四兩搏千斤/泥鰍過江
Shaolin Ex Monk
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めちゃくちゃ正直に言うと醒龍さんところのブログ(
電影フリークス)で話が出ていたので試しに観てみたりして。
監督の張信義と言えばジャッキー
「
蛇鶴八拳」の脚本を書いた人物で、他にも数々の功夫作品に関わっているのでその手好き輩の間ではよく目にする名前だろう。
本作は特に
「
スネーキー・モンキー・蛇拳」に非常に影響を受けている作品で(要はパクリ度が高い)、物語の展開もBGMもそのまま使っている箇所が多い。・・・多いのだが。
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流れ
功夫映画としては非常に!
龍世家 「ああてめぇ!?ウチの娘とまんまんちゃんあんしやがって!!」
と龍世家にぶっ飛ばされるのは柯受良(ブラッキー・コー)。
何と柯受良は金無し貧乏人のクセして、既に名家・龍世家道場の1人娘・黄杏秀(セシリア・ウォン)を口説き落としている状態で身分違いの恋愛真っ最中、こっそり昨日の夜は夜這いしてうっふんあっはんお楽しみ♪(多分)
これに怒った父の龍世家、そりゃ怒るわな。
功夫映画としては非常に!珍しい冒頭の展開だ。
龍世家 「誰がお前なんかに娘をやるか!もっと強い男がええんじゃ!」
ってなわけで、張紀平師範代らが柯受良をフルボッコ。
・・・貧乏青年が虐められて強くなるのはこの手の映画のお決まりだけど、ここまで虐められる原因のハッキリした作品もそうはないなぁ。
自分の孫(?この辺がよくわからない)が虐められていると聞いて、警察に駆け込む爺ちゃん・徐忠信。
一方で、「もう二度と現れるな!」と龍世家が言っているにも関わらず、黄杏秀との恋仲を諦めようとしない柯受良、
龍世家 「ならば殺してくれるわ!」
「ちょと待てい!」
といきなりその騒動に割って入ったのは劉忠良(ジョン・リウ)様。
流石はなんちゅうか実に唐突な登場の仕方。
龍世家 「誰やねん、全く誰やねん」
劉忠良 「俺は劉忠良だ」
龍世家 「・・・つーか、物語的に誰やねん」
いきなり全く赤の他人の揉め事に割って入って、しかも張紀平師範代らを蹴散らす劉忠良様。龍世家とも戦うのだが、
「やめい!」
と徐忠信爺さんが頼んで連れて来た警察長官・岳陽。
劉忠良 「いやいや人を殺すのは違法だから止めただけです。」
と言ってその場を立ち去る劉忠良、この男の目的は?
そのまま劉明・史亭根が経営する宿にレッツゴーな劉忠良。
劉忠良 「俺、ここ泊まるから。早速、女を手配してくれ」
・・・いきなりですか。この映画、やたら女好きが登場しますね(笑
赤曼麗(赤は本当の文字じゃありません)という女ゲット!
劉忠良は俗家和尚と呼ばれる人物を探しているようで、英語題の"Shaolin Ex Monk"ってやつね。
とこの宿へ先ほど助けてくれたお礼を言いに来た柯受良。
しかしここで出くわしたのは張紀平師範代ら。
またもここで虐めに遭ってフルボッコな柯受良。
また張紀平って役者さんはよぉ、もう
顔が人を虐めるために生まれてきたみたいな顔してやがるから、ピッタリすぎるのよ、石天(ディーン・セキ)さんみたいな愛嬌の欠片もありゃしない。ありゃしないのですが・・・(後述)
フルボッコされた後に現れる劉忠良、遅いがな。
柯受良 「この前はありがとうございました!強くなって黄杏秀という可愛い彼女ゲットしたいので弟子にしてください!」
劉忠良 「おおその動機が気に入った!」
・・・おお!なんちゅうかもう女のため女ありき女大好きな入門動機!
虐められて強くなりたいとかそんなんじゃなくて女ありき!!
「スネーキー・モンキー・蛇拳」でジャッキーが"猫爪くずし"を開発した時のあの素晴らしいBGMと共に厳しい修行開始!厳しいがしかし!
柯受良 「黄杏秀ゲット!黄杏秀あれやこれや!うしゃしゃしゃしゃ!」
と妄想満載現実完成に向けてやる気は最高潮!
柯受良に功夫を教える一方で劉忠良は捜索続行。
とそこに
いつからそうやって待ってたのだ(笑
こうやって待ち受ける敵の姿が(笑 あはははは(笑
何やっとんじゃ、きみら(笑
遂に劉忠良が探す俗家和尚から逆に刺客が放たれてきたのだ。
ちなみに下で支えているのは我等が台湾デブゴン・荊國忠。
ここでの劉忠良とのバトルは荊國忠はこんなにも動けたのか!?というほどに台湾デブゴンの魅力を余すことなく伝えるアクションだ(超大袈裟)!
台湾デブゴンを蹴散らした劉忠良、しかし自分が捜索していることを既に知られている・・・何処かで情報が漏れている?と周囲を疑う。
かなり上達した柯受良。
黄杏秀 「ほんまかいな!」
といきなり襲い掛かってきた黄杏秀姫。
今回、ここまで全くアクションしなかったのでもうしないのかと思ってました。
この辺のイチャイチャした功夫バトルが
「
拳精」を髣髴とさせますな。どちらが先に撮られたのか知りませんが。
物語は恋のうっふん功夫修行♪から一転する。
夜半。
いきなり黒覆面の男に襲われたのは黄杏秀の父である龍世家。
ここでの双刀を持った黒覆面と槍術で対抗する龍世家との功夫バトルは素晴らしい!
この作品はもうここで「傑作だ!」と思わせるに十分のバトルである!
抜群のファイトシーンの末に殺されてしまう龍世家。
黄杏秀 「犯人は桑田真澄似のあの男でしょ!!」
確かに現段階では謎の多い劉忠良が一番怪しい。
怒った黄杏秀は宿に殴りこみ!
一方、桑田真澄似の劉忠良は・・・
うっふーんあっはーん♪
・・・先の赤曼麗さんとお楽しみ真っ最中(笑 ほんまにもう。
劉忠良 「な、何じゃお前ら!!これからだというに!(なにが、ナニが)」
柯受良 「俺の師匠はそなこたしねぇ!」
黄杏秀 「お前ら付き合い短いやんけ!」
警察長官の岳陽が尋問するも、
劉忠良 「だからその日の夜も赤曼麗さんとお楽しみでした!」
で、赤曼麗さんも証言をしたので一応は開放される劉忠良。
警察長官・岳陽さんは正しき心を持った警官であったが、村の平和を考えて劉忠良にここから出て行くように警告。
それでも俗家和尚探しを止めるわけにはいかない。
遂に俗家和尚と思しき黒覆面に待ち伏せされ対決する劉忠良。
両者互角の争いかと思われたが、ほんの少しばかり黒覆面が上手で負傷したらあっさり逃げる劉忠良様(笑 死んだら終わりだもんね。
一方でメキメキと腕を上げた柯受良。
実は彼だけが劉忠良師匠の真の目的を聞かされていた(ほんでもって聞き込みも頼まれていた)。
五年前。
俗家和尚と呼ばれた男は20人なる殺人を犯して金塊を強奪。
この村に潜んでいるということから彼を逮捕せよと国から指示を受けた劉忠良は秘密捜査官だったのだ。
劉忠良 「俺の女が心配だ!様子を見に行ってくれ」
と頼まれた柯受良が宿に向かうとそこに待ち受けていたのは張紀平師範代ら。
しかし今度はいつものあれですね。柯受良はガンガン強くなってますから、逆に張紀平師範代らをフルボッコ。張紀平さんの悲劇はここから始まった。
徐忠信 「つーか、張紀平が龍世家殺しの犯人なんじゃないの?死んだら道場もゲット、黄杏秀たんもゲットでお得じゃん。」
と徐忠信爺さんがポロリ。
柯受良 「なるほど!!」
なるほどじゃねぇ!と私、なるこうは思ったが、
早速、警察長官・岳陽が張紀平を調べると凶器発見!!
いきなり殺人罪で捕まってしまう張紀平。
張紀平 「俺じゃねぇ!俺じゃねぇ!やめてとめて!」
一気にへっぽこ芸風になってしまう張紀平さん。
こうなってしまうとあの大きな瞳でへっぽこな表情なので可哀相になってきます。
劉忠良 「それは違うぞ!」
と柯受良連れて張紀平救出に向かうが、ここに劉忠良が泊まってた宿の主・史亭根が立ち塞がる!
彼が俗家和尚の手下だったので情報がダダ漏れだったのだ。
史亭根を程なく倒して再び留置所へ!
しかし残念ながら張紀平は既に殺されていた。
"捜索をやめないとこの先も多くの人が死ぬことになる"
と脅迫文を残した俗家和尚。
いやいやしかし待て、ここまで来ると消去法ってやつだ。
俗家和尚の正体は・・・って皆さんもうおわかりですね。
劉忠良と柯受良でラストバトルに挑む!!
終劇
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・・・傑作だ!
確かにジャッキーコメディ功夫バリバリの亜流でパクリ頻度も高い作品だが、無理に難癖付けるなら黄杏秀姫のアクションが少ないといったぐらいで、お決まりの平凡青年修行ストーリーにヒロインとの純愛絡めた(純愛か?)あくまで当時の功夫映画としてはであるが新鮮味もたらした展開と共に"劉忠良刑事の事件日誌"と言った具合にサスペンス風味が(バレバレだが)大筋を進める単純ながらも面白い物語、ダラダラした冗長が一切無い飽きの来ない編集テンポ、徐忠信と柯受良、2人の武術指導家が頑張った一流の功夫アクションとほとんど隙の無い実に完成度の高い功夫映画だ。
コメディ功夫幕開け時代の作品は数多く観て来ているが、ジャッキー、洪金寶(サモ・ハン・キンポー)、袁和平(ユアン・ウーピン)、彼らを除けばちょっとここまで細部に渡って完成度の高い作品をお目にすることはそうそうない。
妙にダラダラ長いシーンが続いたり、突然の陰惨なシーンに閉口したり、不必要な残酷描写があったりと大抵は一箇所二箇所とダメシーンってのが存在するものなのだが、本作は一切無いと言ってもいい。これは本当に珍しい。おまけで言えばヒロインも黄杏秀たんなので可愛い(笑
思い返せば張信義が脚本書いた「蛇鶴八拳」もサスペンスなストーリーだったし、「
南拳北腿活閻王」(脚本)もそうだった。本作はこれらの作品を書いてきたノウハウとジャッキーコメディ功夫の規範を混ぜ合わせて作った彼の集大成であり傑作なのだな。
・・・何か逆にとても良かったので他に書くことが無いな。
これまた現実味が無いかもしれないが、
国内ソフト化を切に望む一作です!
と言っておこう。
あっちなみに私が見たバージョンはタイトルが違うのですが読めませんでした。
※読めないタイトルは醒龍様が教えてくれました!(「泥鰍過江」)