| 監督・武術指導 |
唐偉成（ウィルソン・タン） |
| 出演 |
古龍（クリフ・ロク） |
| 唐偉成（ウィルソン・タン） |
| 李海生（リー・ハイサン） |
| 林克明 |
| 鄭康業 |
| 小侯 |
| 陳龍 |
| 廖安麗 |
| 曾楚霖（ツァン・チョウラム） |
| 神仙 |
| 李擎柱 |
| 許瑩英 |
| 黄一飛（ウォン・ヤッフェイ） |
| 楊世鈞 |
| 楊華 |
| 祁浩釗 |
| 岑潛波 |
| 脚本 |
張森 |
| 製作・製作総指揮 |
呉協建 |
| 制作年度 |
1979 |
殺手剋星/十大殺手
Ten Magnificent Killers
仁義なき遊戯～十人の刺客～
■
山怪武術指導ってのが何ともなぁ。山怪は悪役専門の役者で、悪役といっても小悪党を演じることが多く、日本で最も知られている役は
「
ドランク・モンキー・酔拳」の鉄頭役だろう。
他の出演作を思い返してみてもやっぱり小悪党ばっかりでうーんまぁ「
盲拳怪招」でせいぜいかなぁラスボス的存在になっているのは。
それだけに功夫の腕前も例えば本当はメチャクチャ強いはずの趙志凌先生が功夫映画での役柄では何故か中途半端に強くて結局弱いことが多い、弱い悪党を演じているように山怪もまたそうなんだろうか？という疑問が湧いてくる。
まぁ振り付けの厳しさで有名な袁和平（ユアン・ウー・ピン）や洪金寶（サモ・ハン・キンポー）作品にも登場しているので案外とそうなのかもしれない。
それで思い出したが山怪のように鮟鱇型体型の持ち主は重心がドシッとしっかりしているから強いと昔聞いたことがあるなぁ。
しかししかし本作は色んな意味で実に興味深い作品である。
■
流れ
山怪師匠に20年育てられた張力（チャン・リー）は、
その山怪から功夫技を仕込まれて残り一つの技で免許皆伝の身。
ところが山怪、
「最後の技を教えて欲しくば契約書にサインです」
読むとその契約書、利益の半分は必ず師匠に渡すこと。金も女もね。
誰がこんな契約するか！・・・と思ったら意外とあっさり契約してしまう張力。
ええっ！？・・・と私本人は思ったがあれですよ、私なんか契約なんかしてしまったらおいそれと破棄出来ない印象が強いんですが、この人ら契約反故を何とも思っちゃいないんですね。だから安易に契約しちゃう。信用できんなぁ本当に。
契約したら早速山怪から殺しの依頼。
訳もわからず、しかしわからないのにノリノリでまずは刑事を毒刀で殺害、さらに上官の方野に毒刀で奇襲をかけて重傷を負わす。
仕事完了三千元！
山怪・張力は方野は死んだと思っていたが、迅速な処置で一命を取り留めて山に篭る。そこで、警部候補の若者・朱志明に功夫技を仕込み始める。
一方でここから山怪・張力のあばら家には様々な殺し屋が現れる。
これが十大殺手。
犬打ち棒の達人、棺おけから出てきた達人、托鉢坊主の江正、なぜかやらせてくれる女（これ仕込み？）、剣の達人・泰山、占い師の宋錦成。
その全てを師匠と弟子のコンビネーションでなんやかんや、グダグダな雰囲気もありつつ倒していく。
実はこれ、殺し屋同士の争いであり
山怪は殺し屋。
そして十大殺手を放っているのはライバル殺し屋の楊斯（ヤン・スエ）なのであった。
ほんで間間で方野の元で修行を続ける朱志明。
張力 「つーかこっちから仕掛けてやろうぜ」
ってことで、十大殺手は残り五殺手。
それもそうだがあばら家で延々と戦いを繰り返すのは幾らなんでも絵的にこれ以上耐えられない。
高利貸しを営む殺し屋・・・この人、野原で高利貸しやってるよ。どんだけ予算の無い映画なのかと。さっきからギャラのみやないかと。
ほんで医者、ほんでなんか特色の無い誰か、
いよいよ楊斯の本拠地でまずは側近の江島を倒しいよいよ楊斯！
・・・まぁせっかく発売されましたので、ここからのネタバレは鑑賞して頂くとしましょうか。
終劇
■
以上のことをお読み頂ければわかる人にはわかると思うが本作はアンチテーゼのアンチテーゼである。
威厳があって厳格で小綺麗な師匠、例えば
「
ワンス・アポン・ア・タイム英雄少林拳」の陳觀泰（チェン・カンタイ）師匠は酔いどれの小汚い飲んだくれ爺さん「ドランク・モンキー・酔拳」の袁小田（ユアン・シャオティエン）に変わった。
生真面目で情に厚い主人公の青年・劉家輝（リュー・チャーフィ）は食い逃げセクハラ悪さ大好きのチョイ悪兄ちゃん・成龍（ジャッキー・チェン）に変わった。
この二人のキャラクター像がコメディ功夫の基本になり、後は強力な悪役さえ配置すればコメディ功夫は成り立った。
シリアスな功夫片をアンチテーゼしてコメディ功夫というジャンルを完成させたからこそシリアスな功夫片は正統派功夫と呼ばれるようになった。コメディ功夫という規範の出来上がりである。
ところが本作はこの偉大なるアンチテーゼさえも更にアンチテーゼさせてしまった。
あばら家に住む老人と青年。
その構図は従来のコメディ功夫片と全く一緒だが、酔いどれ師匠は殺し屋の本物悪となり、主人公であるはずの青年は殺し屋に育てられた冷徹な殺人鬼という観客が全く肩入れ出来ない男に成り変わった。アイツを殺せば５千元と不適な笑みを浮かべる青年の姿はまるで「ドランク・モンキー・酔拳」のジャッキーと悪役・黄正利（ホアン・チョンリー）が合体したかのようなキャラクター像である。
この老人と青年、彼らがあばら家で敵を待ち受け、さもすれば出向いて戦いに赴き、助け合いながらのシッタンバッタンバトルはなかなか小気味良いものでもあるし、この全く思い入れ出来ない主人公が最後はどうなってしまうのか？やはり因果応報かそれとも！？・・・な展開はワクワクさせるものがある。
ただ残念ながら、役者としてはこれが代表作と言っても良い活躍ぶりであった山怪ではあるが、武術指導者としては失礼ながら些か弱かったか。
というのも十人の様々な殺し屋たち、それぞれキャラクターは描き分けてあるのだが、いざ戦いとなると皆同じような戦いぶりで個性が感じられないのだ。この辺り袁和平やサモハンであれば色とりどり多彩なアクションを構築してみせただろうに、そうすれば文句無し異色の傑作に成り得ただろうにとここが残念だ。
ともあれ、協利の功夫映画がどんなものであるかを知るとしたら本作は
「これぞ協利！！」
と言える作品であり、後の協利作品を鑑賞するためのウォーミングアップ的役割を兼ね備えた作品である。
にしてもこれ、製作費の安さも凄いだろうなぁ正にギャラだけって感じで。
