大隻〔イ老〕
Runnig on Karma
An Intelligent Muscle Man
マッスルモンク
■
「千と千尋の神隠し」は宮崎駿監督の当時の集大成みたいな映画で、本人が撮った今までの色んな映画のシーンのオマージュ的演出がそこかしこに見受けられた。それは面白いとも取れるし、悪い感触としては
「前にもそれは観たけど」
になってしまう。この作品の個人的な評価としては水準はあったけど、まぁなんかバシッと一本通ったようなテーマが見難い所に物足りなさを感じた。「もののけ姫」の評判はあまり良くないが
「人と自然と共に生きる方法は無いのか?無いかな?」
といった大筋がくっきり現れていた。対象が主に子供になるのだからこの辺の大筋はカッチリと子供が読み取れるようにした方が良いような気がする。
・・・・え?
あのね、どうやって本作につなげるかというとですね、
「千と千尋の神隠し」でガツンとやられたことがある。
「ゼロになるからだ 充たされてゆけー♪」
エンディングに流れる主題歌の一フレーズ、全体を通してもそうなのだが特にこの一フレーズにしてやられた。
「ああ、これ聞くために俺、劇場に来たんだ」
というぐらいにしてやられた。
0になる体。
つまり全知全能にして無知無能である。
全知全能というのは無知無能だから全知全能なのだ。
つまり無知無能がどんなものか知ってるから全知全能なのだ。
この詩を書けるという事は、その究極の仏教思想、坊さんが意味も無くやってるように見えるお経の到達地がまさに
0になる体。
作詞者がその0になる体に近づこうとしたからこそ
"0になる体"
という言葉が生まれてきたものだと言える。
なので個人的にはそこの言葉で表しにくい部分を上手く表現したものだな、その結論は凄いなと感嘆した次第である。
無我の境地というが、その境地の目指す先は全知である。無を知ることによって有を得る。だから充たされていくのだ。
作詞者は最後にこう書いている
"輝くものは いつもここに わたしのなかに
見つけられたから"
さてやっと本作。
先に流れからいこうかしら。
■流れ
ストリップやボディビルショーを生業としている筋肉ムキムキのマッスルモンク・ビッグガイ・劉コ華(アンディ・ラウ)。
インド人が起こす謎の連続殺人事件に巻き込まれた彼は警察送りに。そこで刑事の張柏芝(セシリア・チャン)と出会う。
ビッグガイは過去に恋人を殺された怒りで小鳥を死なせてしまったことから悟りを開き、あらゆるものの前世を見通すことが出来る能力を持つ。たまたま張柏芝の前世を見てしまったのだが、彼女の前世は日本兵、しかも彼女は前世が成した悪い業(カルマ)から死ぬ運命であることに気づく。
彼女の本質を見抜き、何とか助けてあげたいとするビッグガイ。はじめは彼女自身もビッグガイをいぶかしんでいたがその能力によってインド人の連続殺人事件を解決に導いたことからビッグガイに大きくなびく。
その後もビルの壁を歩き回る気持ち悪いスパイダーマンと格闘したりしながら彼女を助けるビッグガイであったが、彼女が死ぬというビジョンは消えない。業が深すぎるのか?
ビッグガイから死を宣告された張柏芝。
「どうせ逃れられない運命なら」
と、ビッグガイの為に彼の恋人を殺したという犯人を探すため山へ向うのだが・・・
終劇
■
物語の最後の方まで
「アンディさん、何でこんなの出たの?」
という疑問は消えない。
呉耀漢(リチャード・ウン)もびっくりってなぐらいにやたらただでさえ頭坊主なのに、全裸で歩き回ってお尻フリフリにボディビルショーでポーズバッチリ!
と思ったらバイクで豪華にこけて笑わしてくれるわ、カンフーだか何だかわかんないファイトを全裸でやって笑わすわなんやかんやで滅茶苦茶。間に入るシーンはやたら残酷になるし、これじゃRunnig
on カルマというよりRunnig on カルトじゃねーか!というような香港映画らしい凄い展開である。
自分の陳腐な予想は見事に裏切られた。
張柏芝は死から逃れられない運命、というわけで劉コ華と共に闘って生存し、
「運命は自分で切り開くものだ!」
というハリウッド映画的思想に持ってくんだろうなぁと思っていたのだが、まさに因果応報、これぞアジア映画たるクライマックス。ハリウッドではこんな結末、絶対プロダクションが認めないんじゃなかろうか。第一、アメリカ人にこれを理解できるというのか?
最後に来て、劉コ華が主役をやっていたという意味というか、オファーを引き受けた意味がようやっとわかる。はっきり言ってこんな映画観たこと無い。その新鮮度から引き受けたのではないか。
昔「ロマンシア」という超難解なPCゲームがあって、そのゲームにはカルマというパラメータがあり(当時はカルマパラメータが結構流行りました)、ゲーム中で悪い行いをするとどんどんカルマが溜まってバッドエンド、さらに宿敵であるはずのドラゴンを倒すとこれがハッキリ忘れたが友人だったか何だかでそれを倒してもいけない、
「どうやってクリアすればいいんじゃ!」
という前衛的なゲームだった。
本作のクライマックスの意味をよく考えると、このゲームにも似通っていて興味深い。
ゼロになるからだ 充たされてゆけ
その先にカルマが見える悟りの境地が待っている・・・のかどうかは知らない。
ただ、
張柏芝の生き死に、
劉コ華が最後にタバコを吸った意味、
マッスルが超マッスル過ぎる演出の意味、
あなたはどう考えていますか?
「己の行いを改めよ」
これがテーマだと本当に思いますか? どうかな?
|
■CAST&STAFF |
監督・製作 |
杜h峰(ジョニー・トゥ) |
韋家輝(ワイ・カーファイ) |
出演 |
劉コ華(アンディ・ラウ) |
張柏芝(セシリア・チャン) |
元彬(ユアン・ブン) |
武術指導 |
元彬(ユアン・ブン) |
脚本 |
韋家輝(ワイ・カーファイ) |
游乃海(ヤウ・ナイホイ) |
歐健兒 |
葉天成 |
音楽 |
黄壽清 |
製作総指揮 |
向華強(チャールズ・ヒョン) |
候克明 |
制作年度 |
2003 |
猪仔血涙
Sun Dragon
■
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ 天地風雲」より
「シャンハイヌーン」より
早すぎたウェスタンクンフー!!
荘泉利(ビリー・チョン)&カール・スコット主演の功夫映画である。
全編においてアメリカロケを行っておりその効果は抜群だ。
■流れ
ビリーは西部を闊歩する爽やか青年。
今日も線路上にいた白人チンピラを蹴散らして、アメリカンドリームを突き進んでいた。
まるで「荒野のドラゴン」ですな。
一方で現金強盗をした3人組、ルイス・ネグリア、ジョセフ・ジェニングス、馬宗徳は幸せに暮らしていた黒人の農民一家を襲ってこれを惨殺。この農家をしばらくの根城とする。
この惨劇から抜け出した一家の生き残りカールはビリーに助けてもらってキム・ビル医師のもとへ。
功夫を知っていたキム・ビルを師匠とし、復讐のため功夫の猛練習に励むカール。
腕前はあっと言う間に上がり、ビリーとも肩を並べる。
さぁ2人で復讐だ!
終劇
■
話的にはほとんどこれだけのような気がする。
気がするが、本来のオーソドックスな功夫映画にしてそれがinアメリカというのは本作だけではないのか。
その繰り出されるアクションはさすがにビリーというだけあって素晴らしく切れ味抜群。アメリカだと立ち回りのやられ役を探すのに四苦八苦しそうなところだがこちらも上手いことカバーしている。
また同じく主演のカールの功夫がいわゆるベニー・ユキーデ的なマーシャルアーツではなくて、非常に純粋な功夫の動きをしているのが非常に珍しい。彼のように黒人でありながら純粋な功夫を披露するタレントというのは非常に少ないだろう。またこちらの功夫も素晴らしく、作品上の出来ている画が非常にユニークである。
広大なアメリカの台地を舞台に、純粋な功夫を披露する黒人演舞!
この取り合わせの奇妙さが非常に興味深い。
トータルとしてはシンプルストーリーでありながら、盛り上げる西部劇風なBGMも良い感じで、演出テンポも良いしサクサクと楽しく観れる作品か。
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■CAST&STAFF |
監督 |
華一弘 |
出演 |
荘泉利(ビリー・チョン) |
カール・スコット |
ルイス・ネグリア |
ジョセフ・ジェニングス |
馬宗徳 |
キム・ビル |
侯朝聲 |
制作年度 |
1979 |
少林五祖
5 Shaolin Masters
続・少林寺列伝
■
シンプルだなぁ。
張徹(チャン・ツェー)が放った少林モノの一つにして「復讐のドラゴン」で人気を博した孟飛(メン・フェイ)も呼んで来たオールスターな功夫映画。他にも功夫マンが大挙して出演しており、まぁどっちにしても功夫迷ならチェックしておくべき作品。
今はこの辺の張徹少林作をこちらが自由に取捨選択出来るという夢のような時代になったので(本作も日本発売されるし)、ストーリー順に観て行くのも面白いだろう。
■流れ
少林寺焼き討ち・・・・・・・
焼き討ち少林寺が出てくる映画を何本レビューしたか、今度数えてみるかな。
そこから逃げ出したのが「少林寺列伝」観てればわかりますね。
洪熙官と方世玉と胡惠乾で、これが「嵐を呼ぶドラゴン」に繋がっていくわけですが、その時逃げた後の五人、胡徳帝、馬超興、蔡徳忠、馬復儀、方大洪、李式開の物語が本作「少林五租」になるわけです・・・あれ?6人いるぞ?
というわけでその中の馬復儀は裏切り者。
まぁ「少林寺列伝」で既に姜大衛(デビッド・チャン)&狄龍(ティ・ロン)に倒されていましたが、あの映画が後に作ったものだし、他もハッキリとした整合性は取っていませんのであしからず。馬復儀に扮しているのが本作も「少林寺列伝」も王龍威(ワン・ロンウェイ)なのですがね。
朝廷の追っ手はもう全然逃げた少林子弟たちを許してくれません。根絶やしに向けてまっしぐら。
またその追っ手の強いこと強いこと。
江島が双子のトンファー使いと共に追い回せば、蔡弘は鎖鎌・・・というかこれは縄鎌ですな。
若き日の梁家仁(リャン・カーリャン)は当然まだまだ悪役ですし、馮克安(フォン・ハックオン)は悪役出世して得意の蟷螂拳ですよ、切れ味抜群ですよ。
朝廷の人たちはどこで武術を習ってるのかね?
(少林の人が負けまくってる本作ですけど)
まぁいいや。
逃げた五人は同志を募ります。
募ったメンバーがこりゃまた何とも功夫迷には堪らないような面子もいますなぁ。
狄龍(ティ・ロン)は黄哈(ウォン・ハー)グループですか。黄哈出世してるぞーこの辺は彼の腕前成果があったのかもしれませんね。顔はどうしようもないですから(特に当時は)。
唐炎燦(トン・インチャン)も登場するのですが、追っ手にかかって死亡。
極めつけはやはりデビュー直後の劉家輝(リュー・チャーフィ)ですね。
劉家輝と孟飛の2ショット!(これは貴重!?)
しかも劉家輝vs梁家仁が嬉しい!
まぁ出番はすぐに終わり劉家輝は死んでます。
「すげー強いじゃん!」
ってことで、
一体俺らは少林寺で何やってきたんだろ?
って感じもしますが、各々で強豪を打ち破るべく修行開始。
そして遂には、
傅聲vs王龍威!
狄龍vs蔡弘!
姜大衛vs江島(双子つき)!
戚冠軍vs馮克安!
孟飛vs梁家仁!
の五大バトルが始まるのです!!
終劇
■
これなんか観ると「少林寺列伝」は本作がベースになってる部分が非常に多いなと感じる部分があります。最後の五大バトルとか修行とか。ただ、修行のディテールやドラマ部分については後の
「洪家拳対詠春拳」などがベースになっているんでしょうね。
功夫シーンは流石に劉ブラザーズ武術指導だけあって見応え抜群で、それに応える役者のポテンシャルも凄いものがあります。前述したように馮克安の頑張りがよかったな、だからこそサモハンが監督処女作の敵役に呼んだんでしょうね。また梁家仁が上半身裸で戦ってくれるのですが、本人がハッキリと
「役者になってから功夫を覚えていった」
と仰ってるのですが、この若き日の出演から
やたら功夫が上手く見えるのはなぜだー!?
まず肉体がもう功夫マンの理想的な体として出来上がっていましたし、繰り出す技がとても昨日今日習ったように見えないのが非凡なセンスですね。
いわゆる張徹イズムな部分で、本作は弱いところがあるかなって気もしますけど、日本発売された際にはご覧になってみてもいいかなって良作だと思いました。
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■CAST&STAFF |
監督 |
張徹(チャン・ツェー) |
出演 |
傅聲(アレクサンダー・フー・シェン) |
狄龍(ティ・ロン) |
姜大衛(デビッド・チャン) |
戚冠軍(チー・クワンチュン) |
孟飛(メン・フェイ) |
王龍威(ワン・ロンウェイ) |
梁家仁(リャン・カーリャン) |
蔡弘 |
江島 |
馮克安(フォン・ハックオン) |
唐炎燦(トン・インチャン) |
劉家輝(リュー・チャー・フィ) |
劉家榮(リュー・チャー・ヨン) |
李振標 |
葉天行 |
盧迪 |
林輝煌 |
陸劍明 |
ケコ祥 |
黄哈(ウォン・ハー) |
李強 |
武術指導 |
劉家良(リュー・カー・リャン) |
劉家榮(リュー・チャー・ヨン) |
脚本 |
倪匡(イ・クオン) |
音楽 |
陳勳奇(フランキー・チェン)
クレジットは陳永U |
製作 |
邵仁牧 |
制作年度 |
1974 |
後生
The Young Rebel
■
これは何とも狄龍(ティ・ロン)監督作である。
脚本も倪匡(イ・クオン)と共同で。
冒頭に「張徹プレゼンツ」と出てくるところが何とも
「俺が監督させてやったぜ by 張徹」
って感じで気分が悪い。だってあんた!
結局、劉家良(リュー・チャーリャン)には一回も監督させなかったくせに弱冠27歳の子飼いには易々と監督させますか!しかもこの同じ年には姜大衛(デビッド・チャン)も監督作があります。やっぱさー
「劉家良が功夫映画撮ったら俺的にまずいかも」
と思ったところあったんでしょうね。自分より良い作品を目の前で撮られてもし自分の取り巻きをゴッソリ彼に持って行かれたら・・・なんて考えたんではないでしょうか。何しろ張徹に武術指導は出来ませんからね。それだけ彼の才能を恐れていた・・・のかもしれません。
さてそれはともかく。
まぁその弱冠27歳の若輩者が撮った映画ですから・・・
と期待する要素がほとんど無いので、その通り期待していなかったのですが・・・これが結構面白いでやんの。
今となってはあらゆる意味で功夫迷に薦められる一品かな。
主演は彼の盟友・姜大衛が務めています。
■流れ
姜大衛、狄龍。
2人してタクシーに乗っている。
いきなし「卒業」のラスト同性愛バージョンみたいな雰囲気がかなり怪しい感じなのはどうかと思いましたが、これがいやはや。
姜大衛 「兄貴、あの日のこと覚えているかい?」
狄龍 「ああ、覚えているさ」
-------------
姜大衛の父、死去(劇中の話ですよ)。
母は病弱、妹はまだ幼い、というわけで青年・姜大衛がこの先頑張るしか無い感じ。親友・狄龍がツラクテキビシイ仕事を紹介してくれる(優しいのにしろよ)。
まぁ回船問屋みたいなもんか。
ここで配達人として働く日々。ボスの姜南(チャン・ナン)は金のことしか考えてない感じで
「ガソリン減るからトラック使うな!自転車!」
と色々ケチってアメーバ商法で京セラのように儲けたいかこの野郎。
だがしかし、家では優等生ぶってママを心配させないようにしているが実は反抗期まっさかり、年齢的に相当遅いような気もするな、とにかく姜大衛は姜大衛で素直に従わない感じでつまらない日々が続く。
小銭で裏路地の賭博に興じようとした姜大衛。
「貧乏人は相手にせん!」
と、元締めは勝っても相手にしてくれない。おまけにボコボコと殴られる始末。あら今回、随分弱いのね姜大衛。
・・・なんて言ってる場合でなくて、
この元締めやってる人が
ええ!?
なぜに洪金寶(サモ・ハン・キンポー)!?
正真正銘、洪金寶(サモ・ハン・キンポー)!
そう言えば思い出しましたよ、fakeさん掲示板でそんな話題が昔上がったのを。なにこっそりゴールデンハーベストから抜け出してショーブラで小銭稼いでるんですか。
残念ながらここでのサモハンはアクション披露せず、姜大衛と戦いません。ちょっと出てゴールデンハーベストにすぐ帰ったなこりゃ。
ロクに働きもせず(真面目に働けよな本当に)
いつも仲間達とたむろしている場所へサボリに行く姜大衛だったが、そこにいたのは仲間達ではなくチンピラの江島ども。
功夫出来ないから弱くて、からかわれてすごすごと去って行く姜大衛が哀しいな〜
夜は夜で姜南に
「真面目に働け!」
と怒られる感じで(ほんとに俺もそう思うが)、不貞寝していたがそこに江島たちが強盗にやってくる。店の金から何から奪われそうであったがこれを機転を利かした姜大衛が追っ払う。
次の日。
ヘラヘラと配達をする姜大衛であったが、江島たちが仕返しに。
ここに
「プロジェクトA」を彷彿とさせないチャリンコレース開催!(狄龍監督としてはこれがやりたかったな)
レースの末に捕まってしまう姜大衛、そこに通りかかったのは我らが監督・狄龍!
友人のピンチとみるや軽く車上をひとっ飛びして、素晴らしい功夫技で江島どもを一網打尽に!
かっちょいい!!狄龍素敵〜!!
こんな友人いたら心強いねー
・・・って、ゲスト出演のあんたが一番格好良いよ!
なに監督が一番美味しいとこ持っていってるんですか。
姜大衛 「兄貴!俺にも功夫教えてくれ!」
というわけで自分が通っている道場を紹介する心優しき監督・狄龍。
ここは相当に良い感じの強い感じの道場だ。
何しろ門弟に狄龍をはじめ、ジャッキーと「酔拳」で戦った徐蝦、ジャッキーと「酔拳」で戦った黄哈(ウォン・ハー)、ジャッキーと「笑拳」で戦った鉄の爪・
任世官(ニン・シークァン)という凄い面子。強豪集う道場を営む者はジャッキーに酔拳を教えたその人、
蘇化子爺ちゃん!
と設定が嬉しい袁小田(ユアン・シャオティエン)の出演である。
「お前は何故そんなに殺気立っているのだ!?」
姜大衛は功夫の腕をメキメキと上げていったが、苦しい生活の苛立ちからいつも好戦的。我を忘れて狄龍にも師匠にも襲い掛かる始末(これをいなす師匠が素敵)。
練習が終わると配達に戻る毎日。
今日もどこかのお屋敷にお届けに上がると、そこでは功夫の練習をしている若人達が。何やら
「ドラゴン危機一発」の韓英傑(ハン・イェンチェ)邸を思い出しますなぁ。
ここは江島のボスのアジトで部下が一杯。
何気なく練習を見ていた姜大衛。江島に早く出て行くよう言われたが無視したのでバトルに。んだけど既に功夫マンになったのでこれをなんなく倒す姜大衛。
「奴は誰だ?」
とばかりに襲い掛かってくる練習してたヤングたち。
最初に仕掛けたのは恐らく馮克安(フォン・ハックオン)だ(顔がハッキリしなかったので断定できないが)、次に挑戦してきたのは高雄(エディ・コー)!既にヒゲを生やし過ぎだあんた!もじゃもじゃ!
トリで出てきたのはこちらも若き日の李海生(リー・ハイサン)!
何とも次々に出てくる著名な人物を見ているだけで楽しい作品である。
「若いのやるじゃん、ウチで仕事せんか?」
乗り気で無かった姜大衛だったが、高い報酬に目がくらんで引き受けることに。
仕事はやっぱり悪なことで、ここのボスは対抗している馮穀(フォン・イー)の組織を潰したい感じ。
悪辣なボスは姜大衛の家庭の事情を知ると、その家庭を包囲し、姜大衛に馮穀殺害を命じる。
手下のやっぱり出ました劉家榮(リュー・チャー・ヨン)の隙を見て馮穀を遂には暗殺する姜大衛。
涼しい顔で家に戻ったが母には全て見透かされていたのであった。
「人殺しのお金で幸せになれるわけないでしょ!」
そういう母の前で、自首して全ての犯行を警察に告げる決心をする姜大衛。しかし、組織がそれを許すはずも無い。
ここに
姜大衛vs高雄、李海生のバトルが繰り広げられる。
末に姜大衛が勝利するのだがボスが母を人質に取り、哀れ母は殺されてしまう。
「きさまー!!」
怒りの鉄拳をボスにぶちこむ姜大衛。
----道場
「あの時、ワシが助けられたらな・・・・・・」
愛弟子の惨状を知り、悲しむ袁小田師匠。
「例え1日でも弟子は弟子」
「師匠ー!」
最後に師匠の前で
姜大衛vs狄龍
を披露するのであった。
-------------
姜大衛 「兄貴、あの日のこと覚えているかい?」
狄龍 「ああ、覚えているさ」
2人を乗せたタクシーは警察に向うのであった。
終劇
■
流石は張徹のもとで映画制作のノウハウを学んでいた狄龍である。
冒頭にラストシーンを持ってきてそこからフラッシュバックする演出が明らかに張徹的演出だし、映画そのものがかなり張徹イズムに近いものがある。そこに無いのは張徹的残酷表現だけだろう。
姜大衛としては「年輕人」「叛逆」
で演じたティーンエイジャーの再演といった感じで物語全体を見通して「これは」といったような狄龍監督独自のオリジナリティが王將(ワン・チェン)(←彼も登場します。)が引っ手繰りする一連のシーン等からの狄龍の倫理観ぐらいしか見出せないのは残念なところだが、いきなり初監督作では難しい現代片をやっているにも関わらず、ドラマが冗長することもなく、良い感じで功夫アクションをポンポンと挟んで飽きさせない繋ぎの巧さ、そのクオリティは当時の良い現代アクションと比べて何ら遜色は無い。この映画、
ちゃんと功夫アクション映画してるのだ。
むしろ羅維(ロー・ウェイ)に見習って欲しいぐらいである。この辺は全て張徹から学んだんであろうな。撮影中の指導もあったんでしょうね。とにかく普通の弱冠27歳であったならば絶対撮れない作品である。
そこに来て今となっては怒涛に押し寄せる功夫スターの出演が実に嬉しい。
衝撃のサモハン出演をはじめ、前述の通りに一連のスターの出演を見ているだけでも十分面白い。息の合った姜大衛vs狄龍も見ものである。
もうかなり見逃しがちな作品・・というか知らなきゃそりゃそんなに注目はしないわな、でもなかなかオススメの作品である。
|
■CAST&STAFF |
監督 |
狄龍(ティ・ロン) |
出演 |
姜大衛(デビッド・チャン) |
狄龍(ティ・ロン) |
盧迪 |
江島 |
林静 |
温文 |
姜南(チャン・ナン) |
袁小田(ユアン・シャオティエン) |
馮穀(フォン・イー) |
明明(ミン・ミン) |
李海生(リー・ハイサン) |
高雄(エディ・コー) |
劉家榮(リュー・チャー・ヨン) |
徐蝦 |
王將(ワン・チェン) |
洪金寶(サモ・ハン・キンポー) |
任世官(ニン・シークァン) |
黄哈(ウォン・ハー) |
馮克安(フォン・ハックオン)? |
武術指導 |
劉家榮(リュー・チャー・ヨン) |
黄培基 |
陳全(チン・チュアン) |
脚本 |
倪匡(イ・クオン) |
狄龍(ティ・ロン) |
音楽 |
陳勳奇(フランキー・チェン)
クレジットは陳永U |
製作 |
邵仁牧 |
制作年度 |
1973 |
神打
The Spiritual Boxer
マジッククンフー 神打拳
■
いやぁそうですかぁ・・・
これでショーブラ時代に劉家良(リュー・チャーリャン)が放った作品全て鑑賞いたしました。レビューも。
というわけで、本作は劉家良処女作。
劉家良、張徹の横で見てて思ったこといっぱいあったでしょうねぇ。
「ああ・・俺ならこう撮るのになぁ・・・」
「違うんだよ!武術ってのはそーじゃねーよ!」
って内心思っていたこと一杯あったんではないでしょうか。
本作はそんな劉家良がもうやっとこさ、やっとこさ監督をやらしてもらえた作品で、本人としてはそりゃあもう気合マンマンだったはずでしょう・・・と、映画を見てみると・・・
■流れ
神打、神打、神打。
知らない私達にとっては何のこっちゃと思いますが、要は簡単に言うと黒魔術使って無敵の功夫マンになろう!ということで。
西太后の前で神打の道士・唐偉成(ウィルソン・タン)が神打術を披露。最強功夫マンに扮するのはゲスト出演の狄龍(ティ・ロン)、陳觀泰(チェン・カンタイ)である。
本編とは関係無いオープニングですが、ここでこの映画の全てを物語っています。最後の洋槍(銃のことね)を被弾して立ち上がるシーンね。
神打術の師弟コンビである江洋と汪禹(ワン・ユー)は村で依頼を受けたのだが、師匠の江洋はアル中で酔いつぶれ。代わって弟子の汪禹が依頼を遂行することに。
・・・というか、神打術といってもこの2人はペテン師同然で様々なトリックを神打術として儲けていたのだった。
この村でもいわゆるイカサマ神打で成功しそうだったのだが、途中でバレて逃げることに。
逃げてきた町でまた様々なイカサマ降臨で孫悟空や三国志の英雄に化けてその場を凌いでいた汪禹はいつの間にやら町の英雄になっちゃって、若人が集う。その若人の中に混じって何故か劉家良その人がいたりなんかして。
知り合った浮浪者の林珍奇(リン・チンチー)と共に町を謳歌していたが、これじゃー町のボス・史仲田の顔が立たない。
と、この村に逃亡殺人犯・李海生&呉杭生が史仲田を頼って現れる。
汪禹の活躍を知って殴りこむ2人、本物のワルにイカサマのペテンじゃ勝てなくてヤバイと思った汪禹は逃げようとしたが、最後は師匠・江洋のサポートあって、この逃亡犯を打ち倒し、本当の英雄になるのであった。
終劇
■
仇討ちするわけでもない、真面目でもないやんちゃな青年が主人公という当時としては非常に画期的な作品である。
私が?と思ったところは、処女作にして劉家良であるならばこの後続くバリバリの功夫映画にしそうなものなのだが、功夫といってもちょっと違う毛色である神打を一番最初に扱っていることを不思議に思ったのである。だって、バリバリの功夫映画であれば劉家良の特徴を存分に発揮できるわけで、それがオカルト色の神打にいっちゃうとその分、武術色は薄れるわけで、自分の得意分野なのかどうかもわからない分野によういきなり最初から挑戦したなということ。最初は一番自分が扱いやすい題材を選ぶものなのに、やはりよほどこの企画を具現化させたかったのでしょうね。
あまたのところで述べられてしまっているが、本作はコメディクンフーのはしりであり、主人公像をはじめとして色々なところにコメディ功夫の原点が垣間見られる。
個人的な感想としては、凄く面白かったですね。
確かに冗長のきらいは避けられないのですが、あらゆるところから処女作独特のといいますか非常にパワーが感じられてラストファイトもよかったし、劉家良作品というものの面白さを改めて知ったようなそんな気分です。
|
■CAST&STAFF |
監督 |
劉家良(リュー・チャーリャン) |
出演 |
汪禹(ワン・ユー) |
林珍奇(リン・チンチー) |
王清河 |
李壽h |
江洋 |
李海生(リー・ハイサン) |
呉杭生 |
強漢 |
艾飛 |
沈勞 |
・森 |
馮克安(フォン・ハックオン) |
狄龍(ティ・ロン) |
陳觀泰(チェン・カンタイ) |
田 |
唐偉成(ウィルソン・タン) |
史仲田 |
劉家良(リュー・チャーリャン) |
何其昌 |
黄哈(ウォン・ハー) |
武術指導 |
劉家良(リュー・チャーリャン) |
脚本 |
倪匡(イ・クオン) |
音楽 |
陳勳奇(フランキー・チェン)
クレジットは陳永U |
製作 |
邵仁牧(ランミー・ショウ) |
制作年度 |
1975 |
殺絶
Soul of the Sword
■
なんちゅうかあれですね、
武侠片の原作を読みきれなかった私としてはこういうバリバリの武侠片のレビューが苦手になりつつあるなぁって気がします。
そんな中の一本がこれ。
前半は全然難しくないはずなんですけどねぇ・・・
■流れ
将軍の前に謎の黒侠客が現れる。
黒侠客は将軍のお抱えである侠客と戦い、これを倒す。
侠客の妻であった林珍奇(リン・チンチー)もその場で共に自害。
「俺の英雄を殺しやがって!!」
復讐を誓っていた近くの農村の子供、なんとこの子供は幼き日の王傑(デイブ・ウォン)である。
「香港国際警察
New Police Story」でジャッキーの同僚刑事役を演じたあの渋い彼の子供時代なのだ。
その王傑、一生懸命練習をしてメキメキ腕を上げてやがては青年・狄龍(ティ・ロン)に。
江湖に現れた狄龍は、名のある侠客のところにお邪魔しては全員ぶった斬るという滅茶苦茶ブリで、江湖を荒らしまわる。これに黙っているはずのない各門派達が次々と狄龍の命を狙う。ゲスト出演の李麗麗(リリー・リー)もその1人であったが、なんと!
狄龍に服斬られておっぱいぽろりん大サービス(ダブルですが)!そしてあっさり死ぬというこれではゲスト出演というより単なる端役出演というか、ショーブラの女優の価値を考えていない使い方が中々酷い。
将軍にご挨拶の前に狄龍が軽くなぎ倒す老師を演じているのは元華(ユン・ワー)で、この武侠片端役時代の彼の何気に役が大きくなってきているところが興味深い。
知り合った老客の谷峰(クー・フェン)としばらく旅を続ける。
狄龍はあることに苦悩していた。
彼の前には自害した林珍奇の幻影がちらつき、
「死んだはずなのに・・・」
と思い悩んでいたのである。
今日も客棧で大暴れの狄龍。
と、隣の二階の窓にはまたも林珍奇の姿が!
急いで隣の屋敷に駆けつける狄龍。
この林珍奇は幽霊ではなく別役の女性であった。
そのころから徐少強(ツイ・シャオチャン)が現れては狄龍を討ち取ろうと付け狙う。
林珍奇は果たして幽霊なのかはたまた!?
黒侠客の行方は!?
終劇
■
なんちゅうか途中で切り上げた感じになってしまい、すいません。
林珍奇が現れてからはハッキリ言ってようわからんのですよ。
狄龍自身のキャラクター像もこれでは主人公ながら因果応報を辿るので善役ではないのだろうが今ひとつハッキリしない。
ハッキリ言って俺の語学理解力不足
なので、物語についてどうこう言う資格は全然無い。
言わんとこ。
シチュエーションの妙である。
楚原の場合は戦闘シーンのカメラアングルに必ず植物を入れるのだが、この華山(ファ・シャン)監督の場合は様々な戦闘シチュエーションの工夫がそこかしこに見て取れる。その中で披露される唐佳(タン・チァ)武術指導の剣術アクションは非常に壮快なもので、そのアクションを見ているだけでも十分楽しい。
それ以外はハッキリわかってからにしよ。
というわけで、メールにてプリンさんより解説・ご感想を頂きました。以下はプリンさんの許可を得て掲載しております。お読みくださいませ。
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※以下はプリンさんより頂いたメールを許可を得て転載させて頂きました。
プリンさん、どうもありがとうございました。
「殺絶」はわたし的にSBのなかでも三本の指に入るお気に入りです。時期的にもニューウェイブに片足突っ込んだような内容で、まあ「名剣」と同じ系統の映画になるんじゃないでしょうか。
つまり追い求めていたものが不幸をもたらす話ですが、 私は英語字幕にあった"All is fair in love and
war" (勝てば官軍と訳してはイケナイ。もっとも原語では、兵法は裏切らないとかいう 色気のない台詞でしたけど)
がこの映画を象徴する言葉と思います。
「愛奴」もそういう話でしたから、邸剛健はこういうコンセプトが好みなんでしょ
う。
林珍奇は狄龍にとって、捨てきれないもの(人間らしい心)の象徴で、大体天下一の剣客になろうとしたのは、林珍奇の自殺にショックを受けて、原因になった谷峰を憎んだからで、しかし天下一の称号を得るには、死んだ女そっくりゆえに惹かれたお針子の林珍奇を捨てなければならない
というジレンマに陥ります。
一方、天下一の剣客として富と名誉を持つ谷峰ですが、心休まるときはなく、捨てきれないはずのものを捨ててしまった後悔を、医者の姿を借りて
狄龍に語りますが、結局狄龍は間違った選択をしてしまうのでした。
この映画のいいところは、見終わってあーだこーだといろいろに解釈できることです。
狄龍は「刺馬」以来?の複雑で曖昧な役をもらえてラッキーでした。
確かに難しい映画ではないんですが、単純な武侠片ではないし、台詞劇なので、中英字幕が同時に出るVCDでの鑑賞がベストかも。
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■CAST&STAFF |
監督 |
華山(ファ・シャン) |
出演 |
狄龍(ティ・ロン) |
林珍奇(リン・チンチー) |
谷峰(クー・フェン) |
徐少強(ツイ・シャオチャン) |
干榮 |
劉慧玲 |
強漢 |
呉杭生 |
・森 |
林輝煌 |
王清河 |
陳俊豪 |
李海生(リー・ハイサン) |
倫家駿 |
梁曼儀 |
王大衛 |
歐嘉霞 |
王晶晶 |
元華(ユン・ワー) |
李麗麗(リリー・リー) |
武術指導 |
唐佳(タン・チァ) |
脚本 |
邸剛健 |
林展偉 |
音楽 |
陳勳奇(フランキー・チェン)
クレジットは陳永U |
製作 |
邵逸夫(ラン・ラン・ショウ) |
方逸華(モナ・フォン) |
制作年度 |
1978 |
電單車
Young Lovers on Flying Wheels
■
「後生」に続き、狄龍(ティ・ロン)監督2作目の登場である。
今回は主演も務めて物語としてもより狄龍の思惑に沿った形成になっている、と思われる。
何にしろびっくりしたのがだ。
この作品、無理にカテゴライズするならば現代アクションコメディなのだ。ア、アクションコメディ?しかも現代?
「マジック・クンフー神打拳」より先に来てたりなんかして。
■流れ
いきなりアーパーなギャルと海辺でエッチ一歩手前をしている狄龍!
おお!今回はいきなり監督・主演の役得十分活用サモハン方式ですか!狄龍さんがですか!
と思ったらやっぱり純情青年演じてました、逃げてますこの人。
んじゃ、帰ろうか。
とそのギャルとバスに乗ったがギャルが乗り遅れ。
慌てて降りる狄龍共々、バスは行ってしまうのであった。
そこにヤングなバイカー達登場。
「俺のバイクに乗ってけよ」
というヤングの誘いにあっさり乗るギャルは狄龍をほっぽってそのヤングたちと行ってしまう。
導演 狄龍
おお、いきなし明るめコメディチックなオープニングではないか。
バイク屋の前。
「ほしーなー」
と眺めている狄龍だったが、金が無いので買えない感じ。
といきなり場所は功夫道場へ。
いつもの如く門下生の1人に黄哈(ウォン・ハー)の姿が。
狄龍はやっぱりここのエースだったが、練習組手の最中に
「バイクが・・・」
の一言を聞いて気がそれて相手のパンチが当たって、
どよよよよーん!
気絶する狄龍(笑
なんてベタなギャグを・・・
なぜか功夫大会。
決勝戦までは順調に勝ち続けた狄龍であったが、決勝戦相手の王青(ワン・チン)がどーも強い感じ。しかしもって優勝商品はなんとバイク(たぶん)とあって、一生懸命頑張る狄龍くん・・・であったがどーもバイクはもらえなかったらしい。
しかしもって今度は清純系の彼女をゲットした狄龍・・・
つーかこうやって書くと本当に軽い映画だなこれ。
ここがようわからんかったがどうもマフィアの李文泰(リー・マンチン)に借金したような気がするんだなこれが。
ついにバイクゲット!
嬉しくてエンジンかけたら暴走して
「マッスルモンク」の劉コ華(アンディ・ラウ)みたいになってる狄龍が面白すぎ。
バイクも彼女もゲットして幸せ一杯な狄龍でしたが、不幸は突然訪れるもの。
こそ泥の李海生(リー・ハイサン)と石天(ディーン・セキ)にバイクを盗まれる始末!
おまけに狄龍が李海生を捕まえようとした際に李海生の頭がカツラでトカゲの尻尾のようにカツラだけ残して逃げられているといったギャグつきだ!
「バイクが無いのにローンなんか払えるか!」
という盗まれたのは自分の責任なのに、一行に金を払おうとしない狄龍もおかしいが、遂には自分でバイク泥棒の捜査開始。
遂には李海生と石天の根城を見つけて二人を撃退。
それにしても弱々しい石天くん既に芸風確立ですな。
まさに若い時からいつもの如く、いつもの如し。
二人を警察に突き出してバイクも取り返した狄龍であったが、彼には最後の難問が。
清純系彼女の父親・姜南(チャン・ナン)が
「バイク乗りの不良なんかと交際は認めん!」
といって狄龍を跳ね除けたのであった。
さぁ狄龍くん、見事にこの親父をなだめすかして気に入られることなるか!?
終劇
■
・・・いったい何が撮りたかったんだー!?
というような作品である。
脚本は倪匡(イ・クオン)ということで、大きな破綻は無いのだがそもそもこの物語を通して観客に訴えかけてくるものが全然見えてこないのだ。見えてこないということは別の角度から考えるべきで、そうするとこの映画が
「とにかくアクションコメディに挑戦したかったのだろう」
と個人的には思わざるを得ない。ところどころ雰囲気が統一されていない張徹的なシーンもあるが、その張徹プロデュース作品の中で残酷的シチュエーションの主人公ばかりを演じさせられていた反骨精神であろうか、この映画はアクションコメディである。
じゃあアクションコメディとして観た時にどうかというと、やはり狄龍でコメディという特色はあるのだが、そのコメディな演出はやや散漫な感じでところどころしか面白くないのが正直なところ。まぁこの辺はこの作品が天才・許冠文(マイケル・ホイ)が
「Mr.BOO!!ギャンブル大将」を放つ直前に公開されているものなので、その前の作品としてはいささかしょうがない部分もあるか。何しろ素人監督だし。まぁその前に彼はバイクが好きなんでしょうね。
アクション面については功夫シーンもあるし、ラストには李海生との対決もあって十分か。バイクシーンもあるし。
それにしても随分と早い段階で芸風の方向が決まっていた石天くんの今後の運命を案じてしまうのでした。
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■CAST&STAFF |
監督 |
狄龍(ティ・ロン) |
出演 |
狄龍(ティ・ロン) |
葛萩華 |
程可為 |
姜南(チャン・ナン) |
王青(ワン・チン) |
李海生(リー・ハイサン) |
石天(ディーン・セキ) |
李文泰(リー・マンチン) |
林輝煌 |
黄哈(ウォン・ハー) |
武術指導 |
劉家良(リュー・チャーリャン) |
劉家榮(リュー・チャーヨン) |
脚本 |
倪匡(イ・クオン) |
音楽 |
陳勳奇(フランキー・チェン)
クレジットは陳永U |
製作総指揮 |
張徹(チャン・ツェー) |
制作年度 |
1974 |
吸毒者
The Drug Addicts
■
まぁ狄龍(ティ・ロン)監督作を紹介したのだからこの人の監督作も紹介しなければならんかな。今度は姜大衛(デビッド・チャン)監督作です。
いやぁ仲が良いというか強制的というかなんというか、今度は主演をその盟友・狄龍に託しています。
題名を読むと物語の予想が大体つきますよね・・・しかし
■流れ
おっといきなり重度の麻薬中毒者になっている狄龍さん。
通りがかりの王鐘(ワン・チュン)に
「お、お願いだ〜ヤクをくれ〜」
完全に堕落中です。
「ヤクなんかやるな!自業自得だ!」
と、狄龍をぶっ飛ばして取り合わない王鐘、
それにしても狄龍の堕落っぷりな演技が見ものです。
禁断症状で吐き気やら何やらで苦しむ狄龍。
遂には麻薬を持っていた爺さんに強盗。完全に落伍者です。
これを再び発見した王鐘が狄龍を強制連行すると、海辺の小屋に監禁。
「出してくれぇ!!ヤクをくれぇ!!」
禁断症状のピークにあった狄龍は発狂しまくり、若き狄龍の高い演技力がこれまた見ものです。
一晩明けて。
禁断症状を克服し、自分を取り戻しつつある狄龍。
自分を救ってくれた王鐘と固い友情を交わすと自分が館長を務める道場へ帰っていくのでした。
道場の門下生にはいつもの如く黄哈(ウォン・ハー)の姿が、100%の出演率ですな。
その後も王鐘とは交遊を重ねておりましたが、ここを激写する誰かが。
激写したのは警察。
なな、なんと王鐘は麻薬密輸組織の一員で彼と交流している狄龍の協力を得て、密輸組織撲滅に近づきたい感じ。
「そそそ、そんな馬鹿な!?」
自分を麻薬から救ってくれた王鐘が、麻薬をさばくディーラーだったなんて!?
真実を追究するためにも狄龍は警察の秦沛(ポール・チュン)と組んで捜査することに。
早速、王鐘が出入りしている店に行くが不在。
代わりにそこにいた江島に王鐘がいる所へ案内してもらうことに。
ところが行った場所には中毒になった女の李司棋がいるだけ。
江島らをぶっ倒してスタコラサッサ。
「あんたディーラーなのか?」
夜にビリヤード場で出会った狄龍と王鐘。
王鐘はそのことを否定するでもなくお茶を濁すとその場を後にする。
中毒になってた李司棋を確保すると病院へ護送。
一方、王鐘は王鐘で悩んでいた。
麻薬をさばいている自分こそが麻薬の怖さを一番知っている、だからこそ狄龍を助けたのだ。組織からも抜け出したい。
これを見逃すはずも無い密輸組織。
捜査をしている狄龍を消そうと殺害を王鐘に命じる。
狄龍殺害さる!!
密輸組織のボス・盧迪と腹心の李海生(リー・ハイサン)は邪魔者がいなくなって祝杯を挙げていたが、実はこれにはウラがあった。
更正しようと決心した王鐘が狄龍&警察と結託して一芝居うったのだ。
いつの間にやら狄龍と恋仲になっていた李司棋は、狄龍が死んだと聞いてまたも麻薬に手を出そうとしていたが、王鐘が可哀想に思い、実は生きている狄龍の元へ。
しかしこれを組織の手下である江島が覗き見。
「騙しやがってあの野郎!」
怒り爆発の密輸組織と狄龍&王鐘との戦いが今、始まる!
終劇
■
まぁ最初に言うとくと、
元のマスターが悪いかもしれないので姜大衛監督の責任ではないのかもしれないが、全体的に画面が暗いシーンが多く、晴れの海辺のシーンなのに暗かったりと採光加減が非常に悪い。同じ新人監督だった狄龍の作品にはその辺の問題を感じなかったので、単純にその辺の撮影スキルの差を二人の間に感じてしまったな。
物語は大きく何を訴えるでもなく、まず娯楽アクション映画であろうとした狄龍作品と違って、モロに麻薬に対する大きなテーマが込められており、比べて非常にメッセージ性の高い作品である。
色んなところで大した破綻が無いのは、バックに張徹(チャン・ツェー)がいたことと、やはりこちらも倪匡(イ・クオン)脚本であったことが大きいか。際立って面白い映画とは言えないがなかなか見応えのある作品に仕上がっている。
もう1つ言うと、ライバルはライバルを知る、か。
冒頭からいきなり麻薬に溺れた狄龍の演技は凄まじいものがあってまた珍しく非常に興味深い、そこから立ち直るといつものかっちょいい狄龍に戻って良い感じだし、様々な服を着こなしてかっちょいい。なかでもマフィアチックなスーツとグラサンの姿は決まってたな。姜大衛は狄龍の魅力を十分に引き出していたと思います。
それにしても私は岡村靖幸のファンなので、彼が麻薬を使用して逮捕されたことは非常にショックです。がっかりす。
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■CAST&STAFF |
監督 |
姜大衛(デビッド・チャン) |
出演 |
狄龍(ティ・ロン) |
王鐘(ワン・チュン) |
李司棋 |
秦沛(ポール・チュン) |
盧迪 |
江島 |
馮穀(フォン・イー) |
李海生(リー・ハイサン) |
劉家榮(リュー・チャーヨン) |
黄培基 |
劉俊輝 |
ケコ祥 |
陳天龍 |
伍元芬 |
黄樹棠 |
譚錦華 |
凌風 |
曾楚霖(ツァン・チョウラム) |
徐蝦 |
黄哈(ウォン・ハー) |
武術指導 |
劉家榮(リュー・チャーヨン) |
黄培基 |
陳全(チン・チュアン) |
脚本 |
倪匡(イ・クオン) |
製作 |
張徹(チャン・ツェー) |
制作年度 |
1974 |
風雲~鷹/金劍
The Revenger/Shaolin Revenger
■
台湾不遇時代の狄龍(ティ・ロン)作品である。
とはいえ、本作はなかなかの力作であった。
■流れ
いきなり何かの儀式に生贄の男が捧げられようとしている。
儀式を取り仕切っているのはあの大男・蕭錦。
ユーモラスなような気持ち悪いような・・・
とそこに現るヒゲ狄龍。
生贄の男を逃がしてvs 大男・蕭錦!
じつにあっさり敗北・撤退させて儀式を潰す。
さらに現れる謎の男・凌雲。
余談だが彼もショーブラ辞めて台湾に来たのかな、他にも台湾での主演作とかあるし。
ここは狄龍との対決は避けたというか、まぁようわからん。
見た感じ恋仲になって駆け落ちして追っ手に追われてるカップルが。
これを助けるのはまたも狄龍。
よもや、これが長い物語の始まりとなるとは・・・
(最初の儀式の意味はようわからんが)
「なにぃ!逃げられた!?」
ご立腹なのはどっかの悪富豪の王青(ワン・チン)、詳細は翻訳できなかったのだがここから逃げ出したのが先のカップルで、女はここの娼婦だったりしたのかもしんない。
「ヒゲの渋くてかっちょいい狄龍に邪魔されて!」
と、なるとだな。
当然、王青が仕返しを考えるのだが、話の一手二手先を読んだのか狄龍、なんと王青が1人で練習しているところに自らいきなり乱入!
「俺を捜してんだろ?倒してみろ、おら」
超強気な感じがまたまたかっちょいい。
狄龍vs王青!!
の末に狄龍が勝利するが、命乞いをして助かった王青は、まぁなんていうかこういうの逆ギレというかまっすぐギレというか、
「必ず殺してやる〜!!」
今度は山賊に襲われて逃げてる色白美人・施思(シー・ズー)を狄龍が発見。
彼女がファンデーションを使っているかいないかは本人のみぞ知るといったところか。しみ込むしみ込むしみ込む。
山賊に親族を殺されて一人ぼっちになった施思さん。
やはりここは狄龍と同居してラブラブになっておきますか。
季節は変わって冬。
すっかり仲睦まじいお2人であったが、ここに王青たちが強襲!!
な、なんと施思は王青の妹で最初から狄龍のところに潜り込ませていたのだったー!!
な、なんのため!?
いやそれよりも何よりもつっこまなければいけない使命がこの私、なるこうにはある!
ブサイク兄・王青で色白美人妹・施思、
なわけないやろー!!
そうするとなんですか、まぁ女の子は父親に似るというからお父さんがごっつ格好良くて、お母さんがワニのバケモノみたいな人やったとですか?
施思 「でも信じて!私は本当に狄龍を愛してるわ!」
おお勝手に話が進む。
狄龍への愛を絶叫する施思であったが、裏切られたと知った狄龍が彼女と会うことは二度とないのであった。
施思は既に狄龍の子供を宿していたというのに・・・
再び狄龍vs王青!
この戦いもやはりは狄龍が勝つかに見えたが、やはり王青は狡猾な悪!顔が悪!口が悪!
小屋に狄龍を誘い込むと大勢の手下で一斉強襲!
さらに小屋ごと狄龍を爆破!!
哀れ狄龍、大口おばけワニ王青の前に倒れるのであった・・・
禍根を断つため、王青は妹までも手にかけようとする。
これを逃がしたのは先の謎の人物・凌雲であった。
実は彼にも王青に対する遺恨があったのだ(たぶん)。
一番最初に狄龍が逃がしたカップル。
あのカップルは逃げて子供を二人もうけて、たぶん凌雲が彼らの師匠で、王青はそのカップルの居場所を突き止め皆殺し。1人の子供は行方不明に、1人の子供は王青にさらわれていたのである。
十数年後。
「・・・というわけだったのよ。」
まるで今までの話が全部施思の思い出話だった感じの展開になってるのだが、今度は
母 施思
息子 狄龍
武術の師匠 乞食2人
といった人物関係である。
真相を知って父の仇討ちを決意する狄龍、その前になぜか母・施思が自害。なんで?
早速仇討ちの旅に出る狄龍。
その頃、王青家では慌しくなっていた。
謎の人物に手下を次々と殺される事件が起きていたのだ。
犯人探しに出かけるのはいきなり飛び蹴りで登場するところが何ともフラッシュレッグな譚道良(レオン・タン)である。
そしてこの事件の犯人はツンデレアイドルの徐楓(シー・ファン)だったりする。
さぁクライマックス!
徐楓は王青家に乗り込んで大暴れ!
その後を追った狄龍も乗り込んで大暴れ!
狄龍と徐楓がツーショットで戦うというのはショーブラでニアミスして徐楓さんは早々と台湾に渡ってしまったためになかなか見られなかった貴重な取り合わせである。
そのうち、師匠の乞食も一緒に戯れていたりなんかして。
王青の手下として応戦する譚道良であったが、ここに今度は凌雲が現れて真相が明らかに!
先の殺されたカップルの行方不明になった子供の1人が徐楓で、王青にさわわれたのが譚道良だったのである!
・・・若干物語の根幹を2人に持ってかれてしまった狄龍であったが、主役こそ狄龍!
さぁみんなで力を合わせてワニオバケ王青を倒すぞ!
終劇
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まず作品から感じられる製作者たちの
「面白くしてやるぜ!」
みたいなパワーがこの当時の映画ならではの興味深いところで、金儲けだけで物作りに従事していないひたすら純粋に面白い映画を作ろうとしている姿勢を評価したい。
特に印象に残ったのは施思が王青の妹だったとバレるシーンで、恐らくスタジオセットに粉雪を降らせたのであろうが中々気合の入ったシーンだ。
アクション面でも武術指導が誰だかわからなかったが、非常に素晴らしいものを見せており退屈しない。
後はこれと言って凄い特徴があるわけではないのだが、台湾功夫映画のエナジーみなぎる良作である。
二番手、三番手の悪役を演じることの多い王青としても悪役的代表作の1つであろう。
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■CAST&STAFF |
監督 |
鮑學禮 |
出演 |
狄龍(ティ・ロン) |
施思(シー・ズー) |
王青(ワン・チン) |
凌雲 |
徐楓(シー・ファン) |
譚道良(レオン・タン) |
蕭錦 |
〔人冬〕林 |
脚本 |
倪匡(イ・クオン) 他 |
制作年度 |
1979 |
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