■CAST&STAFF |
監督・脚本 |
丁善璽(ティン・シャンシ) |
出演 |
柯俊雄(オー・ジョンホン) |
向華強(チャールズ・ヒョン) |
王羽(ジミー・ウォング) |
石天(ディーン・セキ) |
茅瑛(アンジェラ・マオ) |
ジョージ・レーゼンビー |
恬〔女尼〕(ティーニー) |
陳龍 |
ジュディス・ブラウン |
楊斯(ヤン・スエ) |
張佩山 |
韓義生 |
朱鐵和 |
劉家榮(リュー・チャーヨン) |
鹿村泰祥 |
韓英傑(ハン・イェンチェ) |
エリザベス女王 |
製作 |
鄒文懐(レイモンド・チョウ) |
制作年度 |
1975 |
鬼馬功夫
Dirty Kung Fu
■
さーてと。
これで劉三兄弟が関係したメインの功夫映画っては大体制覇したかな?
劉家良(リュー・チャーリャン)作品は功夫片時代のレビューは全部やったし
今回の劉家榮(リュー・チャーヨン)もこれで功夫片は全部・・・かな?
劉家輝(リュー・チャーフィ)は「少林寺の復讐」が残ってるけどあれはまた巡り合えた時でええと思ってるし・・・
汪禹(ワン・ユー)である。
思えば、
"ジャッキー・チェンになるはずだった男"
として幾度か評価してきた傅聲(アレクサンダー・フー・シェン)もいたが、簡単に言うと
「蛇拳」「酔拳」で生まれたジャッキーのキャラクター像は
傅聲(アレクサンダー・フー・シェン) +
汪禹(ワン・ユー)
と言った方がより鮮明であろう。
やはりは「マジッククンフー神打拳」でコメディ功夫の先鞭をつけた汪禹だけあってそれから数年経った本作では飄々としたコメディ演技にも明らかに小慣れており、コメディアクターとしての安心感もある。その全てにおいてどーも信用置けないが憎めないキャラクターは彼独特のものでこれと爽やかな二枚目傅聲が上手いこと交わればジャッキー・チェンになるわけだ。こんなこと言ったら両者に失礼ではあるのだが。
今回も「功夫小子」で劉家榮監督の特性について説明したとおり、茶化した功夫映画ではあるのだが・・・・
■流れ
ほんとに汪禹は"ケチな"の付く役柄が上手い。
今回はケチな賞金稼ぎ。そのケチケチ度が凄い。
指名手配の犯人を見つけては自分で戦うのではなく、客棧の猛者たちに戦ってもらうことを依頼してやっつけてもらい、麥嘉(カール・マック)署長のいる警察に突き出して猛者が貰う賞金のオコボレを貰おうといったものだ。
ケチくせぇ!!
そんな超隙間産業が上手くいくはずもないのに今日も今度は指名手配犯の
馮克安(フォン・ハックオン)を劉家榮(リュー・チャーヨン)に倒してもらったりなんかして・・・って、あーっ!
オコボレ貰おうと思ったらいつの間にか自分まで指名手配犯(何の罪か不明)になってたりなんかして!というわけでオコボレも貰えず逃げる汪禹。
この自分への指名手配がどうなったのかイマイチわからなかったが、
そういえばここは石天さんの頁でしたね。
来ました石天(ディーン・セキ)さんの登場です。
賭博場で油売ってた指名手配犯の石天さん。
よくわかりませんが石天さんだから軽犯罪程度でしょうね。
そして石天さんだから・・・と今回は直接対決の汪禹!(ずるい奴だ)
「わっはっは!俺にかなうものか!」
と石天さんは猿拳の構え!
「猿拳ではない!キングコング拳だ!」
!?
おお確かに動きはキングコング拳!!
・・・で、でも弱い。
ぴょんぴょん飛び回ってはいるが如何せん流石は弱いいつもの石天さん。
敢え無く汪禹に得意のガチャ目で御用となるのでした・・・というか、
本作ではずっとガチャ目でした。出番終わり。
もうよせばいいのにそれでもこの超隙間産業を止めない汪禹。
指名手配の中でも別格の強さらしい唐偉成(ウィルソン・タン)を見つけたので大金をせしめようという腹でまた客棧の猛者に頼み込む。
「しょーがねえなー」
ってことで今回依頼をOKしたのは宋錦成。
顔はどうしようもないがその腕前は一級品の彼・・・であったがいざ唐偉成と戦ってみるとコイツが滅法強く、敢え無く返り討ち。
逃げ出した汪禹はすぐさま今度は劉家榮に依頼。
「あいつか!」
ってことで意気揚々と倒しに向かう劉家榮。
流石に劉家榮だからの好勝負であったが、突如唐偉成が使い始めた神打の術の前に敗れ去ってしまう。
「劉家榮まで倒されてもーた!」
ってことで最後の望みである剣豪・徐少強(ツイ・シャオチャン)に依頼。
寡黙格好良い徐少強。
唐偉成とは劉家良作品で悪役同士という間柄の中々レアな対戦である・・・何だか一杯あったような気もするが・・・ないか?
剣同士の争いの末・・・徐少強も敗退。
客棧の奥で意味ありげにじっとして活躍の場面を溜めていた割にはあっさりな敗北である。
またも逃げ出した汪禹。
流石に強豪が3人も倒されてしまうと後が無い。
サモハンも劉家良も劉家輝もこの作品には出ていない。
劉家輝が出ていたら彼が倒すんでしょうけどね。
しかし、汪禹には有利な面もあった。
強豪3人との戦いを間近で全部見ていたため唐偉成の技を知っているということだ。
意を決した汪禹は自らが唐偉成を倒すため独自に修行開始!
まずは投げ技が得意な唐偉成に対抗するため掴まれてもスルリと抜け出すウナギ拳を編み出し、さらには厄介な神打に対抗するための秘策も練る。
さぁ完全一夜漬けではあるが唐偉成と対戦だ!!
終劇
■
うーむ、これは面白い。
なかなか俺好みな作品である。
さて今回も茶化した功夫映画を作っている劉家榮であるが、他の彼の映画とちょっと違うことがあって、それは
"功夫シーンが濃密している"
ってところにある。
サモハンと共同製作して作った「燃えよデブゴン6」はともかく、他の作品だと簡単に言うと、
いざ始まれば素晴らしい功夫シーンだがなかなか始まらない
ってのがあって、特に「ガッツ・フィスト魔宮拳」なんかラストの劉家輝vs羅烈(ロー・リエ)はかなりの名ファイトの一つなのだが、それまでの展開で功夫シーンが少なくてヤキモキするような作品である。
そこに行くと今回の本作は功夫映画のお約束である仇討ちも復讐も師匠も無ければ、道場の争いも政府との争いも無い。見事にそのようなお約束が出てこないオリジナリティある作品でありながら功夫シーンはたくさん散りばめてあってその辺も飽きさせることが無いといった、
功夫映画を茶化しているのに功夫シーンはたくさん
という矛盾的課題をちゃんとクリアしているのだ。
前述の通り、功夫猛者たちのファイトシーンが盛りだくさんで武術指導は劉兄弟となればアクションはお墨付き。さらにちゃんと中盤には息抜き(?)という意味でも石天さんの出演がブレイクタイムとして機能しており物語の構成も十分なものがある。
功夫映画をまだまだ見知っていない輩からすれば、いつものように野原で戦っている姿を見て
「どれも一緒じゃん」
と思うかもしれない。
しかし、その野原で戦う姿に如何に違いを見出せるかで功夫映画の世界に一歩深く入り込めるかどうかということになるのだ。
|
■CAST&STAFF |
監督 |
劉家榮(リュー・チャーヨン) |
出演 |
汪禹(ワン・ユー) |
唐偉成(ウィルソン・タン) |
黄杏秀(セシリア・ウォン) |
劉家榮(リュー・チャーヨン) |
徐少強(ツイ・シャオチャン) |
石天(ディーン・セキ) |
麥嘉(カール・マック) |
馮克安(フォン・ハックオン) |
宋錦成 |
魚頭允 |
陳會毅(チェン・フォンイー) |
陳龍 |
杜少明 |
何柏光 |
武術指導 |
劉氏兄弟 |
脚本 |
倪匡(イ・クオン) |
製作 |
何秀霞 |
制作年度 |
1978 |
鐵漢柔情/過客
The Young Dragons
カラテ愚連隊
■
呉字森(ジョン・ウー)の最新作は三国志のエピソード"赤壁の戦い"を描いた作品になるという。
考えてみればあれほどたくさんの面白いエピソードがあるのにも関わらず、未だに香港映画で三国志を題材にした面白い作品を観ていない、個人的には三国志の映画さえも観たことがないのだが、考えてみれば隅から隅まで魅力的なキャラクターが登場するこの大歴史スペクタクルを映画化するのは非常に難しいことなのだろう。たかだか230年程度の歴史しかないハリウッドにしてみれば三国志なんてリアリティの無い事なのかもしれない。
だいたい・・・
三国演義はすばらしい物語であるが、歴史に"演義"と"正史"があることからしておかしい。そんなもんは当然日本の歴史には存在しない。最も、日本の歴史は司馬遼太郎が作ったといっても半分冗談でもないのだが。
それにしても一騎当千、三国武将達が暴れまくる物語は確かに見てみたいものである。個人的には「三国無双」とのコラボレーションで映画作ったらいいのになぁと思ったりして。
さて話を脱線させておいて、呉字森の処女作「カラテ愚連隊」である。
感想としては"意外だった"というところもある。
■流れ
姜南(チャン・ナン)と馮克安(フォン・ハックオン)がある田舎町を牛耳る。
武器の密輸を生業としていた彼らだったが、干洋(ユー・ヤン)、呉明才(ウー・ミンサイ)らの・・・まぁ確かに愚連隊だわな、その愚連隊がブツを横取り。
当然、怒り狂う組織と改めて愚連隊が取引するがブツの代わりに石ころ渡したためにバトルして、見事武器も金も戴くことに成功する。
義賊的活躍で・・・とはいっても金は売春宿の胡錦(フー・チン)と遊んで使ってて一般市民は何も関係ないが・・・だから愚連隊か。
このまま金持ってトンズラすりゃよかったのに、映画なのでそうはいかない。
ひょんなことから干洋が知り合った刑事の劉江が邪魔者扱いされた組織に崖から突き落とされ、劉江の恋人であった恬〔女尼〕(ティー・ニー)はもともと父の仇でもある姜南のところに胡錦と共に乗り込み、復讐の機会を伺ったが逆に殺されてしまう。
義憤にかられた干洋は姜南一派に殴り込みをかけ、1人ずつ地獄に落としていくのだが愚連隊の最後はやはり愚連隊で・・・
終劇
■
やはり自身が助監督を務めていた張徹(チャン・ツェー)監督
「刺馬」と似た雰囲気がある。主人公が絶対的な善ではなくどちらかといえばしがらみのある人物で、義憤と正義感の中で散っていくサマは同じだ。しかし、まだまだ処女作ということで師匠・張徹に迫る程の勢いをこの作品は持っていない。これは勿論まわりのスタッフや制作費、配役の問題も含めて同情の余地はあるのだが、これが呉字森の処女作と考えると若干残念なところもあるか。
感想としては"意外だった"というところもある。
というのも、書籍資料を読み漁ると"残酷"とか"滅びの美学"という言葉が並んでおり、また掲載されているスチールも白黒ということもあって、
"血なまぐさいドロドロした復讐劇"
といった暗めドロドロを想像していたからで、実際拝見すると確かに死人の多い映画ではあるが、全体的に青空をバックにした爽やかな背景を舞台にしたロケーションが多く、画そのものがスカッとして明るいのだ。物語そのものは明るくないが、画は
「帰って来たドラゴン」のように明るい。一種の爽やかさがあったのが意外だったのだが、考えてみればこれも明るい青空の下、殺し合いを続けた「刺馬」と同じなのだな。
面白いところは成奎安(シン・フイオン)か(笑
元々裏方さんであった彼の役者デビュー作は「狼の烙印」('84)ということになっているが、更に11年も前である本作が最初なのかもしれない。馮克安の後ろにいる子分でチラッと顔が出ているだけだが、あのインパクトある顔なので一目でわかります。そして、だいたい呉字森映画の出演役者といえばまさに彼、成奎安ではないか!ってところが実に面白い。「男たちの挽歌」から何から何まで出ているような印象の彼である。それにしても処女作からかよ。
も一つ面白いところは陳元龍(ジャッキーの前の芸名)か(笑
武術指導を陳全と一緒に担当してなかなかのアクションを構築している。実際本人が出ているかどうかは確認できなかったが、出てるのかもしんない。
しかし、現代において
監督 呉字森(ジョン・ウー)
武術指導 成龍(ジャッキー・チェン)
となれば、大変な夢のプロジェクトになってしまうね。
今をときめく呉字森の処女作を、今もときめくジャッキーが振付けていたてtのも実に興味深いところです。
・・・あっ。
ここは石天(ディーン・セキ)さんの頁だったりして。
石天さんは胡錦の売春宿で筆卸を頑張るスケベ兄ちゃんの役です。
いつもの通り、いつもの如し。
つか、全然物語に絡んでいない気がしたなぁ。
|
■CAST&STAFF |
監督 |
呉字森(ジョン・ウー) |
出演 |
干洋(ユー・ヤン) |
恬〔女尼〕(ティー・ニー) |
胡錦(フー・チン) |
何光明 |
呉明才(ウー・ミンサイ) |
李峰 |
馮克安(フォン・ハックオン) |
石天(ディーン・セキ) |
姜南(チャン・ナン) |
劉江 |
鄭雷 |
尹發(ワン・ファ) |
成奎安(シン・フイオン) |
銭月笙(チェン・ユーサン) |
火星(マース) |
呉字森(ジョン・ウー) |
武術指導 |
成龍(ジャッキー・チェン)
※クレジットは陳元龍 |
陳全 |
脚本 |
呉字森(ジョン・ウー) |
倪匡(イ・クオン) |
音楽 |
願嘉輝(ジョセフ・クオ) |
製作 |
鄒文懐(レイモンド・チョウ) |
制作年度 |
1973 |
最佳搏殺/殺出重圍 Deadly Strike/Breakout From Oppression
■
劉家良(リュー・チャーリャン)ショーブラ時代の監督作は全部観たと思っていたがこの作品はやばい。
製作はショーブラではないが1973年という製作年度はバリバリのショーブラ時代、張徹(チャン・ツェー)監督、劉家良武術指導の
「ブラッド・ブラザーズ/刺馬」が公開されていた時代である・・・この時代に劉家良が監督作など作れたのであろうか?しかも主演は当時無名の劉家輝(リュー・チャーフィ)である。
■流れ
警察とひと悶着起こしたりするちょっと暴れ者な流れ者で武芸者(者だらけ)の劉家輝はフラリと立ち寄った村で、不審な民家を発見。
何が不審って慌てて石天(ディーン・セキ)、秦沛(ポール・チュン)、楊子勳の3人がその民家から出て行ったから。
民家を覘いてみると残念ながら一家皆殺し。
1人生き残っていた盲目の老婆による涙の訴えを請けて、劉家輝は殺人犯を捕らえてやろうと意気込む。
町では名士の馮克安(フォン・ハックオン)と、その出て行った3人とかが一悶着起こしていた。
捜査を続ける劉家輝はなんだかんだごちゃごちゃあった末に、
石天(ディーン・セキ)、秦沛(ポール・チュン)、楊子勳と対戦。
ガチンコの劉家輝vs石天!
というのもなかなかレアな対戦である。
・・・でもやっぱ石天さん弱い(笑
3人と対戦を繰り広げる劉家輝であったが、真犯人は別にあった。
まぁ馮克安が出ている時点でそりゃあそうなんですが。
「お前だ!このカマキリめ!」
と馮克安の悪役面を見て真犯人と見定めた(うそうそ)劉家輝は彼らと対戦!
劉家輝vs馮克安!
・・・えっ?結構あったっけ?
ところで馮克安出演作は一体何本レビューしたのだろう・・・考えるのも面倒くさいが、今度やってみよう。
えっ、馮克安が真犯人じゃない?
終劇
■
うーむ・・・・・
先に作品の総評価をしよう。
明らかに小プロダクションの低予算映画でありながら、それと思って見るとそんなに悪くない作品である。
劉家輝主人公そのものの人物設定は希薄だが、展開自体はそこそこ納得のいくもので、当時の功夫映画としては珍しく火薬を使った爆破シーンもふんだんにあり、勿論劉家輝の功夫シーンもたくさんあって、楽曲を引用させたら(要はパクリ)天下一品の周福良が付ける音楽も相まって悪くない作品に仕上がっている。
ただ、単なる小悪党程度の演技に収まってしまった今回の石天さんにはこれといった魅力も無く残念か。
以前に劉家輝がインタビューの一端で、
「最初の主演作品は失敗した」
といった要旨の発言をしていたが、私はこれをどの作品のことかわからないでいた。
これは普通に最初の主演作とされる
「ワンス・アポン・ア・タイム英雄少林拳」はヒットしているからで、「洪家拳対詠春拳」のことを言っているのであればわからなくもないがこちらは客観的に見てどう考えても準主役である。
とすると、本作のことを思って劉家輝が語ったのであれば納得がいく。
しかし、いつ作ったのか?
これが難しい。
私が入手した「最佳搏殺」は改題されたもので、オープニングクレジットも公開当時に書き直されている感が強い。
というのも、改題前の「殺出重圍」で監督とされている楊帆のクレジットはなく、監督は劉家良、劉家輝2人の表記であり、脚本は司徒安になっており、顕著に怪しいのは出演者クレジットで任世官(ニン・シークァン)、黄哈(ウォン・ハー)が大きくクレジットされているのだが、彼らは実際顔も大して映らない絡み役の1人に過ぎないのだ。
はっきり言って本当にこれ、劉家良作品であれば大変なことである。
張徹監督の下に付き、監督作を許されずにヤキモキしていた時代に他の連中と組んでこっそり一本撮ってしまったことになるのだから。王羽(ジミーウォング)
「片腕カンフーvs空飛ぶギロチン」の武術指導を担当したことだけで張徹と揉めて別れたというに、もしこっそり一本作品を別プロダクションで撮っていたとなればもっと大変・・・なはずである。
だから劉家良は実際本作に関わっていなかった・・・
それだと合点のいかない部分が今度は出てくる。
簡単に言えば本作の功夫アクションはキレが良すぎるのだ(あくまで当時の低予算映画と比較して)。
この功夫アクションを見る限り劉家良の手が入ってる感がしてならない。弟の劉家榮(リュー・チャーヨン)が実は武術指導・・・という可能性もあるが、彼はクレジットもされておらず、劇中にも恐らく出演していない。そして、駆け出し時代の劉家輝が1人で武術指導をしたのか?となると今度はその殺陣師スキルの問題が出てくる。
ここに本作と関係がありそうな作品が一本存在する。
個人的な推測に全く過ぎないがそれは石天監督作「出家人/色慾和尚」である。
この「出家人/色慾和尚」は1975年に製作されてオクラ入り、1978年にやっと公開されている。
なぜ関係ありそうなのかというと、出演者が随分かぶるのだ。
石天さん、こちらでは絡み役のみの劉家輝、こちらでは主演の任世官、こちらでもやっぱ悪役の馮克安、そしてこっちの武術指導は劉家榮なのだ。さらにオクラ入りされて数年経って公開のパターンも本作と同じ。
これ製作年度1975年じゃないかな?
1975年といえばやはり劉家良が王羽に呼ばれて台湾で「片腕カンフーvs空飛ぶギロチン」の武術指導を担当した期間もある時代で、張徹とは既に離れておりそっちにも劉家榮がいる。「出家人/色慾和尚」の製作年度も同1975年で劉家榮がいる。そして恐らく劉家良は
「何れは劉家輝を主演に作品を・・・」
と考えていただろうから、「出家人/色慾和尚」の絡み役で軽く慣らした劉家輝の主演作を実験的に小プロで撮らせてみようかな?・・・というのは自然な流れに感じる。
人の流れを考えても監督をさせてもらえた石天さんや、劉家榮の存在、劉家輝と任世官という2人の主役が互いの作品で単なる絡み役で出演している点を考えても人脈的繋がりを感じるのだ。
やはり劉家良は本作に関わっている。
実際のクレジット、監督・武術指導「劉家兄弟」はどの兄弟が参加しているかわからない曖昧なクレジットで、そういったクレジットを使ったのにも劉家良が関わったことを曖昧にさせておくカモフラージュではなかったのだろうか。
ちなみに1977年製作とされる「少林寺マスター/少林寺舞扇拳」でのクレジットも劉家兄弟(劉三兄弟だったかな?)で、こちらは出演した倉田保昭さんが劉家良が武術指導だった旨の発言をしている。ちなみに準主役はやっぱり劉家榮。
そうなって来るともう一つ怪しいのは音楽の周福良や製作・時潮欽の存在で後に石天さんが出演している「虎鬥虎」が「虎門」と改題されて公開されているように、本作や「出家人/色慾和尚」もオクラ入りされていたところを買い付けて周福良が音楽を付け直して司徒安が台詞を書き直して再プロデュースしたのではないだろうか・・・って、「出家人/色慾和尚」の方は全然確証が無いが。
それにしても馮克安のレビュー作品数は数えるだけでもホネだな・・・
--------
追記:
その前に私は本作の存在自体全然知りませんでした。
この本作の情報はブログ「幻のジャッキー映画を探せ!」で知ることが出来ました。管理人さん、誠にありがとうございます。
|
■CAST&STAFF |
監督 |
劉家良(リュー・チャーリャン) |
劉家輝(リュー・チャーフィ) |
楊帆 |
出演 |
劉家輝(リュー・チャーフィ) |
石天(ディーン・セキ) |
李琳琳 |
秦沛(ポール・チュン) |
楊子勳 |
馮克安(フォン・ハックオン) |
任世官(ニン・シークァン) |
黄樹棠 |
水怪 |
黄哈(ウォン・ハー)
※クレジットは黄蝦 |
何其昌 |
史永莊 |
甘露 |
何冰 |
劉飛 |
羅威 |
徐發 |
關玉珍 |
徐松鶴 |
水怪 |
陳強 |
譚錦華 |
武術指導 |
劉家良(リュー・チャーリャン) |
劉家輝(リュー・チャーフィ) |
脚本 |
司徒安 |
楊帆 |
音楽 |
周福良 |
製作・製作総指揮 |
時潮欽 |
制作年度 |
1973(1975?) |
血海螳螂仇
Mantis Fists And Tiger Claws Of Shaolin
■
色々な意味が詰まって貴重な作品で、功夫映画史上稀に見る怪作。
この変てこ功夫映画の魅力はかなり出色で、他の作品には無いものだ。
協利電影作品。
■流れ
蟷螂は交尾すると雄を喰らう。
他の昆虫では一切そんなことは無いのかしら?
しかし、可哀想なことに鮭も射精すると衰弱し、その生命を終える。
その点、人間のオスは非常に厄介だ。
一度射精して次に睾丸に精子が一杯になるまで約2日。
一年計算だと満杯→射精が182回できることになる。
つまり、人間のオスはなりふり構わずやたら射精できる生き物なのだ。
「男の人ってどうして浮気するの?」
よく聞かれる質問だが、実は答えは簡単。
そういう生物構造なんです。
僕らが鮭構造なら一回射精で死んでしまうので出来ませんが、どんだけ射っても死なないのでどんどん射つ構造となっております。以上。
・・・とか言っても、女性が納得するはず無いのだが。
大体女性の質問に理詰めで正確に答えても何故か納得してくれないのがほとんどで、オレや君の自慢の持論は女性の不可思議で不条理で自分を中心に地球が回る論理によって砕かれてしまうだろう。
・・まぁ、こう言ったのは男女、どっちもどっちだと言いたいのだが・・・
そんなオープニングがあるこの映画(ないない)。
冒頭は蟷螂の生体構造について説明するアニメーションで、NHK教育番組でも見ているかのような気にさせてくれる気にさせてどうする。
張午郎(チェン・ウーロン)が街にやって来た。
食堂でメシでも食おうかと立ち寄ったがここで何禮男が功夫映画のお約束通り無茶やらかしてたので、これを懲らしめる張午郎。
食堂の看板娘・賽祝娟に歓迎されたが、目的の無い風来坊ではなく目的有りのファイター張午郎は無視して先を急ぐ。
「お花が綺麗ね♪」
と草原で戯れていた賽祝娟は、不意に現れた謎の人物・張力(チャン・リー)に、
「この辺は痴漢が出るから危ないぞ、ちなみにオレは痴漢じゃないぞ」
と言われたので、森林へ。
森林で先の何禮男と出くわした賽祝娟はその場で輪姦されてしまう。
張力がつけていれば良かったのに。
鬼畜・何禮男であったがざまぁみろ!とばかりに謎の"なにか"に竹攻撃されて殺される。ちゃんと口説いてからにしないからだ。
街を牛耳っていたのは石天(ディーン・セキ)・・って、
10年後の
「男たちの挽歌2」のより更に老けメイク!
その上、今回ガチャ目は一切無しだ!
更に超珍しい石天さんの功夫演舞!
息子・何禮男が殺されたことで怒り心頭の石天は、食堂に現れた謎の男・張午郎が怪しいと踏み、彼がいるとされる売春宿へ。
売春宿では張午郎が射精を・・・じゃなくて、女を身請けしていた。
実はこの女性・余安hは張午郎の妹で彼は妹を捜しに街に来ていたのだ。
「貴様が張午郎か。」
早速、やって来た石天軍。
まずは張午郎の素性を確かめようとする石天。
もしこの映画がショーブラザーズ製作ならば石天の役柄は間違いなく谷峰(クー・フェン)が演じていただろう、もう一つ若い世代なら王龍威(ワン・ロンウェイ)か。呉思遠影業なら黄正利(ホアン・チョンリー)だろうし、第一影業なら龍飛(ロン・フェイ)だろう。その役柄をあの石天さんが!
他の悪役役者ならいつかどこかで見た演技も石天さんがやると非常に新鮮に見えるものだ。
早速、張午郎vs石天!
石天さんも流石はなかなかの動きを見せる。
さらに奇天烈な殺陣構成アイデアを豊富に持っているのがウリの徐二牛の武術指導、石天の息子役・山怪は背中にトゲトゲで背中アタックを繰り返し、敵が多いので不利になってしまった張午郎は張力に助けられて脱出するが妹とは離れ離れに。
しょーがないので食堂の賽祝娟の協力を得て、再度妹奪還する張午郎であったが、石天が放った刺客たちが次々と張午郎に襲い掛かる!
手元でくるくる回る短刀を武器に次々と敵を打ち倒していったが、ついには敵の放った針縄に引っ掛かってしまい、またも山怪の背中アタックで瀕死、危機一髪のところを妹・余安hが身を挺して助ける。
妹探しに来たせいで妹が死んでしまったので完全な本末転倒だ。
石天は極悪である。
あんまり関係ないような気もする食堂も襲われ、皆殺し。
惨劇を目の当たりにした賽祝娟はそこで出くわした石天の息子・沙〔區鳥〕にまた犯される。
この犯した沙〔區鳥〕をまた謎の"なにか"が襲い、地獄に追いやる。
よく考えてみれば物語の主軸にあまり関係ないような気がする賽祝娟であるが、やっぱり主軸か。
今度は山怪がやって来て犯される。
やっぱりこの犯した山怪をまたまた謎の"なにか"が襲い、地獄に追いやる。
時間的にも物理的にも息子の死と張午郎は関係ないことに気づくべきだった石天だが、最後の戦いへ!頑張れ石天さん!
・・あっ悪役が石天だった。逆のパターンも十分考えられるもので。
流石にところどころはダブルだが、流石は石天さんも香港映画マン、技のキレは素晴らしい。勿論、武術指導・徐二牛のセンスの影響大だがかっちょいい石天功夫が見られるバトルだ。
遂に石天を打ち倒した張午郎は、劇中3回も襲われた賽祝娟を慕って結婚。
・・・したのだが、新婚初夜を迎えるにあたり・・・
終劇
■
この作品の前にレビューしたのが同じく協利電影作品
「タイガー&タイガー~猛虎激突~」で、同じような結末を迎えて主演も同じ張午郎なのだが、ラストの陰陽の落差が凄い。是非、見比べてみて欲しい。「タイガー&タイガー~猛虎激突~」のラストは男なら・・・つーか、オレなら憧れのシチュエーションだ。
なかなか新婚初夜のナニを許そうとしない新婦の楊〔目分〕〔目分〕(パメラ・ヤン)、ナニにもっていけず不貞腐れた新郎・張午郎が眠ってしまおうとしたところで、
「ちょっと!そりゃないわよ!」
と自らベッドにダイビングする新婦でTHE END。
後の想像が羨ましいですねぇ・・・そこにいくと本作はなんとまぁ・・・
こう見ていくと動物が絡んでくる功夫映画は意外と多い。
象形拳の代表的な五獣の形を功夫ポーズにする作品は無数にあるし、「虎姑婆」「人鬼蛇狐大決鬥」は直接的に動物が登場してくる怪奇功夫映画であるし、本作もめちゃくちゃ直接的な動物怪奇功夫映画である。
面白いことに本作は物語を考えて功夫映画である必要が全く無い。
妹を捜しに来た男がその村での猟奇殺人事件に巻き込まれる話というのがストレートな説明で、物語そのものが功夫演出する必要は全く無いのだ。普通はこれだとスリルサスペンスの八つ墓村的演出を取った方がよっぽど面白い・・・気もするが功夫映画にいっちゃうのが如何にもなんだな。
監督・脚本・武術指導をこなした徐二牛は「聾唖劍」「十二金牌」等の武侠片でアイデア溢れるアクションシーンを演出してきた人物で、これは推測になるが功夫片での武術指導ぶりにはややサモハンや袁和平(ユアン・ウーピン)に遅れを取っているような印象を受ける。時代は冷酷か。とはいっても、そこらの功夫映画よりはよっぽど素晴らしいアクションなのだが。
石天さんの悪役演技に違和感は無い。
ここが素晴らしいところで「蛇鶴丹心震九州」でもクールな悪役を演じてはいるが強大な悪役を難なく演じて見せたこの作品は石天迷にとって要チェックだ。だいたいコメディアクターは悪役が上手いものです。財津一郎さんの悪役を見たときは物凄い違和感でしたが。ピアノ売ってちょーだい♪
そろそろ銀幕に復活してくれませんかね?石天さん。
|
■CAST&STAFF |
監督・脚本 |
張森 |
徐二牛 |
出演 |
張午郎(チェン・ウーロン) |
石天(ディーン・セキ) |
張力(チャン・リー) |
賽祝娟 |
山怪 |
沙〔區鳥〕 |
何禮男 |
余安h |
徐忠信 |
李春華 |
司馬華龍 |
孟海(マン・ホイ) |
泰山 |
錢月笙(チェン・ユーサン) |
武術指導 |
徐二牛 |
音楽 |
陳勲奇(フランキー・チェン) |
製作 |
呉協建 |
制作年度 |
1977 |
K店
The Black Tavern
■
この作品は随分前から見たかった作品である。
というのも、「カンフーキッド」('86)で主役の子供たちが都会で路頭に迷い、居酒屋「黒店」を発見、
「黒店だと強い奴は食べてもタダだ!」
と勝手な解釈をして店で食べまくるが、当然現代ではそんなことはなく食い逃げ扱いでバトルが始まるといったものだ。その時、居酒屋のママが言ったことが
「それは昔の話!」
で、何となく見てたシーンであったのだが、香港映画を資料を漁っている時にこの本作を発見、元ネタはこれか?と非常に興味を持ったのである。
とは言っても、この作品は海賊版的なものも全く出回っておらず、永らく幻の作品であることが判明、後はひたすらショーブラリリースの日を待ち続けたわけで。
しかしですな、出演陣を見てみても大スターがいるわけでもなく、監督も葉榮祖(イップ・ウィンチョウ)と失礼ながら大監督と呼べるような気もせず、大して作品自体に面白さを期待していたというほどでは無かったわけであります。ただ内容は確認しておきたかった。そんな感じなんですね。だいたい傑作と呼ばれるものは観てないものでもそれなりに耳に入ってきてますから。
ところが!
この作品はあらゆる意味がたくさんですんげぇんだよ!
■流れ
石天(ディーン・セキ)さん!
今回、乞食役の石天さんの歌謡ショーで幕が開けます。
歌は恐らく本人では・・・ないんだろうなぁ。
どっかの食堂で
「大醉侠」の岳華のように客達に歌を唄って聞かせるとても楽しそうな石天さん。
そういえば逆に久しぶりです。
最近は「最佳搏殺」「血海螳螂仇」と石天さんらしくない石天さんばかり見ていましたから、こんなに石天さんらしい石天さん、やっぱり石天さんは石天さんらしく明るいのがいいや。
しかしこの乞食・石天が唄う歌には謎が隠されていたのです。
各自、食堂で歌を聴いていた剣士たちはこの歌の謎を解き、旅立ちます。
その謎とは・・・
さて舞台変わってこちらは"高家店"。
季節は思いっきり冬で雪だらけ。降りまくり。
これが作品の大舞台となるいわゆる黒店。
知らない方に説明しておきますと、基本的に宿屋兼食堂で、いわゆる"客棧"と呼ばれる館です。
黒店は今日も準備に勤しんでおりました。
何のって、来た客に食事を出さなければなりませんからその仕込みですね。
ほら、よっこらしょ!・・・・・・って!
給仕が出してきたのはなんと人間の足!
かなり普通な顔して人間の足をさばきにかかる給仕!
そう!ここは人肉饅頭を出すワルワル客棧だったのです。
これだったんですよ。
「残酷ドラゴン/血斗竜門の宿」のリメイクである「香港英雄列伝/ドラゴン・イン」では張曼玉(マギー・チャン)が色香で男を騙しては殺して、金品奪って人肉饅頭にしてしまうというとんでもない奴を演じておりまして、これは元の「残酷ドラゴン/血斗竜門の宿」には出てこない設定なのでオリジナルかと思っていましたが本作こそが元ネタだったんですよ。こちらにも色香で男を騙す(そんなシーンは無いがそうだと思われる)于楓さんが出ています。
この人肉饅頭黒店に向かっていたのが谷峰(クー・フェン)、その娘2人、江玲と郭竹卿。とお付の衛子雲(ウェイズ・ワン)ら。
彼らは道中に楊澤霖らの盗賊に合いますが、これを謎の剣士・康華が助け、
「ステキだわ♪」
と一目惚れしてしまう江玲さんということもあって、一緒に黒店へ。
「金持ってそうな奴が来たぞ!」
黒店店主の王侠らは、さぁ殺して饅頭にして金品奪ってと大ハリキリ。
しかしもって全然甘かった。
谷峰は"神鞭鬼王"と呼ばれる鞭の達人。
娘らも達人。一緒に来た康華も達人。衛子雲も十分達人。
逆に谷峰の襲撃を受けた店の従業員たち。
哀れにも宿の紅一点・于楓さんは鞭で首チョンパ!
他の従業員も次々首チョンパ!
王侠も両目を潰され惨殺!
ほどなく全員ぶち殺すと今度は谷峰が宿の店主に成りすまし、衛子雲が給仕となってある人物を待ち受けます。
やっぱ悪いことすると報いが来ます。
何を待ち受けていたか。
何でも里帰りする老いぼれ・・・いや失礼高官である楊志卿が、金銀財宝抱えた宝箱持ってここを通るとあって、宝箱を我が物にせんと待ち受けていたのです。
とんとん。
ノックです。
横山ノック・・・
そう言えばそれで思い出しましたが、橋下徹大阪知事はどうでしょうかねぇ、頑張ってくれるでしょうか。
それにしても宮崎県の東国原知事は頑張りましたねぇ。
もう今辞めたとしても十分な経済効果があったでしょう。素晴らしいことです。
さぁ改めてとんとん。
さぁ来たか!宝箱!
と給仕の衛子雲が扉を開けるとそこに立っていたのは、
宝箱どころか乞食の石天さん、こんな吹雪の中を一人楽しく歌い続け・・・ってまだ歌ってたのかって感じですが、残酷なシーンも多いこの作品では十分な清涼剤となっております。
「汚い!汚い!」
さっさと立ち去って欲しい衛子雲でしたが、
「他に行く場所がないよぉ!!」
と石天さんが泣きついてきたので馬小屋に押し込みます。
とりあえず乞食1人は放って置こうということで。
宝箱を狙っていたのは谷峰だけではありませんでした。
続いて店にやって来たのは道士・午馬(ウー・マ)。
「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」でも道士役でしたがこんな昔にも道士役を演じているとは!そしてちゃんとキョンシー5人を連れています!
しかもこのキョンシー、実は死体ではなくカモフラージュした剣士で、動く死体を見てしまった石天さんは妖怪だぁ!!ということで宿から逃げ出してしまいます。あれ?石天さん出番終わり?
谷峰に
「お前も宝狙いだろう」
と問い詰められると正体を現した午馬とキョンシー5人組とのバトル!
キョンシー演じている1人は元華(ユン・ワー)!
元華と言えば「霊幻道士」でも最強キョンシーを演じたあの元華ではないか!ここに原点か!(そんなこたないが)
しかし、さっきに言ったように谷峰側は達人揃い。
特にその谷峰が滅茶苦茶強いのです。
全員ぶっ殺し。
と、そこにいよいよ来ました楊志卿と宝箱。
もういきなり宿に入る前から現れた先の盗賊・楊澤霖ら。
楊志卿の護衛として元気に戦う人物は大口くんこと火星(マース)!
先もこの盗賊と戦った康華は、
「二度目は命は無い!」
と盗賊をぶった斬り!
いよいよ楊志卿と宝箱が黒店の中へ。
「うっしっし。たからたから。」
とほくそ笑む谷峰。
しかしまだまだ宝箱狙って刺客が現れます。
小麒麟(ユニコーン・チェン)、蘆葦、姜南(チャン・ナン)・・・
これらを全てをぶった斬った谷峰一行。
ここで冒頭からずーーっと姿を見せなかった施思(シー・ズー)登場!
白装束に白いお肌、ふっくらした頬にクリッとした可愛い目。
なんとお美しい・・・
とうとう宝箱を奪いにかかろうとする谷峰でしたが、
立ち塞がるは施思たん!
「箱を開けてみなさいよ!」
というわけで、宝箱を開けると宝なんかじゃなくて全部本!
読書好きかよ、おい!
あんぐり口を開けてしばらく呆然とする谷峰。
そう、全てはこの悪辣な谷峰を打ち滅ぼさんとする施思の計略だったのです。
「・・・つーかお前なんかに負けるかーっ!」
遂には始まる施思vs谷峰!
当然、谷峰の娘2人、江玲と郭竹卿も参戦しますが、裏切ったのは康華!
康華さんは個人的にあまり馴染みの無い役者さんですが、「残酷ドラゴン/血斗竜門の宿」であれば石雋(シー・チュン)が演じた役にあたるこの役柄は非常に格好良いです。康華も谷峰を倒すチャンスをずっと窺いながら、他の悪漢たちを倒していたのです。
ここからの戦いが凄い。
もう武侠片としてのアイデア全部を出し尽くしたんじゃないかと思うようなバトルの連続で、これぞ武侠片バトル!の素晴らしい名バトル!恐らく施思さんのベストバウトの1つとして間違いないでしょう。
しかし、凄腕の谷峰の前に少しずつ不利になっていく施思、遂には絶対絶命!!
というところで、助けたのは何と宿から逃げ出したはずの石天さん!
最後の最後で美味しいとこ持っていきそうだ!
施思、康華、石天さんで力を合わすと遂には谷峰も力尽き、首チョンパされるのでした。
翌朝。
康華は谷峰の娘2人、江玲と郭竹卿は生かしておきました。
というのも、江玲とわずかな恋愛関係もあったからか・・・まぁここでサツに2人は連行されるのでどっちみち死刑のような気もするが・・・
「おおきに。」
助けてもらった楊志卿に別れを言うと、
施思と康華は颯爽と去っていくのでした・・・
終劇
■
ラストで石天さんに対して官憲が、
「師父」
みたいなことを言っているのもあり、彼が冒頭に披露する歌は要は
"どこどこに宝がやって来る〜♪"
という意味で、全ての計略は石天さんが考え出したものなんじゃないかと推察される・・・のだがあんまりはっきりわからない。
それはともかく、いや大傑作である。
今の目で見るとさらに面白みの加わる非常に魅力溢れる武侠片、これは大当たりだ。
流れを読めば明らかかもしれないが今一度説明しよう。
まず石天さん作品として、
石天さんが石天さんとしての魅力の本領発揮・・・と言えばやはり1978年ぐらいからか。イジワル師範代は彼の当たり役だが、それ以外にもコメディアクターとして彼の右に出る者はいなかった。しかし、本作を撮った1972年はまだまだ芸風を確立する前の石天さんだと言いたいが、本作こそが石天さんのその後(芸風)を決定付けるような作品であったのかもしれない。そのぐらいに本作の石天さんは美味しい。久々に面白い石天さんを楽しませてもらった。
続いて白装束の女剣士を演じた施思さん。
この作品で唯一残念なことは彼女の出番が少ないことである。
冒頭にちょろっと、後はそれこそクライマックスまで出てこないのは非常に不満だ。何でって可愛いんだもん。彼女の美しさが映えている作品には他に「風流残劍血無痕」があるが、こっちには美しさ+素晴らしいバトルがある。最後には彼女の可愛い笑顔も見られるのでファンは是非。
と、それでいて既にキョンシーやってる元華や、火星、小麒麟、妙に良い動きをするのが逆に違和感ある姜南のおっちゃんに道士の午馬など出てくるキャラクターもみんな面白い。
監督の葉榮祖、当HPでは監督作は「スリーピング・モンキー・睡拳」しか紹介しておらず、個人的に余り彼の作品は観ていないということで、本作もどうかというところだったが、出来栄えを観てしまうと高い評価を出さざるを得ない。葉榮祖といったところで皆さん思い出さないかもしれないが香港映画に触れてきた人なら誰でも
「そう言えば見たことあるようなおっちゃん」
で、後年は役者としても数々の映画に出演、
「狼 男たちの挽歌・最終章」では周潤發(チョウ・ユンファ)に狙撃されるおっちゃん、「ファースト・ミッション」ではレストランの店長、代表的なところは許冠文(マイケル・ホイ)「ホンコン・フライド・ムービー」での従業員か。他いっぱいあるような気がして逆に思い出せないが。
言わずもがな、この作品は1967年に撮られた胡金銓(キン・フー)作品「残酷ドラゴン/血斗竜門の宿」の亜流ものである。
比較してみると実に面白い。
やはりは元ネタを意識してであろうが、谷峰率いる一行の演技にも他の作品に出てくるようなただただ憎たらしい悪役!それだけ!・・・・ではなく、血の通った深みのある演技を預けており、それは子分的存在が娘2人という配役にも表れているのだが、かたーい演技ではなく硬軟使い分けた芝居が巧み、康華に惚れてしまう娘を見て
「まったくもう・・・」
とため息を漏らす谷峰など、要は非常に人間味のある芝居を展開させているというところが興味深く、間違いなく本作を一際面白いものにさせている。
この作品で谷峰さんは、冷酷無比な強大な悪役、おてんば娘に悩む親父、楊志卿に正体がバレないように卑屈な店主を演じたりと様々な表情を見せており、悪役側にも感情移入させてしまうのだから葉榮祖の演出の妙に舌を巻くしかない。
また、この作品はほぼ全編に渡ってセット撮影なので、「残酷ドラゴン/血斗竜門の宿」での野外ロケと胡金銓監督の撮影技法の高さからくる、野外の壮大なスケール感や開放感は全く感じられないが、その代わりに絶えず雪を降らし、これ全編に渡ってずーっとと言ってもいいぐらいに雪が降ってるんですよねぇ人工の。手作りの。
寒い吹雪の中で戦うシチュエーションをスタジオの中でずっと作り続けたことも凄い。
さらにアクション的にはこれぞ、
徐二牛、徐松鶴の究極武侠片アクションというべきか。
一見にしかずで語る必要も無いかもしれないが、絶え間ないアイデアとワイヤーを駆使したアクション、特にクライマックスの生身で頑張るアクロバットと血しぶき飛び出る壮絶さは筆舌に尽くしがたい。谷峰の断末魔も武侠片史上に残したい壮絶なシーンである。さらに言えば施思さんの華麗な動きと、血まみれで戦う姿の美しさを堪能して頂きたい。
うおお、めちゃくちゃ気に入ってしまいました。この作品。
今年はなんか傑作に結構出会う年かもしんないなぁ・・・
・・・まぁ結局冒頭の「カンフーキッド」、
「黒店だと強い奴は食べてもタダだ!」
という論理には余りつながらなかったわけだが・・・
その論理は「武林客棧」でどうぞ?
|
■CAST&STAFF |
監督 |
葉榮祖(イップ・ウィンチョウ) |
出演 |
康華 |
谷峰(クー・フェン) |
施思(シー・ズー) |
石天(ディーン・セキ) |
王侠 |
衛子雲(ウェイズ・ワン) |
午馬(ウー・マ) |
楊志卿 |
楊澤霖 |
姜南(チャン・ナン) |
小麒麟(ユニコーン・チェン) |
于楓 |
江玲 |
郭竹卿 |
李皓 |
蘆葦 |
陳贊剛 |
邱明 |
羅漢 |
朱今 |
司徒霖 |
火星(マース) |
元華(ユン・ワー) |
何其昌 |
爾峰 |
凌漢 |
張照 |
武術指導 |
徐二牛 |
徐松鶴 |
脚本 |
葉逸芳 |
音楽 |
陳勳奇(フランキー・チェン)
※クレジットは陳永U |
製作 |
邵逸夫(ランラン・ショウ) |
制作年度 |
1972 |
無招勝有招
Crazy Couple
■
というわけで、馮克安(フォン・ハックオン)出演作品レビュー62本目となったのが本作です(笑
龍争こ門さん、本当にご苦労様でした。私は多すぎてとても調べようという気になっていませんでした。
それにしても62本目って・・・
何と言うか・・・香港アクション映画新時代前に一同に介したような映画である・・・最近こんなことばっか言ってる気がしますが・・・
■流れ
すまんがあんまりようわからん。
ひょんなことから知り合った劉家勇と道場の師範をやってた石天(ディーン・セキ)。
2人はそれぞれ医者の王青(ワン・チン)、道場主の陳龍にお世話してもらいながらアホギャグ炸裂していた(笑
しかしもってそこに火星(マース)と戚毅雄を引き連れて現れました62本目の馮克安。
なんかどーも王青か陳龍が隠し持っているとされる宝を奪いにやって来たそうで。
功夫腕前抜群で優しいお医者さんという実に王青らしくない役柄が新鮮だったのだが、馮克安一行に襲われて火星と戚毅雄は倒したものの馮克安の凄腕に殺される。
続いて陳龍も殺される。ついでに唐炎燦(トン・インチャン)も殺される。
お互い師匠を殺された劉家勇と石天さんは、新師匠探しに。
詐欺師のどうしようもねぇ老人・黄哈(ウォン・ハー)と知り合ったら彼は実は結構な使い手だったので弟子入り。
弟子入りした割には真面目に練習したのは劉家勇だけで、石天さんは砂浜で独自でタコ拳の開発(笑
面白いことに「蛇拳」でジャッキーがやった足跡を追っていって馬歩を覚えるシーンに本作では石天さんが挑戦しています。
さぁ、馮克安にリベンジだ!
終劇
■
何気に冴えない顔した劉家勇の主演作を
「三十六迷形拳」
「五爪十八翻」
「少林寺破戒大師伝説」
「老鼠街」
そして本作と5本もレビューしていたりするのだな。
何気にジャッキー製作とか武術指導とか、劉家系統のくせにジャッキーと関わり深いというのも不思議に興味深い。
興味深いが残念ながら彼もその第2のジャッキーにはなれなかったか。
本作は非常に不思議な面子が揃った作品である。
これが処女作である監督の劉觀偉(リッキー・リュウ)はこの後やがてサモハンの下で「霊幻道士」を撮ってキョンシーブームを興す人だし、石天さんや今回おデブの女性キャラになりきった曾志偉(エリック・ツァン)、脚本を書いた黄百鳴(レイモンド・ウォン)はシネマシティの立役者、そしてショーブラから流れてきた馮克安や唐炎燦、そして火星や周潤堅はこの後すぐに結成されるジャッキーアクションチーム・成家班の初期メンバーである。
ここから各々が散らばっていってその「霊幻道士」だとか「悪漢探偵」だとか「プロジェクトA」が生まれていったのかと考えると実に面白いではないか。
功夫アクション面では流石は脂の乗っていた馮克安の武術指導ということで足技は少ないが実に初期の成家班的功夫アクションが炸裂していて言うこと無し。
「ヤング・マスター/師弟出馬」でジャッキーが魅せた小道具を活かした小技の数々が、そのジャッキー本人だけではなく馮克安の武術指導者としての腕前を存分に発揮したものだったとハッキリ再確認することが出来る。直線的動きがなかなか美しかった王青の功夫アクションも見もの。全然ここまで書いてなかったが、しっかり李麗麗(リリー・リー)さんも功夫してくれたりなんかして。李麗麗さんは何となくフェロモン高い女優さんやなぁ。何がと言われても困っちゃうんだけど、何となく性欲を持て余す by スネーク
石天さん的にも、いつものガチャ目的魅力は存分に出ているし、今回は本当に功夫的にもかなり頑張っているので(「血海螳螂仇」以上かも)、その点でも楽しめます。「燃えよデブゴン6」からそのままスライドしてきたような何柏光とのコンビが何気に面白い。
さぁ・・・はぁやれやれ、ハッキリ言ってまだまだ続くぞ!
馮克安レビュー作!
|
■CAST&STAFF |
監督 |
劉觀偉(リッキー・リュウ) |
出演 |
石天(ディーン・セキ) |
劉家勇 |
馮克安(フォン・ハックオン) |
李麗麗(リリー・リー) |
曾志偉(エリック・ツァン) |
王青(ワン・チン) |
陳龍 |
黄哈(ウォン・ハー) |
戚毅雄 |
唐炎燦(トン・インチャン) |
火星(マース) |
何柏光 |
周潤堅 |
黄志強 |
何其昌 |
譚寶 |
何寶星 |
武術指導 |
馮克安(フォン・ハックオン) |
黄哈(ウォン・ハー) |
脚本 |
黄百鳴(レイモンド・ウォン) |
制作年度 |
1979 |
心魔
The Bedevilled
悪魔の生首
■
結局とにかく「香港電影百科」(芳賀書店)にある1973年-1984年香港映画日本公開作品はコンプリート鑑賞(出来ればレビューも)したいので、本作も鑑賞に至ったわけですが、紐解いてみるとあれですねぇ、
1974年は正しく功夫映画ブームの年で28本もの作品が日本で公開されています・・・が、そっから1975年-1978年は早速ネタ切れというか仕方なし公開というか、別格の
「ドラゴンへの道」「死亡遊戯」以外はなんちゅうか、
「実録ブルース・リーの死」
「悪魔の生首」
「金瓶梅」
「蛇姦」
「新・金瓶梅」
「新死亡遊戯・七人のカンフー」
「北京原人の逆襲」
・・・(笑 こうやって並べてみるともう無理やりやなぁ・・・カオス
しかし、その"怪しさ"ってものも実は大きな魅力の一つで
胡散臭さというのは人を惹き付ける力でもある。
本作は東映・東宝東和そしてゴールデンハーベストの間で色々李小龍(ブルース・リー)問題あった末に生まれた作品でありながら、「温泉みみず芸者」の池玲子を招いて鄒文懷(レイモンド・チョウ)が製作したエロホラー映画であり・・・いやしかし羅維(ロー・ウェイ)さんもこんな企画を任されて困惑したのか嬉々としたのか知らないが脚本を書き下ろして監督で、助演は田俊(ジェームス・ティエン)に李昆(リー・クン)で、音楽は
顧嘉輝(ジョセフ・クオ)と、
「ドラゴン怒りの鉄拳」のスタッフ・キャストで撮ったエロホラー映画・・・つーか、もうなんでそっちのジャンルにいっちゃうんだよ、これ。だから鄒文懷の社長命令なんでしょうけど。
それにしてもあれだな「温泉みみず芸者」のコピー、
"勝ち残るのはどっち!? 名器と名器の栄誉を賭けて秘術をつくして渡り合うラスト勝ち抜き三番勝負!"
何と面白そうなキャッチコピー(笑
東映ポルノにはまっていくのはやばいかなぁ・・・
それはやばいよなぁ・・・
成東映班とか別サイト作らないと(笑(作りませんよ)
それはともかくある種の胡散臭さ漂う、ってのは
非常にワクワク感を掻き立てるものでもあるのだ。
それは別にエロスだけのことを言ってるわけではなくて、
例えば「李三脚威震地獄門」や「中国超人インフラマン」みたいな作品でも同じようなワクワク感を感じるわけであります。
■流れ
食堂の娘で田俊と結婚して幸せな日々を送っていたとされる池玲子さん。
しかしここに、金持ちのボンボンである
ここは石天さんの頁ですが
石天(ディーン・セキ)が登場。
池さんを気に入っていた石天は早速強引に床に誘うと池を強姦。
格好良く登場の田俊
そこに旦那の田俊が帰ってきてすぐさま乗り込むのだが、
もう死んでる(笑
石天さんは殺されてました。出番終わり?
そして池玲子は姿を消す。
現場すぐ隣に石天ところの呉家驤も玲子の母の歐陽莎菲もいたのだからそうなるはずはないのだが、何故か田俊が殺人犯扱いされて逮捕。
これを裁くのは判事の柯俊雄(オー・ジョンホン)であったが、
石天家側で
再度、今度はウブな役で登場の石天さん
池玲子さんの方から誘って
また死んでる(笑
乗り込んだ旦那の田俊に撲殺されたと偽証言(画像は偽証言ドラマ)。
いつの時代も金さえあれば黒も白になる。
石天家の賄賂に最初は応じなかった柯俊雄であったが、
こいつらと柯俊雄との関係が余りわからん
たぶん柯俊雄の妻でありながらしかも他の男と浮気している黄蘭の画策もあって、結局は賄賂を受け取ることにする柯俊雄(金は病気の親族のため?)。
無実であったはずの田俊は有罪に。
豪雨吹き荒れる嵐の中、田俊は斬首される。
ふぎゃー!
その日から柯俊雄の前には田俊の生首霊が出てきて困ったことに
いててて!
だから踏みつけました(笑
実は石天家に幽閉されていた池玲子。
最愛の人を亡くした事実を知り、
石天家の領主を誘惑
して殺害。
自身も首を吊って自殺。
相変わらず生首に悩まされていた柯俊雄は、
この左の男を
田俊と見誤って撲殺。
黄蘭と一緒に池に捨てようとした時、過って黄蘭も池に落ちてしまうのだが、金を独占したいそして邪魔者を消したい欲にかられて柯俊雄は黄蘭も見殺しに。
色んな意味でやばくなって金持って逃げようと考えた柯俊雄は、使用人の
李昆(リー・クン)らを連れて町を飛び出すのだが、宿屋にあったのは田俊、池玲子の棺桶!
しかし他に宿が無いということで仕方なく泊まることにした柯俊雄。
当然の如く、夜になると生首地獄が待っていて
なんちゅうか・・・
わざわざ首を離して鏡見る必要もないのですが、
志村、うしろー!
「志村!うしろーっ!」
って未だに通用するのかなぁ?若い人にはもうわかんないでしょうね。
冒頭は格好良かった田俊さんが・・・
ぐひゃひゃのひゃ
最後は因果応報な結末が待ち構えているのでした。
悪銭身につかず。
終劇
■
結局、最初に石天を殺したのは誰?
池玲子さんなんでしょうけど、そこは描写されていません。
個人的にはこれが意外と悪くない作品だなと思ったりなんかして。
いやそりゃ怖がらすのが田俊と池玲子さんで生首でワッ!ってするだけだから怖くも何ともなくて、じゃあセクシーシーンはどうかって言ったら監督はとても官能美を撮れる人ではないって証明するような画しか出てこないし大したもんじゃなくて、それだけ考えれば全然成功してないですよ、これは。
ただ清廉潔白であったはずの主人公が誘惑に流され、本人も知らず知らずのうちに金の亡者となり悪人の道を辿り、やがては身も心も持ち崩すというその描写だけはよく出来ているんですね。柯俊雄の演技力の確かさも当然影響してますが。
藤子不二雄Aの「笑ゥせぇるすまん」なんかよくそれがモチーフになっていますが、人間誰しもが自分は普通の善人だと思っていて、しかしちょっと道を踏み外すことで一気に地獄に叩き落とされてしまう、悪人になってしまうんだという内面的な怖さは描けているかなと思います。
この辺は羅維監督頑張ったかと。
石天さんは勿論、出演者誰一人として得してないような作品ですけどね。
いやしかし。
もう1973年-1984年香港映画日本公開作品で未レビューなのがポルノばかりになってきたなぁ。でもわざわざなかなかうーん。
「赤手空拳」なんかまともに情報も知らないけど(もしこれとか「英雄榜」の映画パンフレット持ってる人いたら凄いなぁ)入手しにくいと面白いは関係無いしなぁ。
・・・誰にどうオススメって映画でもないか。
|
■CAST&STAFF |
監督・脚本 |
羅維(ロー・ウェイ) |
出演 |
柯俊雄(オー・ジョンホン) |
池玲子 |
田俊(ジェームス・ティエン) |
黄蘭 |
呉家驤 |
李昆(リー・クン) |
歐陽莎菲 |
金帝 |
石天(ディーン・セキ) |
江可欣 |
米雪 |
爾群 |
謝地 |
王憾塵 |
何柏光 |
馮敬文 |
張作舟 |
閔敏 |
林源 |
音楽 |
顧嘉輝(ジョセフ・クオ) |
製作 |
鄒文懷(レイモンド・チョウ) |
制作年度 |
1975 |
社女/光頭倍蒂
Bald Headed Betty
■
さてさて。
張森監督の女シリーズ三部作、勝手に三部作にしちゃってますが「池女」、「O女」で最後は本作「杜女」を紹介したいと思います。
「入冊」のレビューも含めてここまで連続してレビューしてきた作品、実は全部協利電影の作品で、功夫片以外のジャンルで同社がどのような作品を撮っていたのか興味があったので取り上げてみた次第である。
製作順でいけば本作が最初であり、観てもらえばわかるが林建明(リン・チェンミン)さんの正に体当たりの並々ならぬ意気込みが伝わって来る作品である。
■流れ
林建明さんはそのルックスの良さから風俗業界に身を置く伊雷に目を付けられてナンパされ砂浜でデートしてたりしてたが、
実は騙しで組織に軟禁される。
売春することを強制させられたが拒否したため、
丸坊主にされてしまう。
余りに凄惨な目に遭わしてしまって自責の念にかられた伊雷は二人で脱走を試みるが捕まってしまい、いよいよ林建明は売春婦として仕事することを決意、
たちまちNo.1の座を手に入れるのだが、結局また逃げることになり、地方のバーで働いていたところを
単なる嫌な役
売春宿の常連客だった石天(ディーン・セキ)に見つかってしまい・・・
終劇
■
マジで頭を丸坊主にされているシーンが余りに衝撃的で痛々しい作品である。このインパクトは凄い。
本作含めた三部作の共通点は風俗業界を描写しているということで、風俗業界にスポットを当てたかったのかそれとも風俗嬢かそれとも周潤發(チョウ・ユンファ)なのかその辺が不明瞭な「池女」や、かなり強引に風俗描写をストーリーに取り入れた、しかし取り入れる必要がどこにあったのかわからん「O女」と比べてやはり最初だけあって描きたいことが素直に描けている。
うーん、ただこれ娯楽映画と考えれば辛いものがあるかな?
それこそこういった作品は邦画の得意とするところで、クオリティは比べるべくもない。
あとそうですね、石天さん的にも単なる嫌な役に過ぎないのでどうしようもないかと。
その後の林建明さんはセクシー女優として活躍したが何かどうも役に恵まれなかった印象があるなぁ目立つのは「燃えよデブゴン3」ぐらいだろうか、こんだけ度胸も根性もある肝の据わった女優さんなのだから、もっと活躍しても良かったかと思うが。
|
■CAST&STAFF |
監督・脚本 |
張森 |
出演 |
林建明(リン・チェンミン) |
伊雷 |
温柳媚 |
羅石青 |
劉志榮 |
陳鴻烈 |
凌漢 |
黎小田(マイケル・ライ) |
司馬華龍 |
歐陽莎菲 |
高岡 |
石天(ディーン・セキ) |
馬劍棠 |
孫嵐 |
何柏光 |
黄曼 |
余慕蓮 |
張惠儀 |
江毅 |
容玉意 |
巴山 |
盧海鵬 |
方萍 |
周吉 |
羅勃 |
何雲 |
朱少坡 |
劉準 |
盧寶華 |
武術指導 |
李家鼎(リー・カーティン) |
音楽 |
陳勳奇(フランキー・チェン) |
製作 |
呉協和 |
製作総指揮 |
呉協建 |
制作年度 |
1975 |
通天老鼠下江南
Snake in the Crane's Shadow
■
さてさて、いやいや、
久々にいやいや偶然見つけたんだけれども、
石天(ディーン・セキ)さんの主演作・・・いってみましょうか。
これが彼の主演作なんて知らんかったけど、クレジットも最初に龍君兒(ロン・ジェンエール)と一緒に出るし、主演作です。
しかしね、英題「Snake in the Crane's Shadow」だから
「ああ、ジャッキーのバッタもん」
ってそりゃ当然思うわけよ。バリバリその当時の作品だし。
で実際まぁそりゃそんなところは当然あるんですが、それが石天さんの役割なんだけど物語は随分と予想と違ったんだな。
■流れみたいな
これいきなり鄭富雄が全力疾走の脱メタボみたいなオープニングってどうよ?
すげーセンスだな。
逃げてんのかと思ったら追ってたのかな?
とにかく杖の男と戦って負けるだけの役でした。出番終わり。
さぁ一方で、
バカ三人組。またメンツが・・・
石天&楊奎玉&蘆葦のバカ三人組登場。
最早何をしてるのかもいきなりわからんが、そもそも楊奎玉&蘆葦というジジイ二人揃えてどうしろと。
彼らはチョイ悪で・・・いやもうちょっと悪で・・・
ひょこひょこ歩いてた龍君兒さんにちょっかい・・・
抱きつき攻撃かわされました
続いて蛇拳でおっぱい攻撃だ!
結局久々のガチャ目!!
龍君兒さんがメチャクチャに強かったのでボコボコにされて、三人とも全裸にされて木に縛られました(笑
というか、ここまで完全にしつこいぐらいに石天劇場です。
ゲスト出演の岳華
出番ちょっとだけですが、しっかり功夫アクションしてくれます。
まぁ何かとにかく物語の鍵は柯佑民が持ってたそのまま翡翠の鍵で、
これを奪うべく覆面男と林伊娃が襲いますが、
龍君兒さん今回すげー強いス
たまたま通りがかった(じゃないよなぁ?)、とにかくやって来た龍君兒によって邪魔され
やっとわかった!!
ひょんなことから翡翠の鍵は龍君兒が手にすることに・・・って、
これ龍君兒は盲目なのか!!今頃やっとわかった!
何かさっきから瞬きしないなと思ったらなんだ。
いや盲目なのに杖も無しによくぴょこぴょこ歩いてるからさぁ。
んで旅館に泊まったら隣の部屋が石天三人組で、翡翠の鍵を見た石天は早速泥棒計画。
龍君兒が入浴している間に盗もうということで、観てるこっちは入浴シーンの期待が!実際あるのだが、大したことなかったな(そりゃそうだ)。
ああこの人、聞江龍か
石天三人組をいなして追っ払ったのは先の杖の男・聞江龍だった。
彼も翡翠の鍵の秘密を知っており、
何かを追っているみたいだが敵ではないようだ?
翡翠の鍵が何なのか龍君兒も知らんみたいで、
その辺の質屋に高い金吹っかけて買わそうとする。
これはフェイクで高値で翡翠を売ろうとする女がいるぞと噂を広めたかった?のだろう。
噂に吊られて刺客が出てくるが、何しろ強い女座頭市の龍君兒たん。
敵をビシバシと片付ける。
盲目ということで音を利用され、ピンチにもなるがこれを
いやこれどう見ても・・・
謎の男・龍天翔が助けてくれる。
助けてくれるがこの顔で味方だと言われても信用できんな(笑
翡翠の鍵を手に入れようと躍起になっていたのは名士の衛子雲(ウェイズ・ワン)で、なんやかんやあれやこれや(ようわからんかった)。
いやほんま
いやほんまかっちょいい龍君兒様。天下無敵。
敵は余りに勝てないので
動物作戦かよ
なんと鷹まで出してくる始末。
女の子1人倒すのに動物まで使いやがって。
つーか、ラストバトル始まってるのに鷹が邪魔だ!!
と思ったらもっと邪魔な奴がいた!
勿論この人(笑
いつの間にやら龍君兒を師匠と仰いでいた石天さん。
どの辺から心変わりしたのやら。
鷹を投げ縄で捕まえるといった手柄を立てた石天だったが、調子に乗ってラストバトルの
龍君兒、聞江龍 vs 衛子雲
これに参戦!!
わやくちゃぐちゃぐちゃ
空飛ぶチョッキという奇妙な武器(空飛ぶ十字剣ですね)を振り回して戦う衛子雲に対して、神打術を使って孫悟空になって戦う石天さん。
今回の石天は神打術を冒頭からも使うのですが、
まっっったく役に立っていません(笑
やっぱあれも使う人が最初からそれなりに強くないと。
もう石天三人組が合間にごちゃごちゃ入るのでラストバトルがグダグダ。
事件を解決したら
「お前らを弟子にするわけねーじゃん」
って感じで石天完全無視で颯爽と去って行きました・・・
終劇
■
ああん、もう龍君兒様が可愛いやら格好良いやらありゃしない。
またラストの終ったらササッと去って行っちゃうところも格好良い!
龍君兒と言えば女座頭市に扮した主演作「秘帖」があるが、ほぼ同時期に撮影されたこちらもまさかの女座頭市もので、紆余屈折を経て女座頭市になっていく「秘帖」のラストから本作につなげるとこちらは最初から天下無敵の女座頭市なのでそのまま「秘帖2」って感じである。
「秘帖」では主にファッション面で頑張っていた龍君兒様であるが本作はファッション方面は乏しいも、クールで天下無敵の格好良さが一層際立っておりキャラクター面では遥かにこちらが完成していて魅力的である。
アクション面でもキビキビとスピーディに良かったス。
しかし英題「Snake in the Crane's Shadow」で、石天さん出てきて・・・
ってことだからてっきり典型的なコメディ功夫かと思いきや、女座頭市ものだとは全く思わなんだ。「通天老鼠下江南」の題名でも全くわからんわ。
んで、そのコメディ面を担う石天さんですが、
そっちはそっちで十分すぎるほど活躍(邪魔)してくれます。
近頃は石天さん十八番のガチャ目も随分と見ていなかったし、それはそれで楽しかったかなと。
前述の通りにラストバトルを石天三人組がぐちゃぐちゃにしてしまうので、そこが一番残念なところですね。
ここは女座頭市ものにふさわしくハードバトルを期待したかったところ。
まぁ何にしろ龍君兒迷は必見の作品ですな。
石天迷としても観る価値はあるかな?
いやいや彼女の出てる作品でまだまだ面白いものありますなぁ・・・
もっと集めようっと。
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■CAST&STAFF |
監督・脚本 |
潘壘 |
出演 |
龍君兒(ロン・ジェンエール) |
石天(ディーン・セキ) |
聞江龍 |
衛子雲(ウェイズ・ワン) |
岳華 |
龍天翔 |
王侠 |
楊奎玉 |
蘆葦 |
林伊娃 |
劉珊 |
鄭富雄 |
柯佑民 |
李敏郎 |
唐家拳 |
龍冠武 |
于恆 |
袁時和 |
原森 |
武術指導 |
李小明 |
製作 |
許萬霊 |
製作総指揮 |
王侠 |
制作年度 |
1978 |
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