良(リュー・チャーリャン)
小候
京柱
脚本 倪匡(イ・クオン)
音楽 王居仁(エディ・ワン)
製作 方逸華(モナ・フォン)
製作総指揮 邵逸夫(ランラン・ショウ)
制作年度 1981


少林傳人
Shaolin Prince
少林拳王子


いやぁ折りしも同じページで紹介するというのが面白いもんですが、この映画なんちゅうか上記にある「冷血十三鷹」ならぬ"笑血十三鷹"とでも申しましょうか。
数奇な運命を辿ることになった2人の主人公が様々な敵と戦いながら、何れは力を合わせて共通の敵を倒すという感じでストーリーが若干似ており、さらに敵役を務める白彪(パイ・ピョウ)が鉄の爪をつけて扮装まで

こっちが「冷血十三鷹」のボス・谷峰(クー・フェン)

こっちが本作のボス・白彪(パイ・ピョウ)
「冷血十三鷹」のボス・谷峰(クー・フェン)によく似ており、同じ狄龍(ティ・ロン)が主演しているということで似ている感じがするんだな。

ただし、こちらは"笑血"と言ったように全編これ奇抜なアクションのテンコ盛り!
「うそつけー!」
ってな派手派手おバカな演出の連続で感嘆と爆笑が起こりまくる面白ギャグアクションなのだ。

流れ

皇帝に2人の息子が生まれる。
と思ったら将軍・白彪(パイ・ピョウ)がいきなり強襲!
皇帝は自らを犠牲にして2人の息子を家臣に託す。
こうして1人はその将軍に仕える武家にひっそりと匿われ、もう1人は水の将軍と火の将軍(江島)に追われ家臣はチリジリになったものの、最後まで生き残った元華(ユン・ワー)が少林寺の戒律院まで何とか届ける。
1人シリアスな元華
出番はこれだけながら実にかっちょ良い役柄だ。


戒律院で育てられた子供は狄龍(ティ・ロン)に。
この映画、アクション以外で一番の注目はここで、
「冷血十三鷹」は硬派の狄龍と軟派の傳聲(アレクサンダー・フー・シェン)という見たまんまの図式に対し、本作では何と逆なのだ!つまり軟派が狄龍!
彼主演のコメディ功夫というだけでも珍しい気がするが、

この師匠左から陳國權、魚頭雲、林輝煌の功夫は滅法強いけど本当にバカ3人。バカと天才は紙一重のような奴らに狄龍が厳しくてアホな修行をさせられるというコメディ功夫ジャッキーのような扱いはこの映画しか知らない。その上、狄龍の芸風が今回実に軽い。とても良い意味で肩の力の抜けたコミカルな芸風を披露している。勿論、とはいっても狄龍は狄龍。決めるときはバシッと決めてくれるところが格好良いんだけどね。

一方もう1人の息子はひっそりと剣の練習を重ね、

こちらも立派な青年・爾冬陞(イー・トンシン)に。
画像は自分の仇討ち相手、白彪の前で功夫素人のフリをしてその場をやり過ごすの図。
なので、こっちが硬派なのだ。普通はこっちが軟派な方をやるだろう。この辺が監督の粋なところ。

狄龍は戒律院でアホ3人に功夫を教えられているので、他の少林僧が習っている功夫とはちょっと違う。高弟の李海生(リー・ハイサン)は彼が独自に習っている拳法の方が自分より強くて気に食わない。マジで彼を貶めたい。
というわけで、李海生の策略で町の良家の葬式に引っ張り出される狄龍。つまり葬式でお経を上げる坊さんってことやね。李海生はチャンスを覗ったが関係なく大事件が起こる。
なんと死んだ旦那が奥様に憑依して事態はアッと言うまに
「霊幻道士」!
奥様オバケを演じている人が可愛いが名前不明。
可愛いが可愛いどころではなく、爪で襲い掛かって李海生、狄龍以外の坊さんを殺してしまう。ムチャクチャですな。
この奥様から憑依した霊を成仏させた男こそが爾冬陞だった。爾冬陞はこの家にひっそり住んでいたのだ。

「少林寺に行きたい」
という爾冬陞。助けてくれたお礼に狄龍は快く彼を案内。
だがしかし、既に爾冬陞が怪しいと嗅ぎ付けていた将軍の臣下は寺の悪徳坊主・若き日の徐錦江(チョイ・ガムコン)、そして李海生と結託。爾冬陞を捕らえてしまう。
これを救ったのは狄龍だったが、過失で徐錦江を殺してしまい、李海生の高僧への煽りもあって狄龍と爾冬陞は少林僧からも追われる身に。
うわーっ
そして十八羅漢と対決!!
マスター・オブ・ リアル・カンフー 大地無限」での十八羅漢はここから持ってきたんじゃないかってぐらいにこのシーンはすげぇ!うそつけっ!すげぇ!うそつけっ!

狄龍のアクションも絶好調!
ハイテンションだなほんとにもう!
それでも強い十八羅漢だったが、先の3人アホ師匠が助け舟を出す。そして逃げ出す。

その後は誤解もあって、一時は敵にもなりそうな2人だったが水の将軍と火の将軍を協力してやっつけたことから一致団結。

2人して最強の敵・白彪に挑む!

終劇




監督の唐佳(タン・チァ)は古くは劉家良(リュー・チャーリャン)と一緒に張徹(チャン・ツェー)の傑作群を振り付け、その後は楚原が演出する武侠片を振付けていた名武術指導家。「冷血十三鷹」も彼と黄培基が殺陣をつけている。
そんな彼がメガホンを取った作品がこれなのだが、
「こんなハイテンションギャグアクションが撮りたかったのか!?」
というような感じで、とてもあの怖そうなお顔をした面構えからこの映画は想像できない。

ってなところで、脚本を担当しているのが王晶(バリー・ウォン)なんだな。
この映画が王晶脚本と考えると
ああもうほんとになるほど全くその通りだ
と納得の嵐。
畳み掛けるように続くハイテンションアクションと派手派手おバカな演出の連続にして観客を楽しませ続けるというのは王晶の真骨頂だろう。

そこに来て本作の武術指導は勿論唐佳を筆頭に黄培基、
元華(ユン・ワー)、元彬(ユン・ブン)、李海生(リー・ハイサン)、江全と6人も動員しており、百聞は一見にしかずなのだがそのアクションが凄いのだ。ワイヤーとアクロバティックな動作を織り交ぜたアクションと功夫アクションのバランスがもうお見事!その上、狄龍の修行シーンではジャッキー「酔拳」的コメディ功夫が楽しめる!
爆発あり、功夫あり、ワイヤーあり、ホラーあり・・・と何でもありだけで終わる映画ならまだしも本作はそのアクションレベルが非常に高いのだ!ここがたかーく評価出来るところ。ラストバトルも素晴らしい。

その上、狄龍が珍しく軽い奴を演じているとなっちゃあこれは観ずにはいられませんわな。
個人的にはハイテンションバカアクション大傑作。
これぞ香港娯楽映画の真髄である。

■CAST&STAFF
監督 唐佳(タン・チァ)
出演 狄龍(ティ・ロン)
爾冬陞(イー・トンシン)
白彪(パイ・ピョウ)
谷峰(クー・フェン)
唐佳(タン・チァ)
顧冠忠
艾飛
李海生(リー・ハイサン)
江島
陳國權
林輝煌
魚頭雲
張國華
徐錦江(チョイ・ガムコン)
沈勞
楊志卿
・森
元華(ユン・ワー)
元彬(ユン・ブン)
武術指導 唐佳(タン・チァ)
黄培基
元華(ユン・ワー)
元彬(ユン・ブン)
李海生(リー・ハイサン)
江全
脚本 王晶(バリー・ウォン)
音楽 成錦榮
蘇板厚
製作 方逸華(モナ・フォン)
製作総指揮 邵逸夫(ランラン・ショウ)
制作年度 1982


龍虎少爺
The Treasure Hunters
カンフートレジャー龍虎少林拳


この作品と同じ劉家榮(リュー・チャーヨン)監督が撮った「少林寺破戒大師伝説」と凄く展開が似ている気がする。
あちらは宝物箱を引っ提げた少林僧の劉家輝(リュー・チャーフィ)がバカチンピラの曾志偉(エリック・ツァン)、劉家勇(リュー・チャーユン)といがみ合いながらも協力して、仇役の夫婦、劉家榮と李麗麗(リリー・リー)に戦いを挑むといったもので、
こちらは宝物の行方をしっているという少林僧の劉家輝から宝の場所を探り当てようとする

チンピラの傅聲(アレクサンダー・フーシェン)とバカボンボンの張展鵬が、終いには劉家輝と協力して仇役の夫婦(ではないが夫婦みたいなもの)、

王龍威&楊菁菁に戦いを挑むといったもの。

以前自分の独立プロで撮った作品をもう一回資金力のあるショーブラザーズで撮り直したというところだろうか。
確かに前回の反省点は改善され、劉家勇に当たる役は大スターの傅聲が演じることで華あるものになっているし、その傅聲と張展鵬が巻き起こす前半のコメディ功夫展開もより面白くなっている。
ショーブラだからセットにもお金をかけられてその辺も1つ格が上がってるし、何しろその磨かれた功夫アクションは1つの"コメディ功夫"というアートと言って良いだろう。
BGMは実に軽やかで子供番組のおちゃらけのようなものが流れているというのに、その実魅せる功夫は筆舌に尽くしがたいもので・・・というか功夫アクションは文章で
「これこれこういう風に凄い」
と表現するのが非常に難しいのだが、とにかくその様相はサイレント時代のバスター・キートンやチャップリンが軽やかなBGMに乗せて神業的妙技を披露していたことを連想させる。そして勿論それより凄い。

ただ物語における構成はなんちゅうかな、あれですな。
「どの人が撮っても、その人の色って出るもんやね」
これも言われると
「ああ確かに劉家榮が撮った映画だなぁ」
って思いますわ。この辺、ジャッキーやサモハンは言うに及ばず、麥嘉(カール・マック)でも張艾嘉(シルビア・チャン)でも李作楠(リー・ツォナン)でも何でも同じ。
その中において劉家榮作品の印象を言うとですな、
「あとワンテンポ展開が遅い」
って感じはやっぱりするんですわ。この辺は「ガッツ・フィスト/魔宮拳」「魔界天使」でも感じたところだな。この映画も正直然りな部分がある。

然りな部分があってもそれを補って余りあるのが前述のとおり功夫アクションで、劉家輝に関しては物語上、傅聲や楊菁菁に見せ場を持って行かれた感はあるものの、見せ場を持って行っただけのことはある彼らのアクションは素晴らしいもので、

劉家輝+張展鵬+少林僧の羅漢陣!

傅聲vs楊菁菁の武器何でもあり対決!
(オチがまた素敵)
そのオチで

王龍威の服を後ろ前に着ている楊菁菁が合体攻撃!


楊菁菁のダブル空中回転キック!

繰り出されるアクションは目を見張るばかり。
「この映画このためにあったんだ!」
と思ってしまうクライマックスがただただ凄い。

・・・ほんとにこのページはレベルの高い功夫を披露する映画ばかりやな。黄金ページですわ。
本作の脚本は王晶(バリー・ウォン)。
上記の「少林傳人」と同じ彼である。
それであればコメディ好きも安心して手を出せるかな?

■CAST&STAFF
監督 劉家榮(リュー・チャーヨン)
出演 傅聲(アレクサンダー・フーシェン)
劉家輝(リュー・チャーフィ)
張展鵬
王龍威
楊菁菁
唐偉成(ウィルソン・タン)
劉家榮(リュー・チャーヨン)
秦煌
林輝煌
杜少明
神仙
楊世釣
克明
王清河
〔女兆〕文基
強漢
楊雄
京柱
武術指導 劉家榮(リュー・チャーヨン)
京柱
楊世釣
脚本 王晶(バリー・ウォン)
製作 方逸華(モナ・フォン)
製作総指揮 邵逸夫(ランラン・ショウ)
制作年度 1981

殘缺
Crippled Avengers
The Return of 5 Deadly Venoms
残酷復讐拳


この作品は五毒作品というものを知ってから随分と待ち焦がれた作品である。その後、US発売のDVDがなかなかのものだと知り、一気に購入に当たろうとするもショーブラ解禁そして発売のニュースを知り、さらにそれまで待とうと心に決めて数年経ってやっと今手元にある状態である。
いやぁやっと観れた!

当初の五毒の話を聞いて、こわーい拷問がいっぱい登場する「五毒」よりも個人的には本作の方に興味が沸いたんだな。ダーク功夫片第二弾ってところか。YesasiacomにもしばらくDVDは売っていたけどVCDは品切れになっていてね。この度入荷したということでここにご紹介。

流れ

町の名士・陳觀泰(チェン・カンタイ)の屋敷が彼の留守中に賊に襲われる。
妻は殺され、息子は両腕を斬り落とされる。いきなり子供の両腕をぶった斬ってしまう衝撃的な幕開けだ。アメリカや日本では絶対に出来んぞ。そしてインドでは大変なことになる。
帰って来た陳觀泰が賊である若き日の狄威(ディック・ウェイ)らをぶち殺して全滅させるが妻の亡骸と無残な姿の息子を見て人としての心を潰される。

十数年後。

陳觀泰は心を潰した狂人と化していた。
息子は大きく育って鹿峯(ルー・フェン)となり、斬り落とされた両腕は鉄腕ギブスでよりパワーアップした。
見たまんま鉄腕
陳觀泰の権力に必殺の虎拳、息子の唯一無二な鉄腕の威力によって街を完全に支配。

次々と惨劇が巻き起こる。
客棧を我が物顔で占領した陳觀泰一行は、それをどやす血気盛んな若者・羅奔(ロー・マン)を攻撃するかと思いきや、何となく仲裁しようとチョロっと一言吐いた旅芸人の郭振鋒(フィリップ・コク)を標的に定め、鹿峯の鉄腕によって彼の両目を潰してしまう。
続いて羅奔を屋敷におびき出すと声の出なくなる液体を飲ませ、さらに虎拳で両耳を潰し、聾唖にさせた。
店先でたまたま鹿峯にぶつかった孫健(スン・ジェン)は取り押さえられていきなり両足を斬り落とされてしまう。

失明した郭振鋒、
聾唖になった羅奔、
両足を失った孫健、
それぞれが理不尽なギャグマンガのように不具者にされてしまう。
町民は怖くて誰も陳觀泰には逆らえない。
子供たちは不具者の彼らを笑い者にする。

通りがかった武芸の達人・江生(ジャン・シェン)が彼らの悲劇を目の当たりにし、1人、陳觀泰の屋敷に乗り込んで行く。
が、陳觀泰を筆頭に鉄腕の鹿峯、鎖鎌を使う仕官の王龍威、さらに部下がたくさんということで屈強で身軽な江生も流石に敵わず、捕まってしまう。
捕獲した陳觀泰は江生の頭に鎖を縛りつけて頭を締め上げるという拷問を実行。

屋敷の前でこっそり様子を覗っていた先の不具者たち。
屋敷から放り出された江生の身柄を確保するが、
哀れ江生、拷問の影響で知的障害者に。
郭振鋒、孫健
江生、羅奔
4人の不具者。

とここまで実にダークな展開である。
特にこのように文字だけで淡々と表現すると想像力豊かな人にとってはとても怖いイメージを思い浮かべることだろう。自分もそうだった。


江生が持っていた手紙を探ると、それが彼の武術の師匠からの手紙とわかり、一同はそこへ。

江生の師匠の元へ辿り着く一行。
陳觀泰の悪名は師匠の耳にも入っており、自分の弟子を文字通りバカにされた怒りと、不具者になった彼らの頼みを聞いて、功夫を教えることにする。

まずはその前に孫健の失った両脚を復活すべく鉄脚を製作、完成!

ここに鹿峯の鉄腕に対抗して鉄脚を持つ孫健誕生!
後は功夫修練を積み重ねるだけだ。


そして郭振鋒は視覚を失っているので頼りは聴覚!
耳を研ぎ澄ませ、功夫の練習を重ねる。


逆に羅奔に残っているのは視覚!
一瞬の隙も見逃さない視覚を養う鍛錬が続く。


ノータリンになってしまった江生!
武術の腕は残っていたので師匠はそのまま放置!(笑
練習台には持って来いだ(笑・・・いや笑っちゃいかんのだが。リハビリ方法無かったんかいな。

と修行に入ってからの本作は楽しく厳しく明るい。
テイストが変わっているということはないが、たっぷりと楽しい修行シーンが堪能出来る本作オススメのシーンだ。

特に
この鉄輪を使った郭振鋒のソロ、江生とのアクションがすげぇ!
アートアクロバティック!池谷くんどこ行った?
チームワークも武術指導のキレも「五毒」から格段にパワーアップしているのがわかる。

それぞれ功夫の達人になった不具者たち。
目指すは当然、陳觀泰の屋敷だ!

まずは郭振鋒が挑発を仕掛け陳觀泰一味に挑戦を叩きつける。
陳觀泰が呼び寄せた助っ人・気功の達人のオチが最高である。
言いたいな〜
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(面白ネタのバレですので、未見で鑑賞予定の人は
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気功の達人が彼らの前に現れる!
「ワシに拳3発、脚3発当ててみろ!全部耐えてやる!」
これに郭振鋒が挑戦、続いて羅奔が挑戦・・・したがだめ。ちっともダメージにならず。さすが気功の達人。
「ちょっと待て俺がいる!」
と出てきたのは孫健。
「彼の足は鉄脚だぞー!」
と囃し立てる江生。
「ふん!今まで鉄の脚と自分で言ってた奴の攻撃など全て防いできたわ!」
どかっ
「ふんぎゃああああああ!!!!」

「鉄の脚って本当に鉄でデキテるじゃんーーーっ!」
気功の達人、遭えなく昇天。
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助っ人を殺られた陳觀泰。
彼らが屋敷に迫ってくるのは瞭然だ。
そこで彼が不具者であるがゆえのたくさんの罠を仕掛ける。
そうとは知らずに入ってくる不具者たち。

さぁ果たして

彼らは復讐を成し遂げることが出来るのか!?

終劇




他の不具者たちは失われた器官を補完し、さらに人としてパワーアップする屈強さを見せたが、陳觀泰は失われた心を取り戻せなかった、彼こそが殘缺、心の不具者だったのである。
深読みすればではあるが、そう深読みしてこそ本作は面白い。目先だけのビジュアルの刺激を求めて、主人公達を不具者にしただけではなく、
それでも懸命に生き抜く人間と
それでひん曲がってしまう人間、
2つを対比させることによって教訓が導き出されている
ところが実に興味深い。
張徹(チャン・ツェー)監督、七転び八起きな人間である。

単純に構成からいっても、彼らが不具者にされる様相はテンポ良く進むので別に苦じゃないし、
修行シーンになってからはとても楽しいし、
修行を終えてからのクライマックスに向けての連続バトルは本当に工夫を凝らしてあり飽きることなく満足。
「五毒」はストーリーを重視するあまり、功夫シーンが些か少ないように感じたのだが、本作はたっぷり詰まっておりその点でもご馳走様。

前述したように功夫パフォーマンスは一層向上しており、ハイレベルなアクションシーン、

ラストバトルの鹿峯vs郭振鋒、江生などは凄まじく良く素晴らしい出来上がりである。

また本作を観て思ったのが、
正直五毒メンバーだけだと地味に感じるのは否めないのだが、こうやって大スターの陳觀泰と絡ませると非常に生きてくることを発見。他の作品でも五毒メンバー+大スターという図式を取ればもっと良かったかもしんないが、契約やギャラの問題もあるし簡単なことじゃなかったやろな。

いやぁ、
一日千秋を耐え忍んだ甲斐のある出来栄えでした。
日本での発売は難しいのかなぁ、と思っていたら何と日本での発売も決定したようです。めでたし!

■CAST&STAFF
監督 張徹(チャン・ツェー)
出演 陳觀泰(チェン・カンタイ)
鹿峯(ルー・フェン)
郭振鋒(フィリップ・コク)
※クレジットは郭追
孫健(スン・ジェン)
羅奔(ロー・マン)
江生(ジャン・シェン)
王龍威
楊熊
譚鎮東
余太平
井E
潘冰嫦
狄威(ディック・ウェイ)
※クレジットは屠龍
陸劍明
劉晃世
楊雄
王撼塵
尹相林
麥コ羅
武術指導 鹿峯(ルー・フェン)
戴徹(ロバート・タイ)
江生(ジャン・シェン)
脚本 張徹(チャン・ツェー)
倪匡(イ・クオン)
音楽 陳勳奇(フランキー・チェン)
クレジットは陳永U
製作 方逸華(モナ・フォン)
邵仁牧(ランミー・ショウ)
制作年度 1978


小雜種
The Bastard


「ああ、こういう形でも功夫映画は作れるなぁ」
と思った作品。
入手のきっかけはまだ頭角を表す前の袁和平(ユアン・ウーピン)が武術指導を手掛けているということで、本編を観たのだがクレジットは袁祥仁(ユアン・チョンヤン)と"袁大眼"という名前の人になっており、この"袁大眼"が袁和平の別名なのかどうかは不明。もう1つの理由は本作の予告編がなかなかドラマティック&セクシーだったので、その辺の下心も併せ持ってみたりして。

結果としてはハードボイルドな武侠片でもない、凡庸単純ストーリーの功夫映画でもない、他の功夫映画ではなかなか持ち合わせていないテイストの功夫映画だった。

流れ

※ほぼ完全ネタバレなので、鑑賞予定の方は
"----------------" 囲いを読まないようにしてください。

どっかの遥か山の上。
ここに隠遁している武術の師匠から教えを受けている若者(宗華)は類稀なるセンスで免許皆伝。師匠に下山を命じられる。
「とはいっても師匠、私は名前も何にもわかりません」
そう、彼はMr.ノーボディ。金無し友無し親無しおまけに名前無しと来たもんだ。あるのは師匠に習った武芸と文字だけ。行く当てなど何処にも無いのだ。

でも下山。
しょうがないのでいるかいないかわからない両親でも捜してみようかとフラフラ。まさに無闇な旅である。
ゴミ処理を生業としている楊志卿に聞き込みするが、
「知るわけないじゃん」
そりゃそうだ。楊志卿は彼が名前も無くて汚い身なりだったことから"小雜種"と名づけた。小雜種がどういう意味かよくわからない彼は名前を持てたのでちょっと嬉しかったりして。

乞食の李麗麗(リリー・リー)が地元のチンピラと博打。
勝ち逃げしようとしたが、チンピラに捕まり犯されそうになる。これを見ていた小雜種、得意の功夫でチンピラを蹴散らし彼女を助ける。お金も無事。
ということで、李麗麗は小雜種を連れて街に繰り出す。
李麗麗の案内で街へ宿へ売春宿へ。楽しい小旅が続く。

しかし売春宿の女将、歐陽莎菲が彼を見つけると
「お前は・・・!!」
と言って彼を追い出した。なぜ?
女将は小雜種のことを知っているようだ。

先の蹴散らされたチンピラはある道場の門弟。
強い若者が現れたという情報を聞いて師匠が小雜種と対決するため誘い出す。
が、決戦前に江玲が現れ、何やらつぶやくと態度が豹変。戦いを止めてしまうどころか友好的に。
「なんか怪しい・・・」
と感じた李麗麗は小雜種を連れて自分のボロ家に戻る。

李麗麗と一緒に物乞いする小雜種。
貧乏ながらも楽しい毎日は長く続かなかった。
江玲の屋敷に招待された2人、
先のチンピラも屋敷の連中も皆、小雜種にひれ伏した。
なぜ?
家主を筆頭に過剰な歓迎は続く。
綺麗な服を着せてもらい、ご馳走もたくさん。
さらに純真な小雜種は何故か深夜にブランコで遊んでいる江玲の誘惑に負けて、庭園という思いっきし外でエッチッチ。筆卸し。さらにバスタブに場所を変えエッチッチは続く。

小雜種に密かな恋心を抱いていた李麗麗はそれを見つけてしまって大ショック!!
さらに、家主が
「実はお前は私の息子だ!」
と告げる。小雜種はここの息子だったのか?

「目を覚ましなさい!絶対何かの罠よ!!」
と言っても小雜種は純真というよりここまで来るとアホやから気づかない。おまけに
「李麗麗はここのメイドになれば良いじゃん」
と酷いことを言ってさらに李麗麗を悲しませる。
フラレて悔しいやら「メイドになれ」と言われて怒りと絶望の李麗麗は自殺しようと天井にロープを架けて首吊りしようとするが、その天井上から話し声が・・・

大変な話を聞いてしまった李麗麗。
我を忘れて一目散に逃げると自分のボロ家の隣に住んでた先の楊志卿に相談。
実は小雜種が家主の息子・宗華(二役)にそっくりで、その息子は殺人犯で現在獄中。
家主は小雜種を酔わせて刑務所に連れ出すと、こっそり息子と取替え、小雜種を殺人犯に仕立て上げる。
しかしこれでは小雜種と一緒に居た李麗麗に不審に思われてしまう、ということで李麗麗は殺されるところだったのだ。

楊志卿が刑務所のゴミ処理をするフリして小雜種を助け出す。それにしてもやたら簡単に出入りとか脱獄可能な刑務所だ。
楊志卿らと一緒に売春宿に駆け込むとそこで衝撃的な自分の出生にまつわる真実を聞かされる。
李麗麗には複雑な思いが交錯していた。小雜種への恋心、嫉妬、数奇な運命の小雜種への同情、乞食である自分へのそねみ。混乱した李麗麗は服を脱ぎだし
「私を抱いて!」
と小雜種に迫る。これを平手打ちしてしまう小雜種。
あなた江玲とはすぐエッチッチなのに李麗麗には平手ですか。そんなに興味ありませんか。
というのも、もう一回言うが純真というよりもここまで来るとアホの小雜種は、自分を歓迎してくれた家主、そして何よりも江玲が自分を騙していたことを信じられなかったのだ。
「真実を確かめてくる!」
そう言って売春宿を飛び出してしまう。

↓ここからネタバレ(飛ばすにはクリック

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と、そこに踏み込んできたのはチンピラ達であった。
彼らは彼らでスケープゴートにした小雜種に逃げられてしまったので捜していたのである。
売春宿に1人取り残されていた李麗麗、事件は悲劇化の一途を辿る。

江玲が家主の息子とエッチッチしているのを目撃し、さらに家主の部下に襲われることで小雜種はやっと自分が騙されていたことを確信する。・・・遅い。

全てが遅すぎた。
今さら売春宿に戻ってもそこには何も無い。

再度、屋敷に乗り込む小雜種。
チンピラや師範、そして家主の息子を次々と地獄に追いやる。そして結局は江玲も。

自分の名前や出生は知ったものの、一番大切なものを失ってしまった今、それがいったい何になるというのか。
この街を後にする小雜種。
彼を呼ぶ李麗麗の声は聞こえてこない・・・

終劇
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さすがは「七十二家房客」('73)を「燃えよドラゴン」「ドラゴンへの道」を抜く大ヒットに導き、後の「流星・胡蝶・劍」で武侠片ブームを起こした楚原監督、勿論脚本の邸剛健も高評価しなければならない。

ドラマティック。
単なる悪道場と善道場との対決からくる仇討ちとか、村で悪いことしてた悪漢を倒しておしまいとかそんなんではない。
出生も名前も謎である彼が人々と出会うことで自分のルーツを探り当てていく大筋が物語を大きく盛り上げ、そこに乞食の李麗麗と触れ合い、江玲との情夜から起こるシチュエーション萌えな恋愛劇を絡ましてあって、登場人物の感情は大きく起伏し、それだけでも飽きさせない。
功夫シーンは少ないがその物語がそんなことを気にさせないのが功夫映画としてより映画として何より秀逸だ。

ただ、余りにも純真無垢な小雜種という主人公が、その純真というよりアホであることから次々と悲劇が起こりすぎているので彼が全く"英雄"にはなっておらず、この主人公に感情移入はしにくいところはある。

だいたい何をもって不純で何をもって純真なのか、プラトニックセックスという言葉であればハッキリとその意味がわかるが、プラトニックラブとはいったい何なのか?
全ての動物が性交し、自然の摂理にも関わらず、恋愛してるのにセックスを我慢する人間がいるとしたら、
「さっさと結婚して性交しろ」
と私は言いたい。だってそうじゃん。
その女を一生涯守る勇気があるから、結婚するんじゃん。
純愛を貫くなんていうけど16歳から女性の方は結婚出来るんだし、それで性交に踏み切れないとしたらそれは純愛を貫くとは大違いで、その女を愛し続ける自信が無いと言ってるのと一緒だよ。「伝説の教師」というドラマで松本人志が生徒に配るコンドームを次々と破っていくシーンがあったけどあれその通りだと思うよ。明るい家族計画じゃないんだったらコンドームなんて、愛の無いオープンセックスを広める媒体の1つでしか無いもん。

・・・本題と思いっきし反れたな。

注目すべくは主人公よりも明るい乞食を演じた李麗麗(リリー・リー)だ。
デビューから7年経って23歳、油も乗ってきている時、絶頂期を迎えつつある時代と言って良いだろう。その中において日本の事務所なら出演を躊躇するであろう役柄を見事にこなし(香港の女優さんは当たり前に何でもこなすが)、乞食ながら毎日明るく生き抜いてブサイクな表情をガンガン披露しながらも素にある品の良さを失わず、美しさも損なわない様相は素晴らしいの一言。

武侠片でもない典型的な功夫映画でもない、功夫が主題ではなく物語の中に溶け込んでいる映画と言っていいだろう。

アクション面に於いては袁家一族だけあって、京劇的なアクロバティックアクションが多い。が、今一歩な感じもするかな。

またカラミ役では一瞬ではあるが、火星(マース)くん発見。他に袁信義(ユアン・シュンイー)。

■CAST&STAFF
監督 楚原
出演 宗華
李麗麗(リリー・リー)
劉丹
楊志卿
歐陽莎菲
井E
江玲
喬琳
慮迪
羅漢
李鵬飛
王清河
陳濠
呉池欣
陳贊剛
・森
曾楚霖(ツァン・チョウラム)
火星(マース)
袁信義(ユアン・シュンイー)
武術指導 袁祥仁(ユアン・チョンヤン)
袁大眼
↑袁和平(ユアン・ウーピン)?
脚本 邸剛健
製作 邵逸夫(ランラン・ショウ)
制作年度 1973

 
 
 
 
 
 
激突!螳螂拳
ワンス・アポン・ア・タイム英雄少林拳 武館激闘
少林傳人
龍虎少爺
残酷復讐拳
小雜種
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